第31回(R5年)柔道整復師国家試験 解説【午前121~125】

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問題121 血栓形成の原因となるのはどれか。

1.脱水
2.血小板減少
3.第Ⅷ因子欠乏
4.ビタミンC欠乏

答え.1

解説

血栓形成の三大要因とは?

Virchow(ウィルヒョウ)の3大要因とは、1856年に、Rudolf C. Virchowにより、血栓形成の3大要因として挙げられた①血流の停滞、②血管内皮障害、③血液凝固能の亢進のことである。このうち一つでも異常を来すと血栓が形成されると提唱した。

1.〇 正しい。脱水は、血栓形成の原因となる。
脱水は、体内の水分が不足している状態である。脱水により、血液の粘度が上昇し、血栓形成のリスクが高まる。

2.× 血小板減少
血小板は、血栓形成に関与する。血小板減少は通常、出血傾向につながる。

3.× 第Ⅷ因子欠乏
第Ⅷ因子欠乏は、血友病Aを引き起こす。血友病とは、血液を固めるのに必要な「血液凝固因子(第Ⅷ因子または第Ⅸ因子)が不足・活性低下する病気のことである。伴性劣性遺伝(男児に多い)で、生まれつき発症することがほとんどであるため、幼少期から①些細なことで出血する、②出血が止まりにくいといった症状が繰り返される。治療として、凝固因子製剤の投与、関節拘縮・筋力低下に対するリハビリテーションが行われる。

4.× ビタミンC欠乏
ビタミンC欠乏は、壊血病を生じる。壊血病は、結合組織の異常から毛細血管が脆弱化して出血しやすくなる。

”血友病とは?”

血友病とは、血液を固めるのに必要な「血液凝固因子(第Ⅷ因子または第Ⅸ因子)が不足・活性低下する病気のことである。

【概念】
伴性劣性遺伝(男児に多い):生まれつき発症することがほとんどであるため、幼少期から①些細なことで出血する、②出血が止まりにくいといった症状が繰り返される。
血友病A:第Ⅷ凝固因子の活性低下
血友病B:第Ⅸ凝固因子の活性低下

【症状】関節内出血を繰り返し、疼痛、安静により関節拘縮を起こす。(筋肉内出血・血尿も引き起こす)肘・膝・足関節に多い。鼻出血、消化管出血、皮下出血等も起こす。

【治療】凝固因子製剤の投与、関節拘縮・筋力低下に対するリハビリテーション

(※参考:「血友病」Medical Note様HP)

 

 

 

 

 

問題122 扁平上皮化生がみられないのはどれか。

1.慢性胃炎
2.慢性膀胱炎
3.慢性気管支炎
4.慢性子宮頸炎

答え.1

解説

化生とは?

化生(かせい)とは、 分化・成熟した細胞が異なる形態や機能をもつ他の細胞に変化する現象である。したがって、扁平上皮化生とは、正常状態では線毛円柱上皮で覆われている気管支上皮が、扁平上皮で置き換えられる現象である。

1.× 慢性胃炎は、扁平上皮化生がみられない。
なぜなら、胃は円柱上皮であるため。

2~4.〇 慢性膀胱炎/慢性気管支炎/慢性子宮頸炎は、扁平上皮化生がみられる。
なぜなら、膀胱/気管支/子宮頚は扁平上皮であるため。体を構成する組織のうち、扁平上皮とよばれ、体の表面や食道などの内部が空洞になっている臓器の内側の粘膜組織から発生するがんである。口の中、舌、のど、食道、気管、肺、肛門、外陰部、腟、子宮頸部などに発生する。

 

 

 

 

 

問題123 炎症の分類と疾患の組み合わせで正しいのはどれか。(※不適切問題:解2つ)

1.肉芽腫性炎症:野兎病
2.増殖性炎:梅毒
3.滲出性炎:膿胸
4.出血性炎:アレルギー性鼻炎

答え.1or3
※理由:複数の選択肢を正解として採点。

解説
1.〇 正しい。野兎病は、「肉芽腫性炎症」が特徴的である。
野兎病とは、野兎病菌による急性熱性疾患で、代表的な動物由来感染症の一つである。 自然界において本菌はマダニ類などの吸血性節足動物を介して、主にノウサギや齧歯類などの野生動物の間で維持されており、これらの感染動物から直接あるいは間接的にヒトが感染する。肉芽腫性炎症とは、増殖性炎症の一つである。 肉芽腫の形成が特徴である。

2.× 梅毒は、増殖性炎はみられない。
梅毒とは、5類感染症の全数把握対象疾患であり、スピロヘータの一種である梅毒トロポネーマ感染により発症し、この梅毒トロポネーマが脳の実施まで至ると、進行性麻痺となる。増殖性炎症とは、慢性炎症の時に見られる炎症である。組織の線維成分や実質細胞の増殖が多く見られる。炎症の初期から肉芽組織の増殖が強い。発疹チフスなどで見られる。

3.〇 正しい。膿胸は、「滲出性炎」が特徴的である。
膿胸とは、細菌などの病原微生物が、肺の周りの胸腔という空間に強い炎症を起こし、膿を作る病気である。感染の程度によっては、胸水と膿胸の間のような病態(複雑性肺炎随伴性胸水)になる。滲出性炎症とは、急性炎症の時に見られる炎症である。液性滲出物と炎症細胞の滲出が多く見られる傾向が強い。血管に多く、浸出性炎症、血管性炎症ともいわれる。

4.× アレルギー性鼻炎は、出血性炎はみられない。
アレルギー性鼻炎とは、アレルゲンが鼻粘膜から侵入し免疫反応が起こることによって、鼻水・鼻づまり・くしゃみなどの症状が引き起こされる病気である。通年性アレルギー性鼻炎(一年を通して症状が出るタイプ)と、季節性アレルギー性鼻炎(特定の季節に症状が出るタイプ、いわゆる花粉症)とがあり、両者を合併しているタイプもみられる。出血性炎症とは、炎症巣の滲出性炎症のことであり、著しい出血がみられる。多量の赤血球細胞を含んでいる炎症細胞なので、血管壁は傷害を受けている。 小児のインフルエンザ肺炎、劇症型肝炎、日本脳炎、肺出血で見られる。

 

 

 

 

 

問題124 リンパ球の中で、ほかのリンパ球の分化を誘導するのはどれか。

1.NKT細胞
2.ヘルパーT細胞
3.細胞障害性T細胞
4.ナチュラルキラー細胞

答え.2

解説
1.× NKT細胞(ナチュラルキラーT細胞)
NKT細胞は、T細胞、B細胞、ナチュラルキラー細胞(NK細胞)に続く第4のリンパ球と呼ばれている。他の免疫細胞を活性化することにより、長期にわたり抗腫瘍効果を発揮する「長期免疫記憶」を誘導する中心的な働きをする。 免疫制御、がん免疫、病原体感染防御など、「種の生存」に不可欠な生体防御の機能を担っている。

2.〇 正しい。ヘルパーT細胞は、リンパ球の中で、ほかのリンパ球の分化を誘導する。
ヘルパーT細胞は免疫反応の亢進(抗原提示細胞からの情報を受け、B細胞やマクロファージなどを活性化する)に働く。

3.× 細胞傷害性T細胞
細胞傷害性T細胞は、細胞表面にCD8という分子を持つT細胞の一種で、ヘルパーT細胞からの指示を受け、宿主(患者)にとって異物になる異常細胞(がん細胞、ウイルス感染細胞など)を認識し、たんぱく質の1種であるパーフォリンを放出して破壊する細胞である。

4.× ナチュラルキラー細胞
ナチュラルキラー細胞は、ウイルス感染細胞や腫瘍細胞の傷害に働く。ナチュラルキラー細胞は、抗原を認識するための受容体をもたず、標的細胞を直接攻撃する。また、免疫グロブリンすなわち抗体は、B細胞により作られる。

 

 

 

 

 

問題125 自己免疫疾患と特徴の組合せで誤っているのはどれか。

1.橋本病:口内乾燥症
2.関節リウマチ:滑膜炎
3.多発性筋炎・皮膚筋炎:脱力
4.全身性エリテマトーデス:抗核抗体

答え.1

解説
1.× 橋本病は、「口内乾燥症」はみられにくい
橋本病とは、甲状腺に炎症が引き起こされることによって徐々に甲状腺が破壊され、甲状腺ホルモンの分泌が低下していく病気のことである。慢性甲状腺炎とも呼ばれる。甲状腺機能低下症になると、全身の代謝が低下することによって、無気力、疲れやすさ、全身のむくみ、寒がり、体重増加、便秘、かすれ声などが生じる。ちなみに、口内乾燥症はSjögren症候群(シューグレン症候群)の特徴である。Sjögren症候群(シューグレン症候群)は、涙腺・唾液腺などの外分泌腺炎を特徴とする自己免疫疾患である。男女比(1:9)で女性に多い(特に、40歳代の中年女性)。唾液腺・涙腺の慢性炎症が生じる膠原病で、乾性角結膜炎(ドライアイ)、口腔乾燥(ドライマウス)を主症状とする。皮膚症状は環状紅斑など多彩であるが、全身の紅斑・水庖は生じない。これらの乾燥症状に対し、人工涙液点眼や水分摂取といった対症療法を行う。

2.〇 正しい。関節リウマチは、滑膜炎がみられる。
関節リウマチは、関節滑膜を炎症の主座とする慢性の炎症性疾患である。病因には、遺伝、免疫異常、未知の環境要因などが複雑に関与していることが推測されているが、詳細は不明である。関節炎が進行すると、軟骨・骨の破壊を介して関節機能の低下、日常労作の障害ひいては生活の質の低下が起こる。関節破壊(骨びらん) は発症6ヶ月以内に出現することが多く、しかも最初の1年間の進行が最も顕著である。関節リウマチの有病率は0.5~1.0%とされる。男女比は3:7前後、好発年齢は40~60歳である。【症状】①全身症状:活動期は、発熱、体重減少、貧血、リンパ節腫脹、朝のこわばりなどの全身症状が出現する。②関節症状:関節炎は多発性、対称性、移動性であり、手に好発する(小関節)。③その他:リウマトイド結節は肘、膝の前面などに出現する無痛性腫瘤である。内臓病変は、間質性肺炎、肺線維症があり、リウマトイド肺とも呼ばれる。(※参考:「関節リウマチ」厚生労働省HPより)

3.〇 正しい。多発性筋炎・皮膚筋炎は、脱力がみられる。
多発性筋炎とは、自己免疫性の炎症性筋疾患で、主に体幹や四肢近位筋、頸筋、咽頭筋などの筋力低下をきたす。典型的な皮疹を伴うものは皮膚筋炎と呼ぶ。膠原病または自己免疫疾患に属し、骨格筋に炎症をきたす疾患で、遺伝はなく、中高年の女性に発症しやすい(男女比3:1)。5~10歳と50歳代にピークがあり、小児では性差なし。四肢の近位筋の筋力低下、発熱、倦怠感、体重減少などの全身症状がみられる。手指、肘関節や膝関節外側の紅斑(ゴットロン徴候)、上眼瞼の腫れぼったい紅斑(ヘリオトロープ疹)などの特徴的な症状がある。合併症の中でも間質性肺炎を併発することは多いが、患者一人一人によって症状や傷害される臓器の種類や程度が異なる。予後は、5年生存率90%、10年でも80%である。死因としては、間質性肺炎や悪性腫瘍の2つが多い。悪性腫瘍に対する温熱療法は禁忌であるので、その合併が否定されなければ直ちに温熱療法を開始してはならない。しかし、悪性腫瘍の合併の有無や皮膚症状などの禁忌を確認したうえで、ホットパックなどを用いた温熱療法は疼痛軽減に効果がある。(※参考:「皮膚筋炎/多発性筋炎」厚生労働省様HPより)

4.〇 正しい。全身性エリテマトーデスは、抗核抗体がみられる。
全身性エリテマトーデスとは、皮膚・関節・神経・腎臓など多くの臓器症状を伴う自己免疫性疾患である。皮膚症状は顔面の環形紅斑、口腔潰瘍、手指の凍瘡様皮疹である。10~30歳代の女性に好発する多臓器に障害がみられる慢性炎症性疾患であり、寛解と再燃を繰り返す病態を持つ。遺伝的素因を背景にウイルス感染などが誘因となり、抗核抗体などの自己抗体産生をはじめとする免疫異常で起こると考えられている。

 

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