第27回(H31年)柔道整復師国家試験 解説【午前76~80】

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問題76 上皮小体ホルモンの作用で正しいのはどれか。

1.骨吸収を増加させる。
2.ビタミンDを不活化する。
3.腎臓からのカルシウムイオン排泄を増加させる。
4.消化管からのカルシウムイオン吸収を低下させる。

答え.1

解説

上皮小体ホルモンとは?

上皮小体ホルモンとは、副甲状腺ホルモン、パラトルモンともいい、血液のカルシウムの濃度を増加させるように働く。

1.〇 正しい。骨吸収を増加させる
上皮小体ホルモンとは、副甲状腺ホルモン、パラトルモン(パラソルモン)ともいい、血液のカルシウムの濃度を増加させるように働く。ちなみに、骨吸収とは、その名の通り骨組織の吸収であり、つまり、破骨細胞が骨の組織を分解してミネラルを放出し、骨組織から血液にカルシウムが移動するプロセスである。

2.× ビタミンDを「不活化」ではなく活性化する。
副甲状腺ホルモンは、活性型ビタミンDと共に、カルシウム代謝の維持・調節において必須の役割を担っている。

3.× 腎臓からのカルシウムイオン排泄を「増加」ではなく抑制させる。
なぜなら、上皮小体ホルモンは、血液のカルシウムの濃度を増加させるように働くため。腎臓でのカルシウム再吸収を促進し、尿中へのカルシウムの排泄を抑え、血液中のカルシウム濃度が保たれる。

4.× 消化管からのカルシウムイオン吸収を「低下」ではなく促進させる。
なぜなら、副甲状腺ホルモンは、ビタミンDの活性化とともに働くため。ビタミンDの働きは、腸管からのカルシウムの吸収や骨・筋の同化作用などである。

 

 

 

 

 

問題77 副交感神経系の活性化で生じるのはどれか。

1.散瞳
2.唾液分泌の抑制
3.心拍数の減少
4.腸管運動の抑制

答え.3

解説
1.× 散瞳は、交感神経系の活性化で生じる。
一方、副交感神経優位で縮瞳となる。

2.× 唾液分泌の抑制は、交感神経系の活性化で生じる。
一方、副交感神経優位で、唾液分泌の促進となる。

3.〇 正しい。心拍数の減少は、副交感神経系の活性化で生じる。
一方、交感神経優位で、心拍数の増加となる。

4.× 腸管運動の抑制は、交感神経系の活性化で生じる。
一方、副交感神経優位で、腸管運動の促進となる。腸管運動(蠕動運動)とは、管腔臓器において中枢側(口側)が収縮し末梢側(肛門側)が弛緩することで、末梢側(肛門側)に尿や消化管内容物を押し出していく運動のことである。

”二重支配一覧”

・血管(交:収縮、副:弛緩)
・涙腺(交:涙出ない、副:涙する)
・瞳孔(交:拡大、副:縮小)
・唾液腺(交:濃い、副:薄い)
・肺、気管(交:拡張、副:縮小)
・心臓(交:増加、副:減少)
・肝臓(交:分解、副:合成)
・膵臓(交:分泌減少、副:分泌増加)
・胃(交:消化抑制、副:消化促進)
・大腸~直腸(交:蠕動抑制、副:蠕動促進)
・膀胱(交:蓄尿、副:放尿)

 

 

 

 

 

問題78 大脳基底核の障害で認められるのはどれか。

1.企図振戦
2.推尺障害
3.筋緊張異常
4.バビンスキー反射

答え.3

解説

大脳基底核とは?

大脳基底核は、①線条体(被殻 + 尾状核)、②淡蒼球、③黒質、④視床下核である。骨格筋の不随意運動に関与する。

1.× 企図振戦は、小脳の障害で起こる。
企図振戦とは、安静時にはほとんど生じないが、運動時、特に運動終了直前に生じる律動的な運動疾患である。

2.× 推尺障害(※読み:すいしゃくしょうがい)は、小脳の障害で起こる。
推尺障害とは、測定障害ともいい、目標物の距離を正確にとらえられない状態である。

3.〇 正しい。筋緊張異常は、大脳基底核の障害で認められる。
大脳基底核は運動制御に関与しており、障害を受けると、筋緊張異常(過剰な筋肉の張りや筋肉の弱さ)を含む様々な運動障害が生じます。パーキンソン病は、大脳基底核の一部が損傷することにより筋緊張異常が生じる一例である。ちなみに、パーキンソン病とは、黒質のドパミン神経細胞の変性を主体とする進行性変成疾患である。4大症状として①安静時振戦、②筋強剛(筋固縮)、③無動・寡動、④姿勢反射障害を特徴とする。また、自律神経障害による便秘や起立性低血圧、排尿障害、レム睡眠行動障害などが起こる。レム睡眠行動障害とは、レム睡眠の時期に体が動き出してしまう睡眠障害の1つである。 睡眠時随伴症に分類される。

4.× バビンスキー反射は、錐体路障害で陽性となる。
バビンスキー反射は、下肢の病的反射のひとつである。皮膚への刺激によって母趾がゆっくりと背屈すれば陽性(母趾現象または伸展足底反射)ときには他の4指が開く(開扇現象)。正常では足底反射より母趾屈曲が起こる。ちなみに、錐体路とは、大脳皮質運動野―放線冠―内包後脚―大脳脚―延髄―錐体交叉―脊髄前角細胞という経路をたどる。

小脳運動失調症

①測定障害:目標物の距離を正確にとらえられない。
②反復拮抗運動障害:拮抗筋の動きの切り替えがスムーズにできない。
③運動分解:運動軌道が円滑ではない。
④協働収縮不能:複雑な動きを段階的かつ協調的に働かせることができない症状のことを指す。例えば、「後ろへ反り返る」という指示があった場合、同時に膝を曲げてバランスをとるという動作が障害され、後方へ転倒しそうになる。また、背臥位で腕を組んだまま起き上がることができない。
⑤企図振戦:随意運動しようとすると粗大な振戦が出現する。
⑥時間測定異常:動作が遅れる。

 

 

 

 

 

問題79 脊髄反射はどれか。

1.頸反射
2.屈曲反射
3.立ち直り反射
4.前庭迷路反射

答え.2

解説
1.× 頸反射は、脳幹を中枢とする姿勢反射である。
頸反射のひとつでもある非対称性緊張性頸反射(ATNR)は、生後からみられ生後4~6ヵ月ごろには消失する。背臥位にした子どもの顔を他動的に一方に回すと、頸部筋の固有感覚受容器の反応により、顔面側の上下肢が伸展し、後頭側の上下肢が屈曲する。

2.〇 正しい。屈曲反射は、脊髄反射である。
逃避反射とは、屈曲反射ともいい、四肢の皮膚に強い刺激(痛み刺激)を加えると、その肢が屈曲する反射である。背臥位の新生児の足底を刺激すると下肢を屈曲させて足をひっこめる。胎児期後期から、生後1、2ヵ月までに消失する。

3.× 立ち直り反射は、脳幹を中枢とする姿勢反射である。
視性立ち直り反射(視覚性立ち直り反応)は、腹臥位:3ヵ月、座位・立位:5~6ヵ月に出現し生涯継続する。視覚刺激の誘発により、頭部の位置を正常に保持する反射のことで、例えば座位の場合、を座らせて左右に傾けると頭を垂直にしようとする。視性の刺激が立ち直りに関与する。

4.× 前庭迷路反射は、脳幹を中枢とする姿勢反射である。
前庭迷路反射は、耳の内部にある前庭系と大脳を結ぶ神経経路によって調節され、主に平衡と体の姿勢を維持する。内耳前庭器官を受容器として生じ、回転運動やその他の身体の動きによって、前庭器官内部の感覚細胞の上にあるクプラ、耳石膜などに流動圧、内圧、ずれなどが加わると、それらの神経情報は前庭神経を伝わって延髄内に分布する前庭神経核に伝わり、さらに上位の中枢にまで送られ反射運動を生じる。

 

 

 

 

 

問題80 骨格筋Ⅰ型筋線維の特徴はどれか。

1.収縮が速い。
2.筋疲労しにくい。
3.ミオグロビンが少ない。
4.ミトコンドリアが少ない。

答え.2

解説

骨格筋の筋線維のタイプ

タイプⅡB(速筋)は、最も収縮能が高く、収縮速度も速いが疲労速度も速い。
タイプⅡAは、収縮能は中等レベルであり、収縮速度・疲労速度は速い。(人には少ない)
タイプⅠ(遅筋)は、収縮能は低く収縮速度も遅いが、疲労速度が遅い。

1.× 収縮が速いのは、タイプⅡB(速筋)である。

2.〇 正しい。筋疲労しにくいのは、タイプⅠ(遅筋)である。
タイプⅠ線維(遅筋線維)の特徴は、ミトコンドリアやミオグロビンが多く、有酸素的エネルギー産生酵素も多いので持久力がある。

3.× タイプⅠ(遅筋)は、ミオグロビンが「少ない」のではなく多い
ミオグロビンが少ないのは、タイプⅡb線維(速筋線維)である。そもそもミオグロビンとは、筋肉中にあって酸素分子を代謝に必要な時まで貯蔵する色素タンパク質である。球体の濾過膜を通過し、尿中に排泄される。激しい筋肉運動では筋肉中のミオグロビンが細胞膜の透過性の亢進のために逸脱するため高値となる。

4.× タイプⅠ(遅筋)は、ミトコンドリアが「少ない」のではなく多い
ミトコンドリアが少ないのは、タイプⅡb線維(速筋線維)である。ミトコンドリアとは、細胞内に存在する細胞内小器官で、 ATPの生成やアポトーシス(細胞死)において重要な働きを担っている。

 

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