第29回(R3年)柔道整復師国家試験 解説【午前126~128】

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問題126 ワクチン接種で予防可能なのはどれか。

1.前立腺癌
2.子宮頸癌
3.子宮体癌
4.卵巣癌

答え.2

解説
1.× 前立腺癌
前立腺癌の原因は不明である。生活習慣(特に食事)が関係するとされ、動物性脂肪を多く摂ることや、緑黄色野菜の摂取不足が、前立腺癌の発生頻度を高くする原因の一つと考えられている。

2.〇 正しい。子宮頸癌は、ワクチン接種で予防可能である。
子宮頸がんとは、子宮頸部(子宮下部の管状の部分)に生じるがんのことである。子宮頸がんは、子宮がんのうち約7割程度を占める。近年、20~30歳代の若い女性に増えてきており、30歳代後半がピークとなっている。子宮頸がんの原因のほとんどは、ヒトパピローマウイルス(HPV)というウイルスの感染である。このウイルスは性的接触により子宮頸部に感染する。初期では無症状だが、進行するにつれて帯下の増加や悪臭のある帯下、周囲臓器の浸潤による疼痛などの症状が現れる。子宮頸がんの予防方法は、HPVワクチンを接種することで、ヒトパピローマウイルス(HPV)の感染を予防することが挙げられる。また、子宮頸がん検診を定期的に受けることで、がんになる過程の異常(異形成)やごく早期のがんを発見し、医師と相談しながら、経過観察したり、負担の少ない治療につなげたりすることができる。

3.× 子宮体癌
子宮体癌とは、子宮の内側を覆う子宮内膜と呼ばれる場所に発生するがんである。主な症状は、生理中ではないのに性器から出血があったり、閉経後に性器から出血があったりするなどの不正出血である。子宮体がんの発生には、卵胞ホルモン(エストロゲン)という女性ホルモンが深く関係することが知られている。卵胞ホルモン(エストロゲン)が高いと、子宮内膜増殖症という前段階を経て子宮体がん(子宮内膜がん)が発生することが知られている。

4.× 卵巣癌
卵巣癌とは、卵巣に発生する悪性腫瘍(がん)のことである。卵巣がんは複数の要因が関与して発生するといわれている。遺伝的関与は10%程度と考えられているが、母や姉妹などの近親者に卵巣がんを発症した人間がいる場合は、発症した人間がいない場合と比較して発症の確率が高くなる傾向にある。子宮内膜症・骨盤内炎症性疾患・多のう胞性卵巣症候群などの疾患も卵巣がんの原因となり得る。その他にも長年にわたるホルモン補充療法、肥満・食事などの生活習慣、排卵誘発剤の使用なども要因と考えられている。また排卵の回数が多いほど卵巣がんを発症しやすいといわれているため、妊娠や出産の経験が少ない人、閉経が遅い人は発症の確率が高くなる可能性がある。

 

 

 

 

 

問題127 上皮性腫瘍はどれか。

1.腺腫
2.平滑筋腫
3.脂肪肉腫
4.神経鞘腫

答え.1

解説

上皮性腫瘍とは?

上皮性腫瘍とは、皮膚の表皮のように、表面をおおう細胞(上皮)に発生する腫瘍をいう。乳房にできる上皮性腫瘍としては、乳管のなかにできる良性の乳管内乳頭腫や乳管に分泌液が溜まり袋状になった囊胞内にできる嚢胞内乳頭腫などがある。これらは、超音波画像診断などでは腫瘤性の病変として認識されるが、乳頭状型の非浸潤性乳管がんとの鑑別診断をすることは時に非常に難しいことがあり、針生検で乳管内乳頭腫とされた場合でも、画像診断で非浸潤性乳管がんを疑う場合には切開生検を行い、診断を確定する必要がある。

腫瘍の分類

腫瘍には、 良性と②悪性、③上皮性と④非上皮性に分けられる。
①良性:主に転移しない腫瘍。
②悪性:主に転移する腫瘍。
③上皮性:体表(乳房)や管腔臓器(消化器、呼吸器、泌尿器)の覆う細胞。
④非上皮性:皮細胞以外の体の組織(筋肉、脂肪、血管など)を構成する細胞。

1.〇 正しい。腺腫は、上皮性腫瘍である。
腺腫は、良性の上皮性腫瘍に該当する。腫瘍は、大腸、甲状腺、乳腺、前立腺、肺など、腺組織を含む任意の部位に発生する可能性がある。

2.× 平滑筋腫
平滑筋腫・平滑筋肉腫とは、平滑筋という筋肉の細胞が腫瘍化したものである。良性のものを平滑筋腫、悪性のものを平滑筋肉腫という。非上皮性に該当する。

3.× 脂肪肉腫
脂肪肉腫とは、皮下組織や筋肉などの軟部組織と言われるところから発生する悪性腫瘍(軟部肉腫)の一種であり、脂肪細胞に似た腫瘍細胞が増殖して腫瘍を形成し、軟部肉腫の中では最も頻度の高い腫瘍である。非上皮性に該当する。

4.× 神経鞘腫
神経鞘腫は、小脳橋角部に最も多い脳腫瘍である。内耳神経に生じる聴神経鞘腫が多く、ほとんど良性の腫瘍である。女性にやや多く、初期症状は難聴・耳鳴であり、腫瘍の増大により症状が進行すると、運動失調や歩行障害などの小脳症状や、水頭症による頭蓋内圧亢進症状を呈する。非上皮性に該当する。

軟部腫瘍とは?

軟部腫瘍とは、脂肪組織、筋組織、線維性組織、末梢神経、血管など間葉系(非上皮性)組織と呼ばれる内臓を支持している、あらゆる組織から発生する腫瘍の総称である。軟部腫瘍には、脂肪腫や神経鞘腫、血管腫などの良性軟部腫瘍から脂肪肉腫、線維肉腫、平滑筋肉腫、滑膜肉腫などの悪性軟部腫瘍まで非常に多彩な種類の腫瘍が含まれている。

 

 

 

 

 

問題128 単因子遺伝性疾患はどれか。

1.統合失調症
2.糖尿病
3.血友病
4.痛風

答え.3

解説

単因子遺伝性疾患とは?

単一遺伝子疾患とは、ある1つの遺伝子の異常(欠失、遺伝子内の塩基の欠落、置換、挿入などの突然変異)により発症する病気の総称である。父親、母親の両方から受け継いだ2種類の同じ遺伝子の相互作用(メンデルの法則)により病気が発現するか否かが決まるため、メンデル遺伝病とも呼ばれる。

1.× 統合失調症
統合失調症の原因は不明である。統合失調症とは、幻覚・妄想・まとまりのない発語および行動・感情の平板化・認知障害ならびに職業的および社会的機能障害を特徴とする。原因は不明であるが、遺伝的および環境的要因を示唆する強固なエビデンスがある。好発年齢は、青年期に始まる。治療は薬物療法・認知療法・心理社会的リハビリテーションを行う。早期発見および早期治療が長期的機能の改善につながる。統合失調症患者の約80%は、生涯のある時点で、1回以上うつ病のエピソードを経験する。統合失調症患者の約5~6%が自殺し,約20%で自殺企図がみられる。したがって、うつ症状にも配慮して、工程がはっきりしたものや安全で受け身的で非競争的なものであるリハビリを提供する必要がある。(※参考:「統合失調症」MSDマニュアル様HPより)

2.× 糖尿病
1型糖尿病の原因として、自己免疫異常によるインスリン分泌細胞の破壊などがあげられる。一方、2型糖尿病の原因は生活習慣の乱れなどによるインスリンの分泌低下である。

3.〇 正しい。血友病は、単因子遺伝性疾患である。
血友病とは、血液を固めるのに必要な「血液凝固因子(第Ⅷ因子または第Ⅸ因子)が不足・活性低下する病気のことである。伴性劣性遺伝(男児に多い)で、生まれつき発症することがほとんどであるため、幼少期から①些細なことで出血する、②出血が止まりにくいといった症状が繰り返される。治療として、凝固因子製剤の投与、関節拘縮・筋力低下に対するリハビリテーションが行われる。

4.× 痛風
痛風とは、体内で尿酸が過剰になると、関節にたまって結晶化し、炎症を引き起こして腫れや痛みを生じる病気である。風が患部に吹きつけるだけで激しい痛みが走ることから痛風と名づけられたといわれている。男性に頻発する単関節炎で、下肢、特に第1中足跳関節に好発する。尿酸はプリン体の代謝の最終産物として産生され、代謝異常があると尿酸の産生過剰・排泄障害が生じ高尿酸血症となる。高尿酸血症は痛風や腎臓などの臓器障害を引き起こすほか、糖尿病や脂質異常症などの生活習慣を合併しやすい。

 

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