第21回(H25年)柔道整復師国家試験 解説【午後21~25】

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問題21.72歳の男性。前立腺癌の既往がある。3か月前から背部痛があったが我慢していた。2週前から右足のしびれが出現し施術を受けていたところ、昨日から下肢に力が入らず歩行困難になったと訴えている。診察では左下肢の運動は可能だが、右膝関節の伸展および足関節の自動運動が困難で、胸部以下に感覚障害を認めた。
 正しいのはどれか。

1.完全麻痺の状態である。
2.下位腰椎の病変が疑われる。
3.圧迫性脊髄障害が疑われる。
4.腰椎の間欠牽引を実施する。

解答

解説

本症例のポイント

・72歳の男性(既往:前立腺癌)。
・3か月前:背部痛があった。
・2週前:右足のしびれが出現。
・昨日:下肢に力が入らず歩行困難。
左下肢の運動は可能だが、右膝関節の伸展および足関節の自動運動が困難。
胸部以下に感覚障害あり
→ほかの選択肢が消去できる理由も上げられるようにしよう。

1.× 完全麻痺の状態「とはいえない」。なぜなら、本症例は、左下肢は運動可能であるため。したがって、本症例は、不全麻痺(運動・感覚が一部残存しているもの)である。

2.× 「下位腰椎」ではなく胸髄レベルの病変が疑われる。なぜなら、本症例は、胸部以下に感覚障害が認められるため。ちなみに、下位腰椎(L4〜S1)の障害の場合、下肢の一部の感覚・筋力低下が出現する。

3.〇 正しい。圧迫性脊髄障害が疑われる。なぜなら、①前立腺癌は骨転移(特に脊椎)を起こしやすい。③背部痛(骨破壊の痛み)に始まり、進行して運動・感覚障害が出現するのは典型的な経過。③感覚レベルが「胸部以下」に存在するため。したがって、脊髄が腫瘍や骨転移によって圧迫されている可能性が高い。
・圧迫性脊髄障害とは、椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症、腫瘍、骨折などにより脊髄が持続的に圧迫され、神経機能が障害される状態である。四肢のしびれや筋力低下、歩行障害、排尿・排便障害などを呈し、進行すると不可逆的な障害を残すことがある。診断にはMRIが有用であり、治療は原因に応じて保存療法や手術療法が選択される。

4.× 腰椎の間欠牽引を実施するのは、「椎間板ヘルニアなどによる神経根症状」である。圧迫性脊髄障害に対しては禁忌である。なぜなら、脊髄圧迫や転移性骨病変が存在する場合、牽引によって脊髄・神経への圧迫が増悪し、不可逆的な麻痺を引き起こす可能性があるため。

腰椎椎間板ヘルニアとは?

椎間板は、外縁部分を構成する線維輪という靱帯様の構造物と、中心部に含まれる軟らかい髄核という構造物から成り立っているが、外縁部分の椎間板の線維輪が弱くなって膨隆したり、線維輪が断裂して中心部の髄核が脱出したりすると、近傍にある神経を圧迫している状態のことを腰椎椎間板ヘルニアという。L4/5とL5/S1が好発部位である。

L3‒L4間(支配神経根L4):膝蓋腱反射低下、大腿~下腿内側の感覚麻痺、大腿四頭筋力低下。
L4‒L5間(支配神経根L5):下腿外側~母趾の感覚麻痺、前脛骨筋、長母指伸筋、長趾伸筋の筋力低下。
L5‒S1間(支配神経根S1):アキレス腱反射低下、足部尺側側の感覚麻痺、下腿三頭筋、長母指屈筋、長趾屈筋の筋力低下。

 

 

 

 

 

問題22.マン-ウェルニッケ姿勢で正しいのはどれか。

1.麻痺側肘関節屈曲
2.麻痺側前腕回外
3.麻痺側膝関節屈曲
4.麻痺側足関節背屈

解答

解説

マン・ウェルニッケ姿勢とは?

マン・ウェルニッケ姿勢とは、Wernicke-Mann肢位(ウェルニッケマン肢位)ともいい、大脳皮質から大脳脚の間(脳幹より上位)で運動制御系が片側性に障害されたときに、病巣の対側上肢が屈曲位、下肢が伸展位を呈する肢位のことをいう。脳血管障害の後遺症としてしばしば認められる。
【上肢】肩関節内旋・内転位、肘関節屈曲位、手関節掌屈位、手指屈曲位
【下肢】股関節伸展・内旋・内転位、膝関節伸展位、足関節内反尖足位となる。

1.〇 正しい。麻痺側肘関節屈曲は、マン-ウェルニッケ姿勢である。

2.× 麻痺側前腕は、「回外位」ではなく回内位である。

3.× 麻痺側膝関節は、「屈曲位」ではなく伸展位である。

4.× 麻痺側足関節は、「背屈位」ではなく底屈位である。

 

 

 

 

 

問題23.心臓性失神はどれか。

1.アダムスーストークス(Adams-Stokes)症候群
2.ネフローゼ症候群
3.クッシング(Cushing)症候群
4.シェーグレン(Sjögren)症候群

解答

解説

心臓性失神とは?

心臓性失神とは、不整脈や心臓の病気により心拍出量が急に低下し、脳への血流が一時的に不足して起こる失神である。突然意識を失い前触れが少ない点が特徴で、命に関わることもあるため、早急な診断と治療が重要である。

1.〇 正しい。アダムスーストークス(Adams-Stokes)症候群は、心臓性失神である。なぜなら、この症候群は房室ブロックや心室頻拍などの不整脈によって、一時的に心拍出量が停止・減少し、脳血流が途絶して一過性の意識消失(失神)を起こすため。
・アダムスーストークス症候群とは、重度の徐脈や一過性の心停止などの不整脈により、脳血流が急激に低下して突然の失神やけいれんを起こす病態である。前兆が乏しく、突然倒れることが多いため危険性が高い。

2.× ネフローゼ症候群とは、尿から大量の蛋白が漏れ出すことで血液中の蛋白が減少、血液の浸透圧が低下し水分が血管内から血管外へ移動することで、全身の浮腫や腹水・胸水などを引き起こすものである。食事に関しては、蛋白尿が陽性の間は減塩食にする。一般的に水分の制限は必要ないとされており、その理由は水分制限による脱水や血栓症の危険性が増加するためである。【成人における診断基準】①蛋白尿:1日蛋白量3.5g以上を持続する。②低蛋白血症:血清総蛋白量は6.0g/100ml以下(低アルブミン血症とした場合は血清アルブミン量3.0g/100ml以下)、③高脂血症:血清総コレステロール値250mg/100ml以上、④浮腫があげられる。

3.× クッシング(Cushing)症候群とは、副腎皮質ホルモンであるコルチゾールの過剰分泌により起こる内分泌系疾患である。満月様顔貌や中心性肥満などの特徴的な症状を呈する。主に、副腎腺腫、副腎癌、副腎過形成、ACTH産生下垂体腺腫などによりコルチゾールの過剰分泌が起こる。

4.× シェーグレン(Sjögren)症候群は、涙腺・唾液腺などの外分泌腺炎を特徴とする自己免疫疾患である。男女比(1:9)で女性に多い(特に、40歳代の中年女性)。唾液腺・涙腺の慢性炎症が生じる膠原病で、乾性角結膜炎(ドライアイ)、口腔乾燥(ドライマウス)を主症状とする。皮膚症状は環状紅斑など多彩であるが、全身の紅斑・水庖は生じない。これらの乾燥症状に対し、人工涙液点眼や水分摂取といった対症療法を行う。

 

 

 

 

 

問題24.ミオクローヌスはどれか。

1.単一または複数の筋肉の目的のない反復する運動
2.一部の筋肉の突発的なすばやい収縮
3.ゆっくりと持続性のある運動
4.リズミカルに動くふるえ

解答

解説

不随意運動とは?

不随意運動とは、本人の意思とは無関係に身体に異常な運動が起きることである。主として、無意識の運動をつかさどる錐体外路系(大脳基底核、脳幹、小脳など)が障害された際にみられる。不随意運動の種類は、さまざまなパターンがある(①律動的なもの、②運動の速度が速いものや遅いもの、③画一的な運動が繰り返されるもの、④不規則な運動が雑然と連続しておこるもの、⑤ごく一部(顔面、四肢、躯幹(くかん)など)に生ずるものから全身に及ぶものなど)

・振戦(律動的な無目的の運動が、一部の筋や身体の一部、ときに全身に現れる)
・舞踏病様運動、アテトーシス(おもに四肢や顔面におこるややゆっくりした不随意運動)
・バリスム(舞踏病より激しい腕や手の不随意運動)
・ジストニー(持続性収縮によって非対称性な姿勢をとる)
・チック(不規則で突発的な体の動きや発声が、本人の意思とは関係なく繰り返し起きてしまう疾患。根本的な原因は解明されていない)
・ジスキネジー(目的に合致しない病的運動)

1.× 単一または複数の筋肉の目的のない反復する運動は、「チック」に該当する。
・チック障害(チック症)とは、本人の意思とは関係なく(不随意)・急に(突発的に)運動や発声が反復して起こる病態で、それぞれ運動性チック、音声チックと呼ばれる。 複数のタイプの症状が長期間続く場合は、トゥレット症候群と呼ぶ。

2.〇 正しい。一部の筋肉の突発的なすばやい収縮は、ミオクローヌスである。
・ミオクローヌスとは、自分の意志とは無関係な運動を起こす不随意運動の一つである。瞬間的にピクッと動くのが特徴である。

3.× ゆっくりと持続性のある運動は、「アテトーゼ」に該当する。
・アテトーゼとは、顔や手足をゆっくりと動かしてしまうものである。身体が突っ張ったり捻じれたりするジストニア、顔や手足をゆっくりと動かしてしまうアテトーゼ、踊るように身体を振ってしまう舞踏運動、上肢や下肢をいきなり大きく振り回してしまうバリズムなどがある。

4.× リズミカルに動くふるえは、「振戦」に該当する。
・振戦とは、律動的な不随意運動で、律動的な無目的の運動が、一部の筋や身体の一部、ときに全身に現れる。

 

 

 

 

 

問題25.レイノー現象をきたす疾患はどれか。

1.気管支喘息
2.肝硬変
3.多発性骨髄腫
4.全身性硬化症(強皮症)

解答

解説

レイノー現象とは?

Raynaud現象とは、四肢(特に手指)が蒼白化、チアノーゼを起こす現象である。手指の皮膚が寒冷刺激や精神的ストレスにより蒼白になり、それから紫色を経て赤色になり、元の色調に戻る一連の現象をいう。

1.× 気管支喘息は、レイノー現象の症状とはいえない。気管支喘息は、気道の過敏性・炎症(気道平滑筋の収縮とアレルギー反応)による呼吸器疾患でみられる。

2.× 肝硬変は、レイノー現象の症状とはいえない。肝硬変患者では「手掌紅斑」や「クモ状血管腫」がみられるが、これらは血管拡張によるものである。
・肝硬変とは、B型・C型肝炎ウイルス感染、多量・長期の飲酒、過栄養、自己免疫などにより起こる慢性肝炎や肝障害が徐々に進行して肝臓が硬くなった状態をいう。 慢性肝炎が起こると肝細胞が壊れ、壊れた部分を補うように線維質が蓄積して肝臓のなかに壁ができる。

3.× 多発性骨髄腫は、レイノー現象の症状とはいえない。骨髄腫ではM蛋白増加により血流粘度が上がる「過粘稠度症候群」が起こることがあるが、レイノー現象(一過性の血管れん縮)と異なる。

4.〇 正しい。全身性硬化症(強皮症)は、レイノー現象をきたす疾患である。
・全身性硬化症とは、強皮症ともいい、全身性の結合組織病変で、手指より始まる皮膚の硬化病変に加え、肺線維症などの諸臓器の病変を伴う。病因は不明であり、中年女性に多い。症状は、仮面様顔貌、色素沈着、ソーセージ様手指、Raynaud現象(レイノー現象)、嚥下障害、間質性肺炎、関節炎、腎クリーゼなどがある。

多発性骨髄腫とは?

 多発性骨髄腫は形質細胞がクローン性に増殖するリンパ系腫瘍である。増殖した形質細胞やそこから分泌される単クローン性免疫グロブリンが骨病変、腎機能障害、M蛋白血症などさまざまな病態や症状を引き起こす。多発性骨髄腫の発症年齢は65~70歳がピークで男性が女性より多く約60%を占める。腫瘍の増大、感染症の合併、腎不全、出血、急性白血病化などで死に至る。

 主な症状として、頭痛、眼症状の他に①骨組織融解による症状(腰痛・背部痛・圧迫骨折・病的骨折・脊髄圧迫症状・高カルシウム血症など)や②造血抑制、M蛋白増加による症状(貧血・息切れ・動悸・腎機能障害)、易感染性(免疫グロブリン減少)、発熱(白血球減少)、出血傾向(血小板減少)などである。

 

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