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問題21 職種と用いるリハビリテーションの組合せで適切でないのはどれか。
1.理学療法士:運動療法、物理療法
2.作業療法士:手芸、工作
3.臨床心理士:嚥下機能評価
4.言語聴覚士:コミュニケーション訓練
答え.3
解説
1.〇 正しい。理学療法士:運動療法、物理療法
理学療法士とは、医師の指示のもとに治療体操や運動・マッサージ・電気刺激・温熱などの物理的手段を用いて、運動機能の回復を目的とした治療法・物理療法(理学療法)を行う専門職である。つまり、関節可動域や筋力の向上などが役割である。
2.〇 正しい。作業療法士:手芸、工作
作業療法士とは、医師の指示のもとに手工芸・芸術・遊びやスポーツ・日常動作などを行うことにより、障害者の身体運動機能や精神心理機能の改善を目指す治療(作業療法)を行う専門職である。つまり、食事動作等、日常生活動作の回復が役割である。
3.× 嚥下機能評価は、「臨床心理士」ではなく言語聴覚士である。
臨床心理士とは、臨床心理学にもとづく知識や技術を用いて、人間のこころの問題にアプローチする心の専門家である。認知行動療法は、医師やカウンセラー、臨床心理士のもとで受けることができる。ちなみに、社会復帰援助を主に実施する専門職は、社会福祉士の役割である。社会福祉士とは、社会福祉援助(ソーシャルワーク)を主に行う職種のものである。例えば、①障害や病気などの理由により福祉サービスを必要とする人々からの相談を受け、②他の福祉サービスの提供者・医療機関と連携し、③相談者の自立に向け、専門的な知識と技術で的確な助言や指導、その他の援助を行う。
4.〇 正しい。言語聴覚士:コミュニケーション訓練
言語聴覚士とは、言語や聴覚、音声、呼吸、認知、発達、摂食・嚥下に関わる障害に対して、その発現メカニズムを明らかにし、検査と評価を実施し、必要に応じて訓練や指導、支援などを行う専門職である。
問題22 脳卒中の急性期リハビリテーションで優先度が低いのはどれか。
1.関節可動域訓練
2.ベッド上動作訓練
3.高次脳機能訓練
4.歩行訓練
答え.3
解説
急性期とは、症状が急に現れる時期、病気になり始めの時期である。急性期は、全身の生体反応と機能低下が起こり、合併症が発現するおそれがある。このため、回復過程における経過を予測して系統的な観察を行い、正常範囲に経過しているのか、それとも逸脱して悪化していくおそれがあるのかを判断し、異常を察知すれば早期に対処する必要がある。
1.〇 関節可動域訓練
なぜなら、脳卒中の急性期には、寝たきりにちかく、関節の動きが制限され関節拘縮をきたしやすい時期であるため。急性期リハビリテーションでは、「早い段階でリハビリテーションを行い、患者さまをできるだけ元の状態に戻すこと」、「早期退院を目指すこと」、「安静状態によって引き起こされる新たな機能低下(廃用症候群)を防ぐ」という目的も担っている。
2.〇 ベッド上動作訓練
なぜなら、ベッドからの起き上がり動作が獲得されることで、褥瘡予防だけでなく離床につながりやすいため。ちなみに、褥瘡とは、局所の持続的な圧迫により組織に虚血が生じて発生する皮膚の潰瘍あるいは皮下組織の損傷のことである。背臥位では、後頭骨や肩甲骨、肘頭、仙骨、踵部などの骨の突出している場所に好発する。予防法としては、最も負担がかかりやすい骨突出部を除圧し、面で支持することで一点に圧をかけることなく、圧の分散に努める。褥瘡予防マットやクッションなどを活用する。また、清潔を心がけ、体位変換を行う。
3.× 高次脳機能訓練は、脳卒中の急性期リハビリテーションで優先度が低い。
高次脳機能の訓練は通常、亜急性期や慢性期のリハビリテーションでより重視される。なぜなら、脳卒中の急性期は、全身の生体反応と機能低下が起こり、合併症が発現するおそれがあるため。総じて、患者が基本的な身体的な能力を回復することに重点が置かれる。ちなみに、高次脳機能障害とは、脳損傷に起因する認知障害全般を指し、 この中にはいわゆる巣症状としての失語・失行・失認のほか記憶障害、注意障害、遂行機能障害、社会的行動障害などが含まれる。
4.〇 歩行訓練
急性期の脳卒中患者に対する歩行練習は、運動麻痺の回復や歩行、階段動作の獲得における長期予後に影響していることが報告されている。歩行獲得できれば、食堂やトイレへの移動など離床につながる。
①胸痛・動悸・呼吸困難などの自覚症状が出現しないこと。
②心拍数が120/分以上にならないこと。または40/分以上増加しないこと。
③危険な不整脈が出現しないこと。
④心電図上1mm以上(0.2mV以上)の虚血性ST低下、または著明なST上昇がないこと。
⑤室内便器使用時までは20mmHg以上の収縮期血圧上昇・低下がないこと。
(2週間以上経過した場合、血圧に関する基準は設けない)
(引用:「2021年改訂版心血管疾患におけるリハビリテーションに関するガイドライン」日本循環器学会様より)
問題23 65歳の男性。数年前から安静時の振戦があり、パーキンソン(Parkinson)病の診断を受けている。最近になって歩き始めの一歩が出にくくなり、歩き始めると止まれないことがあるため受診した。
正しいのはどれか。
1.施設入所を勧める。
2.可及的に安静を取るよう指示する。
3.関節可動域訓練を主体としたリハビリテーションを行う。
4.立位歩行訓練を主体としたリハビリテーションを行う。
答え.4
解説
・65歳の男性(パーキンソン病)。
・数年前:安静時の振戦があり。
・最近:歩き始めの一歩が出にくくなり、歩き始めると止まれないことがある。
→パーキンソン病とは、黒質のドパミン神経細胞の変性を主体とする進行性変成疾患である。4大症状として①安静時振戦、②筋強剛(筋固縮)、③無動・寡動、④姿勢反射障害を特徴とする。また、自律神経障害による便秘や起立性低血圧、排尿障害、レム睡眠行動障害などが起こる。レム睡眠行動障害とは、レム睡眠の時期に体が動き出してしまう睡眠障害の1つである。 睡眠時随伴症に分類される。
1.× 施設入所を勧めることは時期尚早である。
なぜなら、本症例は歩行障害(突進現象)がみられるようになってきたものの「自宅での生活が難しい」とは考えにくいため。本症例の希望を聞いたり、薬や自宅環境の調整などを試みるべきである。
2.× 可及的に安静を取るよう指示する優先度は低い。
可及的とは、できるだけ早くという意味である。なぜなら、パーキンソン病は、安静したところで症状が緩和するとは限らないため。パーキンソン病とは、黒質のドパミン神経細胞の変性を主体とする進行性変成疾患である。徐々に症状が進行する。
3.× 関節可動域訓練を主体としたリハビリテーションを行う優先度は低い。
なぜなら、 関節可動域訓練の目的は、関節の動きを改善させることおよび拘縮の予防であるため。パーキンソン病による関節可動域訓練は、筋強剛(筋固縮)や無動に対する前傾姿勢改善のために行うことが多い。
4.〇 正しい。立位歩行訓練を主体としたリハビリテーションを行う。
なぜなら、本症例は突進現象が出始めたステージⅢであるため。パーキンソン病の歩行障害(すくみ足や突進現象)の誘発因子は、①狭路、②障害物、③精神的緊張などであるため、対応方法として、①視覚(障害物を跨ぐ、床に目印をつける)、②聴覚(メトロノームなどのリズムや歩行に合わせてのかけ声)③逆説的運動(階段昇降)などがあげられる。ちなみに、矛盾性運動(逆説的運動)とは、歩行障害(すくみ足などの)症状があっても、床の上の横棒をまたぐことができることをいう。リズムをとったり、視覚的な目標物を踏み越えさせたりすると、本来難易度が高いはずであるが、スムーズに足が出るといった現象である。階段昇降もこれに含まれ、平地歩行に比べて障害されにくい。
ステージⅠ:片側のみの症状がみられる。軽症で機能障害はない。
ステージⅡ:両側の症状がみられるが、バランス障害はない。また日常生活・通院にほとんど介助を要さない。
ステージⅢ:歩行障害、姿勢保持反射障害が出現し、ADLの一部に介助が必要になる。
ステージⅣ:日常生活・通院に介助を必要とする。立位・歩行はどうにか可能。
ステージⅤ:寝たきりあるいは車いすで、全面的に介助を要する。歩行・起立は不能。
問題24 診断へのプロセスとして最初に行うのはどれか。
1.鑑別診断を行う。
2.自覚症状を聞く。
3.臨床検査を行う。
4.他覚的所見を診察する。
答え.2
解説
診断のプロセスは、4つのステップで説明できる。
ステップ1:問診・身体診察からの情報収集
ステップ2:問題の描写
ステップ3:仮説の立脚と疾患の知識への照会
ステップ4:問題を説明する疾患の選択
(※引用:「診断のプロセス」日本内科学会雑誌第108巻第3号より)
1.× 鑑別診断を行うのは、ステップ4である。
ステップ4では、診断確定のために必要な検査を決める。鑑別疾患は、①最も可能性の高い疾患、②可能性のある疾患、③生命予後に関わる除外すべき疾患のように濃淡をつける。ちなみに、鑑別診断とは、かかっている病気を診断するにあたり、可能性がある複数の病気を比較しながら、合理的に特定することである。症状や検査結果などを手がかりとするが、それらの情報が十分に得られない状況では、仮の診断の後に、情報の入手とともに修正していくこともある。
2.〇 正しい。自覚症状を聞くのは、診断へのプロセスとして最初に行うことである。
ステップ1は、問診・身体診察からの情報収集である。ちなみに、自覚症状とは、病気にかかっている者に感じられる症状であり、生活状況に大きな変化はもたらされていないというのに、痛みや苦しみや倦怠感などを感知するようになり、そこから自身が疾患状況であるということが自覚できるような状態であるときに、その際に感じられる痛みや苦しみなどの症状を指す。
3.× 臨床検査を行うのは、ステップ1であるが、まずは自覚症状を聞き検査にうつる。
臨床検査とは、広義には、傷病や健康状態を評価するための医学的検査全般をさす場合もあるが、通常は、①検体検査と②生理検査を意味する。①検体検査とは、人体から排出または採取された物の検査である。②生理検査とは、人体について行う検査のうち、通常、呼吸機能検査、循環機能検査、神経生理検査、超音波検査などをさす。
4.× 他覚的所見を診察するのは、ステップ1であるが、まずは自覚症状を聞き検査にうつる。
他覚的所見とは、医師が直接観察または評価できる病状の特徴(例えば、皮疹、腫れ、振戦など)を指す。
SOAP(subjective, objective, assessment, plan)とは、叙述的経過記録方式の問題志向型記録のことである。
S=主観的データ(自覚症状などの患者の訴え)
O=客観的データ(他覚所見:診察所見・血液検査・検査所見)
A=評価(S・Oをもとにした患者の状態の評価・考察)
P=計画(Aをもとにした今後の検査・治療・患者教育の計画・方針)
で、経過を記録する。
問題25 重症うっ血性心不全患者の姿勢はどれか。
1.起坐位
2.仰臥位
3.側臥位
4.腹臥位
答え.1
解説
うっ血性心不全とは、心臓のポンプ機能が弱まり、充分な量の血液を全身に送れなくなって、血液の滞留(うっ血)が起こしている状態である。 このため、呼吸困難や倦怠感、むくみなどが生じる。BNPが 100pg/mL以上であることが診断基準である。
1.〇 正しい。起坐位は、重症うっ血性心不全患者の姿勢である。
起坐呼吸とは、呼吸困難が臥位で増強し、起坐位(または半坐位)で軽減することをいう。起坐呼吸は、臥位をとると静脈還流が増え血液が肺にたまりやすくなり呼吸困難が増強するためみられる。
2~4.× 仰臥位(背臥位)/側臥位/腹臥位
これら姿勢より呼吸を軽減する姿勢が他にある。
心不全は心臓のポンプ機能低下のため末梢組織の酸素需要に見合った血液量を供給できない状態である。肺循環系にうっ血が著明なものを左心不全、体循環系にうっ血が著明なものを右心不全という。体液の著明やうっ血を生じ、主な症状として呼吸困難、咳嗽、チアノーゼ、血性・泡沫状喀痰(ピンクの痰)などがある。
心拍出量の低下を起こす原因として、
・左心不全:肺循環系にうっ血が著明なもの(呼吸困難、起座呼吸、尿量減少など)
・右心不全:体循環系にうっ血が著明なもの(頸静脈怒張、胸水・腹水、下腿浮腫、肝腫大など)
右室拡張末期圧の上昇(体循環の静脈系のうっ血)により右心不全は引き起こされる。