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問題71 柔道整復施術の対象となるのはどれか。
1.遠位骨片が外旋している上腕骨骨幹部骨折
2.腋窩動脈損傷を伴った肩関節脱臼
3.足先に感染創のある下腿打撲
4.偽関節となった第5中足骨骨折
答え.1
解説
柔道整復の対象疾患は、急性又は亜急性の外傷性の骨折、脱臼、打撲、捻挫、肉ばなれ等。
骨折及び脱臼については、医師の同意が必要。(応急手当を除く)
(※引用:「柔道整復に係る療養費の概要」厚生労働省様HPより)
1.〇 正しい。遠位骨片が外旋している上腕骨骨幹部骨折は、柔道整復施術の対象となる。
柔道整復施術は、非手術的な骨折治療の一種で、特に骨折部位が整復可能な位置にある場合に用いられる。初期は三角巾と胸部固定バンドを使用して上肢全体を体幹に密着する方法や、脇の下から手部までギブスをまいてその重みで整復するハンギングキャスト法などあげられる。
2.× 腋窩動脈損傷を伴った肩関節脱臼は、病院での治療が必要である。
肩関節脱臼に伴う腋窩動脈損傷の発生率は約1~2%と稀であり、多くは50歳以上で発症する。外傷性腋窩動脈損傷の形態として閉塞・出血・仮性動脈瘤がある。損傷部や形態に応じて治療を選択する必要があり、外科的血行再建と血管内治療が主に上げられる。
3.× 足先に感染創のある下腿打撲は、病院での治療が必要である。
なぜなら、さらなる感染創の増悪・感染の拡大が懸念されるため。
4.× 偽関節となった第5中足骨骨折は、病院での治療が必要である。
なぜなら、第5中足骨近位骨幹部は血流が乏しいため、遷延治癒・偽関節が生じやすく、完全骨折に至っている場合には手術療法が推奨されるため。ちなみに、偽関節とは、骨折部の癒合不全により異常可動をきたすことである。血流が少なく、骨癒合が起こりにくい部位の骨折が好発部位である。つまり、①大腿骨頸部骨折、②手の舟状骨骨折、③脛骨中下1/3骨折等は偽関節を起こしやすい。
問題72 骨リモデリングに関与しないのはどれか。
1.年齢
2.転位の形状
3.骨折部位
4.疼痛の程度
答え.4
解説
骨折の治癒過程において、「①炎症期→②仮骨形成期→③仮骨硬化期→④リモデリング期」となる。
①炎症期:骨折後2〜3日で活動のピークを迎える。骨折した人が経験する初期の痛みのほとんどがこの炎症によるものである。
②仮骨形成期:骨折後1週間が過ぎると骨芽細胞が活動し、1週間目から14週目ぐらいが仮骨が形成する時期である。仮骨とは、骨折した場合に折れたり欠損したりした骨の代わりに、新たにできる不完全な骨組織のことである。
③仮骨硬化期:8週間目から36週間目ぐらいにあたる。
④リモデリング期:硬化仮骨が患部の機能とともに回復に、本体の骨に吸収、添加作用していく時期である。これが20週目から52週目ぐらいにあたる。
1.〇 年齢は、骨リモデリングに関与する。
なぜなら、一般的に、なぜなら、小児の骨折・変形は、骨折部位の形状を改善する能力(リモデリング)が活発であるため。一方で、年齢を重ねると骨密度が低下し、骨リモデリングの能力も減少する。
2~3.〇 転位の形状/骨折部位は、骨リモデリングに関与する。
なぜなら、骨は力学的な荷重(運動)に応じて、骨吸収と骨形成を繰り返し、自らを再構築(リモデリング)するため。
4.× 疼痛の程度は、選択肢の中で最も骨リモデリングに関与しない。
ただし、骨は力学的な荷重(運動)に応じて、リモデリングするため、荷重や運動に影響を及ぼす疼痛の程度があれば、骨リモデリングに全く関与しないとは言えない。ちなみに、骨吸収とは、その名の通り骨組織の吸収であり、つまり、破骨細胞が骨の組織を分解してミネラルを放出し、骨組織から血液にカルシウムが移動するプロセスである。
問題73 急性塑性変形で正しいのはどれか。
1.エックス線で骨折線がみられる。
2.海綿骨の微細損傷である。
3.仮骨形成がみられない。
4.自家矯正が期待できない。
答え.4
解説
急性塑性変形とは、1974年にBordenらによっ て提唱されたもので、小児長管骨に弾性限界を超えるが、完全骨折には至らない程度の外力が加わったときに弯曲変形し、骨が元の形に戻ることができなくなった状態である。(※参考:「小児下腿骨急性塑性変形の2例」著:松村宣政)
1.× エックス線で骨折線がみられない。
急性塑性変形とは、弯曲変形し、骨が元の形に戻ることができなくなった状態である。
2.× 「海綿骨」ではなく皮質骨の微細損傷である。
骨には、①外側(皮質骨)と②内側(海綿骨)がある。
3.× 仮骨形成がみられないとは断言できない。
急性塑性変形では、骨折がないため骨折線は認めないが、経時的に仮骨出現する。仮骨形成とは、骨折すると、骨の連続性が断たれた状態になるが、その骨を融合するために新たに形成されるのが未熟な組織である。初期の炎症期の後の修復期に仮骨が形成される。 できたばかりの仮骨は強度が弱く不安定だが、時間の経過とともに石灰化していく。
4.〇 正しい。自家矯正が期待できない。
なぜなら、急性塑性変形では、骨折がないため。骨折があれば、自家矯正が働きやすい。
問題74 小児の骨で正しいのはどれか。
1.肥大軟骨層で離開しやすい。
2.類骨はコラーゲンが少ない。
3.石灰化密度が高い。
4.骨膜が薄い。
答え.1
解説
1.〇 正しい。肥大軟骨層で離開しやすい。
成長軟骨には、表層から①静止層、②増殖層、③肥大層、④石灰化層に分けられる。骨端軟骨損傷は成長障害の頻度が高く、Salter-Harris分類のⅡ型が最も発生頻度が高い。Ⅱ型は、骨折線が成長板の上方へ伸びる、または成長板から離れて伸びるものを指し、つまり、肥大軟骨層で離開しやすい。
2.× 類骨(※読み:るいこつ)はコラーゲンが「多い(約90%)」。
類骨とは、 骨が形づくられる中で、石灰化する前の柔らかい状態の骨のことである。つまり、骨芽細胞により形成され、骨稜の表面にある石灰化していない骨基質のことである。類骨は、線維と基質により構成され、主な線維はコラーゲン1型である。コラーゲンが類骨の90%を構成する。 基質はコンドロイチン硫酸やオステオカルシンがほとんどである。
3.× 石灰化密度が「低い」。
なぜなら、小児の骨は、成長と共に石灰化(骨化)を進行するため。したがって、成人の骨と比較して石灰化密度は低い。
4.× 骨膜が「厚い」。
なぜなら、小児の骨は、弾性があるため。これにより、小児の骨が成人の骨よりも折れにくい一因である。
ソルター・ハリス分類(Salter-Harris分類)とは、成長板(骨端線)の骨折を評価するための一般的な分類法である。小児は大人と違って骨端に軟骨が挟まっており、そこから骨が成長する。タイプⅡは最も一般的なタイプで、成長板と骨端の一部が関与するが、多くの場合、完全に治癒し、長期的な成長障害を引き起こすことは少ない。Salter-Harris法では異なる型に分類される。骨折がⅠ型からⅤ型に進むに従い、成長障害のリスクが高まる。
タイプⅠ:骨折線が成長板をまっすぐ通って進む。骨端線の完全分離である。
タイプⅡ:骨折線が成長板の上方へ伸びる、または成長板から離れて伸びる。骨端線の完全分離と骨幹端の三角骨片である。
タイプⅢ:骨折線が成長板の下方へ伸びる。骨端線の分離と骨端の骨片である。
タイプⅣ:骨折線が骨幹端、成長板、および骨端を通過して伸びる。骨幹端から関節軟骨にわたり縦断されたものである。
タイプⅤ:成長板が押しつぶされている。骨端軟骨が圧挫されたものである。
成長板だけでなく骨端も含む損傷(タイプⅢ~Ⅳ)または成長板を圧縮する損傷(タイプⅤ)は、予後不良である。
問題75 高齢者骨折の続発症で起こりにくいのはどれか。
1.褥瘡
2.誤嚥性肺炎
3.尿路感染
4.外傷性皮下気腫
答え.4
解説
続発症とは、ある疾患を原因として、経過がたどるにつれ、別の疾患が発症することである。したがって、続発症は後遺症とも呼ぶことが多い。
1.〇 褥瘡は、高齢者骨折の続発症である。
なぜなら、高齢者骨折による長期臥床で、褥瘡をきたしやすいため。褥瘡とは、局所の持続的な圧迫により組織に虚血が生じて発生する皮膚の潰瘍あるいは皮下組織の損傷のことである。背臥位では、後頭骨や肩甲骨、肘頭、仙骨、踵部などの骨の突出している場所に好発する。予防法としては、最も負担がかかりやすい骨突出部を除圧し、面で支持することで一点に圧をかけることなく、圧の分散に努める。褥瘡予防マットやクッションなどを活用する。また、清潔を心がけ、体位変換を行う。
2.〇 誤嚥性肺炎は、高齢者骨折の続発症である。
なぜなら、高齢者骨折による長期臥床で、誤嚥性肺炎をきたしやすいため。誤嚥とは、食物や唾液などが声門を越えて気道に侵入することをいう。食事を口に運び、飲み込むー連の運動のどこかの段階が障害されることを嚥下障害といい、誤嚥の要因となる。誤嚥性肺炎とは、口腔内常在菌が食物の誤嚥とともに肺の中へ流れ込んで生じる肺炎のことである。原因は、①嚥下機能自体の低下、②寝たきり状態などによるADL(日常生活活動)の低下、③食物がスムーズに食道へ進めない状態などで、口腔内に長時間食物が存在してしまう状況などが挙げられる。
3.〇 尿路感染は、高齢者骨折の続発症である。
なぜなら、高齢者骨折による長期臥床で、排尿の回数が減り、尿道口から大腸菌などの細菌が入るため。尿路感染とは、感染診断名としては、①腎盂腎炎と②膀胱炎とに分けられる。一方で、その病態による一般的分類法として尿路基礎疾患のある・なしで、複雑性と単純性とに分ける。頻度として多い女性の急性単純性膀胱炎は外来治療の対象である。急性単純性腎盂腎炎は高熱のある場合、入院が必要なこともある。複雑性尿路感染症は、膀胱炎、腎盂腎炎とも、症状軽微な場合、外来治療が原則であるが、複雑性腎盂腎炎で尿路閉塞機転が強く高熱が認められるものでは、入院の上、腎瘻造設などの外科的ドレナージを要することもある。
4.× 外傷性皮下気腫は、高齢者骨折の「続発症」ではなく合併症で起こる。
皮下気腫とは、皮下組織内に空気がたまった状態をいう。空気が侵入する経路としては、皮膚の損傷による外部からの侵入、損傷された壁側胸膜を通しての胸腔内空気(気胸)の侵入、気管・気管支損傷や食道損傷などに伴う縦隔からがある。原因として、交通事故の原因となる外傷(特に胸部の打撲)、高所からの転落、挟まれたことによる挟圧外傷などである。症状として、胸や頚部に空気がたまり、その部位が膨らみ、強い痛みが出る。握雪感や捻髪音も感知でき、胸痛や呼吸困難を訴える場合もある。
併発症とは、別のものがほぼ同時に起こる意味合いが強い。例えば、関節、軟部組織、内臓、脳脊髓、血管、末梢神経の損傷である。
続発症とは、ある疾患を原因として、経過がたどるにつれ、別の疾患が発症することである。例えば、外傷性皮下気腫、脂肪塞栓症候群、仮骨の軟化および再骨折、遷延治癒、コンパートメント症候群、長期臥床による続発症などがある。他にも、沈下性肺炎、褥瘡、深部静脈血栓症、筋萎縮、尿路感染症、認
後遺症とは、病気・怪我など急性期症状が治癒した後も機能障害などの症状や傷痕が残ることである。例えば、過剰仮骨形成、偽関節、変形治癒、関節運動障害(強直、拘縮)、骨萎縮、阻血性骨壊死、フォルクマン拘縮、外傷性骨化性筋炎などがある。