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問題21 関節と良肢位の組合せで誤っているのはどれか。
1.肘関節:屈曲90度
2.手関節:屈曲30度
3.膝関節:屈曲10度
4.距腿関節:屈曲・伸展0度
答え.2
解説
良肢位とは、機能肢位ともいい、身体が何らかの理由で麻痺しているなど、関節が上手く動かせない状態にある患者を、日常生活を送る上でより過ごしやすい・動きやすい状態に保たせておくことができる肢位のことをさす。関節の拘縮や変形が起こる可能性や麻痺がある場合に、その位置に固定することで、日常生活への支障を最小限にとどめられる体位である。
・肩関節:外転10~30度
・肘関節:屈曲90度
・前腕 : 回内・回外中間位
・手関節:背屈10~20度
・股関節:屈曲10度、内旋・外旋中間位、外転0~10度
・膝関節:屈曲10度
・足関節:底屈0~10度
1.3~4.〇 正しい。肘関節:屈曲90度/膝関節:屈曲10度/距腿関節:屈曲・伸展0度(~10度)
関節と良肢位の組合せで正しい。
2.× 手関節は、「屈曲(掌屈)30度」ではなく伸展(背屈)10~20度である。
問題22 骨折の合併症で正しいのはどれか。
1.フォルクマン(Volkmann)拘縮は上腕骨骨幹部骨折で多くみられる。
2.過剰仮骨は血腫の分散および流出が原因である。
3.外傷性骨化性筋炎はスミス(Smith)骨折で多くみられる。
4.ズデック(Sudeck)骨萎縮はコーレス(colles)骨折でみられる。
答え.4
解説
複合性局所疼痛症候群(CRPS)は、軟部組織もしくは骨損傷後(Ⅰ型:反射性交感神経性ジストロフィー)または神経損傷後(Ⅱ型:カウザルギー)に発生して、当初の組織損傷から予測されるより重度で長期間持続する、慢性の神経障害性疼痛である。その他の症状として、自律神経性の変化(例:発汗、血管運動異常)、運動機能の変化(例:筋力低下、ジストニア)、萎縮性の変化(例:皮膚または骨萎縮、脱毛、関節拘縮)などがみられる。疼痛をコントロールしながら、左手(疼痛側)の使用機会を増やす介入が必要である。
1.× フォルクマン(Volkmann)拘縮は、「上腕骨骨幹部骨折」ではなく上腕骨遠位端骨折(上腕骨顆上骨折)で多くみられる。
フォルクマン拘縮とは、前腕屈筋群の虚血性壊死と神経の圧迫性麻痺により拘縮を起こすものである。骨折部の腫脹によって上腕動脈が圧迫され、血行障害が生じ、前腕屈曲群の虚血性壊死と神経圧迫麻痺(正中・尺骨神経麻痺)が起こり、特有の拘縮をきたすことをいう。前腕回内位、手関節屈曲位、母指内転、MP関節伸展、IP関節屈曲位の肢位をとる。Volkmann拘縮の症状として、①疼痛、②脈拍消失、③運動麻痺、④蒼白、⑤知覚麻痺、⑥腫脹などである。骨折による血管損傷が直接原因となる一次性のものと、遠位の組織の腫脹による循環障害が原因の二次性のものとがある。二次性のものには、ギプス固定などもその一因となるため、病院によっては屈曲位ギプスを決して行わず、入院して垂直牽引で保存的に加療するか、内反肘予防も含めて観血的整復固定術で早期に確実に治す方法を選択することも多い。
2.× 過剰仮骨は、「血腫の分散および流出」ではなく血腫そのものが原因である。
過剰仮骨形成とは、粉砕骨折、大血腫の存在、骨膜の広範な剥離、早期かつ過剰に行われた後療法などの仮骨形成を刺激する状態が持続した場合に発生する。血腫が消失した場合は仮骨形成を遷延させる原因となり遷延仮骨や偽関節の原因となる。
3.× 外傷性骨化性筋炎は、「スミス(Smith)骨折」ではなく打撲などの外傷で多くみられる。
骨化性筋炎とは、打撲などの外傷によって、筋肉の中に骨と同じような組織ができてしまう疾患のことである。外傷性骨化性筋炎、骨化性筋炎とも言う。 損傷を受けた筋肉が出血して血腫ができたところに、カルシウムが沈着し、石灰化しておこる。大腿部前面に強い打撲を受けた後によくみられる。
4.〇 正しい。ズデック(Sudeck)骨萎縮は、コーレス(colles)骨折でみられる。
Sudeck骨萎縮とは、骨折などの外傷、または、その手術の後に、急速な自発痛、運動痛、浮腫とともに著明な骨萎縮をきたす場合の骨変化のことである。骨折に合併した自律神経系の血管運動神経失調によって、末梢血管の血流不全から起こるものといわれている。Sudeck骨萎縮(ズデック骨萎縮)は、CRPS typeⅠに分類される。
・Smith骨折(スミス骨折):Colles骨折とは逆に骨片が掌側に転位する。
・Colles骨折(コーレス骨折):Smith骨折とは逆に骨片が背側に転位する。
・Barton骨折(バートン骨折):橈骨遠位部の関節内骨折である。遠位部骨片が手根管とともに背側もしくは掌側に転位しているものをいう。それぞれ背側Barton骨折・掌側Barton骨折という。
主な治療として、骨転位が軽度である場合はギプス固定をする保存療法、骨転位が重度である場合はプレート固定を行う手術療法である。
問題23 外傷性脱臼に合併する軟部組織損傷で最も多いのはどれか。
1.筋損傷
2.関節包損傷
3.神経損傷
4.血管損傷
答え.2
解説
外傷性脱臼とは、事故や転落などによって関節が脱臼することを指す。片方の関節に接触している場合を「亜脱臼」、関節同士が完全に離れている場合を「完全脱臼」という。外傷性脱臼は、肩関節(約50%)が最も多く、次いで肘関節である。外傷性脱臼の特徴として、捻挫や亜脱臼より高度な関節包や靭帯の損傷を伴う。
1.× 筋損傷より損傷されるものが他にある。
なぜなら、そもそも脱臼とは、関節を形成している骨が完全に離れることであるため。したがって、脱臼を呈すと、関節の軟部組織が損傷しやすい。ちなみに、筋肉は、関節をまたぐように付着しており、関節を動かす役割を持つ。
2.〇 正しい。関節包損傷は、外傷性脱臼に合併する軟部組織損傷で最も多い。
なぜなら、関節包は、関節を形成する骨を結びつけ、関節を安定化させる役割を果たすため。外力や事故などにより関節包が断裂すると、関節の位置がずれて脱臼する可能性がある。
3.× 神経損傷より損傷されるものが他にある。
なぜなら、そもそも脱臼とは、関節を形成している骨が完全に離れることであるため。神経は、動脈や静脈と一緒に走行しているが、関節周囲に必ずしも走行しているとは言えない。
4.× 血管損傷より損傷されるものが他にある。
なぜなら、そもそも脱臼とは、関節を形成している骨が完全に離れることであるため。神経は、動脈や静脈と一緒に走行しているが、関節周囲に必ずしも走行しているとは言えない。
問題24 顎関節前方脱臼で正しいのはどれか。
1.男子に多く発生する。
2.関節包が断裂する。
3.下顎歯列は上顎歯列の後方に転位する。
4.片側脱臼はオトガイが健側に偏位する。
答え.4
解説
1.× 「男子」ではなく女子に多く発生する。
顎関節前方脱臼の男女比は1:1.6程度とされている。ちなみに、顎関節症も女性のほうが2倍ほど多い。確実な原因はわかっていないが、その要因として、①一般に、女性の方が男性より靭帯が柔らかいこと、②顎関節の適合がしっかりしてないこと、③女性ホルモンとの関わりなどがあげられている。
2.× 必ずしも、関節包が「断裂する」とはいえない。
なぜなら、関節包とは、骨と骨があたる部分にはやわらかな軟骨があり、そのまわりは丈夫な袋の構造であるため。関節包の内面は、滑膜でおおわれ、滑膜から潤滑油のように滑らかな液が分泌されて、関節の滑りをよくしている。一般的な脱臼は、関節包を破って逸脱(関節包外脱臼)するが、肩関節や顎関節の脱臼の多くでは関節包を破ることなく逸脱(関節包内脱臼)する場合が多い。その結果、再発を繰り返す「反復性脱臼」に進展する例が多い。
3.× 下顎歯列は上顎歯列の「後方」ではなく前方に転位する。
顎関節脱臼とは、下顎頭が下顎窩から前方に転位し、顎運動障害が生じた状態である。
4.〇 正しい。片側脱臼はオトガイが健側に偏位する。
オトガイ部(頭部)が左側に偏位している場合、右顎関節が脱臼していることの示唆となる。
問題25 鎖骨骨折の症状で正しいのはどれか。
1.ピアノキーサインがみられる。
2.患側の肩が挙上する。
3.軋礫音を感知する。
4.肩幅が増大する。
答え.3
解説
1.× ピアノキーサインがみられるのは、鎖骨骨折ではなく肩鎖関節上方脱臼時である。
ピアノキー症状は、肩鎖関節脱臼では肩鎖関節のズレにより、鎖骨の外側の端が皮膚を持ち上げて階段状に飛び出して見えることである。上方に持ち上がった鎖骨の端を上から押すとピアノの鍵盤のように上下に動くこと。肩鎖関節の安定性が損なわれていることを示している。
2.× 患側の肩が「挙上」ではなく下垂する。
なぜなら、鎖骨骨折により、鎖骨につく筋肉(主に胸鎖乳突筋と僧帽筋)を弛緩させるため。鎖骨につく筋肉として、胸鎖乳突筋や僧帽筋、大胸筋などがあげられる。
3.〇 正しい。軋礫音を感知する。(※読み:あつれきおん)
なぜなら、骨折により骨折部位の動きや不安定さを示すため。ちなみに、軋轢音とは、骨折部位が擦れて軋む音をいう。
4.× 肩幅が「増大」ではなく減少する。
なぜなら、鎖骨骨折により、鎖骨につく筋肉(主に大胸筋)を弛緩させるため。鎖骨につく筋肉として、胸鎖乳突筋や僧帽筋、大胸筋などがあげられる。