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問題76 上腕骨解剖頸骨折で正しいのはどれか。
1.小児に好発する。
2.骨折部の変形が著明である。
3.肩関節内転位で固定する。
4.阻血性骨壊死の危険性がある。
答え.4
解説
1.× 「小児」ではなく高齢者に好発する。
なぜなら、上腕骨解剖頸骨折は、転倒時に肩を強打して起こることが多いため。
2.× 骨折部の変形が著明「とはいえない」。
上腕骨骨折の中で変形は比較的少ないが、わずかに転位し短縮する。
3.× 肩関節「内転位」ではなく外転位で固定する。
肩関節外転70~80°、水平屈曲30~40°で固定する。
4.〇 正しい。阻血性骨壊死の危険性がある。
ちなみに、阻血性骨壊死になりやすい骨折として、①上腕骨解剖頸骨折、②手の舟状骨骨折、③大腿骨頸部内側骨折、④距骨骨折があげられる。これらの部位の骨折は栄養血管損傷を起こしやすく、血流が障害されやすい。したがって、癒合困難や長期固定による関節拘縮をきたしやすい。
阻血性骨壊死とは、骨壊死または骨梗塞ともいい、血液供給が阻害されることによりおこる骨組織の壊死である。 早期段階では、症状がみられない場合がある。 悪化していくと関節の痛みが増し、動きが制限されることがある。骨壊死が最も起こりやすい部位は、大腿骨頭、膝関節、肩関節の上腕骨頭などである。 男性および30~50歳で起こることが最も多く、しばしば両股関節や両肩関節に起こる。危険因子には、骨折、関節脱臼、アルコール依存症、高用量ステロイドの使用などがあげられる。また、この症状は、明確な理由が無くても発生する場合もある。
問題77 上腕骨顆上伸展型骨折で正しいのはどれか。
1.顆上部に強力な後方凸の屈曲力が働き発生する。
2.肘関節部に高度な腫脹を認める。
3.肘関節前方脱臼との鑑別が必要である。
4.偽関節を生じやすい。
答え.2
解説
上腕骨顆上骨折とは、小児の骨折中最多であり、ほとんどが転倒の際に肘を伸展して手をついた場合に生じる。転移のあるものは、肘頭が後方に突出してみえる。合併症は、神経麻痺(正中・橈骨神経)、フォルクマン拘縮(阻血性拘縮)、内反肘変形などである。ちなみに、フォルクマン拘縮とは、前腕屈筋群の虚血性壊死と神経の圧迫性麻痺により拘縮を起こすものである。
1.× 顆上部に強力な「後方」ではなく前方凸の屈曲力が働き発生する。
伸展型(約95%)の骨折線は、前方から後上方へ走行し、遠位骨片は近位骨片の後上方へ転位するのが特徴である。一方、屈曲型の骨折線は、後方から前上方へ走行し、遠位骨片は近位骨片の前上方へ転位するのが特徴である。
2.〇 正しい。肘関節部に高度な腫脹を認める。
疼痛や腫脹、異常可動性、軋轢音が著明である。それらに伴って、肘関節運動障害、肘関節の幅と厚さの増大、正中・橈骨・尺骨神経の損傷がみられる。
3.× 肘関節「前方」ではなく後方脱臼との鑑別が必要である。
なぜなら、肘関節後方脱臼の外観が類似しているため。肘関節後方脱臼の場合、ヒューター三角の位置関係が乱れるが、上腕骨顆上伸展型骨折の場合は乱れない。
4.× 偽関節を生じやすいとはいえない。
上腕骨顆上伸展型骨折の後遺症は、フォルクマン拘縮、骨化性筋炎、可動域制限、内反肘などがみられる。内反肘により運搬角の減少が伴いやすい。ちなみに、偽関節とは、骨折部位の癒合がうまくいかず、骨折部が可動性を持つ状態のことである。偽関節が生じやすい部位は、①上腕骨解剖頸、②手の舟状骨、③大腿骨頸部、④脛骨中下1/3、⑤距骨である。ちなみに、開放骨折・粉砕骨折・整復後も離開が生じている骨折では、部位によらず骨癒合は遷延しやすい。
問題78 肘関節伸展位で固定するのはどれか。
1.上腕骨骨幹部骨折
2.モンテギア(Monteggia)骨折屈曲型
3.上腕骨内側上顆骨折
4.橈骨頭骨折
答え.2
解説
1.× 上腕骨骨幹部骨折
上腕骨骨幹部骨折の固定は、三角筋付着部より遠位の場合は、枕子、厚紙副子、金属副子、ミッデルドルフ三角副子などを用い、肩関節外転70~80°、水平屈曲30~45°、軽度外旋位、肘関節直角位、前腕中間位で肩関節から手関節まで行う。ちなみに、三角筋付着部より近位の場合は、肩関節0~軽度外転位とし、安定と共に徐々に外転を強める。
2.〇 正しい。モンテギア(Monteggia)骨折屈曲型は、関節伸展位で固定する。
Monteggia骨折は、尺骨骨幹部骨折に橈骨頭前方脱臼が起きたものである。手をついて転倒・転落した際、前腕回内力が作用することで起こりやすい。固定方法は、①伸展型の場合、肘関節鋭角屈曲位、前腕回外位で行う。②屈曲型の場合は、肘関節伸展位、前腕回外位である。上腕近位端~MP関節手前まで固定する。
3.× 上腕骨内側上顆骨折
上腕骨内側上顆骨折の原因は、肘伸展位で転倒して、肘関節の外反強制を受け、付着する筋腱、靱帯に牽引されて内側上顆が裂離する機序が多い。転位がない場合は、肘関節直角位、前腕回内位、手関節10~20°掌屈位で、上腕近位部~MP関節手前まで固定する。
4.× 橈骨頭骨折
橈骨頭骨折は、前腕回内位で手掌を衝き転倒した際の介達外力が原因で起こる骨折である。橈骨頭骨折は成人に、橈骨頭部骨折は小児に多い。固定
は、肘関節直角屈曲位、前腕回外位で行う。
問題79 前腕骨遠位端部骨折で正しい組合せはどれか。
1.コーレス(Colles)骨折:鋤状変形
2.スミス(Smith)骨折:フォーク状変形
3.バートン(Barton)骨折:遠位橈尺関節不全脱臼
4.ショウファー骨折:関節内骨折
答え.4
解説
・Smith骨折(スミス骨折):Colles骨折とは逆に骨片が掌側に転位する。
・Colles骨折(コーレス骨折):Smith骨折とは逆に骨片が背側に転位する。
・Barton骨折(バートン骨折):橈骨遠位部の関節内骨折である。遠位部骨片が手根管とともに背側もしくは掌側に転位しているものをいう。それぞれ背側Barton骨折・掌側Barton骨折という。
主な治療として、骨転位が軽度である場合はギプス固定をする保存療法、骨転位が重度である場合はプレート固定を行う手術療法である。
コーレス骨折(橈骨遠位端部伸展型骨折)は、橈骨遠位端骨折の1つである。 橈骨が手関節に近い部分で骨折し、遠位骨片が手背方向へ転位する特徴をもつ。合併症には、尺骨突き上げ症候群、手根管症候群(正中神経障害)、長母指伸筋腱断裂、複合性局所疼痛症候群 (CRPS)などがある。
1.× 鋤状変形は、「コーレス骨折」ではなくスミス骨折である。
スミス骨折の特徴として、背側凸変形、鋤状変形があげられる。鋤(すき)とは、農作業や土木工事に使用された、地面を掘ったり、土砂などをかき寄せたり、土の中の雑草の根を切るのに使用される道具、農具である。
2.× フォーク状変形は、「スミス骨折」ではなくコーレス骨折である。
フォーク状変形は、主に先天性の異常や外傷によって引き起こされる。主に、コーレス骨折によって、折れた橈骨がズレてしまうことによって起こる変形である。
3.× バートン(Barton)骨折は、「遠位橈尺関節不全脱臼」ではなく、橈骨遠位部の関節内骨折である。
Barton骨折は、遠位部骨片が手根管とともに背側もしくは掌側に転位しているものをいう。それぞれ背側Barton骨折・掌側Barton骨折という。
4.〇 正しい。ショウファー骨折は、関節内骨折である。ショーファー骨折とは、橈骨茎状突起骨折のことである。手を伸ばして転倒した時に生じやすい。舟状月状骨間靭帯損傷の合併が多い。ちなみに、関節内骨折とは、骨折が関節の内部にまで及んでいる状態を指す。一方、関節外骨折とは、骨折する際にできる骨折線が関節の内部にない骨折のことである。
問題80 手舟状骨骨折で誤っているのはどれか。
1.手関節背屈橈屈時に運動痛がある。
2.関節内骨折はまれである。
3.近位3分の1の骨折は壊死が生じやすい。
4.スナップボックスの圧痛がある。
答え.2
解説
舟状骨骨折とは、サッカーなどの運動時に後ろ向きに転倒して、手関節背屈で手をついた時に受傷することが多い。10〜20代のスポーツ競技者によくみられる骨折である。急性期では、手首の母指側が腫れ、痛みがある。急性期を過ぎると一時軽快するが、放置して骨折部がつかずに偽関節になると、手首の関節の変形が進行し、手首に痛みが生じて、力が入らなくなり、また動きにくくなる。
1.〇 正しい。手関節背屈橈屈時に運動痛がある。
手舟状骨骨折の症状として、手関節運動制限や運動時痛(特に、手関節背屈・橈屈時)がみられる。これは、受傷時に、手関節背屈・橈屈位で掌側面から外力を受けて生じるためである。
2.× 関節内骨折はまれとはいえない。
なぜなら、手舟状骨は手首の関節を構成する骨の一つであるため。ちなみに、関節内骨折とは、骨折が関節の内部にまで及んでいる状態を指す。一方、関節外骨折とは、骨折する際にできる骨折線が関節の内部にない骨折のことである。
3.〇 正しい。近位3分の1の骨折は壊死が生じやすい。
なぜなら、手舟状骨の近位部の血流は、比較的弱いため。そのために骨折が発生すると、骨が充分な血液を得られない可能性があり、舟状骨の一部が壊死する。ちなみに、骨壊死には①症候性(外傷や塞栓症などによる血流途絶が原因)と②特発性(明らかな誘因がない阻血性壊死)がある。血行不良のため骨折後の再生が困難となる。症候性骨壊死が生じやすい部位:①上腕骨解剖頸、②舟状骨、③大腿骨頸部、④大腿骨顆部、⑤距骨である。
4.〇 正しい。スナップボックスの圧痛がある。
なぜなら、スナップボックス(解剖学的嗅ぎタバコ窩)から舟状骨を触知できるため。
手背には長母指伸筋の腱、掌側には短母指伸筋の腱と長母指外転筋の腱が並んで走行している。ここを解剖学的嗅ぎタバコ窩という。手背の母指基部の専用のタバコ粉末を置いて匂いをかぐ楽しみの一つで使用されていた部位であることから、その名がつけられた。手背には長母指伸筋の腱、掌側には短母指伸筋の腱と長母指外転筋の腱が並んで走行している。ここから舟状骨も触知できる。