第28回(R2年)柔道整復師国家試験 解説【午後61~65】

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問題61 常染色体劣性の遺伝形式を示すのはどれか。

1.マルファン(Marfan)症候群
2.モルキオ(Morquio)病
3.多発性神経線維腫症
4.軟骨無形成症

答え.2

解説
1.× マルファン(Marfan)症候群は、常染色体の顕性遺伝(優性遺伝)である。
Marfan症候群とは、全身の結合組織の働きが体質的に変化しているために、骨格の症状(高身長・細く長い指・背骨が曲がる・胸の変形など)、眼の症状(水晶体(レンズ)がずれる・強い近視など)、心臓血管の症状(動脈がこぶのようにふくらみ、裂けるなど)などを起こす病気である。つまり、全身の結合組織がもろくなるため、大動脈癌や大動脈解離を生じやすい。

2.〇 正しい。モルキオ(Morquio)病は、常染色体劣性の遺伝形式を示す。
Morquio病とは、骨の変形が非常に強く、重症の方は身長も100cm前後となる特徴を持つ。ちなみに、知能は障害されません。幼児期から手足の変形、背骨のゆがみ、短い首と胴、X脚、低身長が観察される。また、背骨が強く変形して扁平になるために胴が短くなる。関節の靱帯が弛緩するために、関節がぐらぐらと不安定となる。

3.× 多発性神経線維腫症
多発性神経線維腫症は、常染色体優性遺伝することもあるが、半分以上の遺伝ではなく、精子もしくは卵子が作られるときの突然変異が原因である。多発性神経線維腫症とは、神経線維腫が末梢神経を圧迫すると、神経が正常に機能しなくなり、痛みやチクチク感、しびれ、脱力が生じる病気である。腫瘍によって頭部の神経が侵された場合は、失明、めまい、協調運動障害、または脱力が起こる。

4.× 軟骨無形成症
軟骨無形成症とは、先天異常(常染色体優性遺伝)で、成長軟骨と言われる部分の変化により、低身長や四肢の短さ、指の短さ、特異顔貌が引き起こされる病気である。合併症である肥満、水頭症、閉塞性睡眠時無呼吸、中耳炎、脊柱管狭窄症などの治療または予防が必要になる場合がある。軟骨無形成症の人の平均寿命は健常者の平均寿命より約10年で短いといわれている。

 

 

 

 

 

問題62 静脈血栓塞栓症のリスクが低いのはどれか。

1.上肢手術
2.人工股関節手術
3.大腿骨骨折手術
4.多発外傷

答え.1

解説

静脈血栓塞栓症とは?

静脈血栓塞栓症とは、手足の静脈に血栓ができて血管が詰まる深部静脈血栓症(DVT)と、その血栓が血流に乗って運ばれ肺の動脈に詰まる肺血栓塞栓症を合わせた総称である。深部静脈血栓症とは、長時間の安静や手術などの血流低下により下肢の静脈に血栓が詰まってしまう病気である。下肢の疼痛、圧痛、熱感などの症状がみられる。ほかのリスク因子として、脱水や肥満、化学療法などがあげられる。

1.× 上肢手術は、静脈血栓塞栓症のリスクが低い。
なぜなら、上肢は日常的に使用する頻度が多く、筋ポンプ作用により静脈の血流が良好なことが多いため。一方、静脈血栓塞栓症が起こりやすいのは下肢である。

2~3.〇 人工股関節手術/大腿骨骨折手術
なぜなら、長時間の手術時間や術後の活動制限などをきたすため。

4.〇 多発外傷
多発外傷とは、交通事故や高所からの転落などによる身体の損傷で、頭部・頚部、胸部、腹部、骨盤や四肢(手足)など複数の部位にわたって重い損傷を受けている状態のことをいう。複数の臓器に重い損傷を受けていることから、多発外傷は生命に危機がおよぶ状態といえる。

 

 

 

 

 

問題63 肩腱板断裂の慢性期所見で正しいのはどれか。

1.上肢の挙上が不可能である。
2.肩関節の回旋拘縮がある。
3.肩峰骨頭間距離が広がる。
4.夜間痛がある。

答え.4

解説

肩腱板断裂とは?

腱板断裂とは、肩のインナーマッスルである棘上筋、棘下筋、小円筋、肩甲下筋の腱が損傷・断裂していることをいう。肩峰や上腕骨頭とのインピンジメント(衝突)で損傷されやすい棘上筋腱の損傷がほとんどである。画像所見やインピンジメントの誘発テストによって診断される。また、断裂と断裂部に関節液の貯留を認めるため、超音波(エコー)やMRI検査で診断することが多い。MRIは時間がかかることや体内に磁性体がある場合は行うことができない。また画像をスライスでしか確認できないため連続性を追いにくいといった特徴がある。

1.× 上肢の挙上が不可能とはいえない
なぜなら、三角筋や上腕二頭筋を用いて肩関節の挙上することができるため。

2.× 肩関節の回旋拘縮があるとはいえない
関節拘縮とは、関節の不動により、線維化することで 関節可動域減少が引き起こされ固定することである。肩腱板断裂は、関節組織の軟部組織が線維化するわけではない。

3.× 肩峰骨頭間距離が「広がる」のではなく狭まる
肩腱板断裂が長期化すると、上腕骨頭が上方転位し、単純X線上でも肩峰骨頭間距離の減少がみられる。

4.〇 正しい。夜間痛がある
なぜなら、寝ている間に肩の位置が変わったり、関節内圧が上昇し、断裂した腱にストレスがかかるため。夜間痛は肩の疾患における一般的な症状であり、肩腱板断裂の一つの可能性を示す。

肩関節周囲炎とは?

肩関節周囲炎(五十肩)は、慢性炎症に分類される。肩関節周囲炎(五十肩)は、肩関節とその周辺組織(肩峰下滑液包や腱板など)の退行性変性が原因となり肩関節の痛みと運動の制限を伴うものである。加齢による退行変性を基盤に発症し、疼痛(運動時痛、夜間時痛)と運動障害を主徴とする。肩関節周囲炎は痙縮期、拘縮期、回復期と分けられ、筋萎縮は拘縮期に肩甲帯筋の廃用性萎縮としてみられる。リハビリとして、Codman体操(コッドマン体操)を実施する。肩関節周囲炎の炎症期に使用する運動であり、肩関節回旋筋腱板の強化や肩関節可動域拡大を目的に使用する。患側の手に1~1.5㎏の重錘を持ち、振り子運動を行う。

①痙縮期(約2~9か月):急性期で疼痛が主体となる。明らかな誘因はなく、肩の違和感や痛みで出現。運動時痛や安静時・夜間時痛が出現し、急速に関節が硬くなる。局所の安静、三角巾固定痛みの出る動作は避ける。

②拘縮期(約4~12か月):亜急性期で拘縮が主体となる。徐々に安静時痛・夜間痛は軽減しますが、肩関節は拘縮し、可動域制限が残りやすくなる。過度に動かすと強いつっぱり感が出現する。徐々に運動範囲を広げる(お風呂やホットパックでの保温、愛護的に関節可動域の拡大)

③回復期(約6~9か月):慢性期で、症状は徐々に改善する。可動域制限も徐々に回復し、運動時痛も消失する。積極的な運動(ストレッチング)を実施する。

 

 

 

 

 

問題64 フォルクマン(Volkmann)拘縮で生じない変形はどれか。

1.前腕回内
2.IP関節屈曲
3.母指橈側外転
4.第2~5MP関節過伸展

答え.3

解説

MEMO

フォルクマン拘縮とは、前腕屈筋群の虚血性壊死と神経の圧迫性麻痺により拘縮を起こすものである。したがって、正中神経麻痺・尺骨神経麻痺を発症しやすい。
前腕の屈筋群として、①円回内筋、②橈側手根屈筋、③長掌筋、④尺側手根屈筋、⑤浅指屈筋、⑥深指屈筋、⑦長母指屈筋、⑧方形回内筋である。

1.〇 前腕回内
なぜなら、前腕屈筋群の虚血性壊死、つまり円回内筋や方形回内筋などの障害がみられるため。

2.〇 IP関節屈曲
なぜなら、前腕屈筋群の虚血性壊死、つまり浅指屈筋や深指屈筋などの障害がみられるため。また、尺骨神経麻痺による鷲手の影響もある。

3.× 母指橈側外転は、フォルクマン(Volkmann)拘縮で生じない変形である。
定型的な拘縮型は、母指内転、第2~5指MP関節過伸展、IP関節屈曲拘縮を示し、正中神経麻痺と尺骨神経麻痺を伴う。

4.〇 第2~5MP関節過伸展
なぜなら、尺骨神経麻痺を来し、指の開閉運動障害や鷲手変形を生じるため。鷲手とは、尺骨神経麻痺により手内筋が萎縮し、とくに環指と小指の付け根の関節(MP関節、中手指骨関節)が過伸展する一方、指先の関節(DIP関節、遠位指節間関節)と中央の関節(PIP関節、近位指節間関節)が屈曲した状態である。

 

 

 

 

 

問題65 スポーツによる骨盤周囲の裂離骨折と起因筋腱の組合せで正しいのはどれか。

1.上前腸骨棘:大腿直筋
2.下前腸骨棘:ハムストリングス
3.大腿骨大転子:大殿筋
4.大腿骨小転子:腸腰筋

答え.4

解説

ハムストリングスとは?

ハムストリングスとは、3つの筋肉(大腿二頭筋、半膜様筋、半腱様筋)の総称を指す。

大腿二頭筋
【起始】長頭:坐骨結節、短頭:大腿骨体の粗線の外側唇、外側大腿筋間中隔、【停止】腓骨頭、【作用】股関節伸展、外旋、膝関節屈曲、【支配神経】長頭:坐骨神経の脛骨神経部、短頭:坐骨神経の総腓骨神経部

半膜様筋
【起始】坐骨結節、【停止】脛骨粗面、脛骨内側顆の後部、斜膝窩靭帯、膝窩筋筋膜、【作用】股関節伸展、内転、内旋、膝関節屈曲、【支配神経】坐骨神経の脛骨神経部

半腱様筋
【起始】坐骨結節(大腿二頭筋長頭の起始の内側でこれと融合)、【停止】脛骨粗面の内側(鵞足を形成)、【作用】股関節伸展、内転、内旋、膝関節屈曲、【支配神経】坐骨神経の脛骨神経部

1.× 大腿直筋は、上前腸骨棘に付着していない。
大腿直筋の【起始】下前腸骨棘および寛骨臼の上縁、【停止】膝蓋骨、脛骨粗面、【作用】膝関節伸展、股関節屈曲、【支配神経】大腿神経:L2~L4である。ちなみに、上前腸骨棘に付着する筋肉は、大腿筋膜張筋や縫工筋である。

2.× ハムストリングスは、下前腸骨棘に付着していない。
ハムストリングスとは、3つの筋肉(大腿二頭筋、半膜様筋、半腱様筋)の総称を指す。ちなみに、下前腸骨棘に付着する筋肉は、大腿直筋である。

3.× 大殿筋は、大腿骨大転子に付着していない。
大殿筋の【起始】腸骨翼の外面で後殿筋線の後方、仙骨・尾骨の外側縁、仙結節靭帯、腰背筋膜、【停止】腸脛靭帯、大腿骨の殿筋粗面、【作用】股関節伸展、外旋、外転、上部:内転、下部:骨盤の下制、【支配神経】下殿神経:(L4)、L5~S2である。ちなみに、大腿骨大転子に付着する筋肉は、外側広筋(一部)、中殿筋、小殿筋、梨状筋、大腿方形筋である。

4.〇 正しい。腸腰筋は、大腿骨小転子に付着する。
腸腰筋とは、①腸骨筋と②大腰筋の2筋からなる筋肉である。
①腸骨筋:【起始】腸骨窩全体、【停止】大腿骨の小転子、【作用】股関節屈曲、外旋、【神経】大腿神経
②大腰筋:【起始】第12胸椎~第4腰椎の椎体と椎間円板、すべての腰椎の肋骨突起、第12肋骨、【停止】大腿骨の小転子、【作用】股関節屈曲、【神経】腰神経叢の枝

 

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