第32回(R6年)柔道整復師国家試験 解説【午後21~25】

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問題21 介護保険において「要支援1・2」の認定原因で最も多いのはどれか。

1.認知症
2.関節疾患
3.脳血管障害
4.パーキンソン病(Parkinson)病

解答

解説

(※図引用:「介護や支援が必要となった主な原因は?」生命保険文化センター様HPより)

1.× 認知症は、要介護者認定の第一位(23.6%)である。

2.〇 正しい。関節疾患は、介護保険において「要支援1・2(19.3%)」の認定原因で最も多い。

3.× 脳血管障害は、要介護者認定の第二位(16.1%)である。

4.× パーキンソン病(Parkinson)病は、第三位以下である。

(※画像引用:「保険給付」日本電子健康保険組合様HPより)

 

 

 

 

 

問題22 認知症と症状の組み合わせで正しいのはどれか。

1.アルツハイマー型認知症-物盗られ妄想
2.レビー小体型認知症-同じ動作を繰り返す
3.脳血管性認知症-幻視
4.前頭側頭葉変性症-感情失禁

解答

解説

アルツハイマー型認知症とは?

アルツハイマー型認知症とは、認知症の中で最も多く、病理学的に大脳の全般的な萎縮、組織学的に老人斑(アミロイドβの蓄積)・神経原線維変化の出現を特徴とする神経変性疾患である。特徴は、①初期から病識が欠如、②著明な人格崩壊、③性格変化、④記銘力低下、⑤記憶障害、⑥見当識障害、⑦語間代、⑧多幸、⑨抑うつ、⑩徘徊、⑩保続などもみられる。

1.〇 正しい。物盗られ妄想は、アルツハイマー型認知症にみられる。物盗られ妄想は、記銘力障害による置き忘れしまい忘れが多くなり、①身近な親しい人に盗られたと即断してしまう、②興奮したり騒いだりして、警察に連絡する場合も多い。Alzheimer型認知症の大半で認められる。ただし、必ずしも「特異的」ではなく、その他の認知症でもみられる場合がある。言葉での説得は難しいため、一緒に探したり、自分で納得するように仕向けたりする方がよい。

2.× 同じ動作を繰り返すことは、「レビー小体型認知症」ではなく前頭側頭型認知症にみられる。同じ動作を繰り返すこと(例えば、オウム返し、反響言語)は、言った言葉を繰り返す状態を指す。ちなみに、前頭側頭型認知症とは、前頭葉・側頭葉に限局した萎縮性病変を認める症候群をいう。代表的な疾患にPick病がある。発症は初老期(40~60歳代)にみられる。初期は、自発性の低下、自発語の減少、偏食・過食、脱抑制などの人格変化・行動異常で潜行性に発症する。

3.× 幻視は、「脳血管性認知症」ではなくレビー小体型認知症にみられる。レビー小体型認知症とは、Lewy小体が広範な大脳皮質領域で出現することによって、①進行性認知症と②パーキンソニズムを呈する病態である。認知機能の変動・動揺、反復する幻視(人、小動物、虫)、パーキンソニズム、精神症状、REM睡眠型行動異常症、自律神経障害などが特徴である。実際にはいない人が見える「幻視」、眠っている間に怒鳴ったり、奇声をあげたりする異常言動などの症状が特徴的である。頭がはっきりしたり、ボーッとしたり、日によって変動することもある。レビー小体型認知症そのものを治す治療はなく、現状では症状に対する薬を使用して効果をみる。抗精神薬による精神症状のコントロールと抗パーキンソン病薬による運動症状の改善、自律神経障害に対しての血圧コントロールなどがある。

4.× 感情失禁は、「前頭側頭葉変性症」ではなく脳血管性認知症にみられる。脳血管性認知症とは、脳血管が詰まったり破れたりすることで突然発症する。その後、脳血管が詰まったり破れたりするたびに、症状が悪化する特徴を持つ。その部位や範囲によって症状は様々である。他の症状として、巣症状(失語、失行、失認など脳の局所性病変によって起こる機能障害)や階段状に認知障害が進行することが特徴である。

 

 

 

 

 

問題23 55歳の男性。仕事中に突然ろれつが回らなくなり、意識レベルの低下と左半身の脱力を生じ、近医に搬送された。右中大脳動脈領域の脳梗塞と診断され、保存的加療が行われた。
 直接嚥下訓練を開始すべきでない症状はどれか。

1.左片麻痺あり
2.構音障害あり
3.半側空間無視あり
4.Japan Coma Scale10

解答

解説

本症例のポイント

・55歳の男性(右中大脳動脈領域の脳梗塞)。
・仕事中に突然ろれつが回らなくなった。
・意識レベルの低下、左半身の脱力。
・保存的加療。
→直接嚥下訓練とは、実際に食べ物を使った摂食訓練のことである。直接嚥下訓練は、誤嚥のリスクがあるので、摂食訓練が可能かどうか患者の状態や体調を見極めた上で専門スタッフ(言語聴覚士)がしっかり付き添いながら行う必要がある。

1.〇 左片麻痺が理由で、直接嚥下訓練の禁忌とはいいにくい。なぜなら、左片麻痺と嚥下の関連性は低いため。ただし、顔面麻痺があることで食物の移動が難しくなり、誤嚥のリスクが上がると考えられるため、専門スタッフ(言語聴覚士)の慎重な評価と管理が必要である。

2.〇 構音障害が理由で、直接嚥下訓練の禁忌とはいいにくい。なぜなら、構音障害と嚥下の関連性は低いため。ただし、長期的に重度の構音障害の場合、口の筋肉の低下による誤嚥へと発展しかねないため、専門スタッフ(言語聴覚士)の慎重な評価と管理が必要である。ちなみに、構音障害とは、発語・発声に関与する神経・筋系の障害であり、言語の理解は正常であるが正しく発語できない状態である。

3.〇 半側空間無視が理由で、直接嚥下訓練の禁忌とはいいにくい。なぜなら、半側空間無視と嚥下の関連性は低いため。ただし、食べ物をこぼしてしまう要因となるため、専門スタッフ(作業療法士や言語聴覚士)の評価を実施し、食事の環境を整える必要がある。ちなみに、半側空間無視とは、障害側の対側への注意力が低下し、その空間が存在しないかのように振る舞う状態のことである。半盲とは性質が異なり、左半分が見えないわけではなく、左半分への注意力が低下している状態である。したがって、①左側への注意喚起、②左側身体への触覚刺激、③左足方向への体軸回旋運動、④左側からの声かけなどのアプローチが必要である。

4.× Japan Coma Scale10は、直接嚥下訓練を開始すべきでない。なぜなら、JCS:10は意識障害がみられるため。意識障害の中で、直接嚥下訓練は、誤嚥や窒息のリスクが高まるため、意識レベルの低下は直接嚥下訓練の禁忌となる。意識清明(JCS:0)で行うべきである。

(※図引用:「意識レベル(JCS:Japan Coma Scale)」堺市HPより)

 

 

 

 

 

問題24 頭痛で受診した患者の医療面接で開かれた質問はどれか。

1.いつからですか。
2.どんな頭痛ですか。
3.ズキンズキンしますか。
4.音がうるさく感じませんか。

解答

解説

MEMO

open-ended question(開かれた質問)は、5W1HでいうWhen(なぜ)、How(どうやって・どのように)に該当する。したがって、患者が症状や来院理由を自由に話せるため、相手からより多くの情報を引き出したい場面で有効である。

closed-ended question(閉じられた質問)は、5W1Hでいう(When(いつ)、Where(どこで)、 Who(誰が)、What(何を)や、はい/いいえで答えられる限定された質問である。したがって、相手の考えや事実を明確にしたい場面などで有効である。

1.3~4.× いつからですか。ズキンズキンしますか。音がうるさく感じませんか。
これらは、答えが限定されるため、閉じられた質問である。

2.〇 正しい。どんな頭痛ですかは、開かれた質問である。
なぜなら、患者は自由な答えを行えるため。「ズキンズキンする」「締め付けられるような痛み」など、患者の表現(具体的な表現)を引き出すことができる。

質問の種類と特徴

開かれた質問
患者の自由な答えを求める質問
例:「他に気になるところはありますか?」
閉じられた質問
「はい・いいえ」で答えられる質問
例:「吐き気はありますか?」

中立的な質問
1つの答えしか求めない質問法
例:「水分はいつからとれていないですか?」
焦点型質問
1つの事柄を深く掘り下げる質問法
例:「頭痛についてもう少し詳しく教えてください。」

 

 

 

 

 

問題25 正しいのはどれか。

1.アジソン(Addison)病では浮腫性肥満がみられる。
2.甲状腺機能低下症では著しいやせがみられる。
3.単純性肥満は肥満全体に占める割合が低い。
4.悪液質は予後不良の特徴である。

解答

解説
1.× アジソン(Addison)病では、「浮腫性肥満」ではなくるいそう(著しいやせ)がみられる。アジソン病とは、副腎皮質機能低下症ともいい、るいそう(やせ)と色素沈着など特徴的である。副腎皮質ホルモンには、コルチゾール・アルドステロン・アンドロゲン(男性ホルモン)などがある。コルチゾール:血糖値の上昇や脂質・蛋白質代謝の亢進、免疫抑制・抗炎症作用、血圧の調節など、さまざまな働きがあるが、過剰になるとクッシング症候群、不足するとアジソン病を引き起こす。

2.× 甲状腺機能低下症では、「著しいやせ」ではなく体重増加がみられる。甲状腺機能低下症とは、甲状腺に炎症が引き起こされることによって徐々に甲状腺が破壊され、甲状腺ホルモンの分泌が低下していく病気のことである。慢性甲状腺炎とも呼ばれる。甲状腺機能低下症になると、全身の代謝が低下することによって、無気力、疲れやすさ、全身のむくみ、寒がり、体重増加、便秘、かすれ声などが生じる。

3.× 単純性肥満は肥満全体に占める割合が「低い」のではなく高い。肥満の種類として、①症候性肥満と②単純性肥満がある。①症候性肥満は、何らかの疾患の症状(内分泌異常や遺伝性疾患など)としてみられる肥満である。 一方、②単純性肥満は、原因となる疾患がないものをいう。小児肥満の大部分(約95%)が単純性肥満である

4.〇 正しい。悪液質は予後不良の特徴である。終末期がん患者にみられる特徴の一つである。ちなみに、悪液質とは、がんの病状に伴い体重減少や食欲不振を特徴とする合併症である。進行したがん患者さんに多くみられる症状である。進行を伴う悪性腫瘍に関連する。

悪液質とは?

悪液とは、がんなどの慢性消耗性疾患によって生じる複合的な代謝異常の症候群である。がん悪液質とは、従来の栄養サポートで改善することは困難で、進行性の機能障害をもたらし、(脂肪組織の減少の有無にかかわらず)著しい筋組織の減少を特徴とする複合的な代謝障害症候群である。病態生理学的には、経口摂取の減少と代謝異常による負の蛋白、エネルギーバランスを特徴とする一部の癌、特に膵癌および胃癌では、深刻な悪液質を生じる。 悪液質の患者は、体重が10~20%減少することがある。典型的な症状として、食欲不振、体重減少、全身衰弱などを呈する。飢餓による低栄養とは異なり、単なる栄養補給では改善しない。

 

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