第29回(R3年)柔道整復師国家試験 解説【午前91~95】

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問題91 栄養素の代謝で正しいのはどれか。

1.脂肪酸はβ酸化により代謝される。
2.アミラーゼは蛋白質分解酵素である。
3.糖質は脂肪よりもエネルギー発生量が大きい。
4.一日に必要なビタミンCは生体内で合成される。

答え.1

解説
1.〇 正しい。脂肪酸はβ酸化により代謝される
β酸化とは、脂肪酸の代謝において脂肪酸を酸化して脂肪酸アセチルCoAを生成し、そこからアセチルCoAを取り出す代謝経路のことである。

2.× アミラーゼは、「蛋白質」ではなく炭水化物(でんぷん)の分解酵素である。
アミラーゼとは、でんぷんを分解して糖にする酵素である。体内では主に、膵臓、耳下腺(唾液腺)から分泌される。

3.× 逆である。「脂肪」は「糖質」よりもエネルギー発生量が大きい。
1gの糖質、たんぱく質:4kcal
1gの脂質:9kcal

4.× 一日に必要なビタミンCは生体内で「合成されない」。
ビタミンCは体内で合成できない栄養素のため、食事で摂取しなければならない。

 

 

 

 

 

問題92 体温で正しいのはどれか。

1.早朝時が最も高い。
2.新生児では環境温の影響を受けやすい。
3.月経周期の排卵時に一時的に高くなる。
4.深部温として最も信頼性が高いのは腋窩温である。

答え.2

解説

体温変化のポイント

①月経が始まると体温が下がり、約2週間低温期が続く。
②排卵すると体温は上昇し、次の月経までの約2週間高温期が続く。
③2週間たっても高温期が続き月経にならなければ、妊娠の可能性あり。
(※参考:「基礎体温の基礎知識」OMRON様HPより)

1.× 早朝時が最も「低い」。
なぜなら、眠ることにより体温が低下するため。午後から夕方にかけて活動的になるため高くなる。

2.〇 正しい。新生児では環境温の影響を受けやすい
なぜなら、小児は体温調整機構が未熟であるため。10歳ころより、体温調整機構は成人とほぼ同じになる。一方、高齢者は、温度刺激に対する中枢の反応閾値が高く、皮膚温の変化に対する感受性も低くなっている。

3.× 月経周期の「排卵時」ではなく黄体期に一時的に高くなる。
高温期(=黄体期)の最後で、正確に言うと排卵後に12~14日程度続く時期(一時期ではない)である。排卵後の卵胞から変化した黄体から分泌されるプロゲステロン(黄体ホルモン)によって維持される。

4.× 深部温として最も信頼性が高いのは、「腋窩温」ではなく直腸温である。
直腸温が深部体温(核心温度)に最も近い。深部体温とは、環境の変動によっても温度が変化しない生態の核心部(中心部)の温度である。外殻温度と異なり体温調節により一定に調節されている。実際に、核心温度を常時測定するのは不可能であるが、最も核心温度に近いのは、直腸の温度であり37℃を超える。直腸温と腋窩温は1℃近くの差がある。

新生児の低体温症

低体温症は、世界保健機関(World Health Organization)によって深部体温が36.5℃(97.7°F)未満のものと定義されている。早産児では、低体温症は罹病率および死亡率を上昇させる。低体温症は、単に環境性の場合もあれば、併発疾患(例、敗血症)の存在を示す場合もある。分娩室または手術室の適切な環境温度を維持することが、新生児の低体温症の予防において極めて重要である。低体温症の新生児は復温させ、基礎疾患がある場合は診断、治療を行う必要がある。

(※一部引用:「新生児の低体温症」MSDマニュアルプロフェッショナル版より)

 

 

 

 

 

問題93 蛋白質に結合しないで血中運搬されるのはどれか。

1.ビタミンD
2.エストロゲン
3.甲状腺ホルモン
4.副腎皮質刺激ホルモン

答え.4

解説

運搬体タンパク質とは?

運搬体タンパク質とは、水に難溶性または不溶性の生体成分と結合して血流中を循環し、生体成分を体内各所に送達するタンパク質の総称である。

1.× ビタミンD
コレステロールを基にして作られるステロール核を持つ脂溶性のホルモンである。ほかにも、副腎皮質ホルモン、性ホルモンなどが含まれる。

2.× エストロゲン
エストロゲンは、アルブミンに結合し運ばれる。エストロゲンとは、女性らしさをつくるホルモンで、成長とともに分泌量が増え、生殖器官を発育・維持させる働きをもっている。女性らしい丸みのある体形をつくったり、肌を美しくしたりする作用もあるホルモンである。分泌量は、毎月の変動を繰り返しながら20代でピークを迎え、45~55歳の更年期になると急激に減る。

3.× 甲状腺ホルモン
甲状腺ホルモンは、血液中でタンパク質に結合して運ばれます。チロシンやトリプトファンなどのアミノ酸を基に作られるホルモンである。ほかにも、カテコラミン、メラトニンなどが含まれる。

4.〇 正しい。副腎皮質刺激ホルモンは、蛋白質に結合しないで血中運搬される。
副腎皮質刺激ホルモンは、ペプチドホルモンで、血液中で自由に運ばれる。つまり、特定のタンパク質に結合せずに運ばれる。例えば、甲状腺ホルモン放出ホルモン、副腎皮質刺激ホルモン、副甲状腺ホルモン、成長ホルモン、インスリン、卵胞刺激ホルモン、黄体形成ホルモンなど多くのホルモンがペプチドまたはタンパク質ホルモンである。ちなみに、副腎皮質刺激ホルモン〈ACTH〉の分必が亢進すると、副腎皮質ホルモン(コルチゾール、アルドステロン、アンドロゲン)の分泌が増えクッシング症候群を呈する。副腎皮質ホルモンは血糖値を上昇させる作用があるため、高血糖、高血圧などが生じる。

補足事項

副腎皮質ホルモンには、コルチゾール・アルドステロン・アンドロゲン(男性ホルモン)などがある。
コルチゾール:血糖値の上昇や脂質・蛋白質代謝の亢進、免疫抑制・抗炎症作用、血圧の調節など、さまざまな働きがあるが、過剰になるとクッシング症候群、不足するとアジソン病を引き起こす。

 

 

 

 

 

問題94 インスリンの作用で正しいのはどれか。

1.脂肪組織での脂肪分解促進
2.筋肉での蛋白質分解促進
3.肝臓でのグリコーゲン合成促進
4.赤血球へのグルコース取り込み促進

答え.3

解説

インスリンとは?

インスリンとは、膵臓のβ細胞で産生されるペプチドホルモンである。血中を流れるブドウ糖が、肝臓、脂肪細胞、骨格筋細胞に取り込まれるよう促し、炭水化物、タンパク質、脂肪の代謝を調節する。

1.× 脂肪組織での脂肪分解「促進」ではなく抑制する。
インスリンは、脂肪組織での脂肪分解を抑制し、脂肪の合成を促進する。相反する働きがグルカゴンである。

2.× 筋肉での蛋白質分解「促進」ではなく抑制する。
インスリンは、筋肉での蛋白質分解を抑制し、蛋白質の合成を促進する。相反する働きがグルカゴンである。

3.〇 正しい。肝臓でのグリコーゲン合成促進は、インスリンの作用である。
インスリンは、グリコーゲン合成酵素の活性を増加させることで、肝臓でのグリコーゲンの生成を促す。ちなみに、グリコゲーンとは、多糖類の一種で、エネルギーを貯蔵し人間の活動に欠かせないものである。普段は、肝臓や骨格筋等に蓄えられており、急激な運動を行う際のエネルギー源として、あるいは空腹時の血糖維持に利用される。

4.× 赤血球へのグルコース取り込み促進
赤血球はインスリンに依存しないグルコース輸送体を使用してグルコースを取り込まれる。取り込まれたグルコースは、細胞内で代謝されてエネルギー源であるATPの産生や細胞の構成成分である核酸や脂質の合成に利用される。

グルカゴンとは?

膵臓のランゲルハンス島からは、①インスリン、②グルカゴン、③ソマトスタチンが分泌される。
①インスリンとは、膵臓のランゲルハンス島にあるβ細胞から分泌されるホルモンの一種で、①血糖低下、②脂肪合成の作用がある。

②グルカゴンとは、膵臓のランゲルハンス島にあるα細胞から分泌されるホルモンの一種で、①血糖上昇、②脂肪分解の作用がある。

③ソマトスタチンとは、膵臓のランゲルハンス島にあるγ細胞から分泌されるホルモンの一種で、成長ホルモン、インスリン、グルカゴン、ガストリン、セクレチンの分泌抑制の作用がある。

 

 

 

 

 

問題95 性分化で正しいのはどれか。

1.テストステロンの作用で原始生殖腺が分化する。
2.テストステロンの作用でウォルフ管が発達する。
3.エストロゲンの作用でミューラー管が発達する。
4.エストロゲンの作用でウォルフ管が退化する。

答え.2

解説

性分化とは?

性分化とは、胎生期に染色体に存在する遺伝子のプログラムのもとに、体の性(性腺、内性器および外性器の性)が分化する過程の総称である。性染色体(X染色体とY染色体のこと)に基づき精巣や卵巣が発育し、男女それぞれに特徴的な内性器(体の中の性器)や外性器(体の外側の性器)が造られる過程を指す。

1.× テストステロンの作用で原始生殖腺が分化する。
原始生殖腺の分化は、Y染色体上のSRY遺伝子の影響により行われる。SRY遺伝子が存在する場合、原始生殖腺は睾丸に分化する。ちなみに、原始生殖腺とは、ヒトの場合の生殖腺は、胎児第六週までは構造に性差がない状態の生殖腺のことをいう。原始生殖腺は皮質と髄質よりなる。第七週から第八週にかけて、男性では髄質が精巣へと発達して皮質は退化する。

2.〇 正しい。テストステロンの作用でウォルフ管が発達する
ウォルフ管とは、ライディッヒ細胞から分泌されるテストステロンが存在するとき(男性になるとき)、精巣上体・輸精管・精嚢に分化する。テストステロンが存在しないとき(女性になるとき)は退縮する。性管・外性器は、胎児精巣由来ホルモンの有無に依存して分化する。

3.× 「エストロゲン」ではなく、抗ミュラー管ホルモンが存在しないときの作用でミューラー管が発達する。
Müller<ミュラー>管は、セルトリ細胞から分泌される抗ミュラー管ホルモンが存在するとき退縮し、存在しないとき子宮・卵管・腟上部に分化する。Müller<ミュラー>管は男性では退化するが、代わりにWolff<ウォルフ>管が発達する。 Wolff<ウォルフ>管は、ライディッヒ細胞から分泌されるテストステロンが存在するとき精巣上体・輸精管・精嚢に分化し、存在しないとき退縮する。また、性腺の位置も胎児精巣由来ホルモンの有無に依存する。

4.× 「エストロゲン」ではなく、抗ミュラー管ホルモンの作用でウォルフ管が退化する。
Müller<ミュラー>管は、セルトリ細胞から分泌される抗ミュラー管ホルモンが存在するとき退縮し、存在しないとき子宮・卵管・腟上部に分化する。Müller<ミュラー>管は男性では退化するが、代わりにWolff<ウォルフ>管が発達する。 Wolff<ウォルフ>管は、ライディッヒ細胞から分泌されるテストステロンが存在するとき精巣上体・輸精管・精嚢に分化し、存在しないとき退縮する。また、性腺の位置も胎児精巣由来ホルモンの有無に依存する。

 

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