第29回(R3年)柔道整復師国家試験 解説【午後101~105】

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問題101 ステナー(Stener)損傷に関与するのはどれか。

1.長母指伸筋腱
2.短母指外転筋膜
3.母指対立筋腱
4.母指内転筋膜

答え.4

解説

ステナー障害とは?

Stener損傷とは、靭帯の断端が反転して、母指内転筋腱膜の下に挟まっている状態を指す。ステナー障害を発症すると治癒不能となってしまうため靭帯縫合術を行う。靱帯再建術とは、切れた靭帯の代わりの腱を、自分の膝の裏から移植する手術である。

1.× 長母指伸筋腱
長母指伸筋の【起始】尺骨体中部背面、前腕骨間膜背面、【停止】母指の末節骨底の背側、【作用】母指の伸展、内転、【支配神経】橈骨神経深枝:C6~C8である。

2.× 短母指外転筋膜
短母指外転筋の【起始】舟状骨結節、屈筋支帯の橈側端前面、【停止】種子骨、母指基節骨底、一部は指背腱膜、【作用】母指外転、屈曲、【支配神経】正中神経:C8,T1である。

3.× 母指対立筋腱
母指対立筋の【起始】大菱形骨結節と屈筋支帯、【停止】第1中手骨の橈側縁、【作用】母指対立、【支配神経】正中神経:C8,T1である。

4.〇 正しい。母指内転筋膜は、ステナー(Stener)損傷に関与する。
母指内転筋の【起始】横頭:第3中手骨掌面の全長、斜頭:有頭骨を中心とした手根骨、第2~3中手骨底の掌側面、【停止】種子骨、母指基節骨底、一部は指背腱膜、【作用】母指内転、【支配神経】尺骨神経深枝:C8,(T1)である。

(※図引用:「The Bone Identity ~整形外科医のブログ~様HPより」)

解剖学的嗅ぎタバコ窩とは?

手背には長母指伸筋の腱、掌側には短母指伸筋の腱と長母指外転筋の腱が並んで走行している。ここを解剖学的嗅ぎタバコ窩という。手背の母指基部の専用のタバコ粉末を置いて匂いをかぐ楽しみの一つで使用されていた部位であることから、その名がつけられた。手背には長母指伸筋の腱、掌側には短母指伸筋の腱と長母指外転筋の腱が並んで走行している。ここから舟状骨も触知できる。

 

 

 

 

 

問題102 ばね指で正しいのはどれか。

1.男性に多い。
2.小指に多い。
3.狭窄部は指節間関節が多い。
4.小児は自然治癒することが多い。

答え.4

解説

ばね指とは?

弾発指(ばね指)とは、指を曲げて伸ばそうとしたときに、弾くようなバネに似た動きをする状態のことである。ばね指は、指を曲げるのに必要な腱や腱鞘に炎症が起こり、腱鞘炎が悪化することで発症する。特に手指を使いすぎていたり、スポーツをしたりしているとかかりやすいといわれている。

1.× 「男性」ではなく女性に多い。
男女比は、1:2~6と言われている。これは、男性ホルモン・テストステロンには、筋肉や腱を強くする働きがあるため、男性は腱鞘炎になりにくいと考えられている。

2.× 「小指」ではなく親指に多い。
ばね指は、好発部位として親指、中指、薬指が多いとされている。小指は、小指伸筋という筋肉が個別に存在するため、ばね指はなりにくい。同様に、示指も示指伸筋という筋肉が個別に存在するため、ばね指はなりにくい。

3.× 狭窄部は、「指節間関節(IP)」ではなく中手指節関節(MP)が多い。
ばね指は、滑膜が炎症を生じ腫れ、屈筋腱が腱鞘の中を滑走しにくなると、指の動きが制限され、痛みも生じる。さらには、MP関節部にある腱鞘の入り口が狭くなると、屈筋腱の太い部分がそこを通過しにくく引っ掛かるため、ばね現象が起こる。

4.〇 正しい。小児は自然治癒することが多い
小児のばね指(特に乳幼児期のもの)は、しばしば自然に改善する。なぜなら、伸筋腱の形成不全によるもの(先天性握り母指変形)であるため。一方、成人のばね指の治療法には、安静や固定、抗炎症薬の投与、ステロイドの局所注射、場合によっては手術が行われる。

 

 

 

 

 

問題103 弾発股の原因でないのはどれか。

1.中殿筋
2.大殿筋
3.腸腰筋
4.大腿筋膜張筋

答え.1

解説

弾発股とは?

弾発股とは、股関節の回りの筋肉や腱が、骨(大転子)に引っ掛かり、ポキッと音がする症状をさす。股関節運動時にこの大転子の上を腸脛靭帯という靭帯が滑るように通るが、何らかの原因で正常に動かなくなり引っ掛かり感や音、痛みが発生する。腸脛靭帯に移行していく大腿筋膜張筋の影響と、同じく腸脛靭帯に入り込む大殿筋の影響が大きい。主な原因は、①スポーツや仕事など日常生活の中で姿勢や習慣、②年齢による筋力低下、③股関節や仙腸関節の機能障害などがあげられる。

1.× 中殿筋は、弾発股の原因でない。
なぜなら、中殿筋は大転子の上に付着するため。弾発股とは、股関節の回りの筋肉や腱が、骨(大転子)に引っ掛かり、ポキッと音がする症状をさす。ちなみに、中殿筋の【起始】腸骨翼の外面で前および後殿筋線の間、腸骨稜外唇および殿筋筋膜、【停止】大転子の外側面、【作用】股関節外転、前部:内旋、後部:外旋、【支配神経】上殿神経:L4~S1である。

2.〇 大殿筋
大殿筋の【起始】腸骨翼の外面で後殿筋線の後方、仙骨・尾骨の外側縁、仙結節靭帯、腰背筋膜、【停止】腸脛靭帯、大腿骨の殿筋粗面、【作用】股関節伸展、外旋、外転、上部:内転、下部:骨盤の下制、【支配神経】下殿神経:(L4)、L5~S2である。

3.〇 腸腰筋
腸腰筋とは、①腸骨筋と②大腰筋の2筋からなる筋肉である。
①腸骨筋:【起始】腸骨窩全体、【停止】大腿骨の小転子、【作用】股関節屈曲、外旋、【神経】大腿神経
②大腰筋:【起始】第12胸椎~第4腰椎の椎体と椎間円板、すべての腰椎の肋骨突起、第12肋骨、【停止】大腿骨の小転子、【作用】股関節屈曲、【神経】腰神経叢の枝

4.〇 大腿筋膜張筋
大腿筋膜張筋の【起始】上前腸骨棘と大腿筋膜の内側、【停止】腸脛靭帯、脛骨外側顆前面の粗面、【作用】股関節屈曲、内旋、外転、膝関節伸展、【神経】上殿神経

 

 

 

 

 

問題104 ドレーマン徴候が陽性となるのはどれか。

1.単純性股関節炎
2.大腿骨頭すべり症
3.ペルテス(Perthes)病
4.発育性股関節形成不全

答え.2

解説

ドレーマン徴候とは?

Drehmann徴候とは、大腿骨頭すべり症でみられ、股関節を他動的に屈曲すると外転・外旋がみられる徴候である。

1.× 単純性股関節炎
単純性股関節炎とは、原因は不明で、1週間ほど安静にしていれば痛みも治まり、自然治癒する。エックス線写真において、特段異常所見は見られない。3~10歳に好発する。男女の比率はおおよそ4:1とされる。超音波検査やMRIで関節液の貯留が確認される。ほとんど片側性で、強い発赤や腫脹、発熱は見られないが、股関節の運動時疼痛を訴え、運動制限、跛行が見られる。

2.〇 正しい。大腿骨頭すべり症は、ドレーマン徴候が陽性となる。
大腿骨頭すべり症とは、大腿骨近位骨端軟骨の脆弱化、体重負荷により、大腿骨頭が頚部に対して、後下方に転位する疾患である。原因として、肥満と成長期のスポーツ活動による力学的負荷が大腿骨に加わるために生じる。成長ホルモンと性ホルモンの異常で発症することもある。9歳から15歳頃の股関節の成長軟骨板(成長線)が力学的に弱い時期に発症する。

3.× ペルテス(Perthes)病
Perthes病は、小児期における血行障害による大腿骨頭、頚部の阻血性壊死が起こる原因不明の疾患である。骨頭・頚部の変形が生じる。初期症状は、跛行と股関節周囲の疼痛や大腿部にみられる関連痛で、股関節の関節可動域制限も生じる。治療は大腿骨頭壊死の修復が主な目標であり、治療後は歩容の異常がなく、通常の日常生活を送れるようになることが多い。男女比は4:1である。好発年齢は、「6~7歳」である。発生率は1万人に1.5人と言われ、そのうち約10%が両側に発症するが、たいていは片方がなってから2年以内の違う時期に反対側が発症する。

4.× 発育性股関節形成不全
発育性股関節形成不全とは、生下時の女児(0~1歳)におこる股関節の脱臼などの状態である。現在では、先天性股関節脱臼のことを発育性股関節形成不全と呼ぶ傾向にある。変形性股関節症の原因となることが多い。片側に発症することが多く、リーメンビューゲル装具(アブミ式吊りバンド)で開排(屈曲・外転)肢位にして治療する。リーメンビューゲル装具で改善しない場合、牽引療法を、さらに治療が困難な場合は、観血的整復術や補正手術を検討する。

 

 

 

 

 

問題105 膝関節内血症(関節内血腫)がみられるのはどれか。

1.鷲足炎
2.ジャンパー膝
3.ランナー膝
4.前十字靱帯損傷

答え.4

解説
1.× 鷲足炎
鷲足炎とは、鵞足にある滑液包の炎症(滑液包炎)である。滑液包炎は通常、繰り返される摩擦とストレスによって発症する。特に膝の屈曲や内旋動作が鵞足への負担となる。ちなみに、鵞足は、縫工筋、薄筋、半腱様筋の停止部である。

2.× ジャンパー膝
ジャンパー膝とは、ジャンピングなどの繰り返し行動による過度のストレスが膝蓋腱に与えられることにより、膝蓋骨周囲の疼痛や腫脹を生じている状態を指す。バスケットボールやバレーボールなどのスポーツによる膝伸展機構の使いすぎによって起こる。

3.× ランナー膝
ランナー膝とは、腸脛靱帯炎ともいい、膝の屈伸運動を繰り返すことによって腸脛靱帯が大腿骨外顆と接触して炎症(滑膜炎)を起こし、疼痛が発生している状態を指す。特にマラソンなどの長距離ランナーに好発し、ほかにバスケットボール、水泳、自転車、エアロビクス、バレエ等にも多い。

4.〇 正しい。前十字靱帯損傷は、膝関節内血症(関節内血腫)がみられる。
膝関節血症とは、関節を構成する骨、靱帯、半月板などからの出血のことをさす。前十字靭帯損傷とは、スポーツによる膝外傷の中でも頻度が高く、バスケットボールやサッカー、スキーなどでのジャンプの着地や急な方向転換、急停止時に発生することが多い非接触損傷が特徴的な靭帯損傷である。この靱帯が損傷すると、膝関節内に血が溜まり、膝関節内血症(関節内血腫)、激しい痛み、腫れを伴う。

 

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