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問題81 電気療法で正しいのはどれか。
1.表在性の疼痛には低い周波数が適している。
2.神経を興奮させることができる。
3.刺激強度は筋収縮が得られるまでとする。
4.マイクロ波は電気療法の一つである。
答え.2
解説
TENS (Transcutaneous Electrical Nerve Stimulation:経皮的電気神経刺激療法)は、温熱を出さず、慢性疼痛の緩和や痙縮改善に効果がある。疼痛部位の支配神経などに電極を配置し、経皮的に低周波による電気刺激を加える方法である。
【目的】鎮痛
【理論】ゲートコントロール論
【方法】筋収縮を誘発しないような短いパルス幅と周波数で通電する。
1.× 表在性の疼痛には、「低い」ではなく高い周波数が適している。
例えば、超音波療法の温熱効果を取ってみても、1MHzの超音波では主に深部組織を、3MHzでは浅部組織を加熱する。電気療法も同様である。
2.〇 正しい。神経を興奮させることができる。
FES(機能的電気刺激療法)は、筋の活動を促すため、末梢神経を刺激し麻痺筋の収縮を補助するのに有効である。例えば、脳卒中片麻痺患者の歩行における足背屈補助に用いられる。
3.× 刺激強度は、筋収縮が「得られるまで」ではなく得る必要はない。
なぜなら、ゲートコントロール理論(疼痛抑制に関する理論)を利用したモードもあるため。電気療法には、FES(機能的電気刺激療法)のほかにも、TENS(経皮的電気刺激法)やIF(干渉電流療法)が行える。つまり、治療の目的により、筋収縮を得る必要はない。
4.× マイクロ波は、「電気療法」ではなく温熱療法の一つである。
極超短波療法(マイクロ波)とは、深部温熱療法である。2450MHzの電磁波を利用し、エネルギーの半価層(エネルギーが半減する深度)は、3~4cm、筋の加温に有効である。極超短波療法(マイクロ波)の禁忌は、①温熱療法一般の禁忌(急性炎症部位、悪性腫瘍、出血傾向、知覚麻痺)、②金属部位への照射(衣服、装飾品、体内金属含む)、③心臓ペースメーカー使用者、④眼球、男性生殖器、妊婦の腹部、⑤小児の骨端線である。
問題82 骨折治癒を促進する力学的因子はどれか。
1.屈曲力
2.牽引力
3.剪断力
4.圧力
答え.4
解説
1.× 屈曲力
屈曲力とは、物体が曲がる力を指す。骨折治癒に対して、屈曲力はさらに骨折(不良な骨癒合)を助長する可能性が高い。
2.× 牽引力
牽引力とは、引っ張る力のことである。骨折を整復するときに使用されるが、骨の治癒自体を促進する力ではない。骨折により転位している骨を持続的に牽引することで、転位を治し整復する。①直達牽引と②介達牽引の2種類がある。①直達牽引とは、骨に直接牽引力を働かせる方法をという。②介達牽引とは、骨に直接牽引力を加えず、皮膚や筋肉を介して骨に力を加える牽引法である。皮膚に絆創膏や包帯を巻いて牽引を行う。ちなみに、介達牽引中の合併症として、①腓骨神経麻痺、②安静による認知能力の低下、③褥瘡、皮膚の傷などの皮膚科分野のトラブル、④関節の拘縮と筋力の低下、⑤循環障害などが挙げられる。
3.× 剪断力
剪断力とは、外力を受けて部材が圧縮されたり、折り曲げられようとする時に、部材の両側に逆方向にずれて(部材をひし形に変形させて)抵抗しようとする力である。いわゆるズレの力といえる。
4.〇 正しい。圧力は、骨折治癒を促進する力学的因子である。
骨は力学的な荷重:圧力(運動)に応じて、骨吸収と骨形成を繰り返し、自らを再構築(リモデリング)する。つまり、運動が骨を強くする。
問題83 疾患と症状の組合せで正しいのはどれか。
1.頭蓋底骨折:ブラックアイ
2.鼻骨骨折:バトル徴候
3.顎関節症:ベル現象
4.頸椎棘突起骨折:ホルネル徴候
答え.1
解説
頭蓋底骨折は、頭蓋冠(椀を伏せた形のドーム型の部分)の線状骨折や陥没骨折とは病態も治療方針も異なる。なぜなら、頭蓋骨の底面である頭蓋底は、でこぼこして多くの孔が開いている複雑な構造をしているため。
【頭蓋底骨折の症状】主に①髄液漏と②脳神経麻痺があげられる。
①髄液漏とは、頭蓋底骨折をとおしてなかの脳脊髄液がもれ出てくる状態である。出てくるのは耳の穴(髄液耳漏)か鼻の穴(髄液鼻漏)で、髄液漏では頭蓋内(頭蓋骨よりも内側)に細菌が入って髄膜炎を起こす危険がある。また、髄液が流れ出る代わりに空気が頭蓋内に入る気脳症を起こすこともある。
②脳神経麻痺について、頭蓋底の孔の多くには、脳から出て顔面や内臓に至る脳神経がとおっている。この孔に骨折が及ぶと、なかをとおっている脳神経を傷つけて脳神経麻痺を来すことがある。
1.〇 正しい。ブラックアイは、「頭蓋底骨折」にてみられる。
ブラック アイとは、頭蓋底骨折の際、眼瞼下の出血により結膜や眼瞼に出血斑がみられる徴候である。つまり、頭蓋底骨折はしばしば周囲の血管を損傷し、眼窩周辺の出血を引き起こす。
2.× バトル徴候は、「鼻骨骨折」ではなく頭蓋底骨折にてみられる。
バトルサインとは、頭蓋底骨折の際の徴候のひとつで、耳介後部の斑状皮下出血がみられているものをさす。鼻骨骨折とは、スポーツなどで、鼻を硬いものにぶつけてしまった場合など、何らかの衝撃が鼻に加わることで、鼻骨が骨折した状態を指す。鼻骨骨折は顔の外傷の中で、一番多い骨折で、症状として、鼻づまり、においがわからないなどが挙げられる。
3.× ベル現象は、「顎関節症」ではなく特発性の末梢性顔面神経麻痺(顔面神経麻痺)にてみられる。ベル現象とは、閉眼した時、眼球が上転する現象のことである。Bell麻痺は、特発性の末梢性顔面神経麻痺のことである。他の麻痺(中枢性、感染によるRamsay-Hunt症候群、外傷、中耳炎、腫瘍など)を除いたものをさす。顔の片側の筋肉に起こる突然の筋力低下または麻痺がおこる。ちなみに、顔面神経は顔面の筋肉を動かし、唾液腺と涙腺を刺激し、舌の前方3分2の部分で味覚を感じることを可能にし、聴覚に関わる筋肉を制御している。
4.× ホルネル徴候は、「頸椎棘突起骨折」ではなく交感神経遠心路の障害にてみられる。
棘突起とは、椎体の背中側に突き出した突起のことで、棘突起骨折とは、だるさや痛みを感じ、軋轢音を聞くことができ、首の根元近くで起きやすい。
交感神経遠心路の障害によって生じる。三大徴候:中等度縮瞳、眼瞼下垂(眼裂狭小)、眼球陥凹(眼球後退)とする症候群である。眼の徴候以外は、顔面の発汗低下と紅潮を特徴とする。
交感神経遠心路には、3つのニューロンがあり、そのいずれが障害されても発症する。交感神経遠心路は、①視床下部→脳幹→脊髄毛様脊髄中枢に至る。その後、②節前ニューロンは、肺尖部を通り上行し,上頸部交感神経節で終わる。③節後ニューロンは、顔面の血管、発汗神経は外頸動脈に沿って走り、一方眼瞼、眼球へのそれは内頸動脈に沿って頭蓋内にもどり各効果器を支配する。
①の領域の障害の代表例は、Wallenberg症候群。
②の領域の障害は、直接の外傷、頸胸部リンパ腺腫大による圧迫、腫大した甲状腺の圧迫、頸部胸部動脈瘤、癌の転移、頸部膿瘍の圧迫、肺尖部肋膜癒着などにより生じる。
③の領域の障害は、内頸動脈系の動脈瘤、閉塞などにより生じる。
問題84 下位胸椎椎体圧迫骨折で正しいのはどれか。
1.椎体後方が圧迫変形する。
2.多くの場合徒手整復を必要とする。
3.棘突起部に叩打痛を認める。
4.脊髄損傷を合併しやすい。
答え.3
解説
1.× 椎体「後方」ではなく前方が圧迫変形する。
圧迫骨折とは、背骨の椎体と言う部分が潰されるように骨折した状態である。尻もちなどの外力による受傷が多く見られる。女性の高齢者に多く見られる代表的な骨折である。椎体骨折(圧迫骨折)の場合は、画像所見で①膨張した椎間板、②魚椎変形(楔状変形)、③骨陰影の減少などがみられる。
2.× 多くの場合、徒手整復を必要しない。
胸椎椎体圧迫骨折は、安静による保存的治療で自然に治癒する。コルセットも処方になることが多い。
3.〇 正しい。棘突起部に叩打痛を認める。
寝起きや動作をするときに特に痛みが強くなり、安静にしていれば軽減するという特徴がある。腰背部の骨折部位を軽く叩くと、痛みが誘発される(叩打痛)。
4.× 脊髄損傷の合併は稀である。
脊髄損傷の原因は、脊椎の脱臼や骨折によって脊髄が圧迫されることによって起こる。一方、「いつの間にか骨折」とも呼ばれる圧迫骨折の原因は、背骨に強い圧力がかかった際におこるが、骨粗鬆症が背景にある。
問題85 腰椎肋骨突起骨折で誤っているのはどれか。
1.第3腰椎に多い。
2.脊柱の運動制限がみられる。
3.患側股関節は内転位をとる。
4.直達外力では腎損傷の危険性が高い。
答え.3
解説
腰椎横突起骨折とは、交通事故で、追突されて大きな衝撃を受けた場合やバイク・自転車から転落した場合などに発症することが多い傷病である。スポーツやスキー、スノボなどをしているときに腰椎横突起骨折をするケースもある。症状は、主に腰痛や圧痛、動作痛(大腰筋や腰方形筋)である。ただ、末梢神経を傷めることがないため、足の麻痺やしびれ感などの神経症状は伴わない。治療方法としては、腰を安静にして、コルセットや腰部固定帯を使って骨折した部位を固定する。
1.〇 正しい。第3腰椎に多い。
なぜなら、第3腰椎肋骨突起は、ちょうど骨盤の腸骨翼が終わる位置で、直接的な外力が加わりやすいため。
2.〇 正しい。脊柱の運動制限がみられる。
なぜなら、腰椎横突起は、大腰筋や腰方形筋の付着部位であり、主に腰痛や圧痛、動作痛がみられるため。
3.× 患側股関節は、「内転位」ではなく外転位をとる。
なぜなら、大腰筋や腰方形筋に伸張ストレスを加えないため。大腰筋や腰方形筋が伸張することで、骨折片が転位してしまう恐れがある。
4.〇 正しい。直達外力では腎損傷の危険性が高い。
なぜなら、第3腰椎肋骨突起の場合、そこに腎臓が位置し、直達外力により腎に力が伝わる可能性が高いため。直達外力とは、打撃や衝突などの外力により加わった力が直接患部に作用することである。ちなみに、腎損傷の症状として、主に、背部痛と出血があげられる。特に肉眼的血尿は診断につながる重要な所見である。