第27回(H31年)柔道整復師国家試験 解説【午前16~20】

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問題16 疾患と原因の組合せで誤っているのはどれか。

1.内反肘:上腕骨顆上骨折
2.関節ねずみ:離断性骨軟骨炎
3.リトルリーグ肘:上腕骨内側上顆骨端線離開
4.テニス肘:上腕骨内側上顆炎

答え.4

解説
1.〇 正しい。上腕骨顆上骨折は、内反肘がみられる。
上腕骨顆上骨折とは、小児の骨折中最多であり、ほとんどが転倒の際に肘を伸展して手をついた場合に生じる。転移のあるものは、肘頭が後方に突出してみえる。合併症は、神経麻痺(正中・橈骨神経)、フォルクマン拘縮(阻血性拘縮)、内反肘変形などである。ちなみに、フォルクマン拘縮とは、前腕屈筋群の虚血性壊死と神経の圧迫性麻痺により拘縮を起こすものである。

2.〇 正しい。離断性骨軟骨炎は、関節ねずみがみられる。
肘離断性骨軟骨炎は、青年期に多くみられ、慢性炎症に分類される、肘への反復する負荷が原因となるスポーツ障害である。上腕骨小頭に好発する。関節遊離体とは、関節ねずみともいい、肘や膝などの関節部分にある骨や軟骨がはがれ落ち、関節内を動き回る物をいう。ロッキングは、膝が一定の角度で屈伸不能(特に完全伸展不能)になることである。原因として、半月板損傷後や関節遊離体などが断裂し、顆間窩に挟まれることによって生じる。

3.〇 正しい。上腕骨内側上顆骨端線離開は、リトルリーグ肘(野球肘)がみられる。
リトルリーグ肘とは、骨がまだでき上がっていない成長期の子供が、投球動作などを繰り返すことで、肘の内側の成長軟骨に損傷を起こしたものをいう。上腕骨内側上顆骨端線離開とは、投球時に内側の筋肉に引っ張られて肘の内側の出っ張り部分(内側上顆)の成長軟骨が上腕骨からはがれた状態である。

4.× テニス肘は、「上腕骨内側上顆炎」ではなく「上腕骨外側上顆炎」でみられる。
テニス肘とは、上腕骨外側上顆炎ともいい、手首を伸ばす筋肉に炎症が起こる病気である。はっきりした原因は不明であるが、主に手首を伸ばす筋肉に負担がかかることが関係していると考えられている。主な症状は、肘の外側から前腕の辺りに痛みである。

 

 

 

 

 

問題17 大腿骨骨折で近位骨片が屈曲・外転・外旋転位するのはどれか。

1.上1/3部の骨折
2.中1/3部の骨折
3.下1/3部の骨折
4.顆上伸展型骨折

答え.1

解説

大腿骨近位部骨折とは?

大腿骨近位部骨折は頸部骨折・転子部骨折、転子下骨折を含む総称である。高齢者など骨粗鬆症に多い骨折である。閉経後女性ホルモンなどの関係もあり女性に多くみられる。

1.〇 正しい。上1/3部の骨折は、近位骨片が屈曲・外転・外旋転位する。
なぜなら、腸腰筋・中殿筋が近位骨片を引っ張り上げるため。ちなみに、遠位骨片は、内上方へ短縮転位する。

2.× 中1/3部の骨折は、近位骨片が屈曲・内転転位する。
なぜなら、大内転筋などの股関節内転筋群が引っ張り上げるため。ちなみに、遠位骨片は後上方へ短縮転位する。

3.× 下1/3部の骨折は、遠位骨片が中間位である。
なぜなら、大腿四頭筋が中立に働くため。ちなみに、遠位骨片は後法に転位・短縮する。

4.× 顆上伸展型骨折は、近位骨片が後方に、遠位骨片が前方に転位する。
なぜなら、近位骨片はハムストリングスが、遠位骨片は大腿四頭筋が優位に働くため。

 

 

 

 

 

問題18 病的脱臼でないのはどれか。

1.反復性脱臼
2.麻痺性脱臼
3.拡張性脱臼
4.破壊性脱臼

答え.1

解説

病的脱臼とは?

病的脱臼とは、関節の組織自体に異常があり、わずかな力でも、ずれたり外れたりする脱臼のことである。関節包の断裂はないことが特徴である。3種類あげられる。①拡張性脱臼:股関節結核、急性化膿性股関節炎など、破壊性脱臼:関節リウマチなど、麻痺性脱臼:片麻痺の関節不全脱臼など。

1.× 反復性脱臼は、病的脱臼でない。
反復性肩関節脱臼とは、一度大きなけがをして肩を脱臼した方が、その後脱臼を繰り返してしまうものを指す。肩関節、顎関節、膝蓋骨などに発生しやすい。ほかにも、習慣性脱臼や随意性脱臼などは病的脱臼に含まれない。

2.〇 正しい。麻痺性脱臼は、病的脱臼である。
麻痺性脱臼とは、麻痺によって関節が支えられなくなり脱臼してしまうことを指す。片麻痺(脳血管障害)、神経麻痺、脳性麻痺などでみられる。

3.〇 正しい。拡張性脱臼は、病的脱臼である。
拡張性脱臼とは、関節が拡張することで脱臼したものを指す。股関節結核、急性化膿性股関節炎などがあげられる。

4.〇 正しい。破壊性脱臼は、病的脱臼である。
破壊性脱臼とは、関節面や関節包が破壊されることで脱臼したものをさす。関節リウマチがあげられる。

 

 

 

 

 

問題19 高齢者骨折の特徴で正しいのはどれか。

1.関節拘縮が少ない。
2.骨膜の連続性は保たれやすい。
3.海綿骨の多い部位に発生しやすい。
4.阻血性壊死を生じやすい。

答え.3

解説

高齢者の4大骨折

骨粗鬆症は閉経後の女性に多く、骨の変形や痛み、易骨折性の原因となる。高齢者に多い骨折は①大腿骨頸部骨折、②脊椎圧迫骨折、③橈骨遠位端骨折、④上腕骨頸部骨折などがあり、これらは「高齢者の4大骨折」と呼ばれている。

1.× 関節拘縮が「少ない」ではなく多い
なぜなら、高齢者は若年者と比較すると運動量が少なく、離床が進みにくいため。離床の遅延により、筋肉の萎縮や関節の拘縮が起こりやすい。

2.× 骨膜の連続性は保たれ「にくい」。
骨膜の連続性が保たれやすいのは、小児の骨である。小児の骨は高齢者の骨と比較すると、柔軟性に富んでおり、厚い骨膜が骨の周りを取り囲んでいるため、大きな外力が加わっても連続性が絶たれづらく転位(ズレ)が生じにくい。

3.〇 正しい。海綿骨の多い部位に発生しやすいことは、高齢者骨折の特徴である。
高齢者の骨折は、一般的に骨粗鬆症が背景として考えられ、骨が脆くなったスポンジ状骨(骨の内部の網目状の部分)で起こる。ちなみに、骨には、①外側(皮質骨:緻密骨)と②内側(海綿骨)がある。海綿骨の表面は、皮質骨(緻密骨)で覆われ、その外層に骨膜が存在する。

4.× 阻血性壊死を生じやすいとはいえない
なぜなら、阻血性壊死が生じやすい骨は、血流が遮断されやすい特定の骨であるため。阻血性骨壊死とは、骨壊死または骨梗塞ともいい、血液供給が阻害されることによりおこる骨組織の壊死である。 早期段階では、症状がみられない場合がある。 悪化していくと関節の痛みが増し、動きが制限されることがある。骨壊死が最も起こりやすい部位は、大腿骨頭、膝関節、肩関節の上腕骨頭などである。 男性および30~50歳で起こることが最も多く、しばしば両股関節や両肩関節に起こる。危険因子には、骨折、関節脱臼、アルコール依存症、高用量ステロイドの使用などがあげられる。また、この症状は、明確な理由が無くても発生する場合もある。 

 

 

 

 

 

問題20 骨折の合併症とその原因の組合せで誤っているのはどれか。

1.化膿性骨髄炎:開放性骨折
2.過剰仮骨形成:粉砕骨折
3.脂肪塞栓:骨盤骨折
4.無腐性骨壊死:助骨骨折

答え.4

解説
1.〇 正しい。開放性骨折は、化膿性骨髄炎がみられる。
開放骨折とは、骨折した骨の端が皮膚を突き破って露出したりして、骨折部とつながる傷が皮膚にあるものを指す。この露出により、感染症を生じやすい。一方、化膿性骨髄炎とは、骨髄を中心に骨皮質や骨膜にも細菌が感染して起こる炎症である。代表的な病原体は黄色ブドウ球菌(MRSAを含みます)であり、その他にもA群溶連菌、B群溶連菌、サルモネラ菌、肺炎球菌、緑膿菌などがあげられる。

2.〇 正しい。粉砕骨折は、過剰仮骨形成がみられる。
粉砕骨折とは、ばらばらに折れるような折れ方をした骨折を指す。一方、過剰仮骨形成とは、粉砕骨折、大血腫の存在、骨膜の広範な剥離、早期かつ過剰に行われた後療法などの仮骨形成を刺激する状態が持続した場合に発生する。血腫が消失した場合は仮骨形成を遷延させる原因となり遷延仮骨や偽関節の原因となる。

3.〇 正しい。骨盤骨折は、脂肪塞栓がみられる。
脂肪塞栓の原因として、骨折時に血管内の脂肪代謝や損傷した血管から骨髄などの脂肪が静脈から侵入し塞栓を起こす。症状は、受傷後から12~48時間で発症し、発熱や頻脈に始まり胸部や腋などに点状の出血斑が出現する。脂肪が肺動脈や脳血管を塞栓した場合、生死に関わることもある為注意が必要である。

4.× 無腐性骨壊死でみられるのは、「助骨骨折」ではなく距骨骨折や舟状骨骨折である。
無腐性骨壊死とは、血流の低下または遮断により骨組織が壊死する状態を指す。血流が阻害されやすい距骨骨折や舟状骨骨折に起こりやすい。

偽関節とは?

偽関節とは、骨折部位の癒合がうまくいかず、骨折部が可動性を持つ状態のことである。偽関節が生じやすい部位は、①上腕骨解剖頸、②手の舟状骨、③大腿骨頸部、④脛骨中下1/3、⑤距骨である。ちなみに、開放骨折・粉砕骨折・整復後も離開が生じている骨折では、部位によらず骨癒合は遷延しやすい。

 

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