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問題106 20歳の男性。大学ラグビーの試合中にタックルを受け転倒し頭部を打った。
最初に確認しなければならないのはどれか。
1.頭部陥凹
2.耳鼻出血
3.意識障害
4.打撃部腫脹
答え.3
解説
・20歳の男性。
・ラグビーの試合中タックルを受け転倒し頭部を打った。
→本症例は、スポーツ中に頭部に衝撃を受けていることから、頭部打撲が疑われる。その際の観察項目は、頭痛の有無、嘔気嘔吐の有無、意識レベルチェック、視力障害の有無、手足のしびれなどにわたる。また、脳しんとうへ発展する恐れが高い。脳しんとうの症状は、通常、受傷後すぐに発症し短期間で回復するが、時間をかけて進行(悪化)する場合もある。急性神経学的機能障害(健忘、平衡感覚障害(バランス感覚の障害)、混乱、情緒不安定、認知機能障害など)が早期に生じ、通常は時間とともに自然回復する。しかし、症例によっては数分〜数時間かけて症状が進行することがあり、回復に長期間を要する場合や、症状が長期に渡り残存することがある。
1.× 頭部陥凹
これは、頭蓋骨骨折を確認する一つの指標である。頭部陥凹を視診で確認できるなら良いが、触診するとより、陥没による圧迫のため、頭蓋骨の内側の圧が高まり(頭蓋内圧亢進)、激しい頭痛、嘔吐、意識障害などが認められることもある。
2.× 耳鼻出血
これは、頭蓋骨底部骨折を確認する一つの指標である。耳鼻出血とは、鼻血のことを指す。
3.〇 正しい。意識障害を最初に確認しなければならない。
本症例は、スポーツ中に頭部に衝撃を受けていることから、頭部打撲が疑われる。その際の観察項目は、頭痛の有無、嘔気嘔吐の有無、意識レベルチェック、視力障害の有無、手足のしびれなどにわたる。また、脳しんとうへ発展する恐れが高い。脳しんとうの症状は、通常、受傷後すぐに発症し短期間で回復するが、時間をかけて進行(悪化)する場合もある。急性神経学的機能障害(健忘、平衡感覚障害(バランス感覚の障害)、混乱、情緒不安定、認知機能障害など)が早期に生じ、通常は時間とともに自然回復する。しかし、症例によっては数分〜数時間かけて症状が進行することがあり、回復に長期間を要する場合や、症状が長期に渡り残存することがある。ちなみに、意識障害とは、意識が清明ではない状態のことを示し、覚醒度あるいは自分自身と周りの認識のいずれかが障害されていることである。
4.× 打撃部腫脹
打撃部腫脹とは、たんこぶのことである。かならずしも、打撃部腫脹の程度が受傷の程度と関係しているとはいいきれない。
軽度(グレード1):意識消失なし、症状が15分未満(見当識障害など)
中等度(グレード2):意識消失なし、症状が15分以上(見当識障害など)
重度(グレード3):意識消失あり
問題107 32歳の女性。百日咳のため咳が数週間続いている。激しい咳をしたとき右側胸部に激痛を自覚した。患部に腫脹はないが右第7肋骨に限局性圧痛がみられた。
他に考えられる症状はどれか。
1.軋轢音
2.屈曲変形
3.皮下出血斑
4.上肢運動時痛
答え.4
解説
・32歳の女性。
・百日咳のため咳が数週間続いている。
・激しい咳:右側胸部に激痛。
・腫脹なし、右第7肋骨に限局性圧痛。
→本症例は、百日咳の咳により右第7肋骨が疲労骨折を呈したと考えられる。百日咳とは、特有のけいれん性の咳発作(痙咳発作)を特徴とする急性気道感染症である。百日咳の原因菌は、百日咳菌である。特有のけいれん性の咳発作(痙咳発作)を特徴とする急性気道感染症である。
1.× 軋轢音
軋轢音とは、骨折部位を押したときに触知する異常音である。骨折部位が擦れて軋む音をいい、耳で聞こえるレベルの音ではなく、触知で認識できるレベルの音である。
2.× 屈曲変形
肋骨骨折の疲労骨折では、通常、骨自体の屈曲変形は視認できない。なぜなら、肋骨は体内にあり、骨折部位は肋骨の周囲の筋肉と組織によって固定されるため。
3.× 皮下出血斑
皮下出血斑とは、皮下出血(内出血)したときに紫色のアザのことである。紫斑病ともいう。内出血が起こるメカニズムは、何かにぶつかるなど外部からの衝撃が身体に加わることにより皮膚や皮下の組織が壊れてしまい出血が身体の内部だけに溜まることで起こる。つまり、原因としては転倒などによる打撲や打ち身、捻挫が多く、ひどい肉離れなどでみられる。
4.〇 正しい。上肢運動時痛が考えられる症状である。
本症例は、百日咳の咳により右第7肋骨が疲労骨折を呈したと考えられる。肋骨疲労骨折の症状として、上半身を捻ると胸に痛みを感じる、呼吸の倦怠感、違和感、くしゃみや、せきをすると胸が痛むなどがあげられる。
問題108 20歳の男性。サッカーの練習中転倒し左手掌を強く衝いた。翌日、疼痛が強くなり来所した。母指・示指に軸圧を加えたり手関節橈背屈で疼痛の増悪がみられた。
考えられないのはどれか。
1.有鈎骨骨折
2.手根中央関節脱臼
3.月状骨脱臼
4.舟状骨骨折
答え.1
解説
・20歳の男性。
・サッカー中:転倒し左手掌を強く衝いた。
・翌日:疼痛が強くなった。
・母指、示指に軸圧、手関節橈背屈:疼痛の増悪。
→各選択肢の原因と症状をすべて覚えておくことに越したことはないが、限りある勉強時間でそれは困難を極める。骨の場所や名前から症状や受傷原因を推測できれば、この問題は解ける。
1.× 有鈎骨骨折は考えられない。
なぜなら、有鈎骨骨折の原因は、野球やゴルフ、テニスのスイング動作の繰り返しによる疲労骨折で、グリップエンド側(下の手)に発症するため。症状として、手のひらの小指側に痛みを感じることが多く、痛みで握ることや手首を反らすことが困難になる。また、骨折により神経が損傷された場合は痺れなどを感じることもある。
2.〇 手根中央関節脱臼
手根中央関節とは、手首の中央部に位置し、手をついて転倒した際などに負傷しやすい。母指・示指側の疼痛と関連する。
3.〇 月状骨脱臼
月状骨脱臼とは、手関節の強制背屈により生じた月状骨の掌側脱臼である。手首と手が痛み、形状にゆがみが生じることがある。迅速に治療されない場合、合併症として正中神経麻痺や月状骨の虚血性壊死が起こる。
4.〇 舟状骨骨折
舟状骨骨折とは、サッカーなどの運動時に後ろ向きに転倒して、手関節背屈で手をついた時に受傷することが多い。10〜20代のスポーツ競技者によくみられる骨折である。急性期では、手首の母指側が腫れ、痛みがある。急性期を過ぎると一時軽快するが、放置して骨折部がつかずに偽関節になると、手首の関節の変形が進行し、手首に痛みが生じて、力が入らなくなり、また動きにくくなる。
(※画像引用:All About様)
問題109 72歳の女性。歯科医院にて治療中、閉口困難を訴えた。半開口位のままで開閉はわずかに可能である。下顎歯列は上顎歯列の前方に偏位し、頭部も左側にやや偏位していた。
考えられるのはどれか。
1.右顎関節前方脱臼
2.左顎関節側方脱臼
3.両側顎関節前方脱臼
4.両側顎関節後方脱臼
答え.1
解説
・72歳の女性。
・歯科医院にて治療中:閉口困難。
・半開口位のまま、開閉わずかに可能。
・下顎歯列:上顎歯列の前方に偏位。
・頭部:左側にやや偏位。
【ポイント】
下顎歯列:上顎歯列の前方に偏位。
→前方脱臼が示唆される。
オトガイ部(頭部):左側に偏位。
→右顎関節が脱臼している。
1.〇 正しい。右顎関節前方脱臼が考えられる。
本症例は、①オトガイ部(頭部)が左側に偏位していること、②下顎歯列が上顎歯列の前方に偏位していることから、①右顎関節が脱臼、②前方脱臼が示唆される。
2.× 左顎関節側方脱臼
顎関節の側方脱臼の場合は、下顎が後方に位置する。咬合不能、下顎運動障害。下顎頭が下顎窩の外側または内側で触知される。頻度は少なく、骨折も合併することが多い。下あごやその周囲側頭部に大きな外的ショック(交通事故など)を受けた時に発生する。
3~4.× 両側顎関節前方脱臼/両側顎関節後方脱臼
両側顎関節の場合は、オトガイ部(頭部)に左右差がないことが多い。両側性顎関節脱臼の症状として、閉口不能、下顎は前方へ突出し,咬合は前歯部で著しい開咬となる。 顔貌は面長で鼻唇溝の消失がみられ、咀嚼不能、口唇閉鎖困難のため流涎の状態となる。
問題110 65歳の女性。足を滑らせ右肩関節外転・伸展で手を衝き負傷した。来所時、右肩関節が水平位で弾発性固定し上腕は短縮して見えた。
考えられるのはどれか。
1.腋窩脱臼
2.鎖骨下脱臼
3.肩峰下脱臼
4.烏口下脱臼
答え.2
解説
・65歳の女性。
・足を滑らせ右肩関節外転・伸展で手を衝き負傷した。
・右肩関節:水平位で弾発性固定。
・上腕:短縮。
→各選択肢の原因と症状をすべて覚えておくことに越したことはないが、限りある勉強時間でそれは困難を極める。骨の場所や名前から症状や受傷原因を推測できれば、この問題は解ける。
【脱臼の固有症状】
①弾発性固定:脱臼した位置で関節が動かなくなる状態をいう。患部を押しても反発するか、動いてもまた脱臼した位置に戻ろうとする特徴がある。
②変形:関節が元の位置から逸脱するために、見た目にも変形がみられる。一度脱臼すると、関節の構造が破壊されてしまったり、靭帯や関節包が緩んでしまったりすることで不安定性が残る可能性がある。特に肩関節は、再負傷しやすいといわれている(反復性脱臼)。
1.× 腋窩脱臼
腋窩脱臼の場合、上腕の短縮ではなく延長して見える。腋窩脱臼とは、肩関節脱臼の一種で、下方脱臼に含まれる。腋窩脱臼は、外傷性脱臼であり、転倒時や転落時に地面に強く手をついた場合、及びスポーツ時に起こりやすい。腋窩脱臼の症状としては、特に肩関節の外転が制限される。脱臼時に腋窩神経が損傷を受けることにより、運動制限だけでなく、腋窩神経支配の筋(三角筋や小円筋)で知覚障害が起こるケースもある。
2.〇 正しい。鎖骨下脱臼が考えられる。
鎖骨下脱臼とは、上腕骨頭が関節窩の前方へ脱出してしまい、烏口突起よりもさらに内側に偏ってしまった状態のことである。つまり、鎖骨の下の辺りに上腕頭骨を触診することができる。上腕部を70度以上外側に向け肩甲骨を上げているような状態で支えられている。肩が骨格的に上方に突き出し、上腕が短縮して見える。
3.× 肩峰下脱臼
本症例の場合、右肩関節外転・伸展で手を衝き負傷している。肩峰下脱臼は、肩関節脱臼の一種で、上方脱臼に含まれる。通常、肩関節が上方に移動し、上腕が上方に突き出る状態を示す。肩内転時に、強い前上方への力により骨頭が関節窩上方に脱臼する非常にまれな脱臼である。肩峰・肩鎖関節・鎖骨・烏口突起・上腕骨大小結節の骨折や、腱板・上腕二頭筋腱・神経・血管などの軟部組織の損傷を伴う。
4.× 烏口下脱臼
烏口下脱臼とは、発生率が高い肩関節前方脱臼で、上腕骨頭が肩甲骨関節窩から前方に脱臼している状態である。関節全体を覆う袋状の関節包と靭帯の一部が破れる。受傷機転として、突き出た上腕骨頭が烏口突起の下へすべることで起こる。つまり、後方から力が加わる、転倒するなどで手を衝くことで過度の伸展力が発生した場合などによって起こる。脱臼していない側の手で、脱臼した側の上腕を外側に上げた状態(外転挙上)で来院することが多く、弾発固定も見られる。脱臼した肩は本来の丸みが消え、烏口突起の下部に骨頭を触知できる。
烏口下脱臼とは、肩関節前方脱臼(約90%)のひとつである。上腕骨頭が肩甲骨関節窩から前方に脱臼した症状で、①烏口下脱臼と②鎖骨下脱臼に分類される。関節全体を覆う袋状の関節包と靭帯の一部が破れ、突き出た上腕骨頭が烏口突起の下へすべることで起こる脱臼である。介達外力が多く、後方から力が加わる、転倒するなどで手を衝くことで過度の伸展力が発生した場合(外旋+外転+伸展)などに起こる。症状として、①弾発性固定、②関節軸の変化(骨頭は前内方偏位、上腕軸は外旋)、③脱臼関節自体の変形(三角筋部の膨隆消失、肩峰が角状に突出、三角筋胸筋三角:モーレンハイム窩の消失)、④上腕仮性延長、⑤肩峰下は空虚となり、烏口突起下に骨頭が触知できる。