第29回(R3年)柔道整復師国家試験 解説【午後16~20】

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問題16 頭部CT横断像を下図に示す。
 考えられる診断はどれか。

1.脳腫瘍
2.脳梗塞
3.くも膜下出血
4.急性硬膜下血腫

答え.3

解説

単純CT像の特徴

単純CT像は、急性期のくも膜下出血の診断に最も有用である。また、急性期の脳出血や石灰化、骨折などの骨の形態変化などに適している。脳出血急性期に出血部位が高吸収域(白く映る)になる。

1.× 脳腫瘍
脳腫瘍とは、脳にできるがんのことである。

2.× 脳梗塞
脳梗塞慢性期は、頭部単純CTで低吸収域として描出される。なぜなら、脳梗塞によって壊死した脳組織は、徐々に液体化し、最終的には脳脊髄液となるため。

3.〇 正しい。くも膜下出血が考えられる。
くも膜下出血とは、くも膜と呼ばれる脳表面の膜と脳の空間(くも膜下腔と呼ばれ、脳脊髄液が存在している)に存在する血管が切れて起こる出血である。約85%が、破裂脳動脈瘤が原因である。くも膜下出血ではくも膜下腔に血液が流入し、CTでは高吸収域として抽出される。また、約90%で鞍上部周囲のくも膜下腔にヒトデ型(ペンタゴンともいわれる)の高吸収域を認める。合併症には、①再出血、②脳血管攣縮、③正常圧水頭症などがある。①再出血:発症後24時間以内が多く、死亡率も高い。②脳血管攣縮:72時間後〜2週間後(ピークは8〜10日)が多く、脳血管攣縮による梗塞の好発部位は、「前交通動脈」である。③正常圧水頭症:数週〜数ヶ月後に認知症状、尿失禁、歩行障害などの症状が出現する。

4.× 急性硬膜下血腫
硬膜下血腫は、①急性と②慢性に大きく分類される。①急性硬膜下血腫とは、短時間のうちに硬膜と脳の間に血腫が形成された状態のことであり、頭部外傷としては重症に分類される。ほとんどが頭部外傷によるもので、児童虐待の死因として最も多い。一方、②慢性硬膜下血腫とは、軽度の外傷により軽微な出血が起こり、経時的に血腫が増大し、やがて症状が現れる。症状として、認知障害、頭痛、尿失禁、歩行障害、片麻痺などである。CT画像から、急性硬膜下血腫に特徴的な①三日月状の高吸収域、②左側脳室体部の圧排変形、③midlineの偏位がみられる。

急性期における梗塞巣の確認のしやすさ

①拡散強調像(DWT):超急性期(発症後1~3時間)
②FLAIR像:発症後3~6時頃
③T2強調像:発症後3~6時頃
④T1強調像の順である。

 

 

 

 

 

問題17 屋内での生活は介助を要するが、車いすの移乗は可能で、排泄はベッドから離れて行うことができる。
 この障害高齢者の日常生活自立度はどれか。

1.ランクA1
2.ランクA2
3.ランクB1
4.ランクB2

答え.3

解説

(※図引用:「障害高齢者の日常生活自立度判定基準」厚生労働省HPより)

1~2.× ランクA1/ランクA2
屋内での生活は概ね自立しているが、介助なしには外出しない。
1. 介助により外出し、日中はほとんどベッドから離れて生活する。
2. 外出の頻度が少なく、日中も寝たり起きたりの生活をしている。

3.〇 正しい。ランクB1が、この障害高齢者の日常生活自立度である。
なぜなら、本症例は屋内での生活は介助を要するが、車いすの移乗は可能で、排泄はベッドから離れて行うことができるため。

4.× ランクB2
屋内での生活は何らかの介助を要し、日中もベッド上での生活が主体であるが、座位を保つ。
1. 車いすに移乗し、食事、排泄はベッドから離れて行う。
2. 介助により車いすに移乗する。

 

 

 

 

 

問題18 劣位半球由来の症状はどれか。

1.着衣失行
2.観念失行
3.失算症
4.失語症

答え.1

解説
1.〇 正しい。着衣失行は、劣位半球由来の症状である。
着衣失行とは、衣類と身体の関係がつけられず、衣服が着られない。劣位半球の頭頂葉の障害で起こる。

2.× 観念失行
観念失行とは、複合的な運動の障害であり、日常使用する物品が正当に使用できない失行のことである。優位半球頭頂葉を中心とする広範囲な障害で生じる。例えば、タバコに火をつける、お茶を入れる、歯磨きをするなどの手順が困難になる。

3.× 失算症
優位半球の頭頂連合野(角回)が障害されると、Gerstmann症候群(ゲルストマン症候群)が起こる。症状として、①手指失認、②左右失認、③失算、④失書などである。

4.× 失語症
失語は、優位半球の前頭葉(ブローカ野)や側頭葉(ウェルニッケ野)の障害で起こる。失語とは、読む、書く、話す、聞くなどの言語機能が失われた状態である。ウェルニッケ野の障害により、感覚性失語が起こる。話し方は滑らかであるが、言い間違いが多かったり、言葉が支離滅裂になったりして、自分の言いたいことが思うように伝えられなくなってしまうという特徴がある。したがって、復唱・言語理解は不良、言葉の流暢性は良好である。

 

 

 

 

 

問題19 最も深部に到達する温熱はどれか。

1.ホットパック
2.極超短波
3.赤外線
4.超音波

答え.4

解説
1.× ホットパック
ホットパックとは、体の表面に施す表在性・温熱療法で、患部をパックで覆って加温する。

2.× 極超短波
マイクロ波療法(極超短波療法)は、深部組織を温めるために用いられる電磁波療法である。極超短波とは、深部温熱療法である。2450MHzの電磁波を利用し、エネルギーの半価層(エネルギーが半減する深度)は、3~4cm、筋の加温に有効である。

3.× 赤外線
赤外線とは、熱放射を利用した温熱療法である。

4.〇 正しい。超音波は、最も深部に到達する温熱である。
超音波療法とは、超音波を用いた機械的振動によるエネルギーを摩擦熱に変換することによって特定の部位を温める両方の1つである。1MHzは深部組織、3MHZは皮膚表面に近い組織に照射できる。

極超短波療法(マイクロ波)の禁忌

①温熱療法一般の禁忌(急性炎症部位、悪性腫瘍、出血傾向、知覚麻痺)
②金属部位への照射(衣服、装飾品、体内金属含む)
③心臓ペースメーカー使用者
④眼球、男性生殖器、妊婦の腹部
⑤小児の骨端線

 

 

 

 

 

問題20 バネによる足関節運動補助機能がある足継手はどれか。

1.遊動継手
2.後方制動継手
3.前方制動継手
4.クレンザック継手

答え.4

解説
1.× 遊動継手
遊動継手とは、遊動式の継手であり、可動性をもつ継手であることである。したがって、遊動継手は、継手のある支柱を用いる場合にのみ加算できる。なお、遊動継手には固定・遊動切替式の継手も含まれる。

2.× 後方制動継手
後方制動とは、ダブルクレンザック継手の調節用の後方にあるロッドで後方部分を制御し、背屈の制限はないが、底屈を制限することできる。

3.× 前方制動継手
前方制動とは、ダブルクレンザック継手の調節用の前方にあるロッドで前方部分を制御し、底屈の制限はないが、背屈を制限することできる。

4.〇 正しい。クレンザック継手は、バネによる足関節運動補助機能がある足継手である。
クレンザックとは、バネの反発力によって背屈を補助する。バネをロッド(棒)に変えることにより底屈を制限することもできる。

継手の種類

①固定とは、どの方向にも動かない。
②遊動とは、どの方向にも抵抗なしで動く。
③制限とは、ある角度から動かない。
④制動とは、ある方向にブレーキを受けながら動く。
⑤補助とは、一度たるんだものが元に戻るときに、動きと同方向の力を発生する。

 

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