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きゅう理論試験問題(問題171~180)
問題171 艾について誤っているのはどれか。
1.ヨモギの葉の裏面には毛茸が多い。
2.毛茸は良質艾に含まれる。
3.柄細胞は揮発性の精油を含む。
4.シネオールは線維様物質である。
解答4
解説
1.〇 ヨモギの葉の裏面には毛茸が多い。
艾は主に、蓬(よもぎ)の葉の裏にある(毛茸、腺毛)から作られる。毛茸(※読み:もうじ、もうじょう)は、トライコームと呼ばれる植物の表面に生えている細かい産毛のことで、葉を害虫から守ったり、水分の蒸発を防ぐ役割がある。
2.〇 毛茸は良質艾に含まれる。
良質艾は毛茸・腺毛が多い。良質艾とは、不純物が少なく、点火しやすく、熱感がやわらかい、香りがよい、煙や灰が少ない艾のことである。
3.〇 柄細胞は揮発性の精油を含む。
ヨモギの柄細胞は、揮発性の精油を含む細胞である。
4.× 線維様物質であるのは、「シネオール」ではなく毛茸、腺毛である。
腺毛には、揮発性精油(主成分はチネオール:シネオール)が含まれ、燃焼時に芳香がある。
良質艾:芳香、手触り良く柔らかい、線維が細かい、夾雑物が少ない、淡黄白色、煙と灰が少ない、熱感が緩和(燃焼温度が低い)、燃焼時間が短い、よく乾燥している、など
粗悪艾:青臭い、手触りが悪く固い、線維が粗い、夾雑物が多い、黒褐色、煙と灰が多い、熱感が強い(燃焼温度が高い)、燃焼時間が長い、湿気を帯びている、など
問題172 母指と示指で艾炷を覆い、ゆっくり八分目で消火する灸法はどれか。
1.透熱灸
2.焦灼灸
3.打膿灸
4.知熱灸
解答4
解説
1.× 透熱灸
有痕灸である透熱灸は、良質艾を米粒大前後で円錐形に捻り、経穴や圧痛点など皮膚上の治療点に直接施灸する。※糸状灸も含まれる。
2.× 焦灼灸
有痕灸である焦灼灸は、イボ、ウオノメ、タコなどに用いる灸法。施灸部の皮膚、組織を破壊する。タール成分(カテコール)の作用がある。
3.× 打膿灸
有痕灸である打膿灸(弘法の灸)は、小指~母指頭大程度の艾炷を直接施灸して火傷を作り、膏薬を貼付して化膿を促す灸法。小児や虚弱者には不適である。
4.〇 正しい。知熱灸は、母指と示指で艾炷を覆い、ゆっくり八分目で消火する灸法である。
無痕灸である知熱灸は、半米粒~米粒大の艾炷に点火し、患者の気持ちの良い所で消火もしくは取り除く方法である。8割燃焼を八分灸ということもある。
問題173 透熱灸施灸部の消毒方法で最も適切なのはどれか。
1.ラビング法を用いる。
2.施灸前後に行う。
3.次亜塩素酸ナトリウムを用いる。
4.施灸部位を往復するように拭く。
解答2
解説
1.× 「ラビング法」ではなくスワブ法を用いる。
ラビング法とは、擦式法ともいい、アルコール擦式製剤を手掌にとり、乾燥するまで擦り込んで消毒する方法である。一方、スワブ法とは、拭き取り法ともいい、物体表面の付着微 生物を拭き取って捕捉する方法である。
2.〇 正しい。施灸前後に行う。
感染を防ぐため、基本的に手洗い同様、一回の手技行う前に消毒する。
3.× 「次亜塩素酸ナトリウム」ではなく消毒用エタノールを用いる。
次亜塩素酸ナトリウムとは、ノロウイルス感染症に罹患した患者の嘔吐物が床に飛び散っているこの処理に使用する消毒薬である。ノロウイルスの消毒には、通常のアルコール製剤や逆性石鹸は有効でないため、塩素系消毒剤(0.1%次亜塩素酸ナトリウム)を用いる。ただし、次亜塩素酸ナトリウムの注意点として、毒性が強く、吸い込んでしまったり、目に入ってしまった場合には呼吸器や粘膜へ損傷を与える危険を伴う。
4.× 施灸部位を「往復」ではなく片方向に拭く。
なぜなら、往復で行うと感染部位を広めてしまう結果となるため。原則、清拭は①一方向性か、②遠心性渦巻き状に行う必要がある。
①患者に触れる前( 手指を介して伝播する病原微生物から患者を守るため)
②清潔/無菌操作の前( 患者の体内に微生物が侵入することを防ぐため)
③体液に曝露された可能性のある場合(患者の病原微生物から医療従事者を守るため)
④患者に触れた後(患者の病原微生物から医療従事者と医療環境を守るため)
⑤患者周辺の環境や物品に触れた後(患者の病原微生物から医療従事者と医療環境を守るため)
である。
(※WHO手指衛生ガイドラインより)
問題174 透熱灸を行う場合、最も注意しなければならない疾患はどれか。
1.全身性エリテマトーデス
2.過敏性腸症候群
3.月経困難症
4.変形性腰椎症
解答1
解説
有痕灸である透熱灸は、良質艾を米粒大前後で円錐形に捻り、経穴や圧痛点など皮膚上の治療点に直接施灸する。糸状灸も含まれる。
1.〇 正しい。全身性エリテマトーデスは、透熱灸を行う場合、最も注意しなければならない疾患である。
なぜなら、全身性エリテマトーデスの発生誘因となるため。全身性エリテマトーデスとは、皮膚・関節・神経・腎臓など多くの臓器症状を伴う自己免疫性疾患である。皮膚症状は顔面の環形紅斑、口腔潰瘍、手指の凍瘡様皮疹である。10~30歳代の女性に好発する多臓器に障害がみられる慢性炎症性疾患であり、寛解と再燃を繰り返す病態を持つ。遺伝的素因を背景にウイルス感染などが誘因となり、抗核抗体などの自己抗体産生をはじめとする免疫異常で起こると考えられている。早期治療した場合、予後は著しく改善し、5年生存率は95%以上と報告されている。主な治療法として、①非ステロイド系消炎鎮痛剤、②ステロイド剤などである。診断基準として、顔面紅斑、円板状皮疹、光線過敏症、口腔内潰瘍、抗核抗体陽性など4項目以上満たすと全身性エリテマトーデス(SLE)を疑う。
2.× 過敏性腸症候群
過敏性腸症候群とは、通常の検査では腸に炎症・潰瘍・内分泌異常などが認められないにも関わらず、慢性的に腹部の膨張感や腹痛を訴えたり、下痢や便秘などの便通の異常を感じる症候群である。腸の内臓神経が何らかの原因で過敏になっていることにより、引き起こされると考えられている。それぞれタイプが存在し、①下痢型(ストレスや緊張などのわずかなきっかけによって腹痛と激しい便意とともに下痢を生じる)、②便秘型(便秘に伴ってお腹の張りなどの症状が起こる)、③混合型(便秘と下痢が交互に繰り返すもの)がある。
3.× 月経困難症
月経困難症とは、月経時に多くの女性は生理痛(月経痛)をはじめとする何らかの症状を伴うが、その症状が日常生活に支障をきたすほどの状態のことをさす。月経困難症には主に2種類あげられる。①器質性月経困難症:子宮内膜症、チョコレート嚢胞、子宮腺筋症、子宮筋腫などの器質的疾患を伴う。30歳以降の女性に多くみられる。②機能性月経困難症:器質的疾患を伴わないものをいう。思春期~20歳台前半の発症が多い。原因として、月経の血液を排出するために子宮を収縮させる物質(プロスタグランジン)の分泌が多すぎて子宮が収縮しすぎることや、頸管(子宮の出口)が狭いことが痛みの主な原因とされている。大部分の月経困難症がこれにあたり、初経を迎えた2~3年後から起こることが多い。
4.× 変形性腰椎症
変形性腰椎症とは、腰椎の加齢変化で骨棘と呼ばれる骨の棘ができたり、背骨が変形したりして生じる腰痛のことである。進行により脊柱管狭窄症になることもある。
問題175 灸あたりの一般的症状でないのはどれか。
1.悪寒
2.発熱
3.胸痛
4.頭重
解答3
解説
1~2.4.〇 悪寒/発熱/頭重
灸あたりとは、施灸直後または翌日から、数時間~数十時間、全身倦怠感、脱力感、頭重、めまい、悪寒、発熱、嘔気などがおこり、その後、愁訴は急速に軽減・消失するものを指す。原因として、総刺激量の過剰が考えられている。安静臥床、予防では刺激量の調節や精神的安定を図るよう処置する。刺激量を決める要因として、①艾炷の大小、②ひねりの硬軟、③数、④施灸法があげられる。刺激を強くするには、①艾炷が大きい、②ひねりが硬い、③壮数が多いなどで決まる。
3.× 胸痛は、灸あたりの一般的症状でない。
胸痛が発生した場合は、気胸が疑われる。気胸は、背部や前胸部などへの刺鍼で多く、女性に多い。症状には胸痛、刺激性咳、チアノーゼ、労作性呼吸困難などがある。
気胸とは、肺と胸壁の間の空間に空気が溜まる状態を指す。交通事故による強い衝撃により、肺が損傷し、気胸が生じる。これを内開放性気胸といい、肺が外傷により損傷され起こる気胸のことである。症状には、胸痛、息切れ、速い呼吸、心拍数の増加などがあり、ときにショックに至る。