第30回(R4年)柔道整復師国家試験 解説【午前26~30】

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問題26 スピードテストで誤っているのはどれか。

1.結節間溝部の疼痛を確認する。
2.患者に肩屈曲を指示する。
3.肩部と前腕遠位部を把持する。
4.前腕を回内位で行う。

答え.

解説

スピードテストとは?

Speedテスト(スピードテスト)は、上腕二頭筋長頭腱の炎症の有無をみる。結節間溝部に痛みがあれば陽性である。

【方法】
被検者:座位で、上肢を下垂・肩関節外旋位から、上肢を前方挙上(肩関節屈曲)してもらう。
検者:肩部と前腕遠位部を把持し、上肢に抵抗をかける。

1.〇 正しい。結節間溝部の疼痛を確認する。
なぜなら、結節間溝に上腕二頭筋長頭腱が通るため。

2.〇 正しい。患者に肩屈曲を指示する。
被検者:座位で、上肢を下垂・肩関節外旋位から、上肢を前方挙上(肩関節屈曲)してもらう。

3.〇 正しい。肩部と前腕遠位部を把持する。
検者:肩部と前腕遠位部を把持し、上肢に抵抗をかける。

4.× 前腕は、「回内位」ではなく回外位で行う。

上腕二頭筋腱炎(上腕二頭筋長頭炎)とは?

 上腕二頭筋腱炎(上腕二頭筋長頭炎)は、上腕二頭筋長頭腱が、上腕骨の大結節と小結節の間の結節間溝を通過するところで炎症が起こっている状態のことである。腱炎・腱鞘炎・不全損傷などの状態で肩の運動時に痛みが生じる。Speedテスト(スピードテスト)・Yergasonテスト(ヤーガソンテスト)で、上腕骨結節間溝部に疼痛が誘発される。治療は保存的治療やステロイド局所注射となる。

 

 

 

 

 

問題27 SLRテストで陽性になるのはどれか。

1.大腿部前面の打撲
2.大腿四頭筋の肉離れ
3.下腿三頭筋の肉離れ
4.大腿二頭筋の肉離れ

答え.

解説

SLRテストとは?

SLRテスト(下肢伸展挙上テスト)は、脊髄後根で圧迫を受ける疾患(坐骨神経痛、椎間板ヘルニアなど)の有無、ハムストリングス損傷や短縮をみる。背臥位で、下肢を挙上し痛みが生じたら陽性である。

1.× 大腿部「前面」ではなく後面の打撲
ハムストリングスの損傷を見る。ハムストリングスは大腿部の後面に走行する。

2~3.× 「大腿四頭筋・下腿三頭筋」ではなくハムストリングスの肉離れ
ハムストリングスの損傷を見る。

4.〇 正しい。大腿二頭筋の肉離れは、SLRテストで陽性になる。

肉離れとは?

肉離れとは、筋肉が過度に引き伸ばされたり、筋肉が縮んだ状態から引き伸ばされた際に筋線維が切れることである。肉離れの予防として、①柔軟性の向上、②血行改善、③アイシング、④違和感があった際の中断が必要となる。

【好発部位】
大腿四頭筋:太ももの前側(大腿直筋)で起こりやすい。なぜなら、股関節と膝関節の二つの関節の動きに作用する二関節筋であるため。
ハムストリングス:大腿二頭筋(筋腱移行部)で起こりやすい。
下腿三頭筋:筋繊維の多くは筋腱移行部での部分損傷で、特に腓腹筋内側頭で起こりやすい。10代からみられ、各年齢層にまんべんなく発生する。受傷機序として、日常生活中やスポーツ現場では階段を下りた際や、ランニングやダッシュの途中などにふくらはぎに鋭い痛みが走り、その後の歩行が困難になるケースがよく見られる。足関節底屈の際、親指のほうが大きく力を発揮するのに適しており、親指側に力が入りやすいため、外側より内側のほうが受傷しやすい。

 

 

 

 

 

問題28 膝関節側副靭帯損傷でみられるのはどれか。

1.側方動揺性
2.嵌頓症状
3.膝崩れ
4.軋轢音

答え.

解説
1.〇 正しい。側方動揺性は、膝関節側副靭帯損傷でみられる。
側副靭帯の役割として、膝の外・内側からのストレスに抵抗することで、関節の外・内側部分が開きすぎるのを防ぐ役割をもつ。

2.× 嵌頓症状
(※かんとん:膝に物がはさまり、曲げ伸ばしがしにくくなる状態)
膝半月板損傷でみられるいわゆる「膝ロッキング現象」である。

3.× 膝崩れ
膝折れともいい、大腿四頭筋の筋力低下、足関節の可動域制限、半月板損傷などが疑われる。

4.× 軋轢音(※読み:あつれきおん)
変形性膝関節症などが疑われる。膝の軟骨がすり減っているためと考えられる。

 

 

 

 

 

問題29 急性期の前十字靭帯損傷の徒手検査で大腿骨に対する脛骨の偏位方向はどれか。

1.前方
2.後方
3.側方
4.回旋

答え.

解説

1.〇 正しい。前方が、急性期の前十字靭帯損傷の徒手検査で大腿骨に対する脛骨の偏位方向である。
前十字靭帯とは、膝関節の中で、大腿骨と脛骨をつないでいる強力な靭帯である。役割は、主に①大腿骨に対して脛骨が前へ移動しないような制御(前後への安定性)と、②捻った方向に対して動きすぎないような制御(回旋方向への安定性)である。

2.× 後方
後十字靭帯の役割である。

3.× 側方
側副靭帯の役割である。

4.× 回旋
十字靭帯も担うが、半月板などの役割でもある。

 

 

 

 

 

問題30 前十字靱帯損傷の検査法でないのはどれか。

1.ピボットシフトテスト
2.ジャークテスト
3.アプライテスト
4.Nテスト

答え.

解説
1.〇 ピボットシフトテスト
Pivot Shift/Pivot Shift test(ピボットシフトテスト)とは、前十字靭帯損傷の回旋不安定性現象を検査する。前十字靱帯損傷膝では膝伸展位において外反、軸圧のストレスをかけることにより脛骨は前方にずれる。そして、屈曲とともに 20°~30°付近で脛骨は突然整復位に外旋するように、即ち、後方の正常な位置に戻る。

2.〇 ジャークテスト
Jerkテスト(ジャークテスト)の陽性は、前十字靭帯損傷を疑う。片方の手で、患者の足首を持ち、もう一方の手で膝を持ち、下腿を内旋しながら伸展すると、膝でクリックを伴う亜脱臼整復感が確認できる。

3.× アプライテストは、前十字靱帯損傷の検査法ではない。
一般的にApleyテスト(アプレーテスト)といっても、アプレー・スクラッチテスト(Apley scratch test)やアプレー圧迫・牽引テストとApleyとつくテストがいくつかある。アプレー・スクラッチテスト(Apley scratch test)は、棘上筋腱の変性性筋炎を疑う。アプレー圧迫テストは半月板損傷、アプレー牽引テストは、側副靭帯損傷を疑う。

4.〇 Nテスト
Nテストは、前十字靭帯断裂を検査する。足部と下腿近位を把持し、膝関節屈曲位から腓骨頭を押し出すように下腿を内旋させ、そのまま他動的に伸張させる。膝屈曲20°付近から脛骨が前方・内旋方向へ亜脱臼すると陽性となる。

MEMO

前方引き出しテストは、膝関節前十字靱帯損傷の検査である。背臥位にて患側膝90°屈曲位で、検者は下腿を前方に引く。陽性の場合、脛骨は止まることなく前方に出てくる。

ほかにも、膝関節前十字靱帯損傷の検査として、Lachmanテスト(ラックマンテスト)があげられる。背臥位で膝関節を20~30度屈曲させて、下腿部近位端を斜め前方へ引き出す。陽性の場合、脛骨は止まることなく前方に出てくる。

 

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