第28回(R2年)柔道整復師国家試験 解説【午前6~10】

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問題6 上腕骨外科頸外転型骨折の整復操作で正しいのはどれか。

1.第一助手は牽引用の帯で外方に引いて肩を固定する。
2.第二助手は末梢牽引しながら内転させる。
3.術者は両手で遠位骨片を内方へ圧迫する。
4.術者は遠位骨片を前方へ圧迫する。

答え.2

解説

上腕骨外科頸外転型骨折の整復

上腕骨外科頸骨折とは、上腕骨の骨折の中で、特に高齢者に多く発生する骨折の一つであり、骨頭から結節部にかけての太い部分から骨幹部に移行する部位で発生する。老年期とは、一般的に65歳以上をいう。

患者:背臥位、腋窩に手挙大より大きめの枕子を挿入しておく。
第1助手:帯などで上内方に牽引、固定させる。
第2助手:肘関節直角位で上腕下部及び前腕下部を把握する。末梢牽引させながら徐々に上腕を外転させ短縮転位を除去し両骨折端を離開させる。
術者:両手で遠位骨片近位端を把握する。
(対向牽引が遠位骨片骨軸方向に正しく行う)

1.× 第一助手は牽引用の帯で「外方」ではなく上内方に引いて肩を固定する。
第1助手:帯などで上内方に牽引、固定させる。

2.〇 正しい。第二助手は末梢牽引しながら内転させる
第2助手:肘関節直角位で上腕下部及び前腕下部を把握する。末梢牽引させながら徐々に上腕を外転させ短縮転位を除去し両骨折端を離開させる。

3.× 術者は両手で遠位骨片を内方へ「圧迫」ではなく牽引する。
術者:両手で遠位骨片近位端を把握する。
(対向牽引が遠位骨片骨軸方向に正しく行う)

4.× 術者は遠位骨片を「前方へ」ではなく「前方から」圧迫する。
術者:小指球で遠位骨片の骨折端を前方から圧迫する。

 

 

 

 

 

問題7 三角筋付着部より遠位での上腕骨骨幹部骨折で正しい固定肢位はどれか。

1.肩関節外転70度
2.肩関節水平屈曲50度
3.肘関節屈曲120度
4.前腕回外位

答え.1

解説

三角筋付着部より遠位での上腕骨骨幹部骨折

上腕骨骨幹部三角筋付着部より遠位骨折において、①近位骨片は外方に、②遠位骨片は後上方へ転位する。整復は、近位骨片に遠位骨片を合わせる事から固定肢位は肩関節外転位である。肩関節外転70度、水平屈曲30~40度、肘関節直角位、前腕回内回外中間位である。

1.〇 正しい。肩関節外転70度が固定肢位である。
上腕骨骨幹部三角筋付着部より遠位骨折において、①近位骨片は外方に、②遠位骨片は後上方へ転位する。整復は、近位骨片に遠位骨片を合わせる事から固定肢位は肩関節外転位である。肩関節外転70度、水平屈曲30~40度、肘関節直角位、前腕回内回外中間位である。

2.× 肩関節水平屈曲「50度」ではなく30~40度である。

3.× 肘関節屈曲「120度」ではなく直角位(90度)である。

4.× 前腕「回外位」ではなく前腕回内・回外中間位である。

 

 

 

 

 

問題8 コーレス(Colles)骨折の典型的な変形はどれか。

1.近位骨片の背側突出
2.遠位骨片の尺側偏位
3.橈骨茎状突起の突出
4.手関節横径の増大

答え.4

解説

コーレス骨折の屈曲整復法

コーレス骨折(橈骨遠位端部伸展型骨折)は、橈骨遠位端骨折の1つである。 橈骨が手関節に近い部分で骨折し、遠位骨片が手背方向へ転位する特徴をもつ。合併症には、尺骨突き上げ症候群、手根管症候群(正中神経障害)、長母指伸筋腱断裂、複合性局所疼痛症候群 (CRPS)などがある。

【屈曲整復法】
①肘関節:90°屈曲(助手:骨折部の近位部を把握固定)
術者:母指を背側に他の4指を掌側にあてがい手根部とともに回内位で軽く牽引する。

②回内位で軽く牽引し、橈側より遠位骨片を圧迫する(捻転転位、橈尺面の側方転位の除去、軸を合わせる)。
術者:軽く牽引をしたまま、遠位骨片に手とともに過伸展を強制する。

③その肢位のまま、両母指で遠位骨片近位端を遠位方向に引き出し、近位骨片遠位端に近づける(腕橈骨筋を弛緩させる、短縮転位を除去)。

④両骨折端背側が接合したのを確認して徐々に遠位骨片を手部とともに掌屈する。その際、両示指で近位骨片端を掌側から両拇指で遠位骨片端を圧迫して整復する(背側転位の除去)。その後の固定は、肘関節90°、手関節軽度掌屈、尺屈、前腕回内位とする。

1.× 「近位」ではなく遠位骨片の背側突出が起こる。

2.× 遠位骨片の「尺側」ではなく橈側偏位が起こる。
コーレス骨折の転位は、①背側、②橈側、③短縮、④回外捻転転位が起こる。

3.× 「橈骨」ではなく尺骨茎状突起の突出(骨折)が起こる。
コーレス骨折の合併症として、舟状骨骨折、尺骨茎状突起骨折、月状骨脱臼 、遠位橈尺関節離解、神経損傷などが生じる。

4.〇 正しい。手関節横径の増大が、Colles骨折の典型的な変形である。
なぜなら、遠位骨片が手背方向へ転位するため。

橈骨遠位端骨折

・Smith骨折(スミス骨折):Colles骨折とは逆に骨片が掌側に転位する。
・Colles骨折(コーレス骨折):Smith骨折とは逆に骨片が背側に転位する。
・Barton骨折(バートン骨折):橈骨遠位部の関節内骨折である。遠位部骨片が手根管とともに背側もしくは掌側に転位しているものをいう。それぞれ背側Barton骨折・掌側Barton骨折という。

主な治療として、骨転位が軽度である場合はギプス固定をする保存療法、骨転位が重度である場合はプレート固定を行う手術療法である。

コーレス骨折(橈骨遠位端部伸展型骨折)は、橈骨遠位端骨折の1つである。 橈骨が手関節に近い部分で骨折し、遠位骨片が手背方向へ転位する特徴をもつ。合併症には、尺骨突き上げ症候群、手根管症候群(正中神経障害)、長母指伸筋腱断裂、複合性局所疼痛症候群 (CRPS)などがある。

 

 

 

 

 

問題9 コーレス(Colles)骨折に続発するのはどれか。

1.尺骨茎状突起骨折
2.舟状骨骨折
3.月状骨脱臼
4.長母指伸筋腱断裂

答え.4

解説

コーレス骨折

合併症:舟状骨骨折、尺骨茎状突起骨折、月状骨脱臼 、遠位橈尺関節離解、神経損傷などが生じる。

続発症・後遺症:長母指伸筋腱の断裂、手根管症候群、変形癒合、変形性関節症、指~肩関節の拘縮、反射性交感神経性ジストロフィー、前腕の回内・回外運動障害、橈骨遠位骨端軟骨損傷による成長障害、橈骨・尺骨・正中神経麻痺などが生じる。

固定肢位:肘関節直角屈曲、前腕回内、手関節軽度屈曲・軽度尺屈位で、上腕近位部からMP関節手前まで4~5週間固定する。

1~3.× 尺骨茎状突起骨折/舟状骨骨折/月状骨脱臼
コーレス骨折の合併症である。合併症は、受傷直後と同時に併発する意味が強い。一方、続発症とは、ある疾患を原因として、経過がたどるにつれ、別の疾患が発症することである。したがって、続発症は後遺症とも呼ぶことが多い。

4.〇 正しい。長母指伸筋腱断裂は、Colles骨折に続発する。
これは遠位橈骨の骨折片が手の背側に突出したことで、長母指伸筋腱にストレスがかかり、時間とともに腱が摩耗し断裂する。長母指伸筋の【起始】尺骨体中部背面、前腕骨間膜背面、【停止】母指の末節骨底の背側、【作用】母指の伸展、内転、【支配神経】橈骨神経深枝:C6~C8である。

 

 

 

 

 

問題10 中手骨頸部骨折で伸展位に固定するのはどれか。

1.手関節
2.MP関節
3.PIP関節
4.DIP関節

答え.1

解説

(※引用:「イラスト素材:手の骨」illustAC様より)

MEMO

第5中手骨頸部骨折の骨折部は背外側偏位を呈する場合が多い。第5中手骨頸部骨折は末梢骨片が短く且つ中手指節関節に近い事から整復操作後も転位しやすく、観血的療法の適応となる事が少なくない。又、保存的療法の一般的な整復法はJhass法(中手指節関節及び近位指節間関節90度屈曲位にて中手骨骨頭を押し上げる)である。骨折部が最も安定した固定肢位はJhass法施行時の中手指節関節及び近位指節間関節90度屈曲位である。しかし、この肢位は近位指節問関節背側部の血行障害による皮膚壊死や支靱帯の短縮による近位指節問関節の屈曲拘縮をきたしやすく禁忌とされている。渡辺は幅2.5cmの非伸縮性粘着テープを用いて中手指節関節及び近位指節間関節90度屈曲位で固定し、良好な治療成績を挙げている。(※引用:「第5中手骨頸部骨折に対する整形理学療法」著:有川整形外科医院)

1.〇 正しい。手関節は、中手骨頸部骨折で伸展位に固定する。
なぜなら、手関節伸展位に固定することにより、安定性とともに、循環の確保により骨折が治癒するのを助けるため。

2.× MP関節
中手骨頚部骨折の固定の主たる目的は、MP 関節を屈曲位として末梢骨片を安定させることである。

3~4.× PIP関節/DIP関節
骨折部が最も安定した固定肢位はJhass法施行時の中手指節関節及び近位指節間関節90度屈曲位である。しかし、この肢位は近位指節問関節背側部の血行障害による皮膚壊死や支靱帯の短縮による近位指節問関節の屈曲拘縮をきたしやすく禁忌とされている。 PIP 関節の屈曲位を余儀なくされる場合、指の屈曲拘縮を起こしやすいので、可能な範囲で軽度屈曲位を目指す。

中手骨頚部骨折

固定の主たる目的は、MP 関節を屈曲位として末梢骨片を安定させることである。固定は様々あるが、症状にあった固定を行なう必要がある。
◎ 固定時の留意点
1、指関節背側の皮膚は薄く、屈曲により皮膚血流が悪くなりやすい、したがって、皮膚潰瘍や壊死を起こしやすい。
2、ガーゼなどを使用することで、皮膚の保護に十分注意する必要がある。
3、高齢者で転位を避けるために PIP 関節の屈曲位を余儀なくされる場合、指の屈曲拘縮を起こしやすいので、可能な範囲で軽度屈曲位を目指す。
4、強度の固定は手指の巧緻運動を著しく障害し、長期にわたって機能障害を残すことになる。

(※引用:「中手骨頚部骨折」著:舘 利幸)

 

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