第29回(R3年)柔道整復師国家試験 解説【午後76~80】

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問題76 筋挫傷の超音波療法で誤っているのはどれか。

1.温熱効果と非熱効果がある。
2.感覚障害への使用は禁忌である。
3.治療導子は固定して使用する。
4.治療部位の深さに応じて刺激周波数を設定する。

答え.3

解説
1.〇 正しい。温熱効果と非熱効果がある。
非温熱作用:0.5~1.0W/cm2、温熱効果強度は1.0~2.5W/cm2である。

2.〇 正しい。感覚障害への使用は禁忌である。
なぜなら、感覚障害がある場所に超音波を適用すると、不快感や痛みを患者が感じられないため。また、他の超音波の禁忌として、①眼への照射(眼に超音波を照射すると組織の空洞化を起こす)、②成長時の骨端、③心臓、生殖器官、内分泌器官、④良性または悪性腫瘍、麻痺部、⑤ペースメーカーの入っている部位(ペースメーカーを損傷する可能性)、⑥脊髄疾患(多発性硬化症、脊髄灰白質炎、脊髄空洞症)である。

3.× 治療導子は「固定」ではなく移動して使用する。
治療導子の移動速度は、ビーム不均等率が5以下は1cm/s、6以上であれば4cm/sとする。ちなみに、ビーム不均等率(BNR)とは、超音波の平均強度(W/cm2)に対する最大強度の比である。ビーム不均等率は、1~5がよいとされ、6以上では最大ビーム付近に熱点が生じ、組織損傷する可能性がある。これを空洞化現象という。

4.〇 正しい。治療部位の深さに応じて刺激周波数を設定する。
周波数が低いほど深部組織が加熱される。1MHzの超音波では主に深部組織を、3MHzでは浅部組織を加熱する。

 

 

 

 

 

問題77 骨折合併例の脱臼で変形性関節症が起こりにくいのはどれか。

1.肩関節
2.肘関節
3.指関節
4.股関節

答え.1

解説

変形性関節症とは?

変形性関節症とは、軟骨下骨、関節裂隙、関節周囲構造の変化を伴う関節軟骨の異常に関連した疾患である。 手関節症、膝関節症、股関節症など、部位によって臨床症状が異なるが、一般的な症状として、圧痛、筋力低下、骨棘と呼ばれる突起があり、骨に当たってすれることなどがあげられる。

1.〇 正しい。肩関節は、骨折合併例の脱臼で変形性関節症が起こりにくい。
変形性肩関節症とは、激しいスポーツや使いすぎなどが原因で肩関節の軟骨がすり減ってしまい、炎症を生じるようになったものである。関節リウマチや上腕骨頭壊死などに続いて発症する。肩関節では日常的に負担がかかるわけではないため変形の頻度としては多くない。

2.× 肘関節
変形性肘関節症とは、関節軟骨が摩耗して骨が関節面に露出し、主に内側では過剰な骨の突起(骨棘)ができ、骨棘による関節の動きの制限などの症状がみられる。原因として、肘関節の酷使(スポーツ、重労働)、肘関節内骨折などの肘関節外傷、関節炎などがあげられる。

3.× 指関節
手指の変形性関節症は、大きく2種類あり、①DIP関節の変形(ヘバーデン結節)と、②PIP関節の変形(ブシャール結節)がある。これらの関節と親指の付け根がこわばり、ときに痛みを伴うことがある。一般的に手首・MP関節、手掌の関節は侵されない。治療としては、①関節可動域を改善する訓練を温水中で行う(運動中の痛みを軽減しできるだけ関節を柔軟にしておくため)、②安静にする、③間欠的に副子で固定して変形を予防する、④鎮痛薬や非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)を用いて痛みや腫れを軽減するなどがあげられる。

4.× 股関節
二次性変形性股関節症とは、何らかの病気(ペルテス病や先天性股関節脱臼)やケガが原因でおこっている。日本では、この二次性が大半を占め、先天性股関節脱臼と臼蓋形成不全によるものが約90%、圧倒的に女性に多い。壊死部は修復過程を経て正常の骨組織に戻るが、形態異常を伴って修復完了した場合、将来的に変形性股関節症を生じる可能性がある。

 

 

 

 

 

問題78 頸椎棘突起骨折で正しいのはどれか。

1.転位は高度となる。
2.第7頸椎に好発する。
3.偽関節が生じやすい。
4.頸部の屈曲強制で発生する。

答え.2

解説

頚椎棘突起骨折とは?

棘突起とは、椎体の背中側に突き出した突起のことである。棘突起骨折は首の根元近く(第7頸椎)で起きやすい。 横突起の単独骨折は、ほとんど首の根元辺りで起こる。棘突起を骨折した場合はだるさや痛みを感じ、軋轢音を聞く。頸椎の場合はカラー、腰椎ならコルセットをして、長くても4週間から5週間で完治する。

1.× 転位は、「高度」ではなく軽度である。
なぜなら、頸椎棘突起骨折は一般に非常に安定しているため。したがって、偽関節も発生しにくい。

2.〇 正しい。第7頸椎に好発する
なぜなら、棘突起は最も第7頸椎が突出しているため。ちなみに、棘突起とは、椎体の背中側に突き出した突起のことである。棘突起骨折は首の根元近く(第7頸椎)で起きやすい。 横突起の単独骨折は、ほとんど首の根元辺りで起こる。棘突起を骨折した場合はだるさや痛みを感じ、軋轢音を聞く。頸椎の場合はカラー、腰椎ならコルセットをして、長くても4週間から5週間で完治する。

3.× 偽関節が生じやすいとはいえない
偽関節とは、骨折部位の癒合がうまくいかず、骨折部が可動性を持つ状態のことである。偽関節が生じやすい部位は、①上腕骨解剖頸、②手の舟状骨、③大腿骨頸部、④脛骨中下1/3、⑤距骨である。ちなみに、開放骨折・粉砕骨折・整復後も離開が生じている骨折では、部位によらず骨癒合は遷延しやすい。

4.× 頸部の「屈曲」ではなく伸展強制で発生する。
頸椎棘突起骨折の原因として、頸部の過度の伸展や直接的な外傷などである。

 

 

 

 

 

問題79 胸骨骨折で合併しないのはどれか。

1.心挫傷
2.肩甲骨骨折
3.胸管損傷
4.肋骨骨折

答え.2

解説

胸骨骨折とは?

胸骨骨折とは、野球の球が飛んできて前胸部にあたる、あるいは車の運転中に事故にあい、ハンドルに前胸部を強く打ちつけるなど、強い圧力が前胸部の中央部にかかって起こる骨折のことをいう。 骨折の中では、比較的まれなものだが、胸骨の裏には心臓があるため、心臓の損傷や心破裂が起こる場合もある。

1.〇 正しい。心挫傷
胸骨骨折において、胸骨の裏には心臓があるため、心臓の損傷や心破裂が起こる場合もある。ちなみに、心挫傷とは、胸の前側(前胸部)に強い衝撃が加わり、心臓の筋肉(心筋)が損傷することである。

2.× 肩甲骨骨折は、胸骨骨折で合併しない。
なぜなら、肩甲骨は背面に位置するため。胸骨骨折(心臓の前の骨)と同時に肩甲骨骨折が起こることは、まず考えられない。肩甲骨骨折の原因として、肩に外部から力が加わったとき(バイクの転倒時に肩から地面に落下して強く打ちつけられた場合など)に生じる。

3.〇 正しい。胸管損傷
なぜなら、胸管は、胸骨の後ろに位置しているため。胸管とは、最大のリンパ管である。下半身と左上半身のリンパを集める全長35~40cmのリンパ管である。胸管は鎖骨下静脈に接続し、リンパ液を血液中に戻す。 またリンパ液は、組織中の異物(細菌など)、がん細胞、死んだ細胞や損傷した細胞などを廃棄するためにリンパ管やリンパ器官に運ぶ役割も担っている。

4.〇 正しい。肋骨骨折
なぜなら、胸骨と肋骨は、肋軟骨で接しており、胸肋関節を構成しているため。つまり、肋骨に対して、胸部への衝撃が伝わる。

 

 

 

 

 

問題80 肩甲骨骨折と骨片転位に関与する筋の組合せで誤っているのはどれか。

1.肩峰骨折:三角筋
2.烏口突起骨折:小胸筋
3.肩甲骨上角骨折:小円筋
4.肩甲骨下角骨折:大円筋

答え.3

解説
1.〇 正しい。肩峰骨折:三角筋
三角筋の【起始】肩甲棘、肩峰、鎖骨の外側部1/3、【停止】上腕骨三角筋粗面、【作用】肩関節外転、前部は屈曲、後部は伸展、【支配神経】腋窩神経:(C4),C5,C6である。

2.〇 正しい。烏口突起骨折:小胸筋
小胸筋の【起始】第2(3)~5肋骨表面、【停止】肩甲骨の烏口突起、【作用】肩甲骨を前下に引く。このとき下角が後内側に回旋する。肩甲骨を固定すると肋骨を引き上げる。【支配神経】内側および外側胸筋神経:C7,C8,(T1)である。

3.× 肩甲骨上角骨折は、「小円筋」ではなく上部僧帽筋と肩甲挙筋が関与する。
小円筋の【起始】肩甲骨後面の外側部上半、【停止】上腕骨大結節の下部、大結節稜の上端、【作用】肩関節外旋、【支配神経】腋窩神経:C5,C6である。
肩甲挙筋の【起始】第1~(3)4頸椎の横突起後結節、【停止】肩甲骨の上角と内側縁の上部、【作用】肩甲骨を内上方に引く、【支配神経】頸神経叢の枝と肩甲背神経:C2~C5である。

4.〇 正しい。肩甲骨下角骨折:大円筋
大円筋の【起始】肩甲骨の下角部、棘下筋膜下部外面、【停止】上腕骨の小結節稜、【作用】肩関節内転、内旋、伸展、【支配神経】肩甲下神経:C5,C6,(C7)である。

 

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