第31回(R5年)柔道整復師国家試験 解説【午前116~120】

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問題116 抗原抗体反応を利用した染色法はどれか。

1.PAS染色
2.グラム染色
3.免疫組織化学
4.ベルリン青染色

答え.3

解説

抗原抗体反応とは?

抗原抗体反応とは、抗原と抗体間に起こる結合のこと。生物体に異物(抗原)が侵入した場合に、これに応じてリンパ細胞などで作られる抗体(免疫グロブリン)と抗原との特異的な結合によって生じる反応をさす。

1.× PAS染色(periodic acid Schiff染色)
PAS染色とは、組織学や病理学において使用される染色法の一つである。主として、白血病細胞のリンパ性と非リンパ性の鑑別や、巨赤芽球様細胞の鑑別に用いられる。

2.× グラム染色
グラム染色とは、主として細菌類を色素によって染色する方法の一つである。細菌を分類する基準の一つで、デンマークの学者ハンス・グラムによって発明された。

3.〇 正しい。免疫組織化学は、抗原抗体反応を利用した染色法である。
免疫組織化学は、抗原抗体反応を利用して組織・細胞内の抗原物質の所在を明確にする手法である。

4.× ベルリン青染色
ヘモジデリン(血鉄素)やアスベスト小体(含鉄小体)を検出する際に用いる染色法である。マクロファージに貪食されたヘモジデリンを染色することによる肺胞出血などの出血病変の検出や含鉄小体(アスベスト小体)の検索などに用いられる。

 

 

 

 

 

問題117 病名に経過が含まれているのはどれか。

1.橋本病
2.気管支肺炎
3.急性虫垂炎
4.ウイルス性肝炎

答え.3

解説
1.× 橋本病
橋本病とは、甲状腺に炎症が引き起こされることによって徐々に甲状腺が破壊され、甲状腺ホルモンの分泌が低下していく病気のことである。慢性甲状腺炎とも呼ばれる。

2.× 気管支肺炎
気管支肺炎とは、気管支の炎症を伴う肺炎の一形態である。せき・痰の症状が最初からみられ、発熱が加わってくる場合が多い傾向がある。

3.〇 正しい。急性虫垂炎は、病名に経過が含まれている(急性)。
虫垂炎とは、大腸の一部である虫垂という部位に炎症が生じている状態である。一般的に「盲腸」と呼ばれている。

4.× ウイルス性肝炎
ウイルス性肝炎とは、A、B、C、D、E型などの肝炎ウイルスの感染によって起こる肝臓の病気である。A型、E型肝炎ウイルスは主に食べ物を介して感染し、B型、C型、D型肝炎ウイルスは主に血液を介して感染する。中でもB型、C型肝炎ウイルスについては、感染すると慢性の肝臓病を引き起こす原因ともなる。

 

 

 

 

 

問題118 ホルモンと疾患の組合せで正しいのはどれか。

1.成長ホルモン:尿崩症
2.甲状腺ホルモン:バセドウ(Basedow)病
3.アルドステロン:クッシング(Cushing)症候群
4.インスリン:褐色細胞腫

答え.2

解説
1.× 成長ホルモン(過剰)は、「尿崩症」ではなく先端巨大症である。ちなみに、尿崩症は多尿 (3L/日以上)を呈する。尿崩症には2種類あり、①中枢性尿崩症(抗利尿ホルモンの分泌低下)と、②腎性尿崩症(ホルモンの作用障害)がある。

2.〇 正しい。甲状腺ホルモンは、バセドウ(Basedow)病を呈す。
甲状腺ホルモンとは、サイロキシン(T4)とトリヨードサイロニン(T3)があり、新陳代謝を調節しているため。脈拍数や体温、自律神経の働きを調節し、エネルギーの消費を一定に保つ働きがある。したがって、甲状腺機能亢進症(バセドウ病)の症状として、発汗や食欲亢進、体重減少、下痢、振戦、メルセブルグ3徴(眼球突出、甲状腺腫、頻脈)がみられる。放射線性ヨウ素内用療法は、バセドウ病(甲状腺機能亢進症)や甲状腺がんに対して行われる治療のひとつである。甲状腺機能亢進症では、放射性ヨウ素から放出されるベーター線で正常な甲状腺細胞を破壊し、甲状腺機能亢進症を改善させる。

3.× クッシング(Cushing)症候群は、副腎皮質ホルモンであるコルチゾールの過剰分泌により起こる内分泌系疾患である。満月様顔貌や中心性肥満などの特徴的な症状を呈する。ちなみに、アルドステロンとは、腎臓に作用してナトリウムと水の再吸収を促進し、循環血漿量増加を促し血圧を上昇させる。アルドステロンが過剰に分泌されると、高血圧や低カリウム血症、筋力低下などがみられる。副腎皮質ホルモンには、①アルドステロン、②コルチゾール、③アンドロゲンがある。

4.× 褐色細胞腫は、「インスリン」ではなくカテコラミンである。
褐色細胞腫とは、交感神経(自律神経の一種)に働きかけるホルモンであるカテコラミン(アドレナリン、ノルアドレナリンなど)の産生能を有する腫瘍である。主に、腎臓の上に位置する副腎髄質から発生する。カテコラミンは、交感神経に働いて、身体中の血管を収縮させたり、心臓の収縮能を増加させることで、脳や腎臓などの臓器への血流調整に、重要な役割を果たす。褐色細胞腫ではこのカテコラミンが過剰に分泌され、高血圧や頭痛、動悸、発汗、不安感、便秘、腸閉塞(麻痺性イレウス)など多様な症状を呈する。また、糖尿病、脂質異常症を併発することもある。

 

 

 

 

 

問題119 加齢に伴って心筋に沈着する色素はどれか。

1.メラニン
2.ビリルビン
3.ヘモジデリン
4.リポフスチン

答え.4

解説
1.× メラニン
メラニンは、肌や毛髪・瞳の色を構成する黒色の色素のことで紫外線から皮膚の細胞を守る働きがある。皮膚の基底層や毛髪の毛母細胞にあるメラノサイトで生成される。

2.× ビリルビン
(総)ビリルビンとは、赤血球が壊れたときにできる黄色い色素のことである。総ビリルビンは、①間接ビリルビンと②直接ビリルビンをあわせていう。基準値:0.2〜1.2mg/dLである。肝細胞の障害により、直接ビリルビンが上昇する。急性肝炎、慢性肝炎、肝硬変、肝臓がん、自己免疫性肝炎などがあげられる。腎臓からも排泄され、主に肝臓で代謝されるため、肝臓や胆嚢の状態を知るための重要な指標となる。

3.× ヘモジデリン
ヘモジデリンとは、ヘモグロビンの鉄を含む色素である。成人男性は50mg/kg、成人女性は35mg/kgの鉄分を体内に持ち、そのうちの約2/3はヘモグロビンの構成成分として用いられている。残りの1/3のうちほとんどは、フェリチンやヘモジデリンといった貯蔵鉄として、脾臓、骨髄、肝臓中に含まれる。

4.〇 正しい。リポフスチンは、加齢に伴って心筋に沈着する色素である。
リポフスチンは、加齢とともに 蓄積する老化色素であり、血管に溜まることでくすみの原因になると考えられている。特に心筋などの長寿命な細胞での沈着が一般的である。

 

 

 

 

 

問題120 肺うっ血の原因となるのはどれか。

1.肝硬変
2.左心不全
3.下肢静脈瘤
4.心タンポナーデ

答え.2

解説

肺うっ血とは?

肺うっ血とは、心不全などの循環不全により、肺に血流がうっ滞する状態を示す。

1.× 肝硬変
肝硬変とは、B型・C型肝炎ウイルス感染、多量・長期の飲酒、過栄養、自己免疫などにより起こる慢性肝炎や肝障害が徐々に進行して肝臓が硬くなった状態をいう。慢性肝炎が起こると肝細胞が壊れ、壊れた部分を補うように線維質が蓄積して肝臓のなかに壁ができる。

2.〇 正しい。左心不全は、肺うっ血の原因となる。
左心不全は、左心室のポンプ機能が低下し、血液が肺に滞留して肺うっ血を引き起こす状態である。

3.× 下肢静脈瘤
下肢静脈瘤とは、下肢の静脈弁の機能不全(下肢の血管に血液がうっ滞すること)が原因で起こる。

4.× 心タンポナーデ
心タンポナーデとは、心臓を包んでいる2層の膜(心膜)の間に体液などの血液が貯留し、心臓が圧迫される。その結果、血液を送り出す心臓のポンプ機能が阻害され、 典型的にはふらつきや息切れを感じ、失神することもある。心膜腔に大量の血液が貯留し、著明な心室拡張障害から静脈還流障害が生じ、血圧低下およびショック状態に至る病態である。開心術後の合併症として生じ得る。

心不全とは?

心不全は心臓のポンプ機能低下のため末梢組織の酸素需要に見合った血液量を供給できない状態である。肺循環系にうっ血が著明なものを左心不全、体循環系にうっ血が著明なものを右心不全という。体液の著明やうっ血を生じ、主な症状として呼吸困難、咳嗽、チアノーゼ、血性・泡沫状喀痰(ピンクの痰)などがある。

心拍出量の低下を起こす原因として、
・左心不全:肺循環系にうっ血が著明なもの(呼吸困難、起座呼吸、尿量減少など)
・右心不全:体循環系にうっ血が著明なもの(頸静脈怒張、胸水・腹水、下腿浮腫、肝腫大など)
右室拡張末期圧の上昇(体循環の静脈系のうっ血)により右心不全は引き起こされる。

 

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