第25回(H29年)柔道整復師国家試験 解説【午前16~20】

この記事には広告を含む場合があります。

記事内で紹介する商品を購入することで、当サイトに売り上げの一部が還元されることがあります。

 

問16 誤っている組合せはどれか。

1.頸椎脱臼骨折:四肢麻痺
2.胸椎脱臼骨折:対麻痺
3.上腕骨骨幹部骨折:橈骨神経麻痺
4.鎖骨骨折:尺骨神経麻痺

答え.4

解説
1.〇 頸椎脱臼骨折:四肢麻痺
頸椎脱臼骨折の場合、頚髄が損傷し、四肢麻痺を伴う。
・四肢麻痺とは、左右の上・下肢が麻痺で動かない状態を指す。頚椎・頚髄の病変・損傷が最も疑われる。

2.〇 胸椎脱臼骨折:対麻痺
胸椎脱臼骨折の場合、胸髄が損傷し、下半身の麻痺(対麻痺)が起こる。
・対麻痺とは、手や足の両側とも同時に麻痺を来した状態である。 脊髄障害が原因のことが多い。

3.〇 上腕骨骨幹部骨折:橈骨神経麻痺
上腕骨骨幹部骨折は、橈骨神経の走行上、損傷を伴いやすい。
・橈骨神経麻痺とは、母指背側の感覚障害と上腕三頭筋・腕橈骨筋・長、短橈側手根伸筋、総指伸筋などの伸筋群の麻痺(下垂手)を認める。

4.× 鎖骨骨折は、「尺骨神経」ではなく肩甲上神経に対し影響を与える。
・尺骨神経とは、上腕の内側から前腕の内側を通る。小指側の感覚と手指・手首の運動を支配する。尺骨神経麻痺の症状として、Froment徴候陽性や鷲手がみられる。ちなみに、鷲手とは、尺骨神経麻痺により手内筋が萎縮し、とくに環指と小指の付け根の関節(MP関節、中手指骨関節)が過伸展する一方、指先の関節(DIP関節、遠位指節間関節)と中央の関節(PIP関節、近位指節間関節)が屈曲した状態である。

 

 

 

 

 

問17 骨折で正しいのはどれか。

1.介達痛を認めるものは少ない。
2.皮下出血斑は経時的に近位側に移動する。
3.異常可動性は神経・血管損傷に注意する。
4.骨挫傷の有無は軋轢音で判断する。

答え.3

解説
1.× 介達痛を認めるものは少ないとは言い切れない(※何と比較して少ないのか疑問である)。むしろ、打撲と比較すると、骨折のほうが多いといえる。ちなみに、介達痛とは、 軸圧痛ともいい、骨折の患部から離れた場所を刺激した際、患部に生じる痛みのことである。介達痛は骨折だけでなく、骨や骨周囲の炎症、腫瘍、半月板や関節軟骨といった関節内構成物の損傷などでも認めることがある。

2.× 皮下出血斑は経時的に、「近位側」ではなく遠位側に移動する。なぜなら、皮下出血斑は重力や血流方向の影響を受けるため。ちなみに、皮下出血斑とは、皮下出血(内出血)したときに紫色のアザのことである。紫斑病ともいう。内出血が起こるメカニズムは、何かにぶつかるなど外部からの衝撃が身体に加わることにより皮膚や皮下の組織が壊れてしまい出血が身体の内部だけに溜まることで起きる。つまり、原因としては転倒などによる打撲や打ち身、捻挫が多く、ひどい肉離れなどでみられる。

3.〇 正しい。異常可動性は、神経・血管損傷に注意する。なぜなら、異常可動性の部位に神経や血管が走行している可能性があるため。ちなみに、異常可動性とは、骨折部に生じる可動性で正常な状態では生じない動きであり、骨折の固有症状である。

4.× 骨挫傷の有無を、軋轢音で判断するのは困難である。なぜなら、骨挫傷は、骨の表面が損傷した状態であるため。したがって、骨挫傷において、軋轢音(骨が擦れる音)は発生しない。骨挫傷の診断にはMRIなどの画像診断が必要である。一方、軋轢音は、骨折や関節の不安定性の指標として用いられる。ちなみに、骨挫傷とは、スポーツによる外傷や交通事故、関節同士がぶつかることなど外部からの衝撃が原因で骨内部に損傷をきたした状態である。不完全骨折までいかず、骨の内出血を起こしている状態である。

 

 

 

 

 

問18 横骨折となるのはどれか。

1.捻転骨折
2.剥離骨折
3.破裂骨折
4.剪断骨折

答え.4

解説
1.× 捻転骨折とは、ねじるような力が加わったことが原因の骨折のことである。主に、長管骨(大腿骨や上腕骨など)で起きやすい。捻転骨折の典型的なタイプとして、斜めにねじれた亀裂の入る「螺旋(らせん)骨折」があげられる。

2.× 剥離骨折とは、骨の衝突、摩擦が原因で発生する骨折のことをいう。

3.× 破裂骨折とは、骨が破裂するように粉砕される骨折で、特に椎体に多い。(椎体)破裂骨折とは、椎体の前方(前弓)だけでなく、後方の壁(後弓)も含めた骨折のこと。

4.〇 正しい。剪断骨折とは、力が骨に対して直角に作用し、骨が完全に2つに分かれるタイプの骨折である。横骨折のような形となる。ちなみに、剪断力とは、物体の両側から向かい合うように同じ大きさの力が働いて、物体にズレを生じさせる力のことである。

 

 

 

 

 

問19 反復性脱臼になりやすいのはどれか。

1.肩関節前方脱臼
2.示指MP関節背側脱臼
3.膝関節後方脱臼
4.距骨前方脱臼

答え.1

解説

肩関節前方脱臼とは?

烏口下脱臼とは、肩関節前方脱臼(約90%)のひとつである。上腕骨頭が肩甲骨関節窩から前方に脱臼した症状で、①烏口下脱臼と②鎖骨下脱臼に分類される。関節全体を覆う袋状の関節包と靭帯の一部が破れ、突き出た上腕骨頭が烏口突起の下へすべることで起こる脱臼である。介達外力が多く、後方から力が加わる、転倒するなどで手を衝くことで過度の伸展力が発生した場合(外旋+外転+伸展)などに起こる。症状として、①弾発性固定、②関節軸の変化(骨頭は前内方偏位、上腕軸は外旋)、③脱臼関節自体の変形(三角筋部の膨隆消失、肩峰が角状に突出、三角筋胸筋三角:モーレンハイム窩の消失)、④上腕仮性延長、⑤肩峰下は空虚となり、烏口突起下に骨頭が触知できる。

【固定】①材料:巻軸包帯、副子(肩関節前後面にあてる)、腋窩枕子、三角巾。②肢位と範囲:肩関節軽度屈曲・内旋位で肩関節のみ。③期間:30歳代以下は5~6週間、40歳代以上は3週間

1.〇 正しい。肩関節前方脱臼は、反復性脱臼になりやすい。なぜなら、肩関節前方脱臼は、肩関節は可動範囲が広く、関節包や靭帯が緩みやすい構造をしているため。反復性脱臼とは、一度大きなけがをして関節が脱臼し、その後脱臼を繰り返してしまうものを指す。肩関節、顎関節、膝蓋骨などに発生しやすい。習慣性脱臼や随意性脱臼、反復性脱臼などは病的脱臼に含まれない。反復性脱臼の主な原因は、上腕骨骨頭の骨欠損、関節包の弛緩、一部の関節唇の剥離によって、正常な構造が破綻することである。

2.× 示指MP関節背側脱臼は、関節可動域が大きい人が、突き指などの際に間違った方向に強い外力が加わったことで起こりやすい。

3.× 膝関節後方脱臼は、ダッシュボード損傷で多い。股関節後方脱臼は、坐骨神経麻痺が生じやすい。膝および股関節を屈曲させた状態で膝に対して後方に強い力が加わった結果生じる(例:自動車のダッシュボードにぶつかる)。ちなみに、分類として、腸骨脱臼、坐骨脱臼が後方脱臼であり、恥骨上脱臼、恥骨下脱臼が前方脱臼である。

4.× 距骨前方脱臼は、足関節が最大底屈位にて軸荷重がかかり、足が強制的に内転したときに生じやすい。足首の過剰な外傷エネルギーによって生じることが多い。

 

 

 

 

 

問20 小児骨折で正しいのはどれか。

1.骨膜の連続性は保たれることが多い。
2.捻転転位の自家橋正が期待できる。
3.骨の横径成長障害を伴う。
4.関節拘縮を後遺しやすい。

答え.1

解説
1.〇 正しい。骨膜の連続性は保たれることが多い。小児の骨は高齢者の骨と比較すると、柔軟性に富んでおり、厚い骨膜が骨の周りを取り囲んでいるため、大きな外力が加わっても連続性が絶たれづらく転位(ズレ)が生じにくい。

2.× 捻転転位の自家橋正は、「期待しにくい」。なぜなら、捻転転位(ねじれるように軸回転したもの)は、矯正しにくい転位で残りやすいため。ただし、一般的な骨折において、小児の骨は成長過程にあるため、成長とともに矯正されることが期待できる。

3.× 骨の「横径」ではなく縦径成長障害を伴う。なぜなら、小児骨折は、成長板(骨端線)に影響を与える可能性が高いため。ちなみに、成長板とは、成長期に見られる骨を成長させる部分のことで、力学的に弱い部分である。

4.× 関節拘縮を後遺「しにくい」。なぜなら、小児は、骨や関節、軟部組織が柔軟で、日常生活活動も活発であるため。

転移の種類

転位とは、骨折などで骨片が本来の位置からずれた状態にあることをいう。骨転位ともいう。骨折時の衝撃で起こる転位を一次性転位と呼び、骨折後の運搬時などの力で起こる転位を二次性転位と呼ぶ。転位は、形状によっても分類される。完全骨折の場合、一カ所の骨折でも複数種類の転位が見られることが多い。転位の見られる骨折の治療では、整復によって骨を本来の位置に戻してから固定する必要がある。
①側方転位とは、骨折によって分断された骨が側方に平行移動したものをいう。
②屈曲転位とは、傾くように曲がって角度がついたものをいう。
③捻転転位とは、ねじれるように軸回転したものをいう。
④延長転位とは、離れるように動いたものをいう。
⑤短縮転位とは、すれ違うように移動し重なったものをいう。

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)