第29回(R3年)柔道整復師国家試験 解説【午後11~15】

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問題11 熱中症で正しいのはどれか。

1.幅射熱は影響しない。
2.意識障害は起こさない。
3.湿度が高い時に起こりやすい。
4.高齢者に起こることはまれである。

答え.3

解説

熱中症とは?

熱中症とは、高温多湿な環境に長時間いることで、体温調節機能がうまく働かなくなり、体内に熱がこもった状態を指す。屋外だけでなく室内で何もしていないときでも発症し、救急搬送されたり、場合によっては死亡することもある。主な初期症状として、めまい(目眩、眩暈)や立ちくらみ、一時的な失神などがあげられる。

1.× 幅射熱は影響する
輻射とは、物質を介さず温度の高い方から低い方へ熱が伝わる現象のことである。熱中症の発生には、気温・湿度・風速・日射・幅射が関係する。

2.× 意識障害を起こす
主な初期症状として、めまい(目眩、眩暈)や立ちくらみ、一時的な失神などがあげられる。

3.〇 正しい。湿度が高い時に起こりやすい
なぜなら、湿度が高いときは汗の蒸散しにくく熱がこもりやすいため。

4.× 高齢者に起こることはまれとはいえない
熱中症は、近年1,000人を超える年が続いており、熱中症死亡総数に占める65歳以上の高齢者の割合は、1980年33%、2000年50%、2020年87%と急増している。

熱伝導形態

熱には3つの熱伝導形態があり、①熱伝導、②対流熱、③熱放射である。
①熱伝導は、物質を介して熱が伝わることをいう。(簡単にいうと、直接触れることによる熱の移動)
②対流熱は、液体や気体の流れに乗って熱が移動することをいう。
③熱放射は、温度差がある物体の間で、熱が移動することをいう。
④エネルギー変換熱は、電磁波や超音波など体内で吸収されて熱エネルギーに変換することをいう。

 

 

 

 

 

問題12 水質汚濁の指標に含まれないのはどれか。

1.硬度
2.浮遊物質
3.溶存酸素
4.水素イオン濃度

答え.1

解説

水質汚濁の指標

①水素イオン濃度、②生物化学的酸素要求量、③化学的酸素要求量、④浮遊物質量、⑤溶存酸素量、⑥大腸菌群数、⑦総窒素、⑧総リン、⑨n-へキサン抽出物質などがあげられる。

1.× 硬度は、水質汚濁の指標に含まれない。
硬度とは、水に含まれるマグネシウムとカルシウムの合計含有量の指標である。これらが多く含まれているものを「硬水」、少ないものを「軟水」と呼んで区別する。

2.〇 正しい。浮遊物質
浮遊物質とは、水中に懸濁している直径2mm以下の不溶解性の粒子状物質のことで、枯士鉱物に由来する微粒子や動植物プランクトン及びその死ガイ、下水・工場排水などに由来する有機物や金属の沈殿などが含まれる。浮遊物質は、一般的に清浄な河川水では粘士成分を主体に若干の有機物を含むものにより構成されることが多いが、汚染の進んだ河川水は、有機物の比率が高まる。

3.〇 正しい。溶存酸素
溶存酸素とは、水中にとけ込んでいる酸素の量で、河川や海域での自浄作用や魚類等の水棲生物には不可欠なものである。水中における酸素の飽和量は気圧、水温、塩分等に影響されるが、水が清澄であればあるほどその温度における飽和量に近い量が含まれる。逆に汚水や塩化物イオンを含む水や水温の高い水ほど溶存酸素の値は小さい。

4.〇 正しい。水素イオン濃度
水の水素イオン濃度(pH)は、水溶液中の水素イオン濃度[H+]の逆数の対数をとったものをいう。水の水素イオン濃度は、水中で生ずるあらゆる化学及び生化学的変化の制約因子となっており、また、分析におけるいろいろな化学反応の重要な制約因子でもある。通常河川では、6.0~8.5の間である。

公害病とは?

公害病(こうがいびょう)とは、人間の産業活動により排出される有害物質により引き起こされる健康被害である。人体に有害な物質が、水(地下水や河川水)、空気中の浮遊物、ガス、食物などを通じ摂取されることによって、引き起こされる。狭義には、環境基本法に定義される公害が原因となる。大気汚染が原因のぜんそく、水質汚濁が原因の有機水銀中毒やカドミウム中毒、大気や川のヒ素汚染による慢性ヒ素中毒などがあげられる。近年は広義で、シックハウスが原因の揮発性有機化合物等の吸引によるアトピーやアレルギーや、原子力発電所からの放射能汚染による人的被害も、公害病と呼ばれることがある。日本の高度経済成長期(1950年代後半から1970年代)に、公害により住民へ大きな被害が発生した。このうち被害の大きいものを「四大公害病」という。これを受け公害対策として、1967年に『公害対策基本法』、1973年に『公害健康被害補償法』などが制定された。したがって、選択肢2.1960年から1970年代が、公衆衛生上の問題として認識され始めた時期である。

 

 

 

 

 

問題13 脳卒中患者にみられる障害のうちWHO国際障害分類の能力低下にあたるのはどれか。

1.片麻痺
2.失語症
3.書字障害
4.趣味の喪失

答え.3

解説

ICFとは?

ICF(International Classification of Functioning, Disability and Health)は、人間の生活機能と障害分類法として2001年5月、世界保健機関(WHO)において採択された。これまでの ICIDH(国際障害分類、1980)が「疾病の帰結(結果)に関する分類」であったのに対し、ICF は「健康の構成要素に関する分類」であり、新しい健康観を提起するものとなった。生活機能上の問題は誰にでも起りうるものなので、ICF は特定の人々のためのものではなく、「全ての人に関する分類」である。

第1レベル:心身機能、身体構造、活動と参加、環境因子という4つのカテゴリーに分かれている。
第2レベル:その中でさらに細かく分類されたものである。

1~2.× 片麻痺/失語症は、「機能障害」にあたる。
機能障害とは、例えば聴覚機能に障害がある場合をいう。

3.〇 正しい。書字障害は、「能力低下」にあたる。
能力低下とは、聴覚の障害によって、音声にアクセスできない状態をいう。書字障害は特定の活動(この場合は書くこと)に対する能力の低下を示している。

4.× 趣味の喪失は、「社会的不利」にあたる。
社会的不利とは、アクセスの阻害によって、社会参加や生活水準が保証されない状態をいう。

 

 

 

 

 

問題14 長期臥床に伴う拘縮の好発部位と肢位の組合せで正しいのはどれか。

1.肩関節:外旋
2.手関節:背屈
3.股関節:外旋
4.足関節:背屈

答え.3

解説
1.× 肩関節は、「外旋」ではなく内旋拘縮となる。
なぜなら、人はベッドで寝ているとき、手をおなかの上で組む姿勢(肩関節内旋位)が多いため。

2.× 手関節は、「背屈」ではなく掌屈拘縮となる。
なぜなら、人はベッドで寝ているとき、自然と手関節掌屈位、手指屈曲位(上肢は屈曲優位パターン)になりやすいため。

3.〇 正しい。股関節:外旋
なぜなら、人はベッドで寝ているとき、布団の重量により、股関節外旋位となりやすいため。

4.× 足関節は、「背屈」ではなく底屈拘縮となる。
なぜなら、人はベッドで寝ているとき、布団の重量により、足関節底屈位となりやすいため。

廃用症候群とは?

 廃用症候群とは、病気やケガなどの治療のため、長期間にわたって安静状態を継続することにより、身体能力の大幅な低下や精神状態に悪影響をもたらす症状のこと。関節拘縮や筋萎縮、褥瘡などの局所性症状だけでなく、起立性低血圧や心肺機能の低下、精神症状などの症状も含まれる。一度生じると、回復には多くの時間を要し、寝たきりの最大のリスクとなるため予防が重要である。廃用症候群の進行は速く、特に高齢者はその現象が顕著である。1週間寝たままの状態を続けると、10~15%程度の筋力低下が見られることもある。

 

 

 

 

 

問題15 筋持久力の向上に適した方法はどれか。

1.高強度長時間運動
2.高強度短時間運動
3.低強度長時間運動
4.低強度短時間運動

答え.3

解説
1~2.× 高強度長時間運動/高強度短時間運動
高強度の運動は、主に筋力の瞬発性を向上させる効果がある。高強度の運動では、エネルギー供給が追いつかず、肉体的なストレスが大きくなりすぎて疲労を招きやすい。

3.〇 正しい。低強度長時間運動は、筋持久力の向上に適した方法である。
全身持久力トレーニング(有酸素運動)は、呼吸筋や肺コンプライアンスを向上させ、運動耐容能を向上につながる。

4.× 低強度短時間運動
低負荷・高頻度の筋持久力訓練を行うほうが望ましい。

全身持久力トレーニングの効果

1) 骨格筋に対する効果
ミトコンドリア量増加
ミオグロビン含有量増加
ATP含有量増加
グリコーゲン含有量増加
毛細血管密度増大
筋血流量増加

2) 心臓に対する効果
毛細血管密度増大
心臓容積増大
全血液量増加
循環血液量増加
一回拍出量増加
安静時末梢血管抵抗低下
心筋活動量の増加

3) 肺に対する効果
呼吸筋筋力増強による一回換気量の増加
肺血流量の増加による肺拡散容量増加
肺容量の増加
肺胞と肺毛細血管との接触面積増加

4) その他
体脂肪の減少
血中コレステロール量の減少

 

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