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問題81 上腕骨外科頸骨折で誤っているのはどれか。
1.高齢者に好発する。
2.肩部の腫脹は軽度である。
3.腋窩神経損傷の合併がある。
4.介達外力によるものが多い。
答え.2
解説
1.〇 正しい。高齢者に好発する。
上腕骨外科頸骨折とは、上腕骨の骨折の中で、特に高齢者に多く発生する骨折の一つであり、骨頭から結節部にかけての太い部分から骨幹部に移行する部位で発生する。受傷機序として、転倒によって手をついて受傷することが多い。特に女性で、骨粗鬆症のある人に多発する傾向である。
2.× 肩部の腫脹は、「軽度」ではなく重度である。
なぜなら、肩関節周りの軟部組織も同時に損傷され炎症症状がみられるため。上腕骨外科頸骨折では、骨折の影響で周囲の組織が損傷を受け、結果として肩部の腫脹が起こる。肩の骨折による血腫は、腫れが肩関節を変形させているようにみえるほどである。
3.〇 正しい。腋窩神経損傷の合併がある。
なぜなら、上腕骨外科頸の近くに腋窩神経が走行するため。腋窩神経の走行は、首から肩甲骨の裏を通り、上腕骨を巻き付くよう後上腕回旋動脈とともに走る。腋下神経麻痺は、①三角筋や小円筋の機能低下、②上腕の外側の知覚機能の低下などがみられる。
4.〇 正しい。介達外力によるものが多い。
上腕骨外科頸骨折は、受傷機序として、転倒によって手をついて受傷することが多い。つまり、介達外力によるものが多い。特に女性で、骨粗鬆症のある人に多発する傾向である。ちなみに、介達外力とは、打撃や圧迫などの外力が加わった部位から離れた部位に体内組織を通じて外力が伝わることである。
骨粗鬆症は閉経後の女性に多く、骨の変形や痛み、易骨折性の原因となる。高齢者に多い骨折は①大腿骨頸部骨折、②脊椎圧迫骨折、③橈骨遠位端骨折、④上腕骨頸部骨折などがあり、これらは「高齢者の4大骨折」と呼ばれている。
問題82 合併症による神経障害で図の運動が不能となるのはどれか。
1.上腕骨内側上顆骨折
2.モンテギア(Monteggia)骨折
3.烏口下脱臼
4.月状骨脱臼
答え.2
解説
図は、母指の橈側外転運動である。母指の橈側外転に寄与する筋肉は、①長母指外転筋、②短母指外転筋である。
長母指外転筋の【起始】尺骨と橈骨の中部背側面、前腕骨間膜背面、【停止】第1中手骨底背面外側付近、【作用】母指外転、【支配神経】橈骨神経深枝:C6~C8である。
短母指外転筋の【起始】舟状骨結節、屈筋支帯の橈側端前面、【停止】種子骨、母指基節骨底、一部は指背腱膜、【作用】母指外転、屈曲、【支配神経】正中神経:C8,T1である。
1.× 上腕骨内側上顆骨折
上腕骨内側上顆骨折の合併症として、肘関節後方脱臼、橈骨頭骨折、上腕骨小頭骨折、尺頭骨折(成人)である。後遺症として、①機能障害:肘関節伸展障害、前腕回内運動制限、②変形:内反肘、③神経障害:遅発性尺骨神経麻痺である。
2.〇 正しい。モンテギア(Monteggia)骨折
Monteggia骨折とは、尺骨骨幹部骨折に橈骨頭前方脱臼が起きたものである。手をついて転倒・転落した際、前腕回内力が作用することで起こりやすい。橈骨神経麻痺を伴う。橈骨神経麻痺では、下垂手がみられる。手関節・手指の伸筋群と、長母指外転筋・短母指伸筋の麻痺により、手関節背屈、示指から小指のMP関節伸展、母指伸展・外転が困難となる。
3.× 烏口下脱臼
烏口下脱臼とは、肩関節前方脱臼(約90%)のひとつである。上腕骨頭が肩甲骨関節窩から前方に脱臼した症状で、①烏口下脱臼と②鎖骨下脱臼に分類される。関節全体を覆う袋状の関節包と靭帯の一部が破れ、突き出た上腕骨頭が烏口突起の下へすべることで起こる脱臼である。介達外力が多く、後方から力が加わる、転倒するなどで手を衝くことで過度の伸展力が発生した場合(外旋+外転+伸展)などに起こる。症状として、①弾発性固定、②関節軸の変化(骨頭は前内方偏位、上腕軸は外旋)、③脱臼関節自体の変形(三角筋部の膨隆消失、肩峰が角状に突出、三角筋胸筋三角:モーレンハイム窩の消失)、④上腕仮性延長、⑤肩峰下は空虚となり、烏口突起下に骨頭が触知できる。
4.× 月状骨脱臼
月状骨脱臼とは、手関節の強制背屈により生じた月状骨の掌側脱臼である。手首と手が痛み、形状にゆがみが生じることがある。迅速に治療されない場合、合併症として正中神経麻痺や月状骨の虚血性壊死が起こる。
手根管症候群は、正中神経の圧迫によって手指のしびれや感覚低下などの神経障害が生じる。手根管(手関節付近の正中神経)を4~6回殴打すると、支配領域である母指から環指橈側および手背の一部にチクチク感や蟻走感が生じる(Tinel徴候陽性)。Tinel徴候のほか、ダルカン徴候(手根管部を指で圧迫するとしびれ感が増悪する)やファーレン徴候(Phalen徴候:手首を曲げて症状の再現性をみる)も陽性となる場合が多い。
問題83 橈骨手根関節脱臼を伴うのはどれか。
1.ショーファー骨折
2.ローランド(Roland)骨折
3.バートン(Barton)骨折
4.ガレアッチ(Galeazzi)骨折
答え.3
解説
・Smith骨折(スミス骨折):Colles骨折とは逆に骨片が掌側に転位する。
・Colles骨折(コーレス骨折):Smith骨折とは逆に骨片が背側に転位する。
・Barton骨折(バートン骨折):橈骨遠位部の関節内骨折である。遠位部骨片が手根管とともに背側もしくは掌側に転位しているものをいう。それぞれ背側Barton骨折・掌側Barton骨折という。
主な治療として、骨転位が軽度である場合はギプス固定をする保存療法、骨転位が重度である場合はプレート固定を行う手術療法である。
1.× ショーファー骨折
chauffeur’s骨折(ショーファー骨折)とは、橈骨茎状突起骨折のことである。手を伸ばして転倒した時に生じやすい。舟状月状骨間靭帯損傷の合併が多い。
2.× ローランド(Roland)骨折
ローランド骨折とは、中手骨基部のY字型またはT字型の関節内で生じる複合骨折のことである。2ヵ所の骨折によって中手骨が3つに分かれるという複雑なものである。基本的な3片の骨折の際は「観血的整復固定術(ORIF)」による整復が施されることが多い。
3.〇 正しい。バートン(Barton)骨折は、橈骨手根関節脱臼を伴う。
バートン骨折とは、橈骨遠位部の関節内骨折である。遠位部骨片が手根管とともに背側もしくは掌側に転位しているものをいう。それぞれ背側Barton骨折・掌側Barton骨折という。
4.× ガレアッチ(Galeazzi)骨折
Galeazzi骨折(ガレアッジ骨折)は、橈骨骨幹部の骨折と遠位橈尺関節の脱臼を伴う損傷である。前腕を強く回内して受傷した際に多く見られる。
問題84 三角骨骨折で正しいのはどれか。
1.骨壊死を起こしやすい。
2.手根骨骨折の中ではまれである。
3.背側部骨折は単独骨折が多い。
4.体部骨折は手関節屈曲強制によって発生する。
答え.3
解説
1.× 骨壊死を起こしやすいのは、舟状骨である。
骨壊死には①症候性(外傷や塞栓症などによる血流途絶が原因)と②特発性(明らかな誘因がない阻血性壊死)がある。血行不良のため骨折後の再生が困難となる。症候性骨壊死が生じやすい部位:①上腕骨解剖頸、②舟状骨、③大腿骨頸部、④大腿骨顆部、⑤距骨である。
2.△ 手根骨骨折の中では「まれ」ではなく多い。(※詳しく割合などご存じの方がいたらコメント欄にて教えてください。)
ただし、最も損傷を受けやすい手根骨は、舟状骨である。舟状骨骨折は通常、手関節の過伸展により起こり、典型的には伸ばした手から落ちる転倒時に生じる。舟状骨近位への血液供給を妨害する可能性がある。したがって、初期治療が適切な場合でも骨壊死が一般的な合併症であり、生活に支障を来す変形性手関節症の原因になりうる。
3.〇 正しい。背側部骨折は単独骨折が多い。
三角骨の背側部骨折は、しばしば単独で発生する。なぜなら、手関節伸展位(背屈位)のまま直接的な外力が加わることが多いため。
4.× 体部骨折は、手関節「屈曲(掌屈)」ではなく伸展(背屈)強制によって発生する。
(※画像引用:All About様)
問題85 第5中手骨基部骨折の短縮転位に関与するのはどれか。
1.尺側手根伸筋
2.尺側手根屈筋
3.小指対立筋
4.小指外転筋
答え.1
解説
(※画像引用:All About様)
1.〇 正しい。尺側手根伸筋は、第5中手骨基部骨折の短縮転位に関与する。
尺側手根伸筋の【起始】上腕頭:上腕骨の外側上顆、尺骨頭:尺骨後縁上部、【停止】第5中節骨底の尺側、【作用】手関節の背屈、尺屈、【支配神経】橈骨神経深枝:C6~C8である。第5中手骨基部骨折があると、尺側手根伸筋の力が骨折部位に働き、骨折の短縮や転位(骨の位置がずれること)を引き起こす。
2.× 尺側手根屈筋
尺側手根屈筋の【起始】上腕頭:内側上顆と前腕筋膜、尺骨頭:肘頭から尺骨中部までの後縁、【停止】豆状骨、豆鉤靭帯、豆中手靭帯、有鉤骨、第5中手骨底、【作用】手関節の掌屈、尺屈、【支配神経】尺骨神経:C7~T1である。
3.× 小指対立筋
小指対立筋の【起始】有鉤骨、屈筋支帯、【停止】第5中手骨の尺側縁、【作用】小指対立、【支配神経】尺骨神経:(C7),C8,T1である。
4.× 小指外転筋
小指外転筋の【起始】豆状骨、屈筋支帯、【停止】小指の基節骨底の尺側、一部は指背腱膜、【作用】小指外転、【支配神経】尺骨神経:C8,T1である。