第31回(R5年)はり師きゅう師国家試験 解説【午前76~80】

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問題76 脳卒中に対するブルンストロームステージで「共同運動がわずかに出現し、痙縮が出始める段階」はどれか。

1.ステージⅠ
2.ステージⅡ
3.ステージⅣ
4.ステージⅥ

解答

解説
1.× ステージⅠは、弛緩性麻痺である。

2.〇 正しい。ステージⅡは、「共同運動がわずかに出現し、痙縮が出始める段階」である。

3.× ステージⅣは、分離した運動が出現である。
それまで共同運動でしか動かせなかったものが、少しずつ関節ごとに独立した動きができる。

4.× ステージⅥは、各関節の分離運動な状態である。

 

 

 

 

 

問題77 第5頸髄節残存の頸髄損傷患者に可能な動作はどれか。

1.肩関節外転
2.肘関節伸展
3.手関節背屈
4.手指屈曲

解答

解説

(※引用:Zancolli E : Functional restoration of the upper limbs in traumatic quadriplegia. in Structural and Dynamic Basis of Hand Surgery. 2nd ed, Lippincott, Philadelphia, p229-262, 1979)

1.〇 正しい。肩関節外転は、第5頸髄節残存の頸髄損傷患者に可能な動作である。
第5頸髄節の運動機能は、肩関節:屈曲・伸展、外転、内外旋、肘関節:屈曲・回外が行える。そのため、ハンドリムに工夫を行うことによって平地自走は可能である。ただし、プッシュアップ動作はできないため、平地では車椅子や電動車椅子を使用する。

2.× 肘関節伸展は、第6頸髄節残存(BⅢ)の頸髄損傷患者に可能な動作である。
第6頸髄節(BⅢ)の運動機能は、円回内筋、橈側手根屈筋、上腕三頭筋と作用する。上腕三頭筋のプッシュアップ動作ができる。

3.× 手関節背屈は、第7頸髄節残存(B)の頸髄損傷患者に可能な動作である。
第7頸髄節(B)の運動機能は、長・短橈側手根伸筋が作用する。

4.× 手指屈曲は、第8頸髄節残存(A)の頸髄損傷患者に可能な動作である。
第8頸髄節(A)の運動機能は、深指屈筋が作用する。

 

 

 

 

 

問題78 幻肢について正しいのはどれか。

1.幻肢痛は心理的な要因も関連している。
2.幻肢痛は消炎鎮痛剤の投与で改善する。
3.幻肢は時間経過とともにその範囲が広がる。
4.幻肢の頻度は上肢切断に比べて下肢切断で高い。

解答

解説
1.〇 正しい。幻肢痛は心理的な要因も関連している
幻肢痛への一般的な治療方法として、薬物療法と非薬物療法に分けられる。幻肢痛は天候や精神的ストレスに左右される。

2.× 幻肢痛は、消炎鎮痛剤の投与では改善しない
薬物療法は、鎮痛剤(アセトアミノフェン、イブプロフェン)、三環系抗うつ薬抗痙攣薬、プレガバリン(リリカ)などの抗てんかん薬が、神経痛の治療に使われる。非薬物療法としては、ミラーセラピーである。

3.× 幻肢は時間経過とともにその範囲は「広がる」のではなく軽減する
一般的に、切断の手術後1週間以内に発症し、6か月~2年で消失することが多いが、それ以上長引くこともある。

4.× 逆である。幻肢の頻度は、「下肢切断」に比べて「上肢切断」で高い。
下肢より上肢、近位部より遠位部に多く、電撃痛や、捻られるような痛み、ズキズキするような痛みなど様々である。

幻肢・幻肢痛とは?

幻肢・幻肢痛とは、腕や足の切断後、失ったはずの感覚があり、かつそこに痛みを感じる状態である。切断をした人の約7割で生じるが、強い痛みは5~10%とまれである。幻肢痛のメカニズム(発生の機序)は解明されていない。下肢より上肢、近位部より遠位部に多く、電撃痛や、捻られるような痛み、ズキズキするような痛みなど様々である。一般的に、切断の手術後1週間以内に発症し、6か月~2年で消失することが多いが、それ以上長引くこともある。幻肢の大きさは健肢とほぼ同様で、幻肢痛が発生するのは、失った手や指、足などが多い。一方、肘や膝に感じることはまれで、4~6歳以下の小児切断例では出現しないことが多い。幻肢痛への一般的な治療方法として、薬物療法と非薬物療法に分けられる。幻肢痛は天候や精神的ストレスに左右されるため、薬物療法は、鎮痛剤(アセトアミノフェン、イブプロフェン)、三環系抗うつ薬抗痙攣薬、プレガバリン(リリカ)などの抗てんかん薬が、神経痛の治療に使われる。非薬物療法としては、ミラーセラピーである。幻肢は断端の運動につれて移動し、断場の状態(神経や癒着など)に関連を持つ場合がある。

※幻視痛は、心因性の要素が関係するため薬物療法以外の治療法 (バイオフィードバック、リラクセーション訓練、認知行動療法、経皮的電気神経刺激法【TENS】 など)も用いられる。ちなみに、ミラーセラピー(mirror therapy)とは、鏡を使用して運動の視覚フィードバックを与える治療法である。矢状面で両肢間に鏡を設置し、鏡に映された一側肢が鏡に隠れた反対側肢の位置と重なるようにする。切断や麻痺などの患側肢の遠位部に健側肢の映った鏡像がつながって見えることで、患側肢が健常な実像であるかのように感じさせながら運動を行う。

(※参考:「幻肢痛」慢性通治療の専門医による痛みと身体のQ&A様HPより)

 

 

 

 

 

問題79 痙直型脳性麻痺児の特徴的な下肢変形はどれか。

1.股関節外転
2.股関節伸展
3.足関節底屈
4.足関節背屈

解答

解説

痙直型脳性麻痺の特徴

脳性麻痺とは、お腹の中にいる間から、生後4週間までの間に発生した脳への損傷によって引き起こされる運動機能の障害を指す。失調型やアテトーゼ型などのタイプがある。

痙直型脳性麻痺の場合、股関節が屈曲・内転・内旋しやすく、尖足になりやすい。痙直型の特徴として、①機敏性の低下、②筋力低下、③脊髄反射の亢進などである。それらに加えて、脊髄レベルでの相反神経作用の障害として、動筋と拮抗筋が同時に過剰収縮を起こす病的な同時収縮や痙直の強い拮抗筋からの過剰な緊張性相反性抑制による④動筋の機能不全がみられる。

1.× 股関節は、「外転」ではなく内転である。

2.× 股関節は、「伸展」ではなく屈曲である。

3.〇 正しい。足関節底屈は、痙直型脳性麻痺児の特徴的な下肢変形である。
したがって、はさみ足がみられる。はさみ足歩行(痙性対麻痺歩行)は、足尖で歩行し、両膝をするように歩く。

4.× 足関節は、「背屈」ではなく底屈である。

 

 

 

 

 

問題80 疾患と換気障害の組合せで正しいのはどれか。

1.気管支喘息:拘束性換気障害
2.肺線維症:拘束性換気障害
3.高位頸髄損傷:閉塞性換気障害
4.筋ジストロフィー:閉塞性換気障害

解答

解説

(※図引用:yakugaku lab様HP)

1.× 気管支喘息は、「拘束性換気障害」ではなく閉塞性換気障害である。
気管支喘息とは、主に気管支に炎症が起きている状態である。炎症により気管支が狭くなったり(狭窄)、刺激に対して過敏な反応を示したりする。喘息は乳幼児期に発症することが多く、全体の60~70%が2~3歳までに発症する。子どもの喘息の多くは思春期の頃には症状がよくなるが、そのうちの約30%は大人になっても続くといわれている。

2.〇 正しい。肺線維症:拘束性換気障害
肺線維症とは、肺胞の周りの間質の壁が炎症により厚くなり、線維化している状態のこと。原因としては、職業上の粉塵吸入やペット飼育などの住環境、薬剤や健康食品(薬剤性肺障害)、関節リウマチ他の膠原病などさまざまなものが考えられる。

3.× 高位頸髄損傷は、「閉塞性換気障害」ではなく拘束性換気障害である。
なぜなら、高位頸髄損傷により、呼吸を助ける筋肉が麻痺し、吸ったり吐いたりする力が弱くなるため。したがって、肺活量が低下し、拘束性換気障害と判断できる。

4.× 筋ジストロフィーは、「閉塞性換気障害」ではなく拘束性換気障害である。
Duchenne型筋ジストロフィーの呼吸障害は、呼吸筋の筋力低下のために、肺活量の減少を生じる。したがって、拘束性換気障害を生じる(呼吸筋によって肺を膨らませることができない状態)。5歳以降(特に20歳ころ)から生じることが多い。人工呼吸器を装着しない場合、多くは10歳代後半から20歳代前半ころに合併症により死亡する。

気管支喘息とは?

【症状】
喘鳴、呼吸困難、呼気延長など(1秒率の低下)、アレルギー反応やウイルス感染が誘引となる。

【治療】気道の炎症を抑えて、発作が起きない状態にする。発作を繰り返すと、気道の粘膜が徐々に厚くなり、狭くなった気道が元に戻らなくなるため治療が難しくなる。そのため、日頃から気道の炎症を抑える治療を行い、喘息をコントロールすることが重要である。

 

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