第29回(R3年)柔道整復師国家試験 解説【午前111~115】

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問題111 嗅ぎたばこ入れを生じるのはどれか。

1.橈側手根屈筋腱
2.長橈側手根伸筋腱
3.長母指伸筋腱
4.総指伸筋腱

答え.3

解説

(※図引用:The Bone Identity ~整形外科医のブログ~様HPより)

解剖学的嗅ぎタバコ入れとは?

 手背の母指基部の専用のタバコ粉末を置いて匂いをかぐ楽しみの一つで使用されていた部位であることから、その名がつけられた。手背には長母指伸筋の腱、掌側には短母指伸筋の腱と長母指外転筋の腱が並んで走行している。

1.× 橈側手根屈筋腱
橈側手根屈筋の【起始】上腕骨の内側上顆、前腕筋膜内面、【停止】第2中手骨底、【作用】手関節掌屈、橈屈、肘関節回内、【神経】正中神経である。

2.× 長橈側手根伸筋腱
長橈側手根伸筋の【起始】上腕骨外側縁、外側上顆および外側上腕筋間中隔、【停止】第2中手骨底の背面橈側、【作用】手関節の背屈、橈屈、【神経】橈骨神経である。

3.〇 正しい。長母指伸筋腱は、嗅ぎたばこ入れを生じる。
長母指伸筋の【起始】尺骨体中部背面、前腕骨間膜背面、【停止】母指の末節骨底の背側、【作用】母指の伸展、内転、【神経】橈骨神経深枝である。

4.× 総指伸筋腱
総指伸筋の【起始】上腕骨の外側上顆、前腕筋膜の内面と肘関節包、【停止】中央は中節骨底、両側は合して末節骨底、【作用】手関節の背屈、第2~5指の伸展、外転、【神経】橈骨神経深枝である。

 

 

 

 

 

問題112 側方からみた立位姿勢で前後方向のバランスの指標となるのはどれか。

1.肩峰
2.恥骨結合
3.腓骨頭
4.内果

答え.1

解説

矢状面の重心線

理想的な重心線:①乳様突起(耳垂のやや後方)→②肩峰(肩関節の前方)→③大転子→④膝蓋骨後面(膝関節前部)→⑤外果前方を通る。

1.〇 正しい。肩峰は、側方からみた立位姿勢で前後方向のバランスの指標となる。
なぜなら、矢状面の重心線の理想は、①乳様突起(耳垂のやや後方)→②肩峰(肩関節の前方)→③大転子→④膝蓋骨後面(膝関節前部)→⑤外果前方を通ることであるため。

2.× 恥骨結合
恥骨結合とは、骨盤の前部に位置し、左右の恥骨を結びつける線維軟骨の結合である。

3.× 腓骨頭
腓骨頭とは、腓骨の上端部分である。総腓骨神経が近くを走行する。

4.× 内果
内果とは、脛骨の下端部分である。

 

 

 

 

 

問題113 正常歩行時の下腿三頭筋の筋活動で正しいのはどれか。

1.立脚相初期に強く働く。
2.蹴り出しの力として働く。
3.遊脚相で足関節を背屈位に保つ。
4.内転方向のモーメントを制御する。

答え.2

解説

(※図引用:Eberhart,H. D. et al.:「Human Limbs and their Substitutes」Mc Graw Hill Book Co. Inc 1954より)

1.× 立脚相初期に強く働くのは、前脛骨筋やハムストリングスである。
前脛骨筋は、踵接地の際のフットスラップの防止のため、ハムストリングスは振り出した足の制動のために働く。

2.〇 正しい。蹴り出しの力として働く
下腿三頭筋とは、下腿の強大な筋の総称で、膨隆する2頭をもつ浅側の①腓腹筋と、深側にある平たい②ヒラメ筋とからなる。①腓腹筋:【起始】外側頭:大腿骨外側上顆、内側頭:大腿骨内側上顆、【停止】踵骨腱(アキレス腱)となり踵骨隆起後面の中部、【作用】膝関節屈曲、足関節底屈、踵の挙上、【神経】脛骨神経である。②ヒラメ筋:【起始】腓骨頭と腓骨後面、脛骨のヒラメ筋線と内側縁、腓骨と脛骨間のヒラメ筋腱弓、【停止】踵骨腱(アキレス腱)となり踵骨隆起後面の中部、【作用】膝関節底屈、踵の挙上、【神経】脛骨神経である。

3.× 遊脚相で足関節を背屈位に保つのは、前脛骨筋である。
前脛骨筋の【起始】脛骨外側面、下腿骨間膜、【停止】内側楔状骨と第1中足骨の底面、【作用】足関節背屈、内返し、【神経】深腓骨神経である。

4.× 内転方向のモーメントを制御するのは、外転筋の役割である。
外部のモーメントに釣り合うように、内部の筋肉が同じ力で釣り合わせる。

歩行周期

【立脚期】

 1. 初期接地(Initial Contact;以下,IC):観測肢の接地の瞬間
 2. 荷重応答期(Lording Response;以下,LR):IC から対側爪先離地まで
 3. 立脚中期(Mid Stance;以下,MSt):対側爪先離地から対側下腿下垂位まで
   立脚中期前半:対側爪先離地から両下腿の交差まで
   立脚中期後半:両下腿交差から対側下腿下垂位まで
 4. 立脚終期(Terminal Stance;以下,TSt):対側下腿下垂位から対側 IC まで
 5. 前遊脚期(Pre Swing;以下,PSw):対側 IC から観測肢爪先離地まで

【遊脚期】

 6. 遊脚初期(Initial Swing;以下,ISw):観測肢爪先離地から両下腿の交差まで
 7. 遊脚中期(Mid Swing;以下,MSw):両下腿交差から下腿下垂位まで
 8. 遊脚終期(Terminal Swing;以下,TSw):下腿下垂位から IC まで

 

 

 

 

 

問題114 トレンデレンブルグ徴候を引き起こすのはどれか。

1.大殿筋
2.中殿筋
3.大腿四頭筋
4.前脛骨筋

答え.2

解説

Trendelenburg徴候(トレンデレンブルグ徴候)とは?

Trendelenburg徴候(トレンデレンブルグ徴候)とは、中殿筋が麻痺や筋力低下などの機能不全が生じているときに、患側での立脚期において健側の骨盤が下がる現象である。

1.× 大殿筋
【起始】腸骨翼の外面で後殿筋線の後方、仙骨・尾骨の外側縁、仙結節靭帯、腰背筋膜、【停止】腸脛靭帯、大腿骨の殿筋粗面、【作用】股関節伸展、外旋、外転、上部:内転、下部:骨盤の下制、【支配神経】下殿神経である。

2.〇 正しい。中殿筋は、トレンデレンブルグ徴候を引き起こす。
【起始】腸骨翼の外面で前および後殿筋線の間、腸骨稜外唇および殿筋筋膜、【停止】大転子の外側面、【作用】股関節外転、前部:内旋、後部:外旋、【支配神経】上殿神経である。

3.× 大腿四頭筋
大腿四頭筋とは、①大腿直筋、②外側広筋、③中間広筋、④内側広筋の4筋からなる大腿の筋の総称である。共同の腱は大腿前面の正中線を下行し、膝蓋骨の底と両側縁につき、これを介して(一部は膝蓋骨の前面を超えて)膝蓋靭帯となり、脛骨粗面につく。腱の両側の線維の一部は内側および外側膝蓋支帯となって膝蓋骨の両側を下行する。

4.× 前脛骨筋
前脛骨筋の【起始】脛骨外側面、下腿骨間膜、【停止】内側楔状骨と第1中足骨の底面、【作用】足関節背屈、内返し、【神経】深腓骨神経である。

 

 

 

 

 

問題115 正常な運動発達で可能となる時期が最も遅いのはどれか。

1.階段を昇ることができる。
2.転倒しないで走ることができる。
3.2秒間の片足立ちができる。
4.スキップができる。

答え.4

解説 

1.× 階段を昇ることができる(足を交互に出して階段を上がる)のは、2歳6~9か月ごろである。

2.× 転倒しないで走ることができるのは、2歳後半~3歳ごろである。

3.× 2秒間の片足立ちができるのは、2歳9~3歳か月ごろである。

4.〇 正しい。スキップができるのは、4歳4~8か月ごろである。

 

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