第22回(H26年)柔道整復師国家試験 解説【午後41~45】

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問題41.後天性免疫不全症候群(AIDS)で正しいのはどれか。

1.ヘルペスウイルス感染が原因である。
2.CD8陽性T細胞が減少する。
3.異性間性交渉では感染しない。
4.日和見感染症を合併する。

解答

解説

ヒト免疫不全ウイルス感染症とは?

ヒト免疫不全ウイルスは、人の免疫細胞に感染してこれを破壊し、最終的に後天性免疫不全症候群を発症させるウイルスである。ヒト免疫不全ウイルス〈HIV〉感染症に対する治療法は飛躍的に進歩しており早期に発見することで後天性免疫不全症候群(AIDS)の発症を予防できるようになってきている。しかし、治療を受けずに自然経過した場合、免疫機能の低下により様々な障害が発現する。

1.× ヘルペスウイルス感染が原因であるのは、「性器クラミジア感染症」である。一方、後天性免疫不全症候群は、ヒト免疫不全ウイルスが原因である。
・性器クラミジア感染症とは、単純ヘルペスウイルス(HSV)の感染によって性器やその周辺に水疱や潰瘍等の病変が形成される疾患である。感染症法下では4類感染症定点把握疾患に分類されている。感染機会があってから2〜21日後に外陰部の不快感、掻痒感等の前駆症状ののち、発熱、全身倦怠感、所属リンパ節の腫脹、強い疼痛等を伴って、多発性の浅い潰瘍や小水疱が急激に出現する。

2.× 「CD8」ではなくCD4陽性T細胞が減少する。ヒト免疫不全ウイルス〈HIV〉は、CD4陽性Tリンパ球をはじめとする細胞に感染し、破壊・減少させることで、細胞性免疫不全を主体とするAIDS(後天性免疫不全症候群)を引き起こす。

3.× 異性間性交渉でも「感染する」。なぜなら、HIVは血液・精液・膣分泌液・母乳などに含まれるウイルスが体内に入ることで感染するため。

4.〇 正しい。日和見感染症を合併する。なぜなら、ヒト免疫不全ウイルスは、人の免疫細胞に感染してこれを破壊するため。
・日和見感染とは、健常者には病原性をもたない常在弱毒菌(グラム陽性菌など)による感染症である。免疫回復後は適切に洗浄・調理された野菜類を摂取することが可能である。

 

 

 

 

 

問題42.45歳の女性。健康診断で貧血を指摘されて来院した。小球性低色素性貧血を認め、鉄欠乏性貧血と診断された。黒色タール便を認める。
 貧血の原因はどれか。

1.子宮筋腫
2.自己免疫性溶血性貧血
3.消化性潰瘍
4.ビタミンB12欠乏

解答

解説

本症例のポイント

・45歳の女性(鉄欠乏性貧血)。
・小球性低色素性貧血を認めた。
黒色タール便を認める。
→本症例の黒色タール便がなぜ生じているか考えよう。タール便とは、胃潰瘍など上部消化管出血のときに排出される血便の一種である。一般的に食道、胃、十二指腸からの出血は、ヘモグロビンの鉄が胃酸で酸化されるため起こる。

→鉄欠乏性貧血とは、体内に流れている赤血球に多く含まれるヘモグロビンと鉄分が欠乏する事により、酸素の運搬能力が低下し全身に十分な酸素が供給されず倦怠感や動悸、息切れなどの症状がみられる貧血の種類の中でも最も多く特に女性に多い疾患である。原因としては、栄養の偏りなどによる鉄分の摂取不足、消化性潰瘍やがん、痔などの慢性出血による鉄の喪失、腸管からの鉄吸収阻害などがあげられる。

1.× 子宮筋腫より優先されるものが他にある。なぜなら、「黒色便(タール便)」があるため。
・子宮筋腫とは、子宮を構成している平滑筋という筋肉組織由来の良性腫瘍で、比較的若い方から閉経後の方まで高頻度に見られる疾患である。子宮筋腫は切迫流産・早産、前期破水、胎盤の位置異常、妊娠高血圧症候群などのリスクとなる。分娩時または産後に、次回の妊娠を希望する場合や妊娠中の合併症を増加させないために、子宮筋腫核出術を行う場合もある。

2.× 自己免疫性溶血性貧血より優先されるものが他にある。なぜなら、自己免疫性溶血性貧血は鉄欠乏性ではなく、「正球性・正色素性貧血」であるため。
・自己免疫性溶血性貧血とは、体の免疫が誤って自分の赤血球を攻撃・破壊してしまう病気である。これにより赤血球が減少し、貧血や黄疸、だるさなどの症状が現れる。原因不明のこともあるが、治療にはステロイドなどが使われる。

3.〇 正しい。消化性潰瘍は、貧血の原因である。本症例のように、黒色便を伴う鉄欠乏性貧血では、消化性潰瘍などの慢性消化管出血が最も疑われる。
・消化性潰瘍とは、食物を分解する働きをもつ胃酸や消化酵素が胃や十二指腸の壁を深く傷つけてしまうことによって起こる病気である。消化性潰瘍ができると、お腹の上のほうやみぞおちのあたりに鈍い痛みを感じることが多くみられる。空腹時に痛みが強くなることが多く、食事をとることで軽くなる。

4.× ビタミンB12欠乏より優先されるものが他にある。なぜなら、ビタミンB12欠乏よる貧血は鉄欠乏性ではなく、巨赤芽球性貧血」であるため。
・巨赤芽球性貧血とは、ビタミンB12あるいは葉酸の不足が原因の、骨髄に巨赤芽球が出現する貧血の総称である。偏食や過度の飲酒などを背景にビタミン欠乏症の患者がみられる。貧血の症状(動悸や息切れ、疲労感)の他に、萎縮性胃炎やハンター舌炎(味覚障害や舌の痛みを伴う炎症)など消化器系に異常をきたす。また、ビタミンB12欠乏症において、手足のしびれ、思考力の低下、性格変化などの神経症状もみられる。

貧血の種類

①小球性低色素性貧血:鉄欠乏性血・鉄芽球性血・サラセミア・異常へモグロビン症・慢性炎症による貧血など。
②正球性正色素性貧血:再生不良性貧血・溶血性貧血・遺伝性球状赤血球症・自己免疫性溶血性貧血・発作性夜間血色素尿症など。
③大球性貧血(大球性正色素性貧血)
巨赤芽球性貧血:悪性貧血・胃切除後貧血・葉酸欠乏性貧血・ビタミンB12欠乏性貧血など。
非巨赤芽球性貧血:溶血性貧血・出血性血・肝障害・甲状腺機能低下症・骨髄異形成症候群など。

 

 

 

 

 

問題43.46歳の男性。ゴルフのスイングで首を右にひねり、後頭部痛と回転性めまいが出現し、立位保持不能となった。血圧と脈拍は正常。左眼裂狭小、左上下肢小脳性運動失調、左顔面と顔面を除く右半身の感覚障害を認めた。
 考えられるのはどれか。

1.内頸動脈解離
2.前大脳動脈解離
3.中大脳動脈解離
4.椎骨動脈解離

解答

解説

本症例のポイント

・46歳の男性。
・ゴルフのスイングで首を右にひねった
後頭部痛回転性めまいが出現、立位保持不能
・血圧と脈拍は正常。
左眼裂狭小左上下肢小脳性運動失調左顔面と顔面を除く右半身の感覚障害
→本症例は、椎骨動脈解離による延髄外側症候群(ワレンベルグ症候群)が疑われる。ほかの選択肢が消去できる理由もあげられるようにしよう。

1.× 内頸動脈解離より優先されるものが他にある。なぜなら、内頸動脈解離(大脳半球を栄養する血管)では、顔面の痛みや片麻痺は起こるため。本症例のように、「回転性めまい」「小脳失調」は特徴的ではない。

2.× 前大脳動脈解離より優先されるものが他にある。なぜなら、前大脳動脈解離(前頭葉内側を栄養する血管)は、下肢優位の運動・感覚障害を起こすため。本症例のように、「回転性めまい」「小脳失調」は特徴的ではない。

3.× 中大脳動脈解離より優先されるものが他にある。なぜなら、中大脳動脈解離(大脳外側面を栄養する血管)は、片麻痺や失語が主症状であるため。本症例のように、「回転性めまい」「小脳失調」は特徴的ではない。

4.〇 正しい。椎骨動脈解離が最も考えられる。本症例は、椎骨動脈解離による延髄外側症候群(ワレンベルグ症候群)が疑われる。
・Wallenberg症候群(延髄外側症候群)は、椎骨動脈、後下小脳動脈の閉塞により延髄外側の梗塞を来す疾患である。①梗塞と同側の顔面感覚障害(温痛覚)、②梗塞と同側の運動失調(上下肢の動かしづらさ)、③梗塞と同側のホルネル(Horner)症候群(一側眼の瞼裂狭小化、縮瞳、眼球陥凹)、④梗塞と反対側の半身感覚障害(頸から下の温痛覚)、⑤嗄声、嚥下障害、⑥回転性めまい、眼振、⑦味覚障害が生じる。(※参考:「脳・心臓疾患の認定基準に関する専門検討会報告書」厚生労働省HPより)

 

 

 

 

 

問題44.損傷の原因の中で機械的損傷はどれか。

1.高熱
2.電気
3.減圧
4.レーザー光線

解答

解説

外傷とは?

外傷とは、外力(①機械的、②非機械的:物理的、化学的)により生じた組織・臓器の損傷をさす。
機械的:創傷、気圧(減圧症)
②非機械的:物理的(熱傷、凍傷)、化学的(放射線、電撃)

1~2.4.× 高熱/電気/レーザー光線は、非機械的損傷に分類される。

3.〇 正しい。減圧は、損傷の原因の中で機械的損傷である。
・機械的損傷とは、転んだり、打撲などの外力によって起こる損傷で、機械的外力の創傷や、気圧の減圧症である。

 

 

 

 

 

問題45.感染症と原因菌との組合せで正しいのはどれか。

1.毛嚢炎:結核菌
2.丹毒:A群溶連菌
3.破傷風:ウェルシュ菌
4.ガス壊疽:梅毒トレポネーマ

解答

解説
1.× 毛嚢炎の原因菌は、「結核菌」ではなく黄色ブドウ球菌である。一方、結核菌は肺結核の秒遠近である。
・毛嚢炎とは、皮膚の毛包(毛穴)に細菌が感染し、膿をもって炎症を起こす疾患である。主に常在菌である黄色ブドウ球菌が原因である。

2.〇 正しい。丹毒:A群溶連菌
・丹毒とは、主にA群β溶血性レンサ球菌の感染により皮膚~皮下脂肪に熱をもって赤く腫れ、痛む病気である。顔に多く見られる。水ぶくれや内出血は重症化のサインである。

3.× 破傷風の原因菌は、「ウェルシュ菌」ではなく破傷風菌である。
・破傷風とは、接触感染で、破傷風菌により発生し、主に傷口に菌が入り込んで感染を起こし毒素を通して、さまざまな神経に作用する。感染して3日から3週間からの症状のない期間があった後、口を開けにくい、首筋が張る、体が痛いなどの症状があらわれる。その後、体のしびれや痛みが体全体に広がり、全身を弓なりに反らせる姿勢や呼吸困難が現れたのちに死亡する。
・ウェルシュ菌は、細菌であり産生する毒素により消化器症状(腹痛、下痢、悪心)を呈する。発症に至る原因としては、煮込み(カレーやシチュー)で料理の加熱が不十分である場合が多い。潜伏期間は6~18時間である。

4.× ガス壊疽の原因菌は、「梅毒トレポネーマ」ではなくクロストリジウム属(ウェルシュ菌など)である。
・ガス壊疽とは、ガス産生菌が傷口から侵入して感染し、筋肉が壊死に陥り、全身に中毒症を起こす致死性の感染症である。筋肉を中心としてメタンや二酸化炭素などのガスが発生することにより、感染が広がる。クロストリジウム属(ウェルシュ菌など)の菌により起こるクロストリジウム性ガス壊疽と、他の細菌で起こる非クロストリジウム性ガス壊疽の2つに大別される。深刻な感染症で、急速に進行し、強い痛みを伴い、皮膚の下にある組織が壊死し、ガスを生じることからこの名前が付けられている。

梅毒とは?

梅毒とは、5類感染症の全数把握対象疾患であり、スピロヘータ(細菌)の一種である梅毒トロポネーマ感染により発症し、この梅毒トロポネーマが脳の実施まで至ると、進行性麻痺となる。性行為や胎盤を通じて感染する。梅毒に特徴的な症状として、陰茎・外陰部を中心に生じる無痛性の硬結(指で触れることのできる硬い丘疹)やバラ疹(全身にできる淡い紅斑)などがあり、進行すると神経系の病変を生じて死に至ることもある。

【臨床的特徴】
Ⅰ期梅毒:感染後3~6週間の潜伏期の後に、感染局所に初期硬結や硬性下疳、無痛性の鼠径部リンパ節腫脹がみられる。
Ⅱ期梅毒:感染後3か月を経過すると皮膚や粘膜に梅毒性バラ疹や丘疹性梅毒疹、扁平コンジローマなどの特有な発疹が見られる。
経過晩期:感染後3年以上を経過すると顕症梅毒としてゴム腫、梅毒によると考えられる心血管症状、神経症状、眼症状などが認められることがある。なお、感染していても臨床症状が認められないものもある。先天梅毒は、梅毒に罹患している母体から出生した児で、①胎内感染を示す検査所見のある症例、②Ⅱ期梅毒疹、骨軟骨炎など早期先天梅毒の症状を呈する症例、③乳幼児期は症状を示さずに経過し、学童期以後にHutchinson3徴候(実質性角膜炎、内耳性難聴、Hutchinson歯)などの晩期先天梅毒の症状を呈する症例がある。また、妊婦における梅毒感染は、先天梅毒のみならず、流産及び死産のリスクとなる。(※一部引用:「梅毒」厚生労働省HPより)

 

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