この記事には広告を含む場合があります。
記事内で紹介する商品を購入することで、当サイトに売り上げの一部が還元されることがあります。
問題111 12歳の男児。サッカーの試合中に相手と接触し肘外反強制で転倒した。腫脹と圧痛が肘の内側部にあり、肘屈伸運動も制限され軋轢音を認めた。
後遺症で生じにくいのはどれか。
1.外反肘
2.尺骨神経麻痺
3.肘関節伸展制限
4.前腕回旋運動制限
答え.1
解説
・12歳の男児。
・サッカーの試合中:肘外反強制で転倒。
・肘の内側部:腫脹と圧痛。
・肘屈伸運動:制限、軋轢音あり。
→本症例は、肘関節外反矯正により、尺側の軟部組織の損傷や上腕骨顆上骨折が疑われる。上腕骨顆上骨折とは、小児の骨折中最多であり、ほとんどが転倒の際に肘を伸展して手をついた場合に生じる。転移のあるものは、肘頭が後方に突出してみえる。合併症は、神経麻痺(正中・橈骨神経)、フォルクマン拘縮(阻血性拘縮)、内反肘変形などである。ちなみに、フォルクマン拘縮とは、前腕屈筋群の虚血性壊死と神経の圧迫性麻痺により拘縮を起こすものである。
1.× 外反肘は、後遺症で生じにくい。
むしろ、本症例の場合、内反肘が生じやすい。外反肘とは、上腕の軸に対して前腕の軸が、正常(10~15°程度外反)より外側を向いている状態(手部が外側に開く状態)である。原因として、先天性では先天性橈骨頭脱臼など、後天性では上腕骨外顆骨折後の偽関節や変形治癒で生じる。
2.〇 尺骨神経麻痺
本症例の肘の内側部に、腫脹と圧痛があるため、尺骨神経を損傷している可能性が高い。外反肘では、肘の内側にある尺骨神経が肘関節伸展位において伸ばされるため、数年から数十年経過して徐々に麻痺が出現する、遅発性尺骨神経麻痺となりやすい。
3.〇 肘関節伸展制限
本症例の肘屈伸運動は、制限、軋轢音があるため、後遺症として残る可能性が高い。
4.〇 前腕回旋運動制限
本症例の肘の内側部に腫脹と圧痛、肘屈伸運動に制限、軋轢音があるため、円回内筋の損傷が疑われる。
回外筋の【起始】上腕頭:上腕骨内側上顆と内側上腕筋間中隔、尺骨頭:尺骨鈎状突起内側、【停止】橈骨外側面の中央部、【作用】肘関節回内、屈曲、【支配神経】正中神経:C6,C7である。
問題112 21歳の男性。バスケットボールの試合中に相手選手と接触し転倒した。手関節部に疼痛を訴え最寄りの接骨院にて整復後、前腕回外位、手関節軽度尺屈・伸展位で固定を施された。
整復前の所見で考えられるのはどれか。
1.手関節部の鋤状変形
2.尺骨遠位のピアノキー症状
3.スナッフボックスの圧痛
4.母指の屈曲内転変形
答え.1
解説
・21歳の男性(転倒)。
・手関節部に疼痛
・整復後の固定肢位:前腕回外位、手関節軽度尺屈・伸展位。
→本症例は、整復後の固定肢位からスミス骨折が疑われる。スミス骨折は、橈骨遠位端骨折で、遠位骨片が掌側に転位しているのが特徴である。
1.〇 正しい。手関節部の鋤状変形は、整復前の所見で考えられる。
スミス骨折の特徴として、背側凸変形、鋤状変形があげられる。鋤(すき)とは、農作業や土木工事に使用された、地面を掘ったり、土砂などをかき寄せたり、土の中の雑草の根を切るのに使用される道具、農具である。
2.× 尺骨遠位のピアノキー症状
ピアノキー症状(ピアノキーサイン)とは、上方に持ち上がった鎖骨の端を上から押すとピアノの鍵盤のように上下に動くものをいう。TFCC損傷(三角線維軟骨複合体損傷)でみられる。三角線維軟骨複合体とは、遠位橈尺関節を安定化させている支持組織である。遠位橈尺関節は手関節に隣接して存在し、肘関節に隣接する近位橈尺関節と共に前腕の回内外運動を行う。遠位橈尺関節の安定性と衝撃吸収を担うため、三角線維軟骨複合体損傷は、疼痛や機能障害の原因となる。原因として、外傷である。 手関節部の強い衝撃や手関節への過剰な負荷の繰り返しにより起こるため、野球やテニスなどのスポーツが原因となることが多い。
3.× スナッフボックスの圧痛
スナッフボックスとは、嗅ぎタバコ入れのことである。手背の母指基部の専用のタバコ粉末を置いて匂いをかぐ楽しみの一つで使用されていた部位であることから、その名がつけられた。手背には長母指伸筋の腱、掌側には短母指伸筋の腱と長母指外転筋の腱が並んで走行している。解剖学的嗅ぎタバコ入れで、大菱形骨と舟状骨を触れることができるため、スナッフボックスの圧痛は、大菱形骨や舟状骨の損傷・骨折が疑われる。
4.× 母指の屈曲内転変形
母指の屈曲内転変形は、母指の伸展・外転運動が不十分な時に拘縮としてみられる。また、母指の屈曲内転位に固定した場合(脱臼や骨折などの外傷)などにも母指の屈曲内転変形が生じやすい。
・Smith骨折(スミス骨折):Colles骨折とは逆に骨片が掌側に転位する。
・Colles骨折(コーレス骨折):Smith骨折とは逆に骨片が背側に転位する。
・Barton骨折(バートン骨折):橈骨遠位部の関節内骨折である。遠位部骨片が手根管とともに背側もしくは掌側に転位しているものをいう。それぞれ背側Barton骨折・掌側Barton骨折という。
主な治療として、骨転位が軽度である場合はギプス固定をする保存療法、骨転位が重度である場合はプレート固定を行う手術療法である。
コーレス骨折(橈骨遠位端部伸展型骨折)は、橈骨遠位端骨折の1つである。 橈骨が手関節に近い部分で骨折し、遠位骨片が手背方向へ転位する特徴をもつ。合併症には、尺骨突き上げ症候群、手根管症候群(正中神経障害)、長母指伸筋腱断裂、複合性局所疼痛症候群 (CRPS)などがある。
問題113 20歳の男性。三段跳びの選手である。1か月前から下腿部に疼痛を感じるようになり来所した。初検時の単純エックス線写真では異常がなかったが、2週後の単純エックス線写真では骨膜反応がみられた。
骨膜反応がみられる可能性がある部位はどれか。2つ選べ。
1.脛骨の近位・中央1/3境界部
2.脛骨の中央1/3部
3.腓骨の遠位1/3部
4.腓骨の近位1/3部
答え.2・4
解説
・20歳の男性(三段跳びの選手)。
・1か月前:下腿部に疼痛を感じる。
・初検時の単純エックス線:異常なし。
・2週後:骨膜反応がみられた。
→本症例は、三段跳びの選手で、1か月前に下腿部の疼痛、現在は骨膜反応も見られているから、脛骨や腓骨の疲労骨折が疑われる。骨膜反応とは、悪性骨腫瘍による骨膜の刺激や、腫瘍の増殖に伴った骨膜の持ち上がりを呼ぶ。疲労骨折、骨髄炎、好酸球性肉芽腫などでも認められる。ちなみに、疲労骨折とは、1回の大きな外傷でおこる通常の骨折とは異なり、骨の同じ部位に繰り返し加わる小さな力によって、骨にひびがはいったり、ひびが進んで完全な骨折に至った状態をいう。好発部位は、腰椎が半数以上を占める。次に、中足骨35%、脛骨27%、肋骨12%、腓骨9%、尺骨・大腿骨・足関節の内側がそれぞれ3%である。
1.× 脛骨の近位・中央1/3境界部
疾走型に多い疲労骨折部位である。
2.〇 正しい。脛骨の中央1/3部は、骨膜反応がみられる可能性がある部位である。
跳躍型に多い疲労骨折部位である。
3.× 腓骨の遠位1/3部
疾走型に多い疲労骨折部位である。
4.〇 正しい。腓骨の近位1/3部は、骨膜反応がみられる可能性がある部位である。
跳躍型に多い疲労骨折部位である。
問題114 21歳の男性。大学では柔道部に所属し、毎日稽古を行っている。最近、試合が近いこともあり稽古量を増やしたところ、左足の外側に痛みを感じたため来所した。単純エックス線写真を下図に示す。
正しいのはどれか。
1.発生に短腓骨筋が関与する。
2.足関節の内反強制で発生する。
3.距骨の前方動揺性を認める。
4.観血療法の適応が多い。
答え.4
解説
・21歳の男性。
・左足の外側に痛みを感じた。
・単純エックス線写真:第5中足骨の連続性が途絶している。
→本症例は、第5中足骨疲労骨折(ジョーンズ骨折:Jones骨折)が疑われる。第5中足骨疲労骨折とは、サッカー、バスケットボール、ラグビーなど素早い動きを繰り返して行うスポーツの競技選手によく発生する。ランニングやジャンプ動作による過度の体重負荷が、長時間、足部アーチに繰り返し加わることで発生するオーバーユースに起因するスポーツ障害である。疲労骨折の発生が早期に見つかった場合は、骨折の原因になった活動や悪化させる運動を中止して松葉杖を使用する。ときにギプスによる固定が必要である。
1.× 発生に短腓骨筋が関与するのは、第5中足基部裂離骨折である。
第5中足基部裂離骨折とは、下駄骨折とも呼び、昔下駄を履いたときに足を捻り発生しやすかったため起こっていた。下駄での発症以外では転倒や段差の踏み外し等が原因で起こる。イッポウ、疲労骨折とは、1回の大きな外傷でおこる通常の骨折とは異なり、骨の同じ部位に繰り返し加わる小さな力によって、骨にひびがはいったり、ひびが進んで完全な骨折に至った状態をいう。ちなみに、短腓骨筋の【起始】腓骨外側面、前下腿筋間中隔、【停止】第5中足骨粗面、【作用】足関節底屈、外返し、【支配神経】浅腓骨神経:L4~S1である。
2.× 足関節の内反強制で発生するのは、足関節内反捻挫である。
足関節内反捻挫とは、足を内側に捻って捻挫したものをさす。スポーツ(着地をした瞬間や切り返し動作などで足をついた瞬間)、歩行時や走行時で足をついた瞬間などに起こしやすい。足関節内反捻挫の場合は、外側の前距腓靭帯や前脛腓靭帯が損傷しやすい。したがって、外返しの作用を持つ筋肉を鍛えることが予防につながる。ちなみに、内がえし(内反)とは、内転・回外・底屈が組み合わされている運動のことである。
3.× 距骨の前方動揺性を認めるのは、足関節外側靭帯断裂(※特に、前距腓靭帯)である。
足関節の前方引き出しテストとは、前距腓靭帯の安定性を見る。足関節は軽度底屈位で、踵を包むようにして前方へ引き出す。陽性の場合、患側の距骨は健側と比較して前方へ引き出される。また距骨が亜脱臼するため、足を戻す際、患者の痛みの訴えとともに「カクッ」という動きを触知できる。
4.〇 正しい。観血療法の適応が多い。
本症例は、第5中足骨疲労骨折(ジョーンズ骨折:Jones骨折)が疑われる。第5中足骨疲労骨折とは、サッカー、バスケットボール、ラグビーなど素早い動きを繰り返して行うスポーツの競技選手によく発生する。ランニングやジャンプ動作による過度の体重負荷が、長時間、足部アーチに繰り返し加わることで発生するオーバーユースに起因するスポーツ障害である。疲労骨折の発生が早期に見つかった場合は、骨折の原因になった活動や悪化させる運動を中止して松葉杖を使用する。ときにギプスによる固定が必要である。
外側靭帯は、前距腓靭帯、踵腓靭帯、後距腓靭帯を合わせていう。
【足関節靭帯損傷の受傷原因】
足関節の内反や外反が強い外力でかかる捻挫が最も多い。
内反捻挫は、足関節外側靭帯(前距腓靭帯、踵腓靭帯、後距腓靭帯)が損傷される。
外反捻挫は、足関節内側靭帯(三角靭帯)が損傷される。
【頻度】
外反捻挫より内反捻挫が多い。
足関節外側靭帯(前距腓靭帯、踵腓靭帯、後距腓靭帯)の中でも前距腓靭帯が多く損傷される。
なぜなら、足関節の可動域が、外反より内反の方が大きく、内反・底屈に過強制力がかかるため。
問題115 38歳の女性。3か月前からウォーキングを毎日2時間行っている。5日前から右足背に疼痛と腫脹があり来所した。
考えられるのはどれか。
1.ジョーンズ(Jones)骨折
2.第2ケーラー(Kohler)病
3.フランスヒール骨折
4.行軍骨折
答え.4
解説
・38歳の女性。
・3か月前:ウォーキングを毎日2時間行っている。
・5日前:右足背に疼痛と腫脹。
→本症例は、ウォーキングを毎日2時間行っており、右足背に疼痛と腫脹が認められることから、行軍骨折が疑われる。行軍骨折とは、特に長時間の歩行や走行により引き起こされる疲労骨折である。第2中足骨で起こりやすい。行軍骨折と呼ばれていた理由として、軍隊の行軍訓練で起こっていたためである。最近はスポーツの過度の練習によって起こることが大多数となってきている。
1.× ジョーンズ(Jones)骨折
ジョーンズ(Jones)骨折とは、第5中足骨疲労骨折は、サッカー、バスケットボール、ラグビーなど素早い動きを繰り返して行うスポーツの競技選手によく発生する。ランニングやジャンプ動作による過度の体重負荷が、長時間、足部アーチに繰り返し加わることで発生するオーバーユースに起因するスポーツ障害である。
2.× 第2ケーラー(Kohler)病
第2ケーラー病とは、足の第2中足骨頭(足の人差し指の付け根の関節部周辺)におこる骨端症である。中足骨頭に繰り返される圧迫力が働き、骨頭部で壊死を起こした状態である。
3.× フランスヒール骨折
フランスヒール骨折(France Heel骨折)とは、舟状骨骨折のひとつである。後脛骨筋の牽引による介達外力による裂離骨折である。足部アーチが潰された圧迫骨折であり、外傷性扁平足に注意が必要である。合わない靴による影響が大きいとされている。
4.〇 正しい。行軍骨折(※読み:こうぐんこっせつ)
行軍骨折とは、特に長時間の歩行や走行により引き起こされる疲労骨折である。第2中足骨で起こりやすい。行軍骨折と呼ばれていた理由として、軍隊の行軍訓練で起こっていたためである。最近はスポーツの過度の練習によって起こることが大多数となってきている。