この記事には広告を含む場合があります。
記事内で紹介する商品を購入することで、当サイトに売り上げの一部が還元されることがあります。
問題106 前十字靱帯損傷患者の訴えでないのはどれか。
1.「膝がガクッとなる感じ」
2.「膝がはずれる感じ」
3.「膝の力が入らない感じ」
4.「膝が引っかかる感じ」
答え.4
解説
前十字靭帯とは、膝関節の中で、大腿骨と脛骨をつないでいる強力な靭帯である。役割は、主に①大腿骨に対して脛骨が前へ移動しないような制御(前後への安定性)と、②捻った方向に対して動きすぎないような制御(回旋方向への安定性)である。前十字靭帯損傷とは、スポーツによる膝外傷の中でも頻度が高く、バスケットボールやサッカー、スキーなどでのジャンプの着地や急な方向転換、急停止時に発生することが多い非接触損傷が特徴的な靭帯損傷である。Lachman test(ラックマンテスト)/軸移動テスト(pivot shift test:ピポットシフトテスト)/Jerkテスト(ジャークテスト)は、膝前十字靭帯損傷を検査する。
1~3.〇 正しい。「膝がガクッとなる感じ」/「膝がはずれる感じ」/「膝の力が入らない感じ」
これらは前十字靭帯(ACL)損傷の一般的な症状である。膝の不安定感や、膝が抜けるような感じ(膝くずれ)が生じる。
【主な膝前十字靭帯損傷を検査】
①Lachman test(ラックマンテスト):背臥位で膝関節を20~30度屈曲させて、下腿部近位端を斜め前方へ引き出す。陽性の場合、脛骨は止まることなく前方に出てくる。
②軸移動テスト(pivot shift test:ピポットシフトテスト):前十字靱帯損傷膝では膝伸展位において外反、軸圧のストレスをかけることにより脛骨は前方にずれる。そして、屈曲とともに 20°~30°付近で脛骨は突然整復位に外旋するように、即ち、後方の正常な位置に戻る。
③Jerkテスト(ジャークテスト):片方の手で、患者の足首を持ち、もう一方の手で膝を持ち、下腿を内旋しながら伸展すると、膝でクリックを伴う亜脱臼整復感が確認できる。
4.× 「膝が引っかかる感じ」は、前十字靱帯損傷患者の訴えでない。
これは、半月板損傷の症状である。マックマレーテスト(McMurray Test)は、半月板損傷を検査する。①背臥位で膝を完全に屈曲させ片手で踵部を保持する。②下腿を外旋させながら膝を伸展させたときに痛みやクリックを感じれば内側半月の損傷、下腿を内旋させながら膝を伸展させたときに生じるならば外側半月の損傷を示唆する。
問題107 骨棘ができるのはどれか。
1.外脛骨
2.足根洞症候群
3.腓骨筋腱脱臼
4.衝突性外骨腫
答え.4
解説
骨棘とは、骨同士の摩擦や変形によって発生する骨のトゲのことである。変形性膝関節症などでよく見られるが、変形性股関節症でもみられる。レントゲンによって判断が可能で、変形性関節症の進行度合いの確認指標となる。
1.× 外脛骨
外脛骨とは、足の舟状骨の内側に位置する骨をいう。正常な人の15%程度にみられる足の内側にある余分な骨である。有痛性外脛骨とは、その外脛骨が痛みを起こしてしまった状態をいう。スポーツ活動や捻挫などの外傷をきっかけに痛みを起こすことがあり、小児、特に女性での発症が多く、成長期を終えると痛みが治まることが多い。主な症状として、①疼痛(圧痛、運動時痛)、②腫脹(うちくるぶしの下方の腫れ)があげられる。他にも、炎症が強い場合には、熱感も引き起こすことがある。治療として、①薬物療法(鎮痛)、②運動療法、③物理療法(温熱や電気刺激による鎮痛)、④装具療法などがあげられる。
2.× 足根洞症候群
足根洞とは、外果のやや前方にあるへこみの奥の部分である。足根洞には浅腓骨神経から分岐する中間足背皮神経の枝と、腓腹神経から分かれる距骨下関節枝の枝が分布し、脂肪組幟や骨間距踵靱帯には固有知覚を司ると思われる神経終末器官や神経自由終末が存在し、後足部の運動制御や知覚に重要な役割を果たしている。足根洞症候群とは、その足根洞に炎症が起こっている状態ことである。原因は、明確ではないが、距骨下関節嚢や骨間距盤戦帯とその周囲軟部組織の損傷による慢性滑膜炎を中心とした炎症と損傷部での修復機転による線維組織と神経終末の侵入、癒痕化による骨間距腫靭帯の機能不全などがあげられている。
3.× 腓骨筋腱脱臼
腓骨筋腱脱臼とは、足関節をひねることで腓骨筋腱が本来の位置からずれて、くるぶしの上に乗り上げた状態をいう。スキーで足を板に固定されている状態で足首をひねったり、サッカー・バスケットボールでの切り返し動作時に足を地面に固定した状態で足首をひねったりしたときなどに発生する。初回脱臼時には、4~6週間のギプス固定を行なうが、ギプス固定による治癒率は約50%といわれているため、早期にスポーツ復帰を望む場合には手術することもある。
4.〇 正しい。衝突性外骨腫は、骨棘ができる。
衝突性外骨腫とは、フットボーラーズアンクルともいい、サッカーのキック動作や、バスケットボールのジャンプ時など足関節を大きく動かすことで、骨同士が衝突して足首の前や後ろの部分に骨の増殖変化(骨棘形成)、骨軟骨に損傷をきたしている状態をさす。したがって、サッカー選手に多く発生する足首の障害である。また、足関節捻挫の既往により、足関節の不安定性が増すことで発生しやすくなる。
問題108 20歳の男性。4週前に大学サッカーで相手と接触し、左下肢を痛めた。最近、膝が曲げにくいと来所した。膝関節の他動屈曲を行った際、図に示す動作所見がみられた。
原因となる筋はどれか。
1.腸腰筋
2.腓腹筋
3.半膜様筋
4.大腿直筋
答え.4
解説
図は、大腿直筋の短縮を調べるEly test(エリーテスト:尻上がりテスト)である。
1.× 腸腰筋
腸腰筋は、①腸骨筋と②大腰筋の2筋からなる。
①腸骨筋:【起始】腸骨窩全体、【停止】大腿骨の小転子、【作用】股関節屈曲、外旋、【神経】大腿神経
②大腰筋:【起始】第12胸椎~第4腰椎の椎体と椎間円板、すべての腰椎の肋骨突起、第12肋骨、【停止】大腿骨の小転子、【作用】股関節屈曲、【神経】腰神経叢の枝
2.× 腓腹筋
腓腹筋の【起始】外側頭:大腿骨外側上顆、内側頭:大腿骨内側上顆、【停止】踵骨腱(アキレス腱)となり踵骨隆起後面の中部、【作用】膝関節屈曲、足関節底屈、踵の挙上、【支配神経】脛骨神経:S1,S2
3.× 半膜様筋
半膜様筋の【起始】坐骨結節、【停止】脛骨粗面、脛骨内側顆の後部、斜膝窩靭帯、膝窩筋筋膜、【作用】股関節伸展、内転、内旋、膝関節屈曲、【支配神経】坐骨神経の脛骨神経部:L4~S2
4.〇 正しい。大腿直筋は、原因となる筋である。
図は、大腿直筋の短縮を調べるEly test(エリーテスト:尻上がりテスト)である。大腿直筋は、股関節・膝関節の2関節筋であるため、股関節伸展位のまま膝関節屈曲すると、大腿直筋が伸張しきれず、尻上がり現象がみられる。
大腿直筋の【起始】下前腸骨棘および寛骨臼の上縁、【停止】膝蓋骨、脛骨粗面、【作用】膝関節伸展、股関節屈曲、【支配神経】大腿神経:L2~L4
問題109 28歳の男性。バスケットボールの試合で着地した際、左膝関節を負傷した。左膝に不安定性はないが、内側部に軽度疼痛があり、図に示す固定処置を行った。
処置後の循環確認で正しいのはどれか。
1.スカルパ三角部での拍動
2.腓腹筋筋腹の圧迫
3.膝窩部での拍動
4.足爪床部の圧迫
答え.4
解説
1.× スカルパ三角部での拍動
大腿骨頸部骨折では、スカルパ三角部に著明の圧痛がある。スカルパ三角(Scarpa三角)とは、①鼠径靭帯、②縫工筋(内側縁)、③長内転筋(外側縁)で囲まれた部分である。スカルパ三角内の深層に、大腿骨頸部が位置する。
2.× 腓腹筋筋腹の圧迫
アキレス腱断裂の場合、腓腹筋筋腹の圧迫しても無反応である。Thompsonテスト(トンプソンテスト)は、アキレス腱断裂を診るテストである。患者さんに立て膝をついてもらい、膝を90度曲げ、ふくらはぎを握る。足首より下の部分が動かなければ、陽性となる。
3.× 膝窩部での拍動
膝窩動脈損傷している場合、膝窩部での拍動は認められない。膝窩動脈損傷は、膝関節の開放骨折や人工膝関節置換術後に伴いやすい。
4.〇 正しい。足爪床部の圧迫は、処置後の循環確認である。
なぜなら、図の固定処置は、膝窩動脈を横断するようにテーピングされているため。足爪床部の圧迫により、循環確認を実施する。ちなみに、爪床とは、皮下組織の一部で爪甲がその上にある部位を指す。爪床には、爪甲の形成と維持に必要な栄養を補給するために血管が通っている。また、爪床には神経も通っている。
膝関節脱臼には、一般的に動脈損傷または神経損傷が伴う。膝関節脱臼は肢の温存を脅かす。この脱臼は,医学的評価がなされる前に自然に整復する場合がある。診断は通常,X線による。血管および神経学的評価が必要であり,血管損傷はCT血管造影により同定される。非観血的整復および血管損傷の治療を直ちに行う。(※引用:「膝関節(脛骨大腿関節)脱臼」MSDマニュアル様より)
問題110 30歳の男性。実力の同じ相手と腕相撲をしていて「バキッ」という音とともに上腕部に限局性圧痛と腫脹が出現した。
考えられるのはどれか。
1.縦骨折
2.螺旋状骨折
3.斜骨折
4.横骨折
答え.2
解説
・実力の同じ相手と腕相撲中の受傷。
・「バキッ」という音。
・上腕部に限局性圧痛と腫脹が出現した。
→腕相撲というスポーツの特性上、骨に加わりやすい外力や特徴的な骨折のタイプがあげられる。
1.× 縦骨折
縦骨折とは、骨の長軸に並行に骨折線が入っているものである。
2.〇 正しい。螺旋状骨折が考えられる。
螺旋骨折とは、捻じれる力がかかることで生じる骨折である。スキーでの転倒など捻りが加わる外傷を負ったときや、ボールの投球、腕相撲といった運動の動作の際に起こることもある。
3.× 斜骨折
斜骨折とは、骨の長軸に対して骨折線(骨折部に生じる亀裂)が斜めに入っているものをいう。
4.× 横骨折
横骨折とは、骨折線が骨の長軸方向に対してほぼ垂直に入る骨折のことである。