第31回(R5年)柔道整復師国家試験 解説【午前11~15】

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問題11 第5中手骨頸部骨折の関節固定角度で正しいのはどれか。

1.DIP関節軽度屈曲位
2.PIP関節90度屈曲位
3.MP関節90度屈曲位
4.手関節軽度屈曲位

答え.1

解説

中手骨頚部骨折

固定の主たる目的は、MP 関節を屈曲位として末梢骨片を安定させることである。固定は様々あるが、症状にあった固定を行なう必要がある。
◎ 固定時の留意点
1、指関節背側の皮膚は薄く、屈曲により皮膚血流が悪くなりやすい、したがって、皮膚潰瘍や壊死を起こしやすい。
2、ガーゼなどを使用することで、皮膚の保護に十分注意する必要がある。
3、高齢者で転位を避けるために PIP 関節の屈曲位を余儀なくされる場合、指の屈曲拘縮を起こしやすいので、可能な範囲で軽度屈曲位を目指す。
4、強度の固定は手指の巧緻運動を著しく障害し、長期にわたって機能障害を残すことになる。

(※引用:「中手骨頚部骨折」著:舘 利幸)

1.〇 正しい。DIP関節軽度屈曲位は、第5中手骨頸部骨折の関節固定角度である。
なぜなら、骨折部分の安定を保ち、治癒を促進することができるため。第5中手骨頸部骨折は初期に、不全骨折や疼痛が強い場合等に、整復せずに固定する場合がある。固定法は、アルミ副子を掌側にあて、合成樹脂製キャスト材を背側にあてて固定する方法と、アルミ副子を背側にあて、ロール状の枕子を握らせて合成樹脂製キャスト材で固定する方法がある。固定範囲は前腕から末節骨を含め、第5指であれば、隣接指の第4指とともに固定する。

2~4.× PIP関節90度屈曲位/MP関節90度屈曲位/手関節軽度屈曲位で固定する必要はない。

MEMO

第5中手骨頸部骨折の骨折部は背外側偏位を呈する場合が多い。第5中手骨頸部骨折は末梢骨片が短く且つ中手指節関節に近い事から整復操作後も転位しやすく、観血的療法の適応となる事が少なくない。又、保存的療法の一般的な整復法はJhass法(中手指節関節及び近位指節間関節90度屈曲位にて中手骨骨頭を押し上げる)である。骨折部が最も安定した固定肢位はJhass法施行時の中手指節関節及び近位指節間関節90度屈曲位である。しかし、この肢位は近位指節問関節背側部の血行障害による皮膚壊死や支靱帯の短縮による近位指節問関節の屈曲拘縮をきたしやすく禁忌とされている。渡辺は幅2.5cmの非伸縮性粘着テープを用いて中手指節関節及び近位指節間関節90度屈曲位で固定し、良好な治療成績を挙げている。(※引用:「第5中手骨頸部骨折に対する整形理学療法」著:有川整形外科医院)

 

 

 

 

 

問題12 肋骨骨折の絆創膏固定で正しいのはどれか。

1.最大吸気時に貼付する。
2.上位から下位に向かって貼付する。
3.前後正中線を越えないように貼付する。
4.貼り始めは牽引力を加えないように貼付する。

答え.4

解説
1.× 「最大吸気時」ではなく最大呼気に貼付する。
なぜなら、呼吸時に骨折部位がなるべく動かないようにするため。これにより、呼吸時の痛みが緩和される。

2.× 逆である。「下位」から「上位」に向かって貼付する。
なぜなら、骨折部位の安定性が向上し、痛みが軽減させるため。

3.× あえて、前後正中線を「越えない」ように貼付する必要はない
むしろ、前後正中線を越えて貼ることが推奨される。なぜなら、より骨折部位の安定性が向上し、痛みが軽減されるため。

4.〇 正しい。貼り始めは牽引力を加えないように貼付する
なぜなら、いきなり牽引力を加えてしまうと痛みの発生や骨折のずれにつながりかねないため。絆創膏を貼る際は、最初は牽引力を加えず、ゆっくりと骨折部位に沿って貼り進める。

 

 

 

 

 

問題13 肩鎖関節上方脱臼の症状で正しいのはどれか。

1.肩峰部が階段状に突出する。
2.肩関節の外転運動が制限される。
3.不全脱臼では変形はみられない。
4.完全脱臼ではピアノキー症状がみられない。

答え.2

解説
1.× 階段状に突出するのは、「肩峰部」ではなく鎖骨遠位端である。
肩鎖関節損傷を分類するトッシーの分類のⅢ度損傷(完全脱臼)では鎖骨遠位端の上方突出が起こる(階段状変形)。

2.〇 正しい。肩関節の外転運動が制限される
なぜなら、肩鎖関節は肩関節の動きに影響を与えるため。肩甲上腕リズムについて、肩関節外転は、肩甲上腕関節のみでは外転90~120°までしかできない。これは肩峰と鳥口肩峰靭帯によって阻害されるためである。さらなる外転位をとるには、肩甲骨・鎖骨を動かすことにより可能となる。上腕骨の外転と肩甲骨の動きを合わせて肩甲上腕リズムという。肩関節を外転させていく際の肩甲上腕リズムの比率は「肩甲上腕関節:肩甲胸郭関節=2:1」である。

3.× 不全脱臼でも変形は「みられない」のではなくみられる
通常、肩鎖関節周囲に軽度の変形や腫脹がみられる。ちなみに、不全脱臼とは、骨の一部を関節に残したまま、骨が関節からずれた状態のことをいう。 不全脱臼は「亜脱臼」と呼ばれることも多く、一度脱臼を起こした部位に衝撃が加わって起こる症状である。

4.× 完全脱臼でピアノキー症状は、「みられない」のではなくみられる
ピアノキー症状は、肩鎖関節脱臼では肩鎖関節のズレにより、鎖骨の外側の端が皮膚を持ち上げて階段状に飛び出して見えることである。上方に持ち上がった鎖骨の端を上から押すとピアノの鍵盤のように上下に動くこと。肩鎖関節の安定性が損なわれていることを示している。

 

 

 

 

 

問題14 肩鎖関節上方脱臼固定の際、患者に対する助手の位置はどれか。

1.前方
2.後方
3.健側側方
4.患側側方

答え.2

解説

肩鎖関節脱臼の整復法・固定法

【整復法】
①助手:患者の後方に立ち、患肢上肢を後上方へ軽く引く。
②術者は下方に転位した患肢上肢を上方に押し上げながら鎖骨遠位端を下方へ圧迫して整復する。

【固定法】
①固定期間:4週~8週
②整復位は困難で完全固定が容易ではない。

選択肢2.後方が、肩鎖関節上方脱臼固定の際、患者に対する助手の位置となる。
整復法において、助手が患者の後方に位置することで、患者の肩を安定させ、適切な圧迫や固定を行うことができる。助手は患肢上肢を後上方へ軽く引く。

ちなみに、選択肢4.患側側方の位置は、術者である。術者は、下方に転位した患肢上肢を上方に押し上げながら鎖骨遠位端を下方へ圧迫して整復する。

 

 

 

 

 

問題15 肩鎖関節上方脱臼の固定で綿花枕子を当てる部位はどれか。

1.鎖骨近位部
2.鎖骨骨幹部
3.鎖骨遠位部
4.肩峰部

答え.3

解説

選択肢3.〇 正しい。鎖骨遠位部に、肩鎖関節上方脱臼の固定で綿花枕子を当てる。
なぜなら、鎖骨遠位部に綿花枕子を当てることで、肩鎖関節が適切な位置に戻り、脱臼が改善される効果があるため。綿花枕子は鎖骨遠位部に適切な圧力をかけ、肩鎖関節の安定化を図る役割を果たす。また、絆創膏が局所副子上を通過するように前後の張力が均等になるように貼付する。

 

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