第28回(R2年)柔道整復師国家試験 解説【午後41~45】

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問題41 腎糸球体を病変の主体とするのはどれか。

1.間質性腎炎
2.ネフローゼ症候群
3.腎盂腎炎
4.複雑性膀胱炎

答え.2

解説

糸球体とは?

糸球体とは、腎臓に血液を送る動脈が徐々に細くなった先にある毛細血管の球形の塊である。糸球体は、腎臓の機能単位であるネフロンの一部で、腎臓の外側部分である腎皮質に集まっている。腎髄質は腎臓の内側部分で、集合管などが存在する。腎臓には心臓から送りだされる血液の約4分の1が流れ込み、糸球体でろ過される。この濾過された液を原尿といい、1日に約150リットル作り出される。原尿には、不要な老廃物と、体に必要な物質(水分、糖分、ナトリウム、アミノ酸など)が含まれている。

1.× 間質性腎炎
間質性腎炎とは、腎臓の尿細管とその周囲の組織(間質組織)に炎症が発生する病気である。原因として、腎臓に損傷を与える病気、薬剤、毒性物質などである。症状としては、排尿の増加、夜間の排尿、発熱、発疹などがみられる。

2.〇 正しい。ネフローゼ症候群は、腎糸球体を病変の主体とする。
ネフローゼ症候群とは、尿から大量の蛋白が漏れ出すことで血液中の蛋白が減少、血液の浸透圧が低下し水分が血管内から血管外へ移動することで、全身の浮腫や腹水・胸水などを引き起こすものである。小児の治療として、ステロイド治療により改善することが多い。ネフローゼ症候群に対する食事に関しては、蛋白尿が陽性の間は減塩食にする。一般的に水分の制限は必要ないとされており、その理由は水分制限による脱水や血栓症の危険性が増加するためである。

3.× 腎盂腎炎
腎盂腎炎とは、尿を出すところから細菌(大腸菌など)が入り込み、膀胱から腎臓まで感染が広がることである。膀胱炎と同様に排尿時痛、頻尿、残尿感などの症状に加え、発熱、全身倦怠感などの全身症状、腰や背中の痛み、悪心、嘔吐などの消化器症状などがあげられる。

4.× 複雑性膀胱炎
雑性膀胱炎とは、尿路に尿停滞、異物、持続的細菌源、あるいは全身的抵抗力の低下などの基礎疾患を有する慢性膀胱炎である。複雑性膀胱炎は、これら基礎疾患を除去しなければ感染症は治癒しないことが多い。また、複雑性膀胱炎には、しばしば複数菌感染がみられる。

尿路感染症

尿路感染症は、感染診断名としては、①腎盂腎炎と②膀胱炎とに分けられる。一方で、その病態による一般的分類法として尿路基礎疾患のある・なしで、複雑性と単純性とに分ける。頻度として多い女性の急性単純性膀胱炎は外来治療の対象である。急性単純性腎盂腎炎は高熱のある場合、入院が必要なこともある。複雑性尿路感染症は、膀胱炎、腎盂腎炎とも、症状軽微な場合、外来治療が原則であるが、複雑性腎盂腎炎で尿路閉塞機転が強く高熱が認められるものでは、入院の上、腎瘻造設などの外科的ドレナージを要することもある。それら病態を見極めるための検査として、画像診断(超音波断層、静脈性腎盂造影、X線CTなど)が必要となる。感染症としての診断には、適切な採尿法による検尿で膿尿を証明すること、尿培養にて原因菌を同定し薬剤感受性を検査することが基本である。

【疑うべき臨床症状】
尿路感染症の症状は、急性単純性膀胱炎では排尿痛、頻尿、尿意切迫感、残尿感、下腹部痛が、急性単純性腎盂腎炎では発熱、悪寒、側腹部痛が、主たるものである。複雑性尿路感染症では膀胱炎、腎盂腎炎それぞれにおいて、単純性と同様の症状が見られるが、無症状に近いものから、強い症状を呈するものまで幅が広い。上部尿路閉塞に伴う膿腎症では高熱が続くこともある。

(※引用:「尿路感染症」より)

 

 

 

 

 

問題42 筋力低下が数日から数週間で進行するのはどれか。

1.ギラン・バレー(Guillain-Barre)症候群
2.ハンチントン(Huntington)病
3.メニエール(Meniere)病
4.レヴィ(Lewy)小体病

答え.1

解説
1.〇 正しい。ギラン・バレー(Guillain-Barre)症候群は、筋力低下が数日から数週間で進行する。
ギラン・バレー症候群とは、先行感染による自己免疫的な機序により、炎症性脱髄性ニューロパチーをきたす疾患である。一般的には細菌・ウイルスなどの感染があり、1~3週後に両足の筋力低下(下位運動ニューロン障害)や異常感覚(痺れ)などで発症する。感覚障害も伴うが、運動障害に比べて軽度であることが多く、他覚的な感覚障害は一般に軽度である。初期症状として、歩行障害、両手・腕・両側の顔面筋の筋力低下、複視、嚥下障害などがあり、これらの症状はピークに達するまでは急速に悪化し、時には人工呼吸器が必要になる。症状が軽い場合は自然に回復するが、多くの場合は入院により適切な治療(免疫グロブリン静注療法や血液浄化療法など)を必要とする。症状は6か月から1年程度で寛解することが多い。臨床検査所見として、①髄液所見:蛋白細胞解離(蛋白は高値,細胞数は正常)を示す。②電気生理学的検査:末梢神経伝導検査にて、脱神経所見(伝導ブロック、時間的分散、神経伝導速度の遅延、複合筋活動電位の低下など)がみられる。複合筋活動電位が消失あるいは著明な低下し、早期から脱神経所見を示す症例は、一般に回復が悪く機能的予後も不良である(※参考:「重篤副作用疾患別対応マニュアル ギラン・バレー症候群」厚生労働省様HPより)。

2.× ハンチントン(Huntington)病
ハンチントン病とは、常染色体優性遺伝型式を示す遺伝性の神経変性疾患である。不随意運動(舞踏運動)や認知機能低下、精神症状が特徴である。発症して数年が経過すると、手先が不規則に勝手に動いたり顔をしかめたりする舞踏運動がみられることもある。

3.× メニエール(Meniere)病
Ménière病とは、膜迷路を満たしている内リンパ液の内圧が上昇し、内リンパ水腫が生じる内耳疾患である。4大症状として、①激しい回転性のめまい、②難聴(感音難聴)、③耳鳴り、④耳閉感を繰り返す内耳の疾患である。主な原因は「内リンパ水腫」で、 その根底にはストレス・睡眠不足・疲労・気圧の変化・几帳面な性格などがあると考えられている。耳発作時では安静を第一に考えた指導を行い、間欠期では発作が起こらないようにするための指導をする。

4.× レヴィ(Lewy)小体病=Lewy小体型認知症
Lewy小体型認知症とは、Lewy小体が広範な大脳皮質領域で出現することによって、①進行性認知症と②パーキンソニズムを呈する病態である。認知機能の変動・動揺、反復する幻視(人、小動物、虫)、パーキンソニズム、精神症状、REM睡眠型行動障害、自律神経障害などが特徴である。

 

 

 

 

 

問題43 後天性免疫不全症候群(AIDS)で正しいのはどれか。

1.ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染後、数日で発症する。
2.進行すると日和見感染症を合併する。
3.CD8陽性T細胞数が著しく減少する。
4.母子間感染は起こらない。

答え.2

解説

ヒト免疫不全ウイルス〈HIV〉感染症について

後天性免疫不全症候群〈AIDS〉は、ヒト免疫不全ウイルス〈HIV〉によって引き起こされ、伝播は主に性行為、血液接触、母子感染によるものである。ちなみに、ヒト免疫不全ウイルスは、人の免疫細胞に感染してこれを破壊し、最終的に後天性免疫不全症候群を発症させるウイルスである。ヒト免疫不全ウイルス〈HIV〉感染症に対する治療法は飛躍的に進歩しており早期に発見することで後天性免疫不全症候群(AIDS)の発症を予防できるようになってきている。しかし、治療を受けずに自然経過した場合、免疫力の低下により様々な障害が発現する。後天性免疫不全症候群(AIDS)の状態にあると判断できる疾患(エイズ指標疾患)は、23種類ある。AIDS指標疾患としてもっとも頻度が高いのは、ニューモシスチス肺炎(39.3%)、ついでサイトメガロウイルス感染症(13.4%)、カンジダ症(13.1%)、活動性結核(7.1%)、カポジ肉腫(4.5%)、非結核性抗酸菌症(3.8%)の順であった。

1.× ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染後、「数日」ではなく数か月から数年単位で発症する。
ヒト免疫不全ウイルス(HIV)の感染後、1~3週間で発熱やリンパ節の腫れといった症状がでる。その後、1~2週間でおさまり、感染後3~8週間は、感染していてもエイズ抗体検査で陽性にはならない。その後、徐々に免疫機能が低下していき、結核や肺炎などの感染症にかかる。

2.〇 正しい。進行すると日和見感染症を合併する
なぜなら、ヒト免疫不全ウイルスは、人の免疫細胞に感染してこれを破壊するため。ちなみに、日和見感染とは、健常者には病原性をもたない常在弱毒菌(グラム陽性菌など)による感染症である。免疫回復後は適切に洗浄・調理された野菜類を摂取することが可能である。

3.× 「CD8」ではなく、CD4陽性T細胞数が著しく減少する。
ヒト免疫不全ウイルス〈HIV〉は、CD4陽性Tリンパ球をはじめとする細胞に感染し、破壊・減少させることで、細胞性免疫不全を主体とするAIDS(後天性免疫不全症候群)を引き起こす。

4.× 母子間感染は、「起こる」。
主な感染経路には、①性的接触、②母子感染(経胎盤、経産道、経母乳感染)、③血液によるもの(輸血、臓器移植、医療事故、麻薬等の静脈注射など)がある。つまり、血液や体液を介して接触が無い限り、日常生活ではHIVに感染する可能性は限りなくゼロに近いといえる。

 

 

 

 

 

問題44 65歳の男性。50歳時に高血圧を指摘されたが放置していた。他に特記すべき既往歴はなく、下肢静脈瘤もない。30分前に突然、前胸部および背部の冷汗を伴う激しい疼痛が出現し、その後も持続している。右橈骨動脈で強く脈拍を触れるが、左橈骨動脈では脈拍を触知しない。
 可能性が高いのはどれか。

1.自然気胸
2.急性心筋梗塞
3.肺血栓塞栓症
4.急性大動脈解離

答え.4

解説

本症例のポイント

・65歳の男性。
・50歳:高血圧(放置)
・既往歴:なし(下肢静脈瘤もない)。
・30分前:突然、前胸部および背部の冷汗を伴う激しい疼痛、持続。
・右橈骨動脈:強く脈拍を触れる
・左橈骨動脈:脈拍を触知しない
→本症例は、急性大動脈解離が疑われる。特にわかりやすい所見としては、動脈の触知に左右差がみられることである。

1.× 自然気胸では、動脈の触知に左右差がみられない。
自然気胸とは、明らかな原因がなく起こる気胸のことである。一般的な症状として、①突然の胸の痛み、②咳、③呼吸困難などがあげられる。自然気胸は20歳前後に多く、その次には60歳代によく起こる。若年者の特徴は、男性・長身・やせ型である。体質的に肺の表面を覆っている胸膜が弱いため発症すると考えられている。一方で高齢者の場合は、喫煙者で栄養状態の悪い方が多い。高齢の方は肺の状態が元来良くないために、治療に時間がかかったり、治療後に気胸が再発することもある。

2.× 急性心筋梗塞
急性心筋梗塞とは、冠状動脈内に血栓が形成され、動脈を閉塞し心筋が壊死することである。リスクファクターとして、①高血圧、②喫煙、③糖尿病、④脂質代謝異常などである。合併症には、不整脈や心不全、脳梗塞がある。そのほかに重篤なものとして心破裂や心室中隔穿孔などがある。

3.× 肺血栓塞栓症
肺血栓塞栓症とは、肺の血管に血のかたまり(血栓)が詰まって、突然、呼吸困難や胸痛、ときには心停止をきたす危険な病気である。ロング・フライト血栓症やエコノミークラス症候群などと呼ばれる。原因として、①血液凝固能の亢進、②静脈血流のうっ滞、③静脈壁の障害の3つの因子が種々の程度に重なって起こる。離床(車椅子乗車や立位訓練、歩行訓練など)を開始したタイミングで発症するリスクが高くなるため注意が必要である。症状として、呼吸困難、胸痛、失神などが認められ、時に心停止となり、突然死に至る場合もある。ちなみに、リンパ浮腫の合併症として、蜂窩織炎、リンパ管炎などの炎症がみられる。

4.〇 正しい。急性大動脈解離の可能性が高い。
大動脈解離とは、大動脈内膜に生じた亀裂(エントリー)から血液が流入し、中膜部分が解離した状態である。ほとんどの場合、高血圧症を基礎に持つ患者に突如発生する。大動脈解離では、何の前触れもなく胸や背中に強い痛みが出る。痛み以外にも、病気の進行度合いや大動脈解離が起こる場所によってさまざまな症状が現れる。例えば、上肢の血圧に左右差が出たり、上肢に冷感が出たり、腸管への血流がさえぎられ、腹痛や腰痛、下血などが起こる。また、肝機能障害が起こる。

 

 

 

 

 

問題45 56歳の女性。8か月前から徐々に歩行時の疲れやすさを自覚し、1か月前から階段を昇れなくなり、洗髪時に腕を挙げるのが難しくなった。胸腹部に異常を認めない。上眼瞼部に浮腫性の淡い紫色の紅斑を認める。血液検査でクレアチンキナーゼ(CK)が1870U/L(基準30~140)であった。
 最も考えられるのはどれか。

1.結節性多発動脈炎
2.皮膚筋炎
3.強皮症
4.ベーチェット(Behcet)病

答え.2

解説

本症例のポイント

・56歳の女性。
・8か月前:徐々に歩行時の疲れやすさを自覚。
・1か月前:階段を昇れなくなり、洗髪時に腕を挙げるのが難しくなった。
・胸腹部:異常を認めない。
・上眼瞼部:浮腫性の淡い紫色の紅斑を認める(ヘリオトロープ疹)。
・血液検査:クレアチンキナーゼ1870U/L(基準30~140)。
→クレアチンキナーゼとは、骨格筋・心筋・脳などの損傷の程度を推測する指標である。筋肉細胞に含まれており、筋肉細胞の障害により高クレアチンキナーゼ血症となる。発症時の自覚症状としては、筋痛・しびれ・腫脹が生じ、筋壊死の結果として脱力・赤褐色尿(ミオグロビン尿)が生じ、腎不全症状が加わると無尿・乏尿・浮腫が生じる。

1.× 結節性多発動脈炎
結節性多発動脈炎とは、中型血管を主体として、血管壁に炎症を生じる疾患である。原因不明であるが、血管炎の組織には多くの免疫を担当する細胞が見られること、ステロイドや免疫抑制薬などによる免疫抑制療法が効果を示すことが多いことなどから、免疫異常が関与していると考えられている。38℃以上の高熱、体重減少、高血圧、紫斑や皮膚潰瘍、筋肉痛・関節痛、四肢のしびれ、脳出血・脳梗塞、胸膜炎、尿蛋白や尿潜血陽性、腎機能低下、腹痛・下血、狭心症・心筋梗塞など様々な症状がおきる。

2.〇 正しい。皮膚筋炎が最も考えられる。
多発性筋炎とは、自己免疫性の炎症性筋疾患で、主に体幹や四肢近位筋、頸筋、咽頭筋などの筋力低下をきたす。典型的な皮疹を伴うものは皮膚筋炎と呼ぶ。膠原病または自己免疫疾患に属し、骨格筋に炎症をきたす疾患で、遺伝はなく、中高年の女性に発症しやすい(男女比3:1)。5~10歳と50歳代にピークがあり、小児では性差なし。四肢の近位筋の筋力低下、発熱、倦怠感、体重減少などの全身症状がみられる。手指、肘関節や膝関節外側の紅斑(ゴットロン徴候)、上眼瞼の腫れぼったい紅斑(ヘリオトロープ疹)などの特徴的な症状がある。合併症の中でも間質性肺炎を併発することは多いが、患者一人一人によって症状や傷害される臓器の種類や程度が異なる。予後は、5年生存率90%、10年でも80%である。死因としては、間質性肺炎や悪性腫瘍の2つが多い。悪性腫瘍に対する温熱療法は禁忌であるので、その合併が否定されなければ直ちに温熱療法を開始してはならない。しかし、悪性腫瘍の合併の有無や皮膚症状などの禁忌を確認したうえで、ホットパックなどを用いた温熱療法は疼痛軽減に効果がある(※参考:「皮膚筋炎/多発性筋炎」厚生労働省様HPより)。

3.× 強皮症
強皮症とは、全身性の結合組織病変で、手指より始まる皮膚の硬化病変に加え、肺線維症などの諸臓器の病変を伴う。病因は不明であり、中年女性に多い。症状は、仮面様顔貌、色素沈着、ソーセージ様手指、Raynaud現象(レイノー現象)、嚥下障害、間質性肺炎、関節炎、腎クリーゼなどである。

4.× ベーチェット(Behcet)病
Behçet病(ベーチェット病)は、自己免疫疾患である。四徴として、①口腔粘膜のアフタ性潰瘍、②ぶどう膜炎、③皮膚症状(結節性紅斑や皮下硬結)、④外陰部潰瘍である。皮膚症状として、下腿に後発する。発赤や皮下結節を伴う結節性紅斑、圧痛を伴う皮下の遊走性血栓性静脈炎、顔面・頚部・背部などにみられる毛嚢炎様皮疹または痤瘡様皮疹などが出現する。

 

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