第29回(R3年)柔道整復師国家試験 解説【午前121~125】

この記事には広告を含む場合があります。

記事内で紹介する商品を購入することで、当サイトに売り上げの一部が還元されることがあります。

 

問題121 外傷に直接関連しないのはどれか。

1.空気塞栓
2.血栓塞栓
3.脂肪塞栓
4.骨髄塞栓

答え.2

解説
1.〇 空気塞栓
空気塞栓とは、ガス塞栓とも呼ばれ、循環器系内の空気または他の気体の、1つまたは複数の気泡によって引き起こされる血管の閉塞である。 空気は、外科的処置、肺の過膨張による損傷(圧外傷)、減圧症、および他のいくつかの原因において循環系に引き込まれる可能性がある。

2.× 血栓塞栓は、外傷に直接関連しない。
血栓塞栓とは、血液中に形成された血栓が血管を閉塞し、末梢の循環不全による臓器障害を引き起こす疾患を血栓症と呼ぶ。また、形成された血栓が血流によって流され形成部位とは別の部位において血管を閉塞することにより、臓器障害を引き起こす疾患を塞栓症と呼ぶ。

3.〇 脂肪塞栓
脂肪塞栓症候群とは、大腿骨をはじめとする長管骨骨折や髄 内釘手術を契機に、非乳化脂肪滴である中性脂肪が循環系に流入し、肺、脳、皮膚に脂肪塞栓症をきたし、呼吸器症候、中枢神経症候、皮膚点状出血などを呈する症候群である。長管骨骨折での発生率は0.9∼2.2%とされている。

4.〇 骨髄塞栓
Lungeman(1897)によって始めて報告された肺骨塞栓症の原因としては、結核性脊椎炎や多発性骨髄腫のはか、破傷風・子病・薬剤アレルギーなど急激な筋収縮によるものなど種々の疾患が挙げられていた。しかし、最近は交通事故の骨折のほか、Lubarsch以来、胸部外科手術の際の胸骨切開や、骨移植、髄内釘固定などの骨手術のほか、閉胸式心マッサージ等の医療行為が原因となった骨髄塞栓症の報告がみられるなど、今後次第に増加することが予想される(※引用:「外傷後の肺微小塞栓症」著:山本雅博)。

脂肪塞栓症とは?

脂肪塞栓症とは、脂肪細胞に血管を塞栓された臓器が虚血による不全を起こす事が本症の病態である。塞栓される臓器によって様々な臓器不全を起こす。外傷時に脂質代謝が変化し血液内の脂肪が脂肪滴になるため、あるいは外傷部分の血管から骨髄などの脂肪が入り込むためと考えられている。 全身性の脂肪塞栓症の原因としては、骨折の他に、皮下脂肪組織の挫滅、脂肪肝による障害、急性膵炎、減圧症、広範囲の火傷、糖尿病、骨髄炎などがある。

 

 

 

 

 

問題122 異物の処理過程に含まれないのはどれか。

1.被包
2.器質化
3.壊死
4.排除

答え.3

解説

異物の処理

①排除とは、例えば咳やくしゃみのことで、気道内のゴミを気管支上皮の線毛運動などのことをさす。
②器質化とは、異物に対して周囲に肉芽組織が形成され、異物を吸収し、結合組織に置換すること。主にマクロファージ、好中球によって貪食され、酵素により分解される。しばしば、異物肉芽腫が形成される。
③異物肉芽腫とは、異物を取り囲んで形成される肉芽組織の一種で、マクロファージや異物型多核巨細胞が多数出現することをさす。
④被包とは、異物が肉芽組織から変化した線維組織によって取り囲まれることで、例えば陳旧性結核病変をさす。

(※参考:「病理学総論4.組織の修復、再生と線維化」)

1.〇 被包(※読み:ひほう)
被包とは、異物が肉芽組織から変化した線維組織によって取り囲まれることで、例えば陳旧性結核病変をさす。

2.〇 器質化
器質化とは、異物に対して周囲に肉芽組織が形成され、異物を吸収し、結合組織に置換すること。主にマクロファージ、好中球によって貪食され、酵素により分解される。しばしば、異物肉芽腫が形成される。

3.× 壊死は、異物の処理過程に含まれない。
壊死とは、組織の一部が死に至ることである。

4.〇 排除
排除とは、例えば咳やくしゃみのことで、気道内のゴミを気管支上皮の線毛運動などのことをさす。

 

 

 

 

 

問題123 特異性炎でないのはどれか。

1.サルコイドーシス
2.線維素性心外膜炎
3.野兎病
4.梅毒

答え.2

解説

特異性炎症とは?

特異性炎症とは、肉芽腫性炎症の一つである。特殊性炎症ともいう。一つの病変ごとに微生物により特異的な肉芽腫の形成が特徴である。慢性経過がとられる。身体が感染、損傷、または他の種類の刺激に反応し、この反応は、身体の免疫システムが活性化し、白血球と化学物質が炎症部位に送り込まれることを特徴とする。これらの物質は、感染を排除し、損傷組織を修復し、炎症を引き起こす刺激を除去する役割を果たす。特定の原因または病原体に対する身体の反応ではなく、多くの異なる種類の刺激に対する一般的な反応である。例えば、結核、梅毒、らい病、野兎病、サルコイドーシスなどがあげられる。

1.〇 サルコイドーシス
サルコイドーシスとは、全身のさまざまな場所に肉芽腫と呼ばれるしこりができる病気である。原因不明である。症状には、「臓器特異的症状」と「(臓器非特異的)全身症状」とがある。 臓器特異的症状は、侵された各臓器に起こる咳・痰、ぶどう膜炎、皮疹、不整脈・息切れ、神経麻痺、筋肉腫瘤、骨痛などの様々な臓器別の症状であり、急性発症型のものと慢性発症型のものがある。

2.× 線維素性心外膜炎は、特異性炎でない。
線維素性心外膜炎は、心外膜(心臓を覆う膜)の炎症を特徴とする疾患である。この疾患は、感染症、心筋梗塞、外傷など、さまざまな原因により引き起こされます。線維素性心外膜炎は、特異性炎ではなく、非特異性炎症反応の一部として見られる。

3.〇 野兎病
野兎病とは、野兎病菌による急性熱性疾患で、代表的な動物由来感染症の一つである。 自然界において本菌はマダニ類などの吸血性節足動物を介して、主にノウサギや齧歯類などの野生動物の間で維持されており、これらの感染動物から直接あるいは間接的にヒトが感染する。肉芽腫性炎症とは、増殖性炎症の一つである。 肉芽腫の形成が特徴である。

4.〇 梅毒
梅毒とは、5類感染症の全数把握対象疾患であり、スピロヘータの一種である梅毒トロポネーマ感染により発症し、この梅毒トロポネーマが脳の実施まで至ると、進行性麻痺となる。増殖性炎症とは、慢性炎症の時に見られる炎症である。組織の線維成分や実質細胞の増殖が多く見られる。炎症の初期から肉芽組織の増殖が強い。発疹チフスなどで見られる。

 

 

 

 

 

問題124 IV型アレルギーに分類されるのはどれか。

1.特発性血小板減少性紫斑病
2.バセドウ(Basedow)病
3.金属アレルギー
4.花粉症

答え.3

解説

(※引用:「アレルギー総論」厚生労働省HPより)

1.× 特発性血小板減少性紫斑病は、Ⅱ型アレルギーに分類される。
特発性血小板減少性紫斑病とは、血液中の血小板が減少することにより出血しやすくなる病気である。原因は不明であるが、体の中の免疫反応が過剰になり、自分の血小板を攻撃してしまうために、血小板が減少するといわれている。

2.× バセドウ(Basedow)病は、Ⅴ型アレルギーに分類される。
バセドウ病とは、甲状腺刺激ホルモン受容体に対する自己抗体による甲状腺機能亢進症である。症状は、眼球突出、頻脈、びまん性甲状腺腫が特徴的である。Ⅴ型アレルギー反応とは、ホルモンを分泌する細胞に結合する反応で、甲状腺機能亢進症・低下症を引き起こす。

3.〇 正しい。金属アレルギーは、IV型アレルギーに分類される。
金属アレルギーは、金属に対する過敏反応で、接触皮膚炎などの症状を引き起こす。金属イオンが皮膚に浸透し、体内のタンパク質と結合して新たな抗原を形成す。これに対する免疫応答がアレルギー反応を引き起こす。

4.× 花粉症は、Ⅰ型アレルギーに分類される。
花粉症とは、植物の花粉が原因(アレルゲン)となって、くしゃみ・鼻水などのアレルギー症状を起こす病気である。花粉症は、スギやヒノキなど植物の花粉がアレルゲンとなり生じる。Ⅰ型アレルギーではマスト細胞や好塩基球のIgEによる液性免疫が重要な役割を果たす。

 

 

 

 

 

問題125 腫瘍と発生原因の組合せで正しいのはどれか。

1.神経線維腫症:遺伝
2.腎癌:トロトラスト
3.大腸癌:低栄養
4.前立腺癌:化学染料

答え.1

解説
1.〇 正しい。神経線維腫症は、遺伝により発生する。
神経線維腫症(レックリングハウゼン病)の主な症状は、カフェオレ斑(皮膚色素沈着)である。カフェオレ斑は楕円形のものが多く、子供では5mm以上、大人では15mm以上もある。重症合併症を有する割合は少ないが、健常人と比べて悪性腫瘍を合併する割合がやや高いと言われている。原因は17番染色体であり遺伝子疾患であるが、患者の半数以上は無症状の両親から生まれている。他の症状としては、脊柱側弯や長管骨の狭細化・弯曲・偽関節である。ちなみに、知的障害がなくカフェオレ斑が見られる疾患を、McCune-Albright症候群(マッキューン・オルブライト症候群)という。

2.× 腎癌は、「トロトラスト」ではなく生活習慣(喫煙や肥満)により発生する。
ちなみに、トロトラストとは、医療放射線撮影に使用される二酸化トリウムを含む造影剤である。肝臓や骨髄に蓄積しやすく、それら部位にがんのリスクが高まるとされる。

3.× 大腸癌は、「低栄養」ではなく生活習慣(喫煙や肥満)により発生する。
低栄養は直接大腸癌を引き起こすわけではないが、不健康な食生活(赤肉や加工肉の過剰摂取、果物や野菜の摂取不足)は大腸癌のリスクを高める。

4.× 前立腺癌は、「化学染料」ではなく偏った食生活により発生するといわれている。
前立腺癌の原因はまだ明確にはなっていませんが、動物性脂肪を多く摂ることや、緑黄色野菜の摂取不足は、前立腺癌の発生頻度を高くする原因の一つと考えられている。ちなみに、化学染料は膀胱がんとの関連が高いことが示唆されている。膀胱がん発症の危険因子として、喫煙、職業性発がん物質へのばく露、飲 料水中のヒ素、フェナセチン(鎮痛剤)やシクロフォスファミド(抗がん剤) などの特定の医薬品、放射線照射などが挙げられる。

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)