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問題136 次の文で示す症例の罹患筋に対する刺鍼部位として最も適切なのはどれか。
「20歳の男性。右利き投手。オーバースロー投球時のコッキング期に右肩峰の前下方に痛みが出る。インピンジメントテスト陽性。」
1.秉風
2.肩貞
3.天宗
4.肩外兪
解答1
解説
・20歳の男性(右利き投手)。
・オーバースロー投球時のコッキング期に右肩峰の前下方に痛みが出る。
・インピンジメントテスト:陽性。
→インピンジメントの検査には、①Neerテスト、②Hawkinsテストがある。①Neerテスト(ニアテスト)は、患者の後側方に立ち、一方の手で肩甲骨を保持し、もう一方の手で上肢(回内位)を最大挙上させ、大結節を肩峰前縁に圧迫させる。挙上90°~120°で疼痛が誘発されれば陽性である。②Hawkinsテスト(ホーキンズテスト)は、患者の腕を90度まで上げ、肘を90度に屈曲させ、強制的に肩関節を内旋し、痛みの有無を調べる。
→肩峰下インピンジメントとは、上腕骨大結節と棘上筋腱停止部が、烏口肩峰アーチを通過する際に生じる、棘上筋腱の機械的圧迫のことである。この機械的圧迫は棘上筋腱に集中して発生する。つまり、肩の近くの関節の細いところで、骨同士の隙間が、こすれがあっている状態である。 原因として、年齢や疲労、姿勢の影響で動きの連携がとれずに衝突するとされている。炎症や出血を起こす。
1.〇 正しい。秉風が、この症例の罹患筋に対する刺鍼部位である。
秉風(※読み:へいふう)は、肩甲部、棘上窩、肩甲棘中点の上方に位置する。棘上筋と僧帽筋の治療穴である。
2.× 肩貞(※読み:けんてい)
肩貞は、肩周囲部、肩関節の後下方、腋髙横紋後端の上方1寸に位置する。小円筋、大円筋、上腕三頭筋の治療穴である。
3.× 天宗(※読み:てんそう)
天宗は、肩甲部、肩甲棘の中点と肩甲骨下角を結んだ線上、肩甲棘から1/3にある陥凹部に位置する。棘下筋の治療穴である。
4.× 肩外兪(※読み:けんがいゆ)
肩外兪は、上背部、第1胸椎棘突起下縁と同じ高さ、後正中線の外方3寸に位置する。僧帽筋、肩甲挙筋の治療穴である。
(図引用:『肩 その機能と臨床 第4版』より ※図中の丸は関係ない)
問題137 次の文で示す症例の原因となる筋への治療穴として最も適切なのはどれか。
「13歳の男子。サッカーをしており、最近になり膝前下部の運動時痛と腫脹が認められた。」
1.髀関
2.箕門
3.豊隆
4.三陰交
解答1
解説
・13歳の男子(サッカー)。
・最近:膝前下部の運動時痛と腫脹が認められた。
→本症例は、オスグッド・シユラッター病が疑われる。オスグッド・シユラッター病は、脛骨粗面(脛骨結節)の骨端症である。小児の運動後に生じる膝の痛み、膝脛骨結節部の圧痛、さらに脛骨粗面に異常骨陰影を認める。男児に多く発症する。運動などの大きな外力が繰り返しかかることにより、大腿四頭筋の膝蓋腱の脛骨付着部が機械的刺激を受けて、脛骨粗面部の運動時痛と膨隆が生じる。
1.〇 正しい。髀関は、この症例の原因となる筋への治療穴である。
髀関(※読み:ひかん)は、大腿前面、3筋(大腿直筋と縫工筋と大腿筋膜張筋)の近位部の間の陥凹部に位置する。大腿筋膜張筋や大腿直筋、縫工筋の治療穴である。
2.× 箕門(※読み:きもん)
箕門は、大腿内側、膝蓋骨庭内端と衝門を結ぶ線上、衝門から1/3、縫工筋と長内転筋の間、大腿動脈拍動部に位置する。縫工筋の治療穴である。
3.× 豊隆(※読み:ほうりゅう)
豊隆は、下腿前外側、前脛骨筋の外縁、外果尖の上方8寸に位置する。前脛骨筋、長趾伸筋の治療穴である。
4.× 三陰交(※読み:さんいんこう)
三陰交は、下腿内側(脛側)、脛骨内縁の後側、内果尖の上方3寸に位置する。後脛骨筋、長趾伸筋の治療穴である。
問題138 スポーツ障害と罹患筋に対する局所治療穴の組合せで適切なのはどれか。
1.シンスプリント:三陰交
2.ジャンパー膝:足三里
3.フォアハンドテニス肘:曲池
4.野球肩:雲門
解答1
解説
1.〇 正しい。シンスプリント:三陰交
シンスプリント(脛骨過労性骨膜炎)とは、脛骨に付着している骨膜(筋肉)が炎症している状態である。運動中や運動後にすねの内側に痛みが出る。超音波にて治療を行う際は、下腿中央から遠位1/3部の脛骨後内方、前脛骨筋部、骨間膜などに照射する。ちなみに、三陰交(※読み:さんいんこう)は、下腿内側(脛側)、脛骨内縁の後側、内果尖の上方3寸に位置する。後脛骨筋、長趾伸筋の治療穴である。
2.× ジャンパー膝:足三里
大腿四頭筋腱炎とは、(ジャンパー膝:膝蓋靭帯炎)ともいい、反復したジャンプ動作によって起こる。バレーボール・バスケットボールの選手などに多く発症し、膝蓋骨遠位部に圧痛を認める。ちなみに、足三里(※読み:あしさんり)は、下腿前面、犢鼻と解渓を結ぶ線上、犢鼻の下方3寸に位置する。前脛骨筋の治療穴である。
3.× フォアハンドテニス肘:曲池
フォアハンドテニス肘とは、上腕骨内側上顆炎ともいい、前腕屈筋群の腱付着部症で『ゴルフ肘』『野球肘』とも呼ばれるが、頻度は外側型に比べ多くない。
前腕屈筋群、伸筋群は手首や指の動きに非常に関係があり、手首や指の使い過ぎがテニス肘の原因となる。ちなみに、曲池(※読み:きょくち)は、肘外側、尺沢と上腕骨外側上顆を結ぶ線上の中点に位置する。長・短橈側手根伸筋の治療穴である。
4.× 野球肩:雲門
野球肩とは、反復した投球動作によって起こる。使いすぎ障害として徐々に発症する場合が多い。滑液包炎、棘上筋腱炎、上腕二頭筋腱炎、肩甲上神経麻痺による棘下筋萎縮、インピンジメント症候群、上腕骨骨端線障害(リトルリーグ肩)など多くが含まれる。ちなみに、雲門(※読み:うんもん)は、前胸部、鎖骨下窩の陥凹部、烏口突起の内方、前正中線の外方6寸に位置する。腋窩動脈が深部を通る。
テニス肘とは、上腕骨外側上顆炎ともいい、手首を伸ばす筋肉に炎症が起こる病気である。はっきりした原因は不明であるが、主に手首を伸ばす筋肉に負担がかかることが関係していると考えられている。主な症状は、肘の外側から前腕の辺りに痛みである。
問題139 次の文で示す患者の病証に対し、八脈交会穴の配穴に基づき、手関節近傍の経穴に刺鍼した。もう一か所の刺鍼部位として最も適切なのはどれか。
「50歳の男性。主訴は上腹部痛。胸やけと悪心もある。」
1.足内側、第1中足骨底内側の遠位陥凹部
2.足内側、内果尖の下方1寸
3.足背、第4・第5中足骨底接合部の遠位
4.足外側、外果尖の直下
解答1
解説
・50歳の男性(主訴:上腹部痛)
・胸やけ、悪心もある。
→陰維脈(陽維脈)は、陰経と陽経を連絡する。陽維脈は全身の表と関係が深く、陰維脈は全身の裏と関係が深い。
八脈交会穴(八総穴)
【衝脈】公孫:内関【陰維脈】
【帯脈】足臨泣:外関【陽維脈】
【督脈】後渓:申脈【陽蹻脈】
【任脈】列欠:照海【陰蹻脈】
1.〇 正しい。足内側、第1中足骨底内側の遠位陥凹部が、刺鍼部位である。
足内側、第1中足骨底内側の遠位陥凹部は、「公孫【衝脈】」である。
衝脈は、十二経脈の気血を調節し(十二経の海)、血を貯える(血海)。胞宮から起こり、月経に関与する。
2.× 足内側、内果尖の下方1寸は、「照海【陰蹻脈】」である。
陰蹻脈は、下肢・体幹の両側の陰陽を調節する。
3.× 足背、第4・第5中足骨底接合部の遠位は、「足臨泣【帯脈】」である。
帯脈は、季肋部から起こり腰部を回る。各経脈を束ねて調節する。
4.× 足外側、外果尖の直下は、「申脈【陽蹻脈】」である。
陽蹻脈は、下肢の内・外側に分布する陰経と陽経を協調させる。
問題140 脾の運化作用を介して湿を除くことにより治療できる痛みはどれか。
1.脹痛
2.重痛
3.刺痛
4.隠痛
解答2
解説
①運化(飲食物を水穀の精微に変化させ、心・肺に運ぶ)
②統血(血が脈中から漏れ出るのを防ぐ(気の固摂作用))
※脾は気血生成の源、生痰の源といわれる。
1.× 脹痛
脹痛は、気滞にみられる痛みの性質である。(気鬱)気滞は、脹痛、胸悶、胸肋部痛、抑鬱感、腹部膨満感などで、増悪と緩解を繰り返し、不安定となりやすい。
2.〇 正しい。重痛は、脾の運化作用を介して湿を除くことにより治療できる痛みである。
重痛は、湿邪にみられる痛みの性質である。陰性の邪気で重濁性、粘滞性、下注性がある。脾を損傷しやすい。気機を滞らせやすい。
3.× 刺痛
刺痛は、瘀血にみられる痛みの性質である。瘀血(おけつ)とは、血液が汚れたり、滞ったり、固まりやすくなった状態のことである。瘀血になると、血の流れが悪くなり、全身に栄養が行き渡らなくなるため、さまざまな症状が現れやすくなる。
4.× 隠痛
隠痛は、虚証にみられる痛みの性質である。気虚(倦怠感、無力感、眩暈、息切れ、懶言、自汗、易感冒など)がみられる。
風邪:陽性の邪気で軽揚性、開泄性、遊走性があり、他の外邪の先導役となる(百病の長)。
寒邪:陰性の邪気で寒冷性、凝滞性、収引性があり、陽気を損傷しやすい。
暑邪(熱邪):陽性の邪気で夏季のみに出現し、炎熱性、昇散性がある。気・津液を損傷しやすく、湿邪を伴う。
湿邪:陰性の邪気で重濁性、粘滞性、下注性がある。脾を損傷しやすい。気機を滞らせやすい。
燥邪:陽性の邪気で乾燥性があり、肺を損傷しやすい。秋に現れることが多い。
火邪(熱邪):陽性の邪気で炎上性があり、気・津液を損傷する。また、生風、動血という特徴も持つ。