第26回(H30年)はり師きゅう師国家試験 解説【午後126~130】

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問題126 徒手検査所見と罹患部への局所治療穴の組合せで最も適切なのはどれか。

1.フローマン徴候陽性:神門
2.アイヒホッフテスト陽性:陽池
3.トムゼンテスト陽性:陽渓
4.ファレンテスト陽性:経渠

解答

解説
1.〇 正しい。フローマン徴候陽性神門の組み合わせである。神門(※読み:しんもん)は、手関節前内側、尺側手根屈筋腱の橈側縁、手関節掌側横紋上に位置する。ちなみに、Froment徴候(フローマン徴候)とは、尺骨神経麻痺の症状としてみられる。Froment徴候(フローマン徴候)とは、母指の内転ができなくなり、母指と示指で紙片を保持させると母指が屈曲位をとることである。

2.× 陽池(※読み:ようち)は、手関節後面、総指伸筋腱の尺側陥凹部、手関節背側横紋上に位置する。アイヒホッフテスト(フィンケルシュタインテスト)とは、母指を握り込ませて手関節尺屈すると、陽性の場合手関節橈側の疼痛が増強する。狭窄性腱鞘炎が疑われる。de Quervain病とは、狭窄性腱鞘炎ともいい、短母指伸筋腱長母指外転筋腱が原因で起こる腱鞘炎である。母指の使いすぎや妊娠出産期、更年期の女性に多く見られる。手首に腫れと痛みを伴い、母指を小指側に牽引したときに痛みが増強する。また、親指を握って尺屈すると疼痛が出現するフィンケルシュタインテスト(アイヒホッフテスト)で陽性となる。

3.× 陽渓(※読み:ようけい)は、手関節後外側、手関節背側横紋橈側、橈骨茎状突起の遠位、タバコ窩(橈骨小窩)の陥凹部に位置する。Thomsen(トムセン)テストの陽性は、テニス肘(上腕骨外側上顆炎)を疑う。方法は、握りこぶしにして手関節を背屈させ、検者が掌屈させようとする。テニス肘とは、上腕骨外側上顆炎ともいい、手首を伸ばす筋肉に炎症が起きる病気である。はっきりした原因は不明であるが、主に手首を伸ばす筋肉に負担がかかることが関係していると考えられている。主な症状は、肘の外側から前腕の辺りに痛みである。

4.× 経渠(※読み:けいきょ)は、前腕前外側、橈骨下端の橈側で外側に最も突出した部位と橈骨動脈の間、手関節掌側横紋の上方1寸である。ちなみに、正中神経麻痺で、tear drop sign(ティア ドロップ サイン)または、perfect O(パーフェクト Oテスト)や、Phalen(ファレンテスト)が陽性となる。ファーレン徴候(Phalen徴候)とは、手首を曲げて症状の再現性をみる検査である。

 

 

 

 

 

問題127 次の文で示す症例に対する鍼灸の効果を評価するのに最も適切なのはどれか。
「62歳の女性。主訴は肩こり。半年ほど前から興味や喜びがわかなくなり、食欲が減退し、よく眠れず朝早く目が覚める。疲れやすく思考力が低下している。幻覚や記憶の障害はなく、動悸、めまいもない。」

1.改訂長谷川式簡易知能評価スケール
2.ハミルトン評価尺度
3.タイムドアップアンドゴーテスト
4.ロコモ度テスト

解答

解説

本症例のポイント

・62歳の女性(主訴:肩こり)。
・半年ほど前から興味や喜びがわかなくなり、食欲が減退し、よく眠れず朝早く目が覚める。
疲れやすく思考力が低下している。
・幻覚や記憶の障害はなく、動悸、めまいもない。
→本症例は、うつ病が疑われる。うつ病とは、抑うつ感、希望や元気を失ったり、興味を失ったり、生産性が低下したり、睡眠障害、食欲の低下、身体症状などが2週間以上続いている状態である。原因は多岐にわたり、生物学的、環境的、社会的要因が関係していることが知られている。

1.× 改訂長谷川式簡易知能評価スケールとは、認知機能をみる質問紙法による簡易精神機能検査である。9項目の質問に答え、30点満点で20点以下を認知症の疑いとする。

2.〇 正しい。ハミルトン評価尺度は、本症例に対する鍼灸の効果を評価する。HRS-D(Hamilton rating scale for depression:ハミルトンうつ病評価尺度)は、うつ病にみられる17の項目についてその重症度を医療者が評価するものである。

3.× タイムドアップアンドゴーテストは、運動器不安定症の指標である。下肢の筋力、バランス、歩行能力、易転倒性といった日常生活機能との関連性が高いことが示唆されている。ちなみに、カットオフ値は14秒程度である。

4.× ロコモ度テストとは、①下肢筋力、②歩幅、③身体状態・生活状況を評価する 3つのテストを行い、これらのテスト結果を年齢平均値と比較することによって、年齢相応の移動能力を維持しているかを判定するものである。もし年齢相応の移動能力に達していない場合、将来ロコモとなり得る危険度が高いと考えられる。

ロコモティブシンドロームとは?

ロコモティブシンドロームとは、運動器の障害により移動能力が低下し、「要介護」のリスクが高い状態のことである。(提唱:日本整形外科学会)予防策として、片脚立位・スクワットからなる「ロコトレ」を行うよう推奨している。対象者がすでに運動器の障害や身体機能低下を有している場合も多いため、トレーニングの際には、疼痛や転倒などに十分配慮して行う必要がある。

 

 

 

 

 

問題128 次の文で示す患者の病態に対し、罹患局所への施術対象となる神経根で最も適切なのはどれか。
「40歳の男性。腰椎椎間板ヘルニアを発症し、腰下肢痛がある。患側の母指底屈筋力の低下、アキレス腱反射減弱、足底の知覚鈍麻がみられた。」

1.L3神経根
2.L4神経根
3.L5神経根
4.S1神経根

解答

解説

本症例のポイント

・40歳の男性(腰椎椎間板ヘルニア)。
・腰下肢痛、患側の母指底屈筋力の低下
・アキレス腱反射減弱、足底の知覚鈍麻
→本症例は、腰椎椎間板ヘルニアである。椎間板は、外縁部分を構成する線維輪という靱帯様の構造物と、中心部に含まれる軟らかい髄核という構造物から成り立っているが、外縁部分の椎間板の線維輪が弱くなって膨隆したり、線維輪が断裂して中心部の髄核が脱出したりすると、近傍にある神経を圧迫している状態のことを腰椎椎間板ヘルニアという。L4/5とL5/S1が好発部位である。

L3‒L4間(支配神経根L4):膝蓋腱反射低下、大腿~下腿内側の感覚麻痺、大腿四頭筋力低下。
L4‒L5間(支配神経根L5):下腿外側~母趾の感覚麻痺、前脛骨筋、長母指伸筋、長趾伸筋の筋力低下。
L5‒S1間(支配神経根S1):アキレス腱反射低下、足部尺側側の感覚麻痺、下腿三頭筋、長母指屈筋、長趾屈筋の筋力低下。

1.× L3神経根
L2‒L3間(支配神経根L3):大腿前面の感覚麻痺、大腿四頭筋力低下。

2.× L4神経根
L3‒L4間(支配神経根L4):膝蓋腱反射低下、大腿~下腿内側の感覚麻痺、大腿四頭筋力低下。

3.× L5神経根
L4‒L5間(支配神経根L5):下腿外側~母趾の感覚麻痺、前脛骨筋、長母指伸筋、長趾伸筋の筋力低下。

4.〇 正しい。S1神経根は、本症例の病態に対し、罹患局所への施術対象となる神経根である。
L5‒S1間(支配神経根S1):アキレス腱反射低下、足部尺側側の感覚麻痺、下腿三頭筋、長母指屈筋、長趾屈筋の筋力低下。

 

 

 

 

 

問題129 頸部の神経根障害により手関節背屈と肘関節屈曲の筋力低下がみられる患者に対し、デルマトームを考慮して治療する場合、最も適切な治療穴はどれか。

1.曲池
2.曲沢
3.小海
4.少海

解答

解説

(※引用:Zancolli E : Functional restoration of the upper limbs in traumatic quadriplegia. in Structural and Dynamic Basis of Hand Surgery. 2nd ed, Lippincott, Philadelphia, p229-262, 1979)

本症例のポイント

頸部の神経根障害により手関節背屈肘関節屈曲の筋力低下がみられる。
→本症例は、C6神経根が関連している可能性が高い。

(※図引用:「看護roo!看護師イラスト集」より)

1.〇 正しい。曲池が本症例に対する最も適切な治療穴である。曲池は、肘外側(C6)、尺沢と上腕骨外側上顆を結ぶ線上の中点に位置する。

2.× 曲沢(※読み:きょくたく)は、肘前面(T1)、肘窩横紋上、上腕二頭筋腱内方の陥凹部に位置する。

3.× 小海(※読み:しょうかい)は、肘後内側(C8)、肘頭と上腕骨内側上顆の間の陥凹部に位置する。

4.× 少海(※読み:しょうかい)は、肘前内側(C8)、上腕骨内側上顆の前縁、肘窩横紋と同じ高さに位置する。

 

 

 

 

 

問題130 肩甲骨の下方回旋筋拘縮による肩の外転障害がみられる場合、局所施術部位として最も適切なのはどれか。

1.肩井
2.肩外兪
3.膏肓
4.扶突

解答

解説

MEMO

菱形筋は肩甲骨を上内方に引く。菱形筋には、大菱形筋と小菱形筋がある。菱形筋の神経は、肩甲背神経である。ちなみに、大菱形筋の【起始】第2~4胸椎の棘突起および棘上靭帯、【停止】肩甲骨内側縁(肩甲棘より下部)である。また、小菱形筋の【起始】下部項靭帯、第7頸椎と第1胸椎の棘突起、【停止】肩甲骨内側縁(肩甲棘より上部)である。

1.× 肩井(※読み:けんせい)は、後頸部、第7頸椎棘突起と肩峰外縁を結ぶ線上の中点に位置する。天髎(三焦経)の上方にあたる。僧帽筋の治療穴である。

2.× 肩外兪(※読み:けんがいゆ)は、上背部、第1胸椎棘突起下縁と同じ高さ、後正中線の外方3寸に位置する。僧帽筋、肩甲挙筋の治療穴である。

3.〇 正しい。膏肓(※読み:こうこう)は、上背部、第4胸椎棘突起下縁と同じ高さ、後正中線の外方3寸に位置する。菱形筋の治療穴は、大杼~心兪、附分~譩譆(膀胱)である。

4.× 扶突(※読み:ふとつ)は、前頸部、甲状軟骨上縁と同じ高さ、胸鎖乳突筋の前縁と後縁の間である。胸鎖乳突筋の深部に内頸静脈があるため刺鍼に注意する。斜角筋、胸鎖乳突筋の治療穴である。

 

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