第27回(H31年)柔道整復師国家試験 解説【午前81~85】

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問題81 骨格筋の収縮時にカルシウムイオンが結合するのはどれか。

1.アクチン
2.ミオシン
3.トロポニン
4.トロポミオシン

答え.3

解説

筋収縮の機序

【筋収縮の機序】
①筋小胞体から放出されたCa2+がトロポニンと結合する。
②ATPエネルギーを利用したミオシンの頭部首振り運動が起こる。
③アクチンフィラメントを引き寄せながらミオシンフィラメント上を滑走して筋収縮が起こる。

【運動による筋疲労によって起こる事象】
①代謝産物の蓄積(乳酸の増加やpHの低下)
②エネルギー供給率の低下(ATP低下、ADP増加、グリコーゲン低下)
③興奮収縮連関不全(筋小胞体へのCa2+取り込み低下)

1~2.× アクチン/ミオシンは、筋収縮のための主要な構造要素であり、相互作用して筋収縮を引き起こす。
【筋収縮の機序】①筋小胞体から放出されたCa2+がトロポニンと結合する。②ATPエネルギーを利用したミオシンの頭部首振り運動が起こる。③アクチンフィラメントを引き寄せながらミオシンフィラメント上を滑走して筋収縮が起こる。

3.〇 正しい。トロポニンは、骨格筋の収縮時にカルシウムイオンが結合する。
トロポニンとは、心筋に特異的に含まれる物質で、心筋が障害を受けたときに血液中で増える物質で、筋収縮の機序としては、①筋小胞体から放出されたCa2+がトロポニンと結合する。

4.× トロポミオシン
トロポミオシンとは、アクチンの働きを調節する繊維状のアクチン結合タンパク質である。筋小胞体からCa2+放出により筋収縮が開始される。その後、カルシウムイオンはトロポニンと結合し、その立体構造を変えてトロポミオシンをアクチンのミオシン結合部位から引き離す。ちなみに、カリウムイオン(K+)は、細胞内液で最も多い陽イオンである。

 

 

 

 

 

問題82 誘発筋電図におけるH波で正しいのはどれか。

1.脊髄を介して発生する。
2.M波より短い潜時で発生する。
3.筋を電気刺激することで発生する。
4.α運動神経を電気刺激することで発生する。

答え.1

解説
1.〇 正しい。脊髄を介して発生する
H波とは、感覚神経刺激による発生したインパルスが求心性線維を上行し、後根より脊髄内に入り、脊髄前角細胞を単シナプス性に興奮させ、これにより発生したインパルスが前根より遠心性に運動神経を下行し出現する電位である。

2.× M波より「短い」より長い潜時で発生する。
なぜなら、H波が脊髄を介して伝達されることにより、M波が直接筋肉を刺激する結果として発生するのに対して、H波はより間接的に発生するため。ちなみに、潜時とは、刺激を与えてからM波が立ち上がるまでの時間のことである。遠位の潜時の遅延があると、刺激部位より遠位での障害が考えられ、絞扼性末梢神経障害などの存在が示唆される。

3.× 筋を電気刺激することで発生するのは、H波ではなく「M波」である。

4.× α運動神経を電気刺激することで発生するのは、H波ではなく「M波」である。
M波とは、神経の遠心性神経(α運動ニューロン)が直接刺激されて筋が興奮するために起こる波である。刺激を強めるとM波は一層大きくなり、H波は小さくなり、やがて消失する特徴を持つ。H波の潜時は20〜30ミリ秒、M波の潜時は数ミリ秒潜時はM波はH波より短い。

 

 

 

 

 

問題83 頭部の直線加速度を感知するのはどれか。

1.蝸牛
2.耳石器
3.耳小骨
4.半規管

答え.2

解説

(※画像引用:やまだカイロプラクティック院様)

1.× 蝸牛
蝸牛とは、中耳から伝えられた音波を感じとり、それがどのような音であったかを分析して、聴神経(蝸牛神経)を通して脳へ伝える役割を持つ。

2.〇 正しい。耳石器は、頭部の直線加速度を感知する。
半規管とは、頭部を回転した場合に生じる回転加速度(角加速度)を受容し、耳石器(卵形嚢と球形嚢)は、頭部の傾きや乗り物やエレベーターに乗った場合に生じる直線加速度を受容する(頭部の傾きの検出も、重力方向、すなわち直線加速度を感知することである)。外側半規管は水平面に反応、前半規管は前額面に反応、後半規管は矢状面に反応する。

3.× 耳小骨
耳小骨(ツチ骨・キヌタ骨・アブミ骨)は、中耳にあり、鼓膜と内耳の間で音の振動を伝達する役割を果たしている。前庭窓とは、中耳の鼓室の内耳側の壁にある小孔である。中耳ではあぶみ骨に連なっており、内耳の前庭へ通ずる。

4.× 半規管
三半規管とは、①外側半規管、②前半規管、③後半規管の3つの半規管の総称である。すべての半規管は、頭が回転するときの方向速さを感知する役割があり、外側半規管は水平回転(左右、 横方向の回転)、前半規管と後半規管は垂直回転 (上下、縦方向の回転)を感じ取る。

 

 

 

 

 

問題84 卵胞刺激ホルモンで正しいのはどれか。

1.精子形成を促進する。
2.視床下部で合成される。
3.ライディッヒ細胞に作用する。
4.アンドロゲン合成を促進する。

答え.1

解説

卵胞刺激ホルモンとは?

卵胞刺激ホルモンとは、卵胞期に増加する。卵胞刺激ホルモンは、脳下垂体前葉から合成・分泌される。卵胞刺激ホルモンと黄体形成ホルモンを性腺刺激ホルモンと呼ぶ。卵胞刺激ホルモンは、卵巣の卵胞の成熟を促進し、エストロゲンの分泌を刺激する。

1.〇 正しい。精子形成を促進する
卵胞刺激ホルモンは、黄体刺激ホルモンと同様に、脳の下垂体から分泌されており、男性の精巣に働きかける作用も持つ。この数値が低いと、下垂体の機能に問題がある可能性があり、逆に黄体刺激ホルモンや卵胞刺激ホルモンの数値が高すぎると、精巣での精子の形成がうまくできていない疑いがある。

2.× 「視床下部」ではなく下垂体で合成される。
卵胞刺激ホルモンは、脳下垂体前葉で合成・分泌される。ただ、卵胞刺激ホルモンの分泌は、視床下部で分泌されるゴナドトロピン放出ホルモンによって調節される。

3.× ライディッヒ細胞に作用するのは、「黄体形成ホルモン」である。
ライディッヒ細胞とは、黄体形成ホルモンの刺激を受け、テストステロンを産生・分泌し、精子形成に関与する。ライディッヒ細胞とは、間細胞(間質細胞)ともよばれ、脂質顆粒を含み、滑面小胞体がよく発達しており、テストステロン(雄性ホルモン、アンドロゲン)は主としてここから分泌される。精巣には、精子形成の場である細精管のほかに、血管、リンパ管、神経、肥満細胞、および間細胞(間質細胞)がある。

4.× アンドロゲン合成を促進するのは、ゴナドトロピン放出ホルモンである。
卵胞刺激ホルモンは、脳下垂体前葉で合成・分泌される。ただ、卵胞刺激ホルモンの分泌は、視床下部で分泌されるゴナドトロピン放出ホルモンによって調節される。

 

 

 

 

 

問題85 妊娠初期に分泌が最大となるのはどれか。

1.エストロゲン
2.プロラクチン
3.プロゲステロン
4.ヒト絨毛性性腺刺激ホルモン

答え.4

解説

妊娠週数

・妊娠初期:妊娠1か月~4か月(妊娠0~15週)
・妊娠中期:妊娠5か月~7か月(妊娠16~27週)
・妊娠後期:妊娠8か月~10か月(妊娠28週~)

1.× エストロゲンは、妊娠後期にかけ最大となる。
エストロゲンとは、女性らしさをつくるホルモンで、成長とともに分泌量が増え、生殖器官を発育・維持させる働きをもっている。女性らしい丸みのある体形をつくったり、肌を美しくしたりする作用もあるホルモンである。分泌量は、毎月の変動を繰り返しながら20代でピークを迎え、45~55歳の更年期になると急激に減る。

2.× プロラクチンは、分娩直前から出産直後にかけ最大となる。
プロラクチン(乳腺刺激ホルモン)は、脳の下垂体から分泌され、妊娠すると高くなり乳腺を成長させ乳汁産生を行う。授乳期間中は乳頭の刺激で高くなり乳汁を分泌する。

3.× プロゲステロンは、妊娠前(着床前)が最大となる。
プロゲステロン(黄体ホルモン)は、基礎体温を上げ、受精卵が着床しやすい状態にする作用を持つ。プロゲステロン(黄体ホルモン)は、性周期が規則的で健常な成人女性において、着床が起こる時期に血中濃度が最も高くなるホルモンである。着床が起こる時期とは、月経の黄体期である。黄体期は、排卵した後の卵胞(黄体)から黄体ホルモン(プロゲステロン)が分泌されるようになる時期である。

4.〇 正しい。ヒト絨毛性性腺刺激ホルモンは、妊娠初期に分泌が最大となる。
hCG<ヒト絨毛性ゴナドトロピン>は、主に絨毛組織において産生され、妊娠初期の卵巣黄体を刺激してプロゲステロン産生を高め、妊娠の維持に重要な働きをしているほか、胎児精巣に対する性分化作用や母体甲状腺刺激作用も報告されている。

 

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