第31回(R5年)はり師きゅう師国家試験 解説【午前86~90】

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次の文で示す症例について、問題85、問題86の問いに答えよ。
 「56歳の男性。数日前から続く右肩甲部や右上腕外側の痛みと、右前腕橈側から右手橈側のしびれを主訴に来院した。」

問題86 装具療法を行う場合に最も適切なのはどれか。

1.頸椎装具
2.肩関節外転装具
3.テニス肘バンド
4.手関節背屈装具

解答

解説

本症例のポイント

・56歳の男性。
・主訴:右肩甲部や右上腕外側の痛みと、右前腕橈側から右手橈側のしびれ。
→神経に沿った痛みとしびれが出現しているため椎間板ヘルニアや頚椎症による椎間孔狭窄などが考えられる。

1.〇 正しい。頸椎装具は、本症例における装具療法を行う。
頸椎装具とは、頸椎を固定(動きを制限)し、頚椎術後、頚髄損傷などで用いられる。

2.× 肩関節外転装具
肩関節外転装具とは、肩関節内転を制限し、腱板断裂術後・腕神経叢麻痺・肩関節部骨折などである。

3.× テニス肘バンド
テニス肘バンドとは、上腕骨外側上顆炎(テニス肘)に対し、ストレスを和らげる効果がある。テニス肘とは、上腕骨外側上顆炎ともいい、手首を伸ばす筋肉に炎症が起こる病気である。はっきりした原因は不明であるが、主に手首を伸ばす筋肉に負担がかかることが関係していると考えられている。主な症状は、肘の外側から前腕の辺りに痛みである。

4.× 手関節背屈装具
手関節背屈装具とは、コックアップ・スプリント(手関節固定装具)ともいい、手関節を機能的な位置に保持できないときに適応され、特に橈骨神経麻痺・中枢弛緩性麻痺の拘縮予防に用いられる。機能的把持動作を可能とする。

 

 

 

 

 

次の文で示す症例について、問題87、問題88の問いに答えよ。
 「52歳の男性。3週間前から倦怠感と微熱がある。舌炎は認めないが、鼻血や歯茎の出血、皮下出血斑がみられる。」

問題87 最も考えられる疾患はどれか。

1.急性白血病
2.悪性貧血
3.溶血性貧血
4.血友病

解答

解説

本症例のポイント

・52歳の男性。
・3週間前から倦怠感と微熱がある。
・舌炎は認めない。
・鼻血や歯茎の出血、皮下出血斑がみられる。
→それぞれの病気の特徴を抑えておこう。

1.〇 正しい。急性白血病が、最も考えられる。
急性白血病とは、骨髄の中にある幼若な血液細胞が癌化して白血病細胞となり骨髄の中で急速に分裂して数を増やす疾患である。白血病細胞が骨髄の中で増えてくる結果、骨髄の本来の機能である造血能が著しく障害される。初期症状として、発熱・貧血・出血傾向・骨痛・倦怠感がみられる。

2.× 悪性貧血の場合、舌炎が認められる。
悪性貧血とは、ビタミンB12または葉酸の欠乏によって生じる巨赤芽球性貧血の中である。最も発生頻度が高いビタミンB12欠乏性の貧血が悪性貧血である。ビタミンB12は胃液中の内因子との結合によって小腸下部で吸収され、葉酸とともに骨髄内での赤血球生成に利用される。悪性貧血は、高度の萎縮性胃炎による内因子分泌の欠乏が一次的原因である。その結果、回腸末端部からのビタミンB12の吸収障害をおこす。欠乏症状として①動悸、②めまい、③耳鳴り、④全身倦怠感、⑤舌炎、⑥悪心、⑦嘔吐、⑧下痢、⑨神経症状として四肢の知覚異常、⑩歩行困難、⑪視力障害などがおこる。時には興奮,軽い意識混濁などの精神障害をきたすこともある。

3.× 溶血性貧血の場合、本症例のような出血傾向はみられない。
溶血性貧血とは、血管の中を流れる赤血球が破壊される(溶血)ことにより起こる貧血の一種である。これにより、血液中の赤血球の数が減少し、貧血状態になる。溶血性貧血は、血液中のビリルビン(赤血球の分解産物)の量が増加することで黄疸となる。

4.× 血友病は、遺伝性疾患である。
血友病とは、血液を固めるのに必要な「血液凝固因子(第Ⅷ因子または第Ⅸ因子)が不足・活性低下する病気のことである。伴性劣性遺伝(男児に多い)で、生まれつき発症することがほとんどであるため、幼少期から①些細なことで出血する、②出血が止まりにくいといった症状が繰り返される。治療として、凝固因子製剤の投与、関節拘縮・筋力低下に対するリハビリテーションが行われる。

”血友病とは?”

血友病とは、血液を固めるのに必要な「血液凝固因子(第Ⅷ因子または第Ⅸ因子)が不足・活性低下する病気のことである。

【概念】
伴性劣性遺伝(男児に多い):生まれつき発症することがほとんどであるため、幼少期から①些細なことで出血する、②出血が止まりにくいといった症状が繰り返される。
血友病A:第Ⅷ凝固因子の活性低下
血友病B:第Ⅸ凝固因子の活性低下

【症状】関節内出血を繰り返し、疼痛、安静により関節拘縮を起こす。(筋肉内出血・血尿も引き起こす)肘・膝・足関節に多い。鼻出血、消化管出血、皮下出血等も起こす。

【治療】凝固因子製剤の投与、関節拘縮・筋力低下に対するリハビリテーション

(※参考:「血友病」Medical Note様HP)

 

 

 

 

 

次の文で示す症例について、問題87、問題88の問いに答えよ。
 「52歳の男性。3週間前から倦怠感と微熱がある。舌炎は認めないが、鼻血や歯茎の出血、皮下出血斑がみられる。」

問題88 診断に必要な血液検査項目で最も適切なのはどれか。

1.葉酸
2.血液像
3.第Ⅷ凝固因子
4.ビリルビン

解答

解説

本症例のポイント

・52歳の男性。
・3週間前から倦怠感と微熱がある。
・舌炎は認めない。
・鼻血や歯茎の出血、皮下出血斑がみられる。
→本症例は急性白血病が考えられる。急性白血病とは、骨髄の中にある幼若な血液細胞が癌化して白血病細胞となり骨髄の中で急速に分裂して数を増やす疾患である。白血病細胞が骨髄の中で増えてくる結果、骨髄の本来の機能である造血能が著しく障害される。初期症状として、発熱・貧血・出血傾向・骨痛・倦怠感がみられる。

1.× 葉酸は、悪性貧血の診断項目である。
悪性貧血とは、ビタミンB12または葉酸の欠乏によって生じる巨赤芽球性貧血の中である。最も発生頻度が高いビタミンB12欠乏性の貧血が悪性貧血である。ビタミンB12は胃液中の内因子との結合によって小腸下部で吸収され、葉酸とともに骨髄内での赤血球生成に利用される。悪性貧血は、高度の萎縮性胃炎による内因子分泌の欠乏が一次的原因である。その結果、回腸末端部からのビタミンB12の吸収障害をおこす。欠乏症状として①動悸、②めまい、③耳鳴り、④全身倦怠感、⑤舌炎、⑥悪心、⑦嘔吐、⑧下痢、⑨神経症状として四肢の知覚異常、⑩歩行困難、⑪視力障害などがおこる。時には興奮,軽い意識混濁などの精神障害をきたすこともある。

2.〇 正しい。血液像が、急性白血病の診断に必要な血液検査項目である。
血液像検査とは、血液中の細胞の形や数を観察する検査である。血液中の細胞には、白血球、赤血球、血小板などがあり、これらの細胞に量的・質的異常が生じると、貧血、免疫能低下、出血傾向などの症状が認められる。

3.× 第Ⅷ凝固因子は、血友病の診断項目である。
血友病とは、血液を固めるのに必要な「血液凝固因子(第Ⅷ因子または第Ⅸ因子)が不足・活性低下する病気のことである。伴性劣性遺伝(男児に多い)で、生まれつき発症することがほとんどであるため、幼少期から①些細なことで出血する、②出血が止まりにくいといった症状が繰り返される。治療として、凝固因子製剤の投与、関節拘縮・筋力低下に対するリハビリテーションが行われる。

4.× ビリルビンは、悪性貧血の診断項目である。
溶血性貧血とは、血管の中を流れる赤血球が破壊される(溶血)ことにより起こる貧血の一種である。これにより、血液中の赤血球の数が減少し、貧血状態になる。溶血性貧血は、血液中のビリルビン(赤血球の分解産物)の量が増加することで黄疸となる。

 

 

 

 

 

次の文で示す症例について、問題89、問題90の問いに答えよ。
 「72歳の女性。頻尿と尿意切迫感を主訴に来院した。尿一般検査と尿細菌検査に異常はなかった。腹部超音波検査で残尿はみられなかった。」

問題89 考えられる疾患はどれか。

1.急性膀胱炎
2.腎盂腎炎
3.過活動膀胱
4.腎結石

解答

解説

本症例のポイント

・72歳の女性。
・主訴:頻尿と尿意切迫感。
・尿一般検査と尿細菌検査:異常なし
・腹部超音波検査:残尿なし
→それぞれの病気の特徴を抑えておこう。ちなみに、尿一般検査とは、尿のpH、比重、尿中成分の有無を試験紙で判定する検査である。尿中成分には、タンパク質、糖、ビリルビン、ケトン、ウロビリノゲン、潜血、白血球などがあり、腎疾患、糖尿病、膀胱炎などの検査に使用される。

1.× 急性膀胱炎の場合、尿一般検査によって炎症所見がみられる。
急性膀胱炎とは、機能的・形態的に尿路に異常のない人の膀胱炎である。 原因として、女性では尿意を我慢したり、冷えや月経が原因で起こることがある。また、妊娠や便秘、性交渉などが誘因となって起こる。症状として、頻尿や残尿感などである。

2.× 腎盂腎炎の場合、尿細菌検査によって細菌所見がみられる。
腎盂腎炎とは、尿を出すところから細菌(大腸菌など)が入り込み、膀胱から腎臓まで感染が広がることである。膀胱炎と同様に排尿時痛、頻尿、残尿感などの症状に加え、発熱、全身倦怠感などの全身症状、腰や背中の痛み、悪心、嘔吐などの消化器症状などがあげられる。

3.〇 正しい。過活動膀胱が、考えられる疾患である。
過活動膀胱とは、膀胱の蓄尿期において尿意切迫感があり、頻尿や尿失禁をきたす疾患である(切迫性尿失禁)。明らかな神経学的異常に起因する神経因性過活動膀胱と、原因を特定できない非神経因性過活動膀胱に分けられる。原因として、①加齢、②骨盤底筋の低下、③生活習慣病、④肥満などと関連するといわれている。有病率は高齢になるほど高くなる。過活動膀胱では、膀胱訓練や骨盤底筋訓練など機能訓練を行い、薬物療法で治療を行う。

4.× 腎結石の場合、腹部超音波検査において残尿が認められることが多い。
腎結石とは、尿管から膀胱に向かって徐々に下降し、結石が膀胱に近づくと、膀胱を刺激し、頻尿や残尿感などの症状が現れる。

尿路結石とは?

尿路結石症とは、尿路に、結石(尿に含まれるカルシウム・シュウ酸・リン酸・尿酸などが結晶化したもの)ができる病気である。結石のできる位置によって、腎結石(腎臓内にある結石) 、尿管結石、膀胱結石などと呼ばれる。結石ができる原因は明確に分かっていないが、リスク要因としては体質遺伝の他、生活習慣が大きく関わっているとされている。典型的な最初の症状は脇腹から下腹部にかけての突然の激痛である。 「動くと痛い」というのは結石の症状ではなく筋肉や骨からの症状のことが多いが、尿管結石の場合はじっとしていてももだえるほどの症状が出ることがある。 また、結石によって閉塞した部位の中枢側の尿路が拡張し、腰背部の仙痛発作が起こる。治療としては、①体外衝撃波腎・尿管結石破砕術、②経尿道的尿路結石除去術、③経皮的尿路結石除去術(もしくは②と③を同時に併用する手術)などがあげられる。

 

 

 

 

 

次の文で示す症例について、問題89、問題90の問いに答えよ。
 「72歳の女性。頻尿と尿意切迫感を主訴に来院した。尿一般検査と尿細菌検査に異常はなかった。腹部超音波検査で残尿はみられなかった。」

問題90 生活指導について適切なのはどれか。

1.坐位時間を長くする。
2.骨盤底筋訓練を行う。
3.水分摂取を控える。
4.尿意を感じたらすぐに排尿する。

解答

解説

本症例のポイント

・72歳の女性。
・主訴:頻尿と尿意切迫感。
・尿一般検査と尿細菌検査:異常なし。
・腹部超音波検査:残尿なし。
→本症例は、症状と検査から、過活動膀胱が考えられる。過活動膀胱とは、膀胱の蓄尿期において尿意切迫感があり、頻尿や尿失禁をきたす疾患である(切迫性尿失禁)。明らかな神経学的異常に起因する神経因性過活動膀胱と、原因を特定できない非神経因性過活動膀胱に分けられる。原因として、①加齢、②骨盤底筋の低下、③生活習慣病、④肥満などと関連するといわれている。有病率は高齢になるほど高くなる。過活動膀胱では、膀胱訓練骨盤底筋訓練など機能訓練を行い、薬物療法で治療を行う。

1.× あえて、坐位時間を長くする必要はない
むしろ、座位時間を長くするのではなく、運動を多くする方が良い。なぜなら、原因として、①加齢、②骨盤底筋の低下、③生活習慣病、④肥満などと関連するといわれているため。

2.〇 正しい。骨盤底筋訓練を行う
過活動膀胱では、膀胱訓練や骨盤底筋訓練など機能訓練を行い、薬物療法で治療を行う。骨盤底筋は子宮、膀胱、直腸を含む骨盤臓器を支える筋肉で、骨盤底筋を強化することで尿漏れ対策となる。仰臥位が基本的な姿勢であるが、伏臥位や座位など日常生活の中でどんな姿勢で行ってもよい。座位や膝立て背臥位などで、上体の力を抜いてお尻の穴を引き上げて「きゅっ」とすぼめ、5秒キープする動作を10~20回ほど繰り返す方法と、すぼめたりを繰り返す方法の2種類ある。

3.× 水分摂取を「控える」のではなく適量が望ましい
なぜなら、水分の摂り過ぎは、夜間頻尿を引き起こすため。一方、水分不足は、脱水症状を引き起こす。過活動膀胱の水分摂取量は、体重1kg当たり20~25mL以内となるように調節する。飲水だけでなく、食物からの水分量も確認する必要がある。

4.× 尿意を感じたらすぐに排尿する必要はない
むしろ、尿意を感じてもある程度、蓄尿を意識する必要がある。膀胱訓練とは、排尿の間隔を徐々に延長し、膀胱にためることができる尿量を徐々に増やしていくものである。最初は30秒程度からスタートし、徐々に我慢する時間を延ばしていく。

 

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