第30回(R4年)はり師きゅう師国家試験 解説【午前31~35】

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問題31 筋収縮の過程においてエネルギーを必要とするのはどれか。

1.筋細胞による活動電位発生
2.筋細胞内でのカルシウムイオン放出
3.ミオシン頭部とアクチンの結合
4.ミオシン頭部の運動

解答

解説

筋収縮の機序

【筋収縮の機序】
①筋小胞体から放出されたCa2+がトロポニンと結合する。
②ATPエネルギーを利用したミオシンの頭部首振り運動が起こる。
③アクチンフィラメントを引き寄せながらミオシンフィラメント上を滑走して筋収縮が起こる。

【運動による筋疲労によって起こる事象】
①代謝産物の蓄積(乳酸の増加やpHの低下)
②エネルギー供給率の低下(ATP低下、ADP増加、グリコーゲン低下)
③興奮収縮連関不全(筋小胞体へのCa2+取り込み低下)

1~2.× 筋細胞による活動電位発生/筋細胞内でのカルシウムイオン放出
①筋小胞体から放出されたCa2+がトロポニンと結合する。

3.× ミオシン頭部とアクチンの結合
③アクチンフィラメントを引き寄せながらミオシンフィラメント上を滑走して筋収縮が起こる。

4.〇 正しい。ミオシン頭部の運動は、筋収縮の過程においてエネルギーを必要とする。
ATPエネルギーを利用したミオシンの頭部首振り運動が起こる。

 

 

 

 

 

問題32 近くの物体を見るときに起こるのはどれか。

1.毛様体筋の弛緩
2.瞳孔散大
3.水晶体の厚みの増大
4.共同偏視

解答

解説

(※図:「看護師イラスト集」看護roo!様HPより)

1.× 毛様体筋の弛緩は、遠くを見るときに起こる。
毛様体筋は、眼の遠近調節を行う筋である。毛様体筋は近くを見るときに収縮する。ちなみに近くで見るとき、毛様体小帯が弛緩し、水晶体が厚くなる。

2.× 瞳孔散大は、遠くを見るときに起こる。
瞳孔散大筋は、交感神経の支配を受けており、ノルアドレナリンの作用で収縮する。逆の働きをする瞳孔括約筋が副交感神経支配筋であり、アセチルコリンで瞳孔は収縮(縮瞳)する。

3.〇 正しい。水晶体の厚みの増大は、近くの物体を見るときに起こる。
水晶体とは、ほぼ透明で眼の中でレンズの役割を担う器官である。水晶体が厚くなることで、その屈折力が増すため、近くの対象にピントを合わせることができる。明るい所を見るときや近くのものを見るときでは、縮瞳が生じ、瞳孔径は小さくなる。

4.× 共同偏視
共同偏視とは、両目が同じ方向または対称性を持ち、偏って位置する状態のことである。主に、脳梗塞や脳出血(被殻出血、視床出血、小脳出血など)に伴って生じる。共同偏視は、被殻出血(病側への共同偏視)や小脳出血(健側への共同偏視)で生じる。共同偏視は、PPRF(水平方向の眼球運動の中枢)の機能障害で起こる。

 

 

 

 

 

問題33 遺伝性疾患はどれか。

1.ダウン症候群
2.ターナー症候群
3.マルファン症候群
4.クラインフェルター症候群

解答

解説
1.× ダウン症候群
ダウン症候群(Down症候群)とは、染色体異常が原因で知的障害が起こる病気である。常染色体異常疾患の中で最多である。Down症候群になりうる異常核型は、3種に大別される。①標準トリソミー型:21トリソミー(93%)、②転座型(5%)、③モザイク型(2%)である。発症率は、平均1/1000人である。しかし、35歳女性で1/300人、40歳女性1/100人、45歳女性1/30人と、出産年齢が上がるにつれて確率が高くなる。症状として、①特異な顔貌、②多発奇形、③筋緊張の低下、④成長障害、⑤発達遅滞を特徴とする。また、約半数は、先天性心疾患や消化管疾患などを合併する。特異顔貌として、眼瞼裂斜上・鼻根部平坦・内眼角贅皮・舌の突出などがみられる。

2.× ターナー症候群
ターナー症候群とは、典型的には身長が低く、首の後ろに皮膚のたるみ(翼状頸)があり、学習障害がみられ、思春期が始まらないのが特徴である。2本のX染色体のうち1本の部分的または完全な欠失によって引き起こされる性染色体異常である。女性特有の染色体異常である。

3.〇 正しい。マルファン症候群は、遺伝性疾患である。
Marfan症候群とは、全身の結合組織の働きが体質的に変化しているために、骨格の症状(高身長・細く長い指・背骨が曲がる・胸の変形など)、眼の症状(水晶体(レンズ)がずれる・強い近視など)、心臓血管の症状(動脈がこぶのようにふくらみ、裂けるなど)などを起こす病気である。つまり、全身の結合組織がもろくなるため、大動脈癌や大動脈解離を生じやすい。

4.× クラインフェルター症候群
Kleinfelter症候群は、男性の性染色体にX染色体が一つ以上多いことで生じる一連の症候群で性染色体異常ある。高身長、やせ型、長い手足になることが多い。

 

 

 

 

 

問題34 DNAウイルスはどれか。

1.ノロウイルス
2.麻疹ウイルス
3.コロナウイルス
4.水痘・帯状疱疹ウイルス

解答

解説

ウイルスとは?

ウイルスは、他生物の細胞を利用して自己を複製させる、極微小な感染性の構造体で、タンパク質の殻とその内部に入っている核酸からなる。ウイルスは、①DNAウイルスと②RNAウイルスに分けられる。①DNAウイルスは、細胞のDNA合成に関わる酵素を利用しゲノムを複製する。①RNAウイルスは、ウイルスRNAを鋳型として細胞質で作られ、且つ、機能する。従って、RNAウイルスは原則として細胞質で増殖する。ちなみに、DNAウイルスにはアデノやヘルペスなどが分類される。

1~3.× ノロウイルス/麻疹ウイルス/コロナウイルスは、RNAウイルスである。
RNAウイルスとは、遺伝情報をRNA(リボ核酸)という遺伝物質にのせているウイルスのことである。コロナウイルス、ロタウイルス、ノロウイルス、RSウイルス、インフルエンザウイルス、麻疹ましんウイルス、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、HCVなどが含まれる。また、RNAウイルスはDNAウイルスに比べて突然変異を起こしやすいのも特徴の1つである。

4.〇 正しい。水痘・帯状疱疹ウイルスは、DNAウイルスである。
DNAウイルスとは、遺伝情報(ウイルスの設計図)をDNA(デオキシリボ核酸)という遺伝物質にのせているウイルスのことである。ヘルペスウイルス(単純ヘルペスウイルス、水痘・帯状疱疹ウイルス、EBウイルスなど)、アデノウイルス、HBV、HPV、天然痘ウイルスなどが含まれる。

 

 

 

 

 

問題35 左冠動脈閉塞による急性心筋梗塞で死亡した。肺にみられる変化として適切でないのはどれか。

1.出血
2.塞栓
3.水腫
4.うっ血

解答

解説

急性心筋梗塞とは?

急性心筋梗塞とは、冠状動脈内に血栓が形成され、動脈を閉塞し心筋が壊死することである。リスクファクターとして、①高血圧、②喫煙、③糖尿病、④脂質代謝異常などである。合併症には、不整脈や心不全、脳梗塞がある。そのほかに重篤なものとして心破裂や心室中隔穿孔などがある。

1.〇 出血/水腫/うっ血は、左冠動脈閉塞による急性心筋梗塞の肺の変化でみられる。
これらは、急性心原性肺水腫の特徴である。肺水腫の原因には大きく分けて二種類がある。一つ目は、心臓に原因がある場合で、何らかの原因で心臓の左心室から全身へ血液を送り出す力が低下し血液が肺に過剰に貯留する状態である。これを心原性肺水腫と呼ぶ。もう一つは、心臓以外の原因で生じるため非心原性肺水腫と呼ぶ。一つ目の心原性肺水腫では、夜間の呼吸困難やピンク色の泡を多く含んだ痰が特徴である。また、努力性呼吸や呼吸回数の増加、頻脈が見受けられる。

2.× 塞栓は、左冠動脈閉塞による急性心筋梗塞の肺の変化でみられない。
塞栓とは、血液中に浮遊する血栓、脂肪、細菌、空気などの塊が血管を塞いでしまうことである。

 

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