第28回(R2年)柔道整復師国家試験 解説【午後46~50】

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問題46 熱傷で誤っているのはどれか。

1.低温熱傷は難治性である。
2.成人の熱傷面積概算には「9の法則」を用いる。
3.皮膚損傷の面積によってⅠ~Ⅲ度に分類される。
4.広範囲熱傷患者のストレス潰瘍をカーリング(Curling)潰瘍という。

答え.3

解説
1.〇 正しい。低温熱傷は難治性である。
低温熱傷とは、短時間の接触では問題とならない程度の温度が、熟睡していたり、体が不自由だったりして長時間にわたって接触部に作用することにより生じるやけどである。湯たんぽ、電気あんか、電気毛布および使い捨てカイロなど冬場に長時間、身体にあてて使用する製品に多く発生している。低温熱傷は損傷レベルが深いことが多いため、難治性となる。ちなみに、難治性とは、治療を始めても改善がみられず、治療効果が安定または進行と判定される、もしくは直近の治療終了から6ヵ月以内に再び症状が出現したときに使われる用語である。

2.〇 正しい。成人の熱傷面積概算には「9の法則」を用いる。
9の法則とは、体表面積を9%ごとに、11のブロックに分けたものである。熱傷評価などで用いられる。部位は、①頭部、②〜④体幹(前面、後面、胸部、腹部)、⑤〜⑥上肢(左・右)、 ⑦〜⑪下肢(左・右、前・後)である。残りの1%は外陰部である。ちなみに、小児は、5の法則となる。頭部15%、前面体幹部20%、後面体幹部15%、左右上肢各10%、左右下肢各15%である。

3.× 皮膚損傷の「面積」ではなく深さによって、Ⅰ~Ⅲ度に分類される。
~熱傷の分類~
Ⅰ度:【深さ】表皮【症状】発赤、熱感、軽度の腫脹と疼痛、水泡形成(ー)【治癒】数日間、瘢痕とはならない。
Ⅱ度:【深さ】真皮浅層(SDB)【症状】強い疼痛、腫脹、水泡形成(水泡底は赤色)【治癒】1~2週間、瘢痕再生する。
Ⅱ度:【深さ】真皮深層(DDB)【症状】水泡形成(水泡底は白色、もしくは破壊)、知覚は鈍麻【治癒】3~4週間、瘢痕残す、感染併発でⅢ度に移行。
Ⅲ度:【深さ】皮下組織【症状】疼痛(ー)、白く乾燥、炭化水泡形成はない【治癒】一か月以上、小さいものは瘢痕治癒、植皮が必要。

4.〇 正しい。広範囲熱傷患者のストレス潰瘍をカーリング(Curling)潰瘍という。
熱傷に合併するストレス性潰瘍病変をCurling潰瘍(カーリング潰瘍)という。受傷後一週間以内に起こることが多く、初期の症状は食欲不振、重度になると、突然の吐血や下血など、胃・十二指腸潰瘍と同じ症状が見られる。

熱傷の分類

Ⅰ度:【深さ】表皮【症状】発赤、熱感、軽度の腫脹と疼痛、水泡形成(ー)【治癒】数日間、瘢痕とはならない。
Ⅱ度:【深さ】真皮浅層(SDB)【症状】強い疼痛、腫脹、水泡形成(水泡底は赤色)【治癒】1~2週間、瘢痕再生する。
Ⅱ度:【深さ】真皮深層(DDB)【症状】水泡形成(水泡底は白色、もしくは破壊)、知覚は鈍麻【治癒】3~4週間、瘢痕残す、感染併発でⅢ度に移行。
Ⅲ度:【深さ】皮下組織【症状】疼痛(ー)、白く乾燥、炭化水泡形成はない【治癒】一か月以上、小さいものは瘢痕治癒、植皮が必要。

 

 

 

 

 

問題47 外科的感染で誤っている組合せはどれか。

1.丹毒:A群溶連菌
2.ガス壊疽:ウェルシュ菌
3.化膿性骨髄炎:黄色ブドウ球菌
4.IVHカテーテル感染:アスペルギルス

答え.4

解説

外科的感染症とは?

外科的感染症とは、2つの種類に分類される。①一次感染症:たとえば腹膜炎や膿瘍のように感染症自体が外科的治療の対象である。②術後感染症:感染の危険性は術前・術中・術後を通して存在している(周術期感染症)。

1.〇 正しい。丹毒:A群溶連菌
丹毒とは、主にA群β溶血性レンサ球菌の感染により皮膚~皮下脂肪に熱をもって赤く腫れ、痛む病気である。顔に多く見られる。水ぶくれや内出血は重症化のサインである。一方、ウェルシュ菌は、細菌であり産生する毒素により消化器症状(腹痛、下痢、悪心)を呈する。発症に至る原因としては、煮込み(カレーやシチュー)で料理の加熱が不十分である場合が多い。潜伏期間は6~18時間である。

2.〇 正しい。ガス壊疽:ウェルシュ菌
ガス壊疽とは、ガス産生菌が傷口から侵入して感染し、筋肉が壊死に陥り、全身に中毒症を起こす致死性の感染症である。筋肉を中心としてメタンや二酸化炭素などのガスが発生することにより、感染が広がる。クロストリジウム属(ウェルシュ菌など)の菌により起こるクロストリジウム性ガス壊疽と、他の細菌で起こる非クロストリジウム性ガス壊疽の2つに大別される。深刻な感染症で、急速に進行し、強い痛みを伴い、皮膚の下にある組織が壊死し、ガスを生じることからこの名前が付けられている。

3.〇 正しい。化膿性骨髄炎:黄色ブドウ球菌
化膿性骨髄炎とは、骨髄を中心に骨皮質や骨膜にも細菌が感染して起こる炎症である。代表的な病原体は黄色ブドウ球菌(MRSAを含みます)であり、その他にもA群溶連菌、B群溶連菌、サルモネラ菌、肺炎球菌、緑膿菌などがあげられる。

4.× IVHカテーテル感染は、「アスペルギルス」ではなく皮膚常在菌(コアグラーゼ陰性ブドウ球菌、黄色ブドウ球菌、腸球菌、カンジダ属など)である。IVHとは、中心静脈栄養のことをさし、感染の原因としては、チューブ挿入部の皮膚からの汚染、輸液セットや接続部からの汚染、調剤した薬剤からの汚染が考えられる。またこの他、カテーテルの自己抜去や合併症がある。一方、アスペルギルス症とは、アスペルギルス属の真菌によって引き起こされる通常は肺の感染症である。肺や副鼻腔内に、菌糸、血液のかたまり、白血球が絡まった球状のかたまりが形成される。

 

 

 

 

 

問題48 腫瘍で正しい組合せはどれか。

1.皮膚癌:腺癌
2.大腸癌:扁平上皮癌
3.卵巣転移:シュニッツラー転移
4.機能性腫瘍:インスリノーマ

答え.4

解説
1.× 皮膚癌は、「腺癌」ではなく悪性黒色腫扁平上皮癌である。
腺癌とは、腺組織とよばれる上皮組織から発生するがんである。 胃、腸、子宮体部、肺、乳房、卵巣、前立腺、肝臓、膵臓、胆のうなどに発生する。なかでも、胃がんの90%以上は、胃壁の最も内側の粘膜上皮細胞から発生する腺癌である。

2.× 大腸癌は、「扁平上皮癌」ではなく腺癌(80~90%)である。
扁平上皮癌とは、最上層が薄くて平らな細胞よりなる上皮からなる癌をいう。特徴として、分化度の異なる不均一からなる細胞から構成され、欠陥分布も均一性を欠く。ちなみに、大腸がんとは、大腸(結腸・直腸・肛門)に発生するがんである。この20年で大腸がんによる死亡数は1.5倍に拡大していてがんによる死亡数でも胃がんを抜いて第2位になっている。生活習慣に関わる大腸がんのリスク要因として、運動不足、野菜や果物の摂取不足、肥満、飲酒などが挙げられる。生活習慣の欧米化(高脂肪・低繊維食)が関与していると考えられている。

3.× 卵巣転移は、「シュニッツラー転移」ではなくKrukenberg〈クルッケンベルグ〉腫瘍があげられる。
クルッケンベルグ腫瘍とは、胃癌が進行して転移した、転移性の卵巣腫瘍のことを呼ぶ。一方、Schnitzler〈シュニッツラー〉転移とは、胃癌から癌細胞が腹腔内にこぼれてダグラス窩に定着し、転移巣を形成したものをいう(播種性転移)。

4.〇 正しい。機能性腫瘍:インスリノーマ
機能性腫瘍とは、内分泌組織内に認められ、ホルモン(血流に乗って移動し、他の細胞や器官の動作を制御する化学物質)を生産する腫瘍である。また、インスリノーマとは、インスリンを過剰分泌する膵β細胞由来のまれな腫瘍である。 主な症状は空腹時低血糖である。具体的な症状としては、気が遠くなる、筋力低下、振戦、動悸、発汗、神経過敏、強い空腹感などがあげられる。

上皮組織の形態による分類

・単層扁平上皮:薄いので物質の交換などに向く。
(胸膜、腹膜、血管内皮、肺胞など)

・単層立方上皮:甲状腺の濾胞細胞など。
(甲状腺の濾胞上皮、尿細管など)

・単層円柱上皮:吸収と分泌を行う場所に向く。
消化器系(胃、小腸、大腸)、卵管・子宮など

・重層扁平上皮:摩擦など機械的刺激に強い。
皮膚、口腔~食道、肛門、膣など。

・多列線毛上皮:表面に線毛があり、杯細胞が豊富。線毛と粘液で塵や異物をからめとる。
鼻腔~気管・気管支(気道)

・移行上皮:伸び縮みすることができる。
腎杯~尿管~膀胱(尿路)

 

 

 

 

 

問題49 血液分布異常性ショックを起こしうるのはどれか。

1.熱傷
2.肺塞栓症
3.心タンポナーデ
4.アナフィラキシー

答え.4

解説

ショックとは?

ショックとは、体液の喪失、心臓機能の低下、血管系虚脱などにより組織への酸素供給が障害され、放置すれば進行性に全身の臓器還流障害から急速に死に至る重篤な病態である。頻度的に最も多いのは出血性ショックである。出血性ショックとは、外傷や、消化管などからの出血によって血液循環量の低下が原因で起こるショックのことである。術後出血が原因となることもある。

1.× 熱傷は、循環血液量減少性ショックに分類される。
循環血液量減少性ショックとは、血管内容量の危機的な減少で起こるショックのことである。 静脈還流(前負荷)が減少すると、心室が充満せず、一回拍出量が減少する。 心拍数の増加によって代償されない限り、心拍出量は減少する。 一般的な原因は出血(出血性ショック)で、通常、外傷、外科手術、消化性潰瘍、食道静脈瘤、大動脈瘤破裂によって起こる。

2.× 肺塞栓症は、閉塞性ショックに分類される。
閉塞性ショックとは、心臓は元気で循環血液量も十分あるのに心臓に血液が帰ってこないのが原因でショックとなるものである。原因としては、肺塞栓症、心タンポナーデ、緊張性気胸などがあげられ、胸痛、頻呼吸、頻脈、患側の呼吸音低下と胸郭運動低下、低血圧などの症状がみられる。

3.× 心タンポナーデは、心原性ショックに分類される。
心原性ショックとは、心ポンプ機能の低下により、全身諸組織における循環不全(安静時における組織代謝需要を満たす血流が供給されない状態)が生じ、低酸素、アシドーシス、毛細血管透過性亢進をきたす重篤な病態を指す。全身および心筋組織の循環不全、低酸素化が生じ、アシドーシス、フリーラジカルの発生、サイトカインの増加、白血球凝集、血管内皮障害、微小循環障害などが生じる。心原性ショックの原因として最も多いのは急性心筋梗塞である。他にも、心臓ポンプ機能の異常による心筋収縮力低下のほか、心筋変性や心タンポナーデによる心室拡張不全、頻脈や徐脈などの不整脈で心拍出量が低下するなど、さまざまな病態が原因になる。

4.〇 正しい。アナフィラキシーは、血液分布異常性ショックを起こしうる。
血液分布異常性ショックとは、血管の特定箇所が何らかの異常により拡張した結果、相対的に循環血液量が減少し、起こるショックである。循環血液量は正常に保たれているのが特徴である。アナフィラキシーショックとは、アレルギー反応で起こるショックのことである。アナフィラキシーショックの症状として(頻脈、血圧低下、意識障害、喉頭浮腫、呼吸困難)を引き起こす。アレルギー反応によって血管透過性が亢進し、血管内外の血液分布が乱れるため、血液分布異常性ショックの原因となる。

 

 

 

 

 

問題50 輸血で正しいのはどれか。

1.血漿交換は劇症肝炎に有効である。
2.新鮮血輸血では凝固因子の補給ができない。
3.保存血輸血では血小板の補給が期待できる。
4.血小板輸血は循環血漿量の補充に用いる。

答え.1

解説
1.〇 正しい。血漿交換は劇症肝炎に有効である
なぜなら、血漿交換を行うことで、血漿成分に含まれる病因物質を除去することができるため。血漿交換とは、血漿中に存在する病因関連物質や病態を悪化させていると考えられている物質を除去することで、病態を改善させる方法である。劇症肝炎とは、急性肝不全ともいい、肝臓の機能が急激に低下し、意識障害などの重篤な症状が現れる疾患である。この意識障害を「肝性脳症」といい、ひどい場合は昏睡状態に陥る。劇症肝炎(急性肝不全)は、全身の臓器に障害を引き起こしやすいため、肝臓に対する治療だけでなく、呼吸や循環などの全身的な管理が必要になる。劇症肝炎の原因は、肝炎ウイルスの感染、薬物アレルギー、自己免疫性肝炎などで、わが国では、B型肝炎ウイルスの感染によることが最も多く、全体の約40%を占めている。

2.× 新鮮血輸血では凝固因子の補給が「できる」。
新鮮凍結血漿(FFP)は、採血して4時間以内の全血を遠心分離して得た血漿を凍結したものである。凝固因子の補充目的の輸血用血液製剤として用いられる。フィブリノゲン値は血液凝固因子の1つであり、止血の働きをする。出血傾向や血栓傾向のスクリーニング検査、術前検査として血小板数、PT、APTTとともに測定される。

3.× 保存血輸血では血小板の補給が期待「できない」。
なぜなら、長期保存された全血からは血小板は除去されるため。保存血輸血とは、赤血球が壊れるのを防ぐためにグルコースなどのエネルギー源と抗凝固剤を加えて低温下で貯蔵した血液のことである。採血後4~21日以内に輸血に使われる。一方、採血後3日以内のものは新鮮血液と呼ばれる。

4.× 循環血漿量の補充に用いるのは、「血小板輸血」ではなく細胞外液補充液である。
血小板輸血は、血小板成分を補充することにより止血を図り、又は出血を防止することを目的である。一方、細胞外液補充液は、出血などによる循環血液量が減少したときの補給・充填や、ナトリウムを投与したい低張性脱水などの補給・充填に用いられる。

 

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