第24回(H28年)柔道整復師国家試験 解説【午前6~10】

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問題6.血圧を上昇させるのはどれか。

1.大出血
2.尿量増加
3.血管拡張
4.心拍出量増加

解答

解説

血圧とは?

血圧とは、心臓から送り出された血液が動脈の内壁を押す力のことである。血圧は、体のすべての血管にあるが、一般的に動脈特に上腕動脈の圧力を意味する。血圧の高さは、心臓が血液を押し出す力と血管の拡張で決まる。

1.× 大出血は、血圧を下げる
・血圧=心拍出量×末梢血管抵抗で決まる。大出血では循環血液量が減少し、静脈還流が減るため心拍出量が低下、結果として血圧が下がる。

2.× 尿量増加は、血圧を下げる。なぜなら、尿量が増えると体内の水分・Na⁺が減少し、循環血液量が減るため。これにより静脈還流が減少し、心拍出量も低下する。

3.× 血管拡張は、血圧を下げる
・血圧は心拍出量×末梢血管抵抗で決まる。血管拡張は末梢血管抵抗を減少させ、血圧は低下する。

4.〇 正しい。心拍出量増加は、血圧を上昇させる。
・血圧は心拍出量×末梢血管抵抗で決まる。例えば、交感神経が亢進(運動、闘争)すると心拍数・心筋収縮力が増加し、心拍出量が上がり、血圧も上昇する。

 

 

 

 

 

問題7.栄養素が吸収される主な部位はどれか。

1.食道
2.胃
3.小腸
4.大腸

解答

解説
1.× 食道とは、口から胃へ食塊を送る通路であり、蠕動運動による輸送が主な役割である。

2.× 胃は、栄養素の分解・消化が主で、吸収はごくわずかである。胃液(ペプシン・塩酸)によりタンパク質の分解が始まるが、吸収はほとんど行われない。

3.〇 正しい。小腸は、栄養素が吸収される主な部位である。小腸には、多数の絨毛があり、表面積が非常に広いため効率的に吸収できる。消化酵素の働きで分解された糖・アミノ酸・脂肪酸・ビタミン・ミネラルが吸収される。

4.× 大腸は、主に水分と電解質(Na⁺・Cl⁻など)の吸収を行う。

 

 

 

 

 

問題8.タイプⅡb線維と比べタイプⅠ線維の特性で正しいのはどれか。

1.筋線維径は太い。
2.単収縮の速度は遅い。
3.グリコーゲン含有量は高い。
4.ミトコンドリア量は少ない。

解答

解説

タイプⅠとタイプⅡ

タイプⅡb線維は速筋線維。ミトコンドリアは少ないが、ピルビン酸による瞬発的な収縮が可能である。
タイプⅠ線維は遅筋線維である。タイプⅠ線維(遅筋線維)の特徴は、ミトコンドリアやミオグロビンが多く、有酸素的エネルギー産生酵素も多いので持久力がある。

1.× 筋線維径は太いのは、タイプⅡb線維の特徴である。なぜなら、タイプⅡb線維(白筋線維)は短時間で強い力を出すため。

2.〇 正しい。単収縮の速度は遅い。なぜなら、タイプⅠ線維は、酸化的代謝(脂質と酸素を利用してATPを作る)が主体で、収縮速度は遅いが疲労しにくい特徴を持つため。

3.× グリコーゲン含有量は高いのは、タイプⅡb線維の特徴である。なぜなら、タイプⅠ線維は、酸化的代謝(脂質と酸素を利用してATPを作る)が主体であるため。したがって、グリコーゲン依存度は低い。

4.× ミトコンドリア量は少ないのは、タイプⅡb線維の特徴である。タイプⅡb線維は解糖系主体なのでミトコンドリアは少なく、白っぽく見える。

 

 

 

 

 

問題9.炎症で誤っているのはどれか。

1.急性炎症では血管透過性が亢進する。
2.慢性炎症の浸潤細胞は好中球が多い。
3.炎症性サイトカインの作用によって発熱する。
4.肉芽組織形成は組織の修復過程にみられる。

解答

解説

急性炎症の5徴候

急性炎症の5徴候は、発赤、発熱、腫脹、疼痛、機能障害である。急性は数日程度、亜急性は数週間程度、慢性は数か月から数年以上にわたって起こる現象を指して用いられることが多い。慢性炎症とは、急性炎症、組織損傷および治癒過程が同時進行している遷延した炎症である。線維化のような長期にわたる病態である。【炎症に対する身体の反応】身体では、炎症を鎮めるため血管の透過性を亢進させて、血中から水分や血漿タンパク質、白血球を炎症の場に導く。急性期に現場に駆けつける細胞は、好中球で、微生物や壊死組織を貧食し排除する。その後、マクロファージもこれに加わる。さらに、肉芽組織・修復・瘢痕化あるいは再生、予防に、リンパ球による免疫反応で備えることになる。しかし、ウイルス感染などでは、リンパ球が急性期から出現することが多い。

1.〇 正しい。急性炎症では血管透過性が亢進する腫脹)。急性炎症では、ヒスタミンやブラジキニンなどの化学伝達物質によって血管内皮の透過性が亢進し、血漿成分や白血球が組織へ移行する。これにより腫脹が生じる。

2.× 「慢性炎症」ではなく急性炎症の浸潤細胞は好中球が多い。
・好中球とは、白血球の中で一番多く、細菌免疫の主役である。マクロファージが好中球に指令し、好中球は活性化・増殖する。末梢血白血球の40~70%を占め、生体内に細菌・真菌が侵入すると、まず好中球が感染部位に遊走し、菌を貧食する。
・慢性炎症では持続的な免疫反応によりリンパ球やマクロファージが中心となる。

3.〇 正しい。炎症性サイトカインの作用によって発熱する。炎症性サイトカインが視床下部の体温中枢に作用し、プロスタグランジンE₂産生を介して発熱を起こす。例えば、インフルエンザや敗血症で高熱が出るのは、病原体そのものではなくサイトカインを介した発熱機序による。解熱薬(NSAIDs)はプロスタグランジン合成を抑制して熱を下げる。

4.〇 正しい。肉芽組織形成は組織の修復過程にみられる瘢痕)。肉芽組織は毛細血管・線維芽細胞・マクロファージからなる組織で、炎症の修復期に出現する。これが成熟して瘢痕組織へと置き換わる。

創傷の治癒過程とは?

①血液凝固期(術後~数時間後):出血による凝固塊が欠損をふさいで止血する時期である。
②炎症期(術直後~3日目ころ):炎症性細胞(好中球、単球、マクロファージなど)が傷に遊走して、壊死組織や挫滅組織などを攻める時期である。
③増殖期(3日目~2週間後):線維芽細胞が周辺から遊走して、細胞外マトリックスを再構築し、血管新生が起こり、肉芽組織が形成される時期である。
④成熟期(2週間~数か月後)(再構築期:リモデリング期):線維芽細胞が減り、線維細胞へと成熟し変化するじきである。コラーゲンの再構築が起き、創部の抗張力が高くなることで創傷が治癒していく。

 

 

 

 

 

問題10.吐しゃ物による汚染に用いられるのはどれか。

1.ポビドンヨード
2.クロルヘキシジン
3.消毒用エタノール
4.次亜塩素酸ナトリウム

解答

解説
1.× ポビドンヨードとは、皮膚や粘膜の消毒に、世界中で感染対策に使われている代表的な殺菌消毒剤の有効成分のひとつである。

2.× クロルヘキシジンとは、手術時手洗い、手術部位の皮膚、創傷部位(創傷周辺皮膚)、血管内留置カテーテル挿入部位の皮膚などに使用する。特にメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)に対しても有効である。

3.× 消毒用エタノールとは、施術者の手指消毒に広く消毒液として用いられる。皮膚や手術部位の消毒、医療器具の洗浄消毒などに用いられ、粘膜への使用は禁忌である。ノロウイルスには十分な効果は得られない。

4.〇 正しい。次亜塩素酸ナトリウムは、吐しゃ物による汚染に用いられる。次亜塩素酸ナトリウムとは、ノロウイルス感染症に罹患した患者の嘔吐物が床に飛び散っているこの処理に使用する消毒薬である。ノロウイルスの消毒には、通常のアルコール製剤や逆性石鹸は有効でないため、塩素系消毒剤(0.1%次亜塩素酸ナトリウム)を用いる。ただし、次亜塩素酸ナトリウムの注意点として、毒性が強く、吸い込んでしまったり、目に入ってしまった場合には呼吸器や粘膜へ損傷を与える危険を伴う。

 

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