第32回(R6年)柔道整復師国家試験 解説【午後26~30】

この記事には広告を含む場合があります。

記事内で紹介する商品を購入することで、当サイトに売り上げの一部が還元されることがあります。

 

問題26 小脳疾患による失調性歩行の症状はどれか。

1.すり足で歩く。
2.不安定で動揺しながら足を広げて歩く。
3.足を高く上げて足先を引きずるように歩く。
4.下肢は伸展したままで外方へ円を描くようにして前進する。

解答

解説
1.× すり足で歩く特徴は、「パーキンソン病」である。パーキンソン病とは、黒質のドパミン神経細胞の変性を主体とする進行性変成疾患である。4大症状として①安静時振戦、②筋強剛(筋固縮)、③無動・寡動、④姿勢反射障害を特徴とする。矛盾性運動(逆説的運動)とは、本来難易度が高いはずであるが、スムーズに足が出るといった現象である。すくみ足の症状があっても、床の上の横棒をまたぐことができること、リズムをとったり、視覚的な目標物を踏み越えさせたりすると、本来難易度が高いはずであるが、スムーズに足が出るといった現象である。ちなみに、階段昇降もこれに含まれ、平地歩行に比べて障害されにくい。階段昇降は、歩行の改善、下肢筋力強化の効果も期待される。

2.〇 正しい。不安定で動揺しながら足を広げて歩く。これは、小脳疾患による失調性歩行の症状である。失調性歩行は、小脳や脊髄後索の障害時にみられる。酩酊歩行、ワイドベース、よろめき歩行などともいう。

3.× 足を高く上げて足先を引きずるように歩く特徴は、「総腓骨神経麻痺」である。総腓骨神経麻痺は、下垂足となり、鶏歩(垂足歩行)がみられる。

4.× 下肢は伸展したままで外方へ円を描くようにして前進する特徴は、「脳卒中片麻痺」である。分回し歩行は、痙性片麻痺や脳血管障害(錐体路障害)などで認める。

 

 

 

 

 

問題27 視診で図のような静脈拡張を示すのはどれか。

1.妊娠
2.肝硬変
3.慢性膵炎
4.クッシング(Cushing)症候群

解答

解説

1.× 妊娠では、静脈の拡張が見られることがあるが、腹部静脈拡張(メデューサの頭)はみられない。

2.〇 正しい。肝硬変は、視診で図のような静脈拡張を示す。肝硬変などによって、門脈圧が亢進すると側副血行路がつくられ、食道や胃につくられることが多い(食道・胃静脈癌)。腹部の皮下につくられると腹壁静脈の怒張がみられる。ギリシャ神話に登場する頭にヘビが生えたメデューサという怪物になぞらえて「メデューサの頭」ともいう。

3.× 慢性膵炎とは、膵臓の正常な細胞が壊れ、膵臓が線維に置き換わる病気である。【原因】男性では飲酒が最も多く、女性では原因不明の特発性が多くみられる。膵液の通り道である膵管が細くなったり、膵管の中に膵石ができたりして、膵液の流れが悪くなり、痛みが生じると考えられている。【症状】・初期(代償期):膵臓の機能は保たれているが、腹痛がある。・中期(移行期):次第に膵臓の機能が低下。・末期(非代償期):膵臓の機能は著しく低下、消化不良をともなう下痢や体重減少、糖尿病の発症や悪化が生じる。

4.× クッシング(Cushing)症候群とは、副腎皮質ホルモンであるコルチゾールの過剰分泌により起こる内分泌系疾患である。満月様顔貌や中心性肥満などの特徴的な症状を呈する。主に、副腎腺腫、副腎癌、副腎過形成、ACTH産生下垂体腺腫などによりコルチゾールの過剰分泌が起こる。

門脈とは?

門脈は、だいたいの消化管から得られた栄養を肝臓へと運ぶ働きを持つ機能血管である。胃、腸、膵臓、脾臓、胆嚢の毛細管から静脈血を集める。

 

 

 

 

 

問題28 打診時に清音が聞こえるのはどれか。

1.肺
2.心臓
3.肝臓
4.腸

解答

解説
1.〇 正しい。は、打診時に清音が聞こえる。清音とは、通常、空気を含む部位(例えば、肺)を打診したときに聞こえる。音の振幅が大きく、含気が多いことを意味する。正常な場合、打診によって聴かれる。

2~3.× 心臓/肝臓は、濁音が聞かれる。濁音とは、打診で聴取される小さく濁った音である。音の振幅が小さく、含気が少ないことを意味する。肝臓、心臓などの実質性臓器において聴取される音である。腹水が貯留しているとき、臥位で側腹部を打診すると、液体が存在するため濁音が聴こえる。

4.× 腸は、鼓音が聞かれる。鼓音とは、ガスが充満しているとき、例えば、腸管内に大量のガスがあるときに聴こえる。気胸および肺に空洞のある患者の一部に胸部打診をしたとき聞こえる変化した鼓のような音調である。

 

 

 

 

 

問題29 リンパ節腫脹をきたさないのはどれか。

1.結核
2.悪性腫瘍
3.心筋梗塞
4.伝染性単核症

解答

解説

リンパ節腫脹とは?

リンパ節腫脹とは、1つまたは複数のリンパ節が増大して触知できるようになった状態である。ウィルス、細菌、結核菌、梅毒、トキソプラズマなどによって起こる。体表から触知できるリンパ節は、①頭頸部、②腋窩、③肘関節上部、③腹部、④鼠径部(大腿部)、⑤膝窩部である。リンパ節は皮下に存在するため、皮膚を動かしても皮膚と一緒に動くことはないため、示指から環指の指腹を皮膚に軽く密着させ、皮膚を動かすことにより触診する。

1.〇 結核は、結核菌に感染することでリンパ節に炎症が起こる。これを結核性リンパ節炎という。肺結核とは、結核菌による感染症で、体の色々な臓器に起こることがあるが多くは肺のことである。結核菌は、喀痰の中に菌が出ている肺結核の患者と密閉空間で長時間(一般的には数週間以上)接触することにより空気感染でうつる。リンパ節結核や脊椎カリエス(骨の結核)など、肺に病気のない結核患者からはうつらない。また肺結核でも、治療がうまくいって喀痰の中に菌が出ていない患者さんからはうつることはない。また、たとえ感染しても、発病するのはそのうち1割ぐらいといわれており、残りの9割の人は生涯何ごともなく終わる。感染してからすぐに発病することもあるが、時には感染した後に体の免疫が働いていったん治癒し、その後数ヶ月から数十年を経て、免疫が弱ったときに再び結核菌が増えて発病することもある。結核の症状には、咳、痰、血痰、熱、息苦しさ、体のだるさなどがある。

2.〇 悪性腫瘍は、癌細胞がリンパ節に転移することでリンパ節腫脹が見られる。腫瘍とは、体の中にできた細胞のかたまりのことである。悪性腫瘍とは、このような腫瘍のうち、無秩序に増殖しながら周囲にしみ出るように広がったり(浸潤)、体のあちこちに飛び火して新しいかたまりを作ったり(転移)するもののことをいう。悪性腫瘍の転移によってリンパ節腫脹などの症状が起こり、悪性リンパ腫となる。一方、良性腫瘍とは、浸潤や転移をせず、周りの組織を押しのけるようにしてゆっくりと増える腫瘍のことをいう。

3.× 心筋梗塞は、リンパ節腫脹をきたさない。急性心筋梗塞とは、冠状動脈内に血栓が形成され、動脈を閉塞し心筋が壊死することである。リスクファクターとして、①高血圧、②喫煙、③糖尿病、④脂質代謝異常などである。ちなみに、労作性狭心症とは、心臓に栄養を送る血管である冠動脈の一部が動脈硬化によって75%以上狭窄し、血流の流れが悪くなってしまう状態である。症状として、胸痛発作の頻度(数回/周以下)、持続時間(数分以内)、強度などが一定であることや、一定以上の運動や動作によって発作が出現する。その4大危険因子は、「①喫煙、②脂質異常症、③糖尿病、④高血圧」である。そのほかにも、加齢・肥満・家族歴・メタボリックシンドロームなどがある。

4.〇 伝染性単核症とは、主にEBウイルスで、感染している人の唾液などを通してウイルスが体の中に入り込み発症する感染症である。発症から2週間は頸部リンパ節腫脹と咽頭炎が最も目立つ。

 

 

 

 

 

問題30 スポーツ心臓にみられるのはどれか。

1.頻脈
2.徐脈
3.速脈
4.遅脈

解答

解説
1~2.× 頻脈/速脈/遅脈ではなく「徐脈」がみられる。頻脈とは、100回/分以上、徐脈とは50回/分以下を定義される。脈波は、立ち上がりから大きさを増して頂点に達し、次第に小さくなっていく。速脈とは、大きく立ち上がってすばやく減少していく脈波である。遅脈とは、緩やかに立ち上がる脈波である。

2.〇 正しい。徐脈は、スポーツ心臓にみられる。スポーツ心臓とは、ほぼ毎日1時間トレーニングを行う個人の心臓に生じる一群の構造的および機能的変化である。それらの変化は症状を引き起こさず、徴候として徐脈、収縮期雑音、過剰心音などがみられる。心電図異常がよくみられる。診断は臨床所見または心エコー検査による。治療の必要はない。スポーツ心臓は、重篤な心疾患との鑑別が必要であることから重要である(※引用:「スポーツ心臓」MSDマニュアルプロフェッショナル版様HPより)。

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)