第28回(R2年)柔道整復師国家試験 解説【午後56~60】

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問題56 49歳の男性。3年前に脳ドックで脳動脈瘤を指摘されていた。今朝、突然頭の中が爆発するような激しい頭痛が出現した。
 考えられるのはどれか。

1.脳梗塞
2.脳内出血
3.硬膜外血腫
4.くも膜下出血

答え.4

解説

本症例のポイント

・49歳の男性。
・3年前:脳ドックで脳動脈瘤を指摘。
・今朝:突然頭の中が爆発するような激しい頭痛が出現した。
→脳動脈瘤とは、脳内部の中~小動脈(径1~6mm)に発生する瘤状あるいは紡垂状のふくれた部分のことである。原因として、高血圧や動脈硬化、家族性などが示唆されているが、要因の不明なものが大半を占めている。この拡張部が破裂すると、くも膜下出血が発生する。

1.× 脳梗塞より考えられるものが他にある
脳梗塞とは、何らかの原因で脳の動脈が閉塞し、血液がいかなくなって脳が壊死してしまう病気である。どの動脈による閉鎖なのかによって、症状は異なるが、片方の手足の麻痺やしびれ、呂律が回らない、言葉が出てこない、視野が欠ける、めまい、意識障害など様々な症状が出現する。

2.× 脳内出血より考えられるものが他にある
脳内出血とは、脳の血管が破れて、脳の実質内に血液が流出する状態である。糖尿病、高脂血症や高血圧などにより動脈硬化が進むと、脳を栄養する深い細かい血管がもろくなり、破れやすくなると考えられている。症状は、脳梗塞とも似ており、出血の部位や出血量により様々である。例えば、頭痛・吐き気・めまいなどの自覚症状や意識障害、手足の麻痺、口のもつれや言葉の障害などが代表的である。

3.× 硬膜外血腫より考えられるものが他にある
硬膜外血腫とは、高所、階段からの転倒や、交通外傷などによって、強く頭部を打撲することで、脳を覆う硬膜という膜と頭蓋骨との隙間に血液が貯留した状態を指す。重度だと、頭蓋内圧亢進症状といわれる頭痛、吐き気、複視などが起こり、症状を放置していると命に関わる危険性がある。

4.〇 正しい。くも膜下出血が考えられる。
脳動脈瘤とは、脳内部の中~小動脈(径1~6mm)に発生する瘤状あるいは紡垂状のふくれた部分のことである。原因として、高血圧や動脈硬化、家族性などが示唆されているが、要因の不明なものが大半を占めている。この拡張部が破裂すると、くも膜下出血が発生する。くも膜下出血とは、くも膜と呼ばれる脳表面の膜と脳の空間(くも膜下腔と呼ばれ、脳脊髄液が存在している)に存在する血管が切れて起こる出血である。くも膜下出血ではくも膜下腔に血液が流入し、CTでは高吸収域として抽出される。合併症には、①再出血、②脳血管攣縮、③正常圧水頭症などがある。①再出血:発症後24時間以内が多く、死亡率も高い。②脳血管攣縮:72時間後〜2週間後(ピークは8〜10日)が多く、脳血管攣縮による梗塞の好発部位は、「前交通動脈」である。③正常圧水頭症:数週〜数ヶ月後に認知症状、尿失禁、歩行障害などの症状が出現する。

 

 

 

 

 

問題57 異常歩行の組合せで誤っているのはどれか。

1.鶏歩:腓腹筋麻痺
2.トレンデレンブルグ歩行:先天性股関節脱臼
3.逃避歩行:腰椎椎間板ヘルニア
4.分回し歩行:脳血管障害

答え.1

解説
1.× 鶏歩は、「腓腹筋麻痺」ではなく前脛骨筋麻痺である。
鶏歩とは、垂れ足になり、踵を高く上げつま先から投げ出すように歩くこと。

2.〇 正しい。トレンデレンブルグ歩行は、先天性股関節脱臼にて起こる。
動揺歩行(トレンデレンブルグ歩行やアヒル歩行)は、肢帯筋の筋力低下(中殿筋の筋力低下やDuchenne型筋ジストロフィー)で起こる。二次性変形性股関節症とは、何らかの病気(ペルテス病や先天性股関節脱臼)やケガが原因でおこっている。日本では、この二次性が大半を占め、先天性股関節脱臼と臼蓋形成不全によるものが約90%、圧倒的に女性に多い。壊死部は修復過程を経て正常の骨組織に戻るが、形態異常を伴って修復完了した場合、将来的に変形性股関節症を生じる可能性がある。

3.〇 正しい。逃避歩行は、腰椎椎間板ヘルニアにて起こる。
逃避歩行とは、逃避性跛行ともいい、外傷・感染・炎症などが原因で、歩行動作や下肢への荷重により疼痛を感じる場合、痛みを避けるように患側の荷重時間が短くなり、健側での荷重時間が長くなる。特徴的な跛行パターンに、間欠性跛行がある。一方、腰椎椎間板ヘルニアとは、線維輪(外縁部分)と髄核(中心部)の主に線維輪が弱くなって膨隆したり、線維輪が断裂して中心部の髄核が脱出したりすると、近傍にある神経を圧迫している状態のことである。L4/5とL5/S1が好発部位である。

4.〇 正しい。分回し歩行は、脳血管障害にて起こる。
ぶん回し歩行とは、下肢の麻痺によって、足関節の底背屈がうまくできないために、つま先を外に向けて脚を伸ばした状態で外側に振り回して遊脚する歩行である。

 

 

 

 

 

問題58 スポーツ中の突然死に関連しないのはどれか。

1.脳しんとう
2.心臓しんとう
3.肥大型心筋症
4.慢性硬膜下血腫

答え.4

解説

突然死とは?

突然死とは、「予期していない突然の病死」のことを言い、発症から死亡までの時間が24時間以内と医学的に定義されている。死亡総数に占める死因割合を厚生省人口動態統計からみていくと、第1位:悪性新生物、第2と3位:心臓病、脳卒中がほぼ同数である。突然死における心臓病の割合は約60%で、心臓突然死には、発症1時間以内に死亡する瞬間死もあり、その原因は心筋梗塞である。脳卒中には、脳梗塞、脳出血、クモ膜下出血などがあり、突然死を免れても植物症などの重度障害を遺す場合もある。

1.〇 脳しんとうは、スポーツ中の突然死に関連する。
脳震盪を繰り返すと、ひどい場合は重い障害が残ったり、さらには頭蓋内の出血などが原因で死に至ることもある。脳しんとうの症状は、通常、受傷後すぐに発症し短期間で回復するが、時間をかけて進行(悪化)する場合もある。急性神経学的機能障害(健忘、平衡感覚障害(バランス感覚の障害)、混乱、情緒不安定、認知機能障害など)が早期に生じ、通常は時間とともに自然回復する。しかし、症例によっては数分〜数時間かけて症状が進行することがあり、回復に長期間を要する場合や、症状が長期に渡り残存することがある。

2.〇 心臓しんとうは、スポーツ中の突然死に関連する。
心臓震盪とは、小児の突然死の原因のひとつで、若年者の胸部(胸の真ん中から左側)に衝撃が加わった直後に、心室細動などの致死的な不整脈に襲われ、心停止となる。

3.〇 肥大型心筋症は、スポーツ中の突然死に関連する。
肥大型心筋症とは、肥大心筋の硬化に伴う拡張機能障害(拡張期充満圧の上昇を招く)である。拡張期に心室内の血液充填が十分に行われず、心拍出量が低下、血圧の低下などが起こる。症状を有する場合には、不整脈に伴う動悸やめまい、運動時の呼吸困難・胸の圧迫感などが起こる。肥大型心筋症の突然死は重症の心室性不整脈がおもな原因である可能性が高い。 

4.× 慢性硬膜下血腫は、スポーツ中の突然死に関連しない。
慢性硬膜下血腫とは、軽度の外傷により軽微な出血が起こり、経時的に血腫が増大し、やがて症状が現れる。症状として、認知障害、頭痛、尿失禁、歩行障害、片麻痺などである。CT画像から、急性硬膜下血腫に特徴的な①三日月状の高吸収域、②左側脳室体部の圧排変形、③midlineの偏位がみられる。

 

 

 

 

 

問題59 関節リウマチの手指変形と原因となる関節の組合せで誤っているのはどれか。

1.尺側変位:手根中手関節
2.下垂指変形:遠位橈尺関節
3.ボタン穴変形:近位指節間関節
4.スワンネック変形:中手指節関節

答え.1

解説

関節リウマチの変形

①環軸椎亜脱臼、②肩関節可動域制限、③肘関節屈曲拘縮、④手関節尺側偏位、⑤手指変形、⑥股関節屈曲拘縮、⑦膝関節内外反変形・屈曲拘縮、⑨足・足趾変形などがある。

(※引用:「イラスト素材:手の骨」illustAC様より)

1.× 尺側変位は、「手根中手関節(CM関節)」ではなく中手指節関節(MP関節)である。
ほかにも、尺側偏位は手関節にもみられる。

2.〇 正しい。下垂指変形は、遠位橈尺関節で起こる。
下垂指変形とは、橈骨神経の肘での傷害(後骨間神経麻痺)で起こり、指のみが下がった状態になり(下垂指)、感覚の障害見られないものを指す。

3.〇 正しい。ボタン穴変形は、近位指節間関節(PIP関節)でも起こる。
ボタン穴変形とは、DIP過伸展・PIP屈曲する変形である。正中索の断裂によりボタン穴変形が起こる。

4.〇 正しい。スワンネック変形は、中手指節関節(MP関節)でも起こる。
スワンネック変形とは、MP関節屈曲、PIP関節過伸展、DIP関節屈曲する変形をいう。

”関節リウマチとは?”

 関節リウマチは、関節滑膜を炎症の主座とする慢性の炎症性疾患である。病因には、遺伝、免疫異常、未知の環境要因などが複雑に関与していることが推測されているが、詳細は不明である。関節炎が進行すると、軟骨・骨の破壊を介して関節機能の低下、日常労作の障害ひいては生活の質の低下が起こる。関節破壊(骨びらん) は発症6ヶ月以内に出現することが多く、しかも最初の1年間の進行が最も顕著である。関節リウマチの有病率は0.5~1.0%とされる。男女比は3:7前後、好発年齢は40~60歳である。
【症状】
①全身症状:活動期は、発熱、体重減少、貧血、リンパ節腫脹、朝のこわばりなどの全身症状が出現する。
②関節症状:関節炎は多発性、対称性、移動性であり、手に好発する(小関節)。
③その他:リウマトイド結節は肘、膝の前面などに出現する無痛性腫瘤である。内臓病変は、間質性肺炎、肺線維症があり、リウマトイド肺とも呼ばれる。
【治療】症例に応じて薬物療法、理学療法、手術療法などを適宜、組み合わせる。

(※参考:「関節リウマチ」厚生労働省HPより)

 

 

 

 

 

問題60 原発性骨粗鬆症で正しいのはどれか。

1.石灰化の障害によって骨が弱くなる疾患である。
2.やせが危険因子の一つである。
3.若年者ではみられない。
4.血清カルシウムは低値である。

答え.2

解説

骨粗鬆症について

①原発性骨粗鬆症とは、閉経後や高齢者にみられる骨粗鬆症のことである。

②続発性骨粗鬆症とは、結果として二次的な骨量喪失が起こる骨粗鬆症のことをいう。例えば、骨代謝に影響を及ぼすホルモンやサイトカイン異常、不動など骨への力学的負荷の減少、骨構成細胞や物質の異常、全身的および血管障害などの局所的栄養障害などによって起こる。これら骨粗鬆症は原疾患に基づいて発症する続発性骨粗鬆症であるため、原疾患の適切な治療により正常化することが期待しうるが、骨代謝の正常化を期待するには不十分であることが多く、また先天性異常では改善は望めず、多くの症例で骨量喪失に対する治療を要することが多い。

1.× 石灰化の障害によって骨が弱くなる疾患であるのは、骨軟化症である。
骨軟化症とは、骨化の過程における石灰化障害が生じた結果、石灰化していない骨基質が増加し、骨強度が減弱することにより生じる。骨端線閉鎖前の小児期に発症したものをくる病という。

2.〇 正しい。やせが危険因子の一つである
ほかにも、続発性骨粗鬆症の原因として、副甲状腺機能亢進症、甲状腺機能亢進症(バセドウ病など)、性腺機能低下症、クッシング症候群などの内分泌の病気や、関節リウマチなどがあげられる。

3.× 若年者でもみられる
なぜなら、若年者でも続発性骨粗鬆症の原因でもある、副甲状腺機能亢進症、甲状腺機能亢進症(バセドウ病など)、性腺機能低下症、クッシング症候群などの内分泌の病気や、関節リウマチなどに罹患するリスクがあるため。

4.× 血清カルシウムは、「低値」ではなく正常範囲内である。
血清カルシウムの働きは、Na・Kとの拮抗作用、浸透圧の調節、筋肉や神経の興奮度の調節、血液凝固や酵素活性を活性化させることなどが挙げられる。 低カルシウム血症では、しびれ感、痙攣、テタニー、心電図ではQT延長を示す。 高カルシウム血症では、筋力低下、骨や軟部組織の異常石灰化、尿路結石症などを来す。

 

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