第31回(R5年)はり師きゅう師国家試験 解説【午前81~85】

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問題81 関節リウマチによる関節変形の組合せで正しいのはどれか。

1.手関節:背側脱臼
2.膝:反張膝
3.足部:内反足
4.頸椎:環軸関節亜脱臼

解答

解説

関節リウマチの関節破壊と変形

①環軸椎亜脱臼、②肩関節可動域制限、③肘関節屈曲拘縮、④手関節尺側偏位、⑤手指変形(PIPやMP関節)、⑥股関節屈曲拘縮、⑦膝関節内外反変形・屈曲拘縮、⑨足・足趾変形などがある。

1.× 手関節は、「背側脱臼」ではなく尺側偏位が起こる。
尺側偏位は、手関節が尺骨側(手の小指側)に偏位する変形をいう。

2.× 膝は、「反張膝」ではなく屈曲拘縮が起こる。
他にも、膝関節において内・外反変形が起こりやすい。

3.× 足部は、「内反足」ではなく外反扁平足が起こる。
なぜなら、足趾関節炎が長期にわたると、外反母趾や内反小趾や鷲爪変形や足趾の重なるため。それに伴って胼胝・鶏眼形成が生じ、痛みや感染の原因になる。

4.〇 正しい。頸椎:環軸関節亜脱臼
関節リウマチの死因としても知られ、頚椎可動域運動を行わないほうが良い。特に、頸部の屈曲は禁忌である。

”関節リウマチとは?”

関節リウマチは、関節滑膜を炎症の主座とする慢性の炎症性疾患である。病因には、遺伝、免疫異常、未知の環境要因などが複雑に関与していることが推測されているが、詳細は不明である。関節炎が進行すると、軟骨・骨の破壊を介して関節機能の低下、日常労作の障害ひいては生活の質の低下が起こる。関節破壊(骨びらん) は発症6ヶ月以内に出現することが多く、しかも最初の1年間の進行が最も顕著である。関節リウマチの有病率は0.5~1.0%とされる。男女比は3:7前後、好発年齢は40~60歳である。
【症状】
①全身症状:活動期は、発熱、体重減少、貧血、リンパ節腫脹、朝のこわばりなどの全身症状が出現する。
②関節症状:関節炎は多発性、対称性、移動性であり、手に好発する(小関節)。
③その他:リウマトイド結節は肘、膝の前面などに出現する無痛性腫瘤である。内臓病変は、間質性肺炎、肺線維症があり、リウマトイド肺とも呼ばれる。
【治療】症例に応じて薬物療法、理学療法、手術療法などを適宜、組み合わせる。

(※参考:「関節リウマチ」厚生労働省HPより)

 

 

 

 

 

問題82 パーキンソン病において、立ち直り反射の障害やバランスの不安定性がある重症度でのリハビリテーション治療で最も適切なのはどれか。

1.呼吸訓練
2.線またぎ訓練
3.体位変換
4.自助具の導入 

解答

解説

パーキンソン病とは?

パーキンソン病とは、黒質のドパミン神経細胞の変性を主体とする進行性変成疾患である。4大症状として①安静時振戦、②筋強剛(筋固縮)、③無動・寡動、④姿勢反射障害を特徴とする。また、自律神経障害による便秘や起立性低血圧、排尿障害、レム睡眠行動障害などが起こる。レム睡眠行動障害とは、レム睡眠の時期に体が動き出してしまう睡眠障害の1つである。 睡眠時随伴症に分類される。

矛盾性運動(逆説的運動)とは、本来難易度が高いはずであるが、スムーズに足が出るといった現象である。すくみ足の症状があっても、床の上の横棒をまたぐことができること、リズムをとったり、視覚的な目標物を踏み越えさせたりすると、本来難易度が高いはずであるが、スムーズに足が出るといった現象である。ちなみに、階段昇降もこれに含まれ、平地歩行に比べて障害されにくい。階段昇降は、歩行の改善、下肢筋力強化の効果も期待される。

1.× 呼吸訓練は必要ない。
なぜなら、パーキンソン病の進行において呼吸障害が起こることは少ないため。

2.〇 正しい。線またぎ訓練は、パーキンソン病において、立ち直り反射の障害やバランスの不安定性がある重症度でのリハビリテーション治療である。
パーキンソン病は、視覚的リハビリが有効である。

3.× 体位変換の優先度は低い
なぜなら、本症例はステージⅢ程度で、体位変換を要する身体状況とはいえないため。ちなみに、体位変換とは、自力で体の向きを変えられない方の体の位置や向きを変える介助のことである。ただ、パーキンソン病は前傾姿勢や固縮により、寝返りがしにくくなることも多い。したがって、寝返り練習など自力で行うことも多い。

4.× 自助具の導入の優先度は低い
なぜなら、本症例は、立ち直り反射の障害やバランスの不安定性があるとはいうものの、日常生活のどんな具体的な動作で自助具が必要なのか判断できないため。過介助になりかねず、リハビリテーションとしては不適切である。

Hoehn&Yahr の重症度分類ステージ

ステージⅠ:片側のみの症状がみられる。軽症で機能障害はない。
ステージⅡ:両側の症状がみられるが、バランス障害はない。また日常生活・通院にほとんど介助を要さない。
ステージⅢ:歩行障害、姿勢保持反射障害が出現し、ADLの一部に介助が必要になる。
ステージⅣ:日常生活・通院に介助を必要とする。立位・歩行はどうにか可能。
ステージⅤ:寝たきりあるいは車いすで、全面的に介助を要する。歩行・起立は不能。

 

 

 

 

 

次の文で示す症例について、問題83、問題84の問いに答えよ。
 「68歳の女性。右利き。右片麻痺を生じ病院に救急搬送された。MRI検査にて左中大脳動脈領域の脳梗塞と診断され、保存的治療を受けた。」

問題83 本患者の症状で最もみられるのはどれか。

1.失調症
2.失語症
3.左半側空間無視
4.注意障害

解答

解説

中大脳動脈領域の障害

中大脳動脈の領域は、①側頭葉、②前頭葉、③頭頂葉の一部を灌流している。右頭頂葉の障害は、①着衣失行、②半側空間無視、③身体失認、④病態失認などがみられる。

1.× 失調症は、主に小脳の障害でみられる。
小脳の疾患では小脳失調をきたし、これは、複数の筋肉をバランスよく協調させて動かすことができなくなる。測定障害・運動分解ともいう。

2.〇 正しい。失語症は、本患者の症状である。
失語は、優位半球の前頭葉(ブローカ野)や側頭葉(ウェルニッケ野)の障害で起こる。失語とは、読む、書く、話す、聞くなどの言語機能が失われた状態である。ウェルニッケ野の障害により、感覚性失語が起こる。話し方は滑らかであるが、言い間違いが多かったり、言葉が支離滅裂になったりして、自分の言いたいことが思うように伝えられなくなってしまうという特徴がある。

3.× 左半側空間無視は、頭頂葉の障害でみられる。
半側空間無視とは、障害側の対側への注意力が低下し、その空間が存在しないかのように振る舞う状態のことである。半盲とは性質が異なり、左半分が見えないわけではなく、左半分への注意力が低下している状態である。

4.× 注意障害は、前頭葉の障害でみられる。
中大脳動脈の領域は、①側頭葉、②前頭葉、③頭頂葉の一部を灌流しているため、注意障害も十分起こりえるが、失語症の方が3つのうち2つ障害されるため、より重度に起こりやすいと言える。ちなみに、注意障害とは、必要に応じて特定の刺激に意識を向けることや、集中し続けることなどができなくなる障害である。

 

 

 

 

 

次の文で示す症例について、問題83、問題84の問いに答えよ。
 「68歳の女性。右利き。右片麻痺を生じ病院に救急搬送された。MRI検査にて左中大脳動脈領域の脳梗塞と診断され、保存的治療を受けた。」

問題84 重度の片麻痺が続いた場合に行うADL訓練として最も適切なのはどれか。

1.箸を使った食事動作
2.両上肢での更衣
3.両手での洗顔
4.利き手交換

解答

解説
1.× あえて、箸を使った食事動作を行い続ける必要はない
重度の片麻痺が続いた場合、箸以外に自助具を用いたり、利き手交換が必要となる。食事は毎日行う毎日の楽しみや、ときに気分転換にもつながる。

2~3.× あえて、両上肢での更衣/両手での洗顔を行い続ける必要はない
麻痺側の日常生活動作の参加は、麻痺の回復の重要な要素となる。ただし、ある一定の期間(慢性期)において、特に重度の片麻痺が続いた場合は、回復も頭打ちになりやすい(プラトー)。

4.〇 正しい。利き手交換は、重度の片麻痺が続いた場合に行うADL訓練である。
なぜなら、本症例は右利きで、重度の右麻痺で廃用手であれば、利き手交換を念頭に置く必要がある。

 

 

 

 

 

次の文で示す症例について、問題85、問題86の問いに答えよ。
 「56歳の男性。数日前から続く右肩甲部や右上腕外側の痛みと、右前腕橈側から右手橈側のしびれを主訴に来院した。」

問題85 最も陽性になりやすいのはどれか。

1.ペインフルアークサイン
2.スパーリングテスト
3.トムゼンテスト
4.ファレンテスト

解答

解説

本症例のポイント

・56歳の男性。
・主訴:右肩甲部や右上腕外側の痛みと、右前腕橈側から右手橈側のしびれ。
神経に沿った痛みとしびれが出現しているため椎間板ヘルニアや頚椎症による椎間孔狭窄などが考えられる。

1.× ペインフルアークサイン
Painful arc sign(ペインフルアークサイン)は、患者さんの力により外転方向に挙上してもらう。棘上筋が損傷していれば60°〜120°の間で疼痛を感じ、それ以外の角度では疼痛を感じない。

2.〇 正しい。スパーリングテストは、本症例で最も陽性になりやすい。
Spurlingテスト(スパーリングテスト)は、頚椎の椎間孔圧迫試験である。方法は、頭部を患側に傾斜したまま下方に圧迫を加える。患側上肢に疼痛やしびれを認めれば陽性である。

3.× トムゼンテスト
Thomsenテスト(トムセンテスト)の陽性は、テニス肘(上腕骨外側上顆炎)を疑う。方法は、握りこぶしにして手関節を背屈させ、検者が掌屈させようとする。

4.× ファレンテスト
Phalenテスト(ファレンテスト)は、手根管症候群の診断に用いられ、正中神経障害によって陽性となる。

 

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