第28回(R2年)柔道整復師国家試験 解説【午前16~20】

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問題16 肘関節後方脱臼で正しいのはどれか。

1.ヒューター三角は正常である。
2.肘関節は直角位に固定される。
3.前腕長は短縮して見える。
4.自動運動は可能である。

答え.3

解説

(※図引用:「上腕骨 完全脱臼」illustAC)

肘関節後方脱臼とは?

好発:青壮年
原因:①肘関節過伸展の強制:肘関節伸展位で手をつく(転倒などの強い衝撃)
【症状】関節包前方断裂、疼痛、肘関節屈曲30度で弾発性固定、自動運動不可、肘頭の後方突出、上腕三頭筋腱が緊張(索状に触れる)、ヒューター三角の乱れ(肘頭高位)、前腕の短縮
【固定肢位】肘関節90°屈曲、前腕中間位(回内位も)
【固定範囲】上腕近位部からMP関節手前まで
【固定期間】靭帯損傷なし:3週間、不安定性がある場合4週間

1.× ヒューター三角は、「正常」ではなく乱れる
ヒューター三角の乱れ(肘頭高位)となる。Hüter三角(ヒューター三角)とは、肘関節屈曲位で内側上顆・外側上顆・肘頭を結ぶ二等辺三角形のことである。

2.△ 肘関節は直角位に固定される(※分かる方いらしたらコメント欄にて教えてください)。
正しい??固定肢位は、肘関節90°屈曲、前腕中間位(回内位も)とする。これは、上腕二頭筋・上腕三頭筋、そのほか肘関節の周りの軟部組織(関節包)にストレスがかかりにくいため。

3.〇 正しい。前腕長は短縮して見える
なぜなら、ヒューター三角の乱れ(肘頭高位)となるため。【症状】関節包前方断裂、疼痛、肘関節屈曲30度で弾発性固定、自動運動不可、肘頭の後方突出、上腕三頭筋腱が緊張(索状に触れる)、ヒューター三角の乱れ(肘頭高位)、前腕の短縮

4.× 自動運動は「可能」ではなく困難である。
なぜなら、関節包前方断裂、疼痛が強く、関節の安定性が損なわれているため。自動運動によりさらなる症状の悪化が懸念される。

脱臼の固有症状とは?

①弾発性固定:脱臼した位置で関節が動かなくなる状態をいう。患部を押しても反発するか、動いてもまた脱臼した位置に戻ろうとする特徴がある。

②変形:関節が元の位置から逸脱するために、見た目にも変形がみられる。一度脱臼すると、関節の構造が破壊されてしまったり、靭帯や関節包が緩んでしまったりすることで不安定性が残る可能性がある。特に肩関節は、再負傷しやすいといわれている(反復性脱臼)。

 

 

 

 

 

問題17 肘内障で正しいのはどれか。

1.橈骨近位部に変形がみられる。
2.前腕回外強制で疼痛の増強がみられる。
3.腕尺関節に限局した圧痛がみられる。
4.肘関節部に腫脹がみられる。

答え.2

解説

肘内障とは?

肘内障とは、乳幼児に特有の外傷で、橈骨頭が引っ張られることによって、橈骨頭を取り巻いている輪状靭帯と回外筋が橈骨頭からずれた状態(亜脱臼)になったものである。5歳くらいまでの子どもに発症する。 輪状靭帯の付着がしっかりする6歳以降では起こりにくい。

1.× 橈骨近位部に「変形」ではなく亜脱臼がみられる。
肘内障とは、乳幼児に特有の外傷で、橈骨頭が引っ張られることによって、橈骨頭を取り巻いている輪状靭帯と回外筋が橈骨頭からずれた状態(亜脱臼)になったものである。

2.〇 正しい。前腕回外強制で疼痛の増強がみられる
なぜなら、橈骨頭を取り巻いている輪状靭帯と回外筋が橈骨頭からずれた状態(亜脱臼)になっているため。つまり、炎症をきたしている輪状靭帯にストレスが加わる。

3.× 「腕尺関節」ではなく近位橈尺関節に限局した圧痛がみられる。
腕尺関節とは、上腕骨と尺骨で構成されている関節である。近位橈尺関節とは、橈骨と尺骨で構成されている関節である。

4.× 「肘関節部」ではなく近位橈尺関節に腫脹がみられる。
肘関節部というと、肘関節全体(肘関節の尺側)も含まれる。

 

 

 

 

 

問題18 スミス(Smith)骨折の遠位骨片転位はどれか。

1.掌側・尺側・短縮・回内転位
2.掌側・尺側・短縮・回外転位
3.掌側・橈側・短縮・回内転位
4.掌側・橈側・短縮・回外転位

答え.3

解説

橈骨遠位端骨折

・Smith骨折(スミス骨折):Colles骨折とは逆に骨片が掌側に転位する。
・Colles骨折(コーレス骨折):Smith骨折とは逆に骨片が背側に転位する。
・Barton骨折(バートン骨折):橈骨遠位部の関節内骨折である。遠位部骨片が手根管とともに背側もしくは掌側に転位しているものをいう。それぞれ背側Barton骨折・掌側Barton骨折という。

主な治療として、骨転位が軽度である場合はギプス固定をする保存療法、骨転位が重度である場合はプレート固定を行う手術療法である。

コーレス骨折(橈骨遠位端部伸展型骨折)は、橈骨遠位端骨折の1つである。 橈骨が手関節に近い部分で骨折し、遠位骨片が手背方向へ転位する特徴をもつ。合併症には、尺骨突き上げ症候群、手根管症候群(正中神経障害)、長母指伸筋腱断裂、複合性局所疼痛症候群 (CRPS)などがある。

スミス骨折とは、橈骨遠位端骨折のひとつで、遠位骨片が掌側に転位しているのが特徴である。手首が強制的に掌屈されるとき(手首が手の掌側に曲がる動き)に起こりやすい。通常、受傷直後に痛みや腫れなどの明らかな症状がある。したがって、選択肢3.掌側・橈側・短縮・回内転位は、スミス骨折の遠位骨片転位である。

1~2.4.× 掌側・尺側・短縮・回内転位/掌側・尺側・短縮・回外転位/掌側・橈側・短縮・回外転位
スミス骨折の遠位骨片転位の特徴とはいえない。

 

 

 

 

 

問題19 インピンジメントサインで検者の立ち位置はどれか。

1.健側前方
2.健側後方
3.患側前方
4.患側後方

答え.4

解説

インピンジメントとは?

インピンジメントの検査には、①Neerテスト、②Hawkinsテストがある。①Neerテスト(ニアテスト)は、患者の後側方に立ち、一方の手で肩甲骨を保持し、もう一方の手で上肢(回内位)を最大挙上させ、大結節を肩峰前縁に圧迫させる。挙上90°~120°で疼痛が誘発されれば陽性である。②Hawkinsテスト(ホーキンズテスト)は、患者の腕を90度まで上げ、肘を90度に屈曲させ、強制的に肩関節を内旋し、痛みの有無を調べる。

肩峰下インピンジメントとは、上腕骨大結節と棘上筋腱停止部が、烏口肩峰アーチを通過する際に生じる、棘上筋腱の機械的圧迫のことである。この機械的圧迫は棘上筋腱に集中して発生する。つまり、肩の近くの関節の細いところで、骨同士の隙間が、こすれがあっている状態である。 原因として、年齢や疲労、姿勢の影響で動きの連携がとれずに衝突するとされている。炎症や出血を起こす。

1~3.× 健側前方/健側後方/患側前方
インピンジメントサインで検者の立ち位置とはいえない。なぜなら、これら立ち位置は、適切な操作や観察が行えないため。

4.〇 正しい。患側後方が、インピンジメントサインで検者の立ち位置である。
もっとも適切な操作や観察がしやすいポジションである。

 

 

 

 

 

問題20 急性期の肩腱板損傷で陽性となるのはどれか。

1.ドロップアームテスト
2.スピードテスト
3.ルーステスト
4.モーリーテスト

答え.1

解説
1.〇 正しい。ドロップアームテストは、急性期の肩腱板損傷で陽性となる。
Drop armテスト(ドロップアームテスト)は、腱板損傷の検査である。方法は、座位で被験者の肩関節を90°より大きく外転させ、検者は手を離すテストである。

2.× スピードテスト
Speedテスト(スピードテスト)は、上腕二頭筋長頭腱の炎症の有無をみる。結節間溝部に痛みがあれば陽性である。【方法】被検者:座位で、上肢を下垂・肩関節外旋位から、上肢を前方挙上(肩関節屈曲)してもらう。検者:肩部と前腕遠位部を把持し、上肢に抵抗をかける。

3.× ルーステスト
Roosテスト(ルーステスト)は、胸郭出口症候群で陽性となる検査である。腕を外転90度、外旋90度、肘を90度曲げた状態にし、この状態で指の曲げ伸ばし(グー・パー)を行う。これを3分間続けられなければ、陽性と判断する。

4.× モーリーテスト
Morley test(モーレイテスト、モーリーテスト)は、胸郭出口症候群の誘発テストである。方法は、検者が患者の鎖骨上縁の斜角筋三角部を指先で1分間圧迫する。患側頚部から肩・腕および手指にかけての痛み・しびれ・だるさなどが出現すれば陽性である。

 

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