第29回(R3年)柔道整復師国家試験 解説【午後71~75】

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問題71 自然整復されやすいのはどれか。

1.肘関節後方脱臼
2.膝蓋骨外側脱臼
3.橈骨頭単独脱臼
4.足関節外側脱臼

答え.2

解説

肘関節後方脱臼とは?

好発:青壮年
原因:①肘関節過伸展の強制:肘関節伸展位で手をつく(転倒などの強い衝撃)
【症状】関節包前方断裂、疼痛、肘関節屈曲30度で弾発性固定、自動運動不可、肘頭の後方突出、上腕三頭筋腱が緊張(索状に触れる)、ヒューター三角の乱れ(肘頭高位)、前腕の短縮
【固定肢位】肘関節90°屈曲、前腕中間位(回内位も)
【固定範囲】上腕近位部からMP関節手前まで
【固定期間】靭帯損傷なし:3週間、不安定性がある場合4週間

1.× 肘関節後方脱臼
肘関節後方脱臼の主な症状は、肘関節の痛みや腫れ、関節の変形、肘関節の曲げ伸ばしができなくなる。周囲の靭帯の損傷などが重い場合、立っていられなくなるような激しい痛みを感じることもある。

2.〇 正しい。膝蓋骨外側脱臼は、自然整復されやすい。
膝蓋骨脱臼とは、膝蓋骨がはずれる疾患である。ほとんどは外側に外れる。ジャンプの着地などの時に太ももの筋肉が強く収縮してはずれることが多く、はずれた時には膝に強い痛みや腫れを生じる。脱臼は自然に整復されることもある。

3.× 橈骨頭単独脱臼
橈骨頭単独脱臼とは、肘関節脱臼のひとつである。多くは、尺骨近位の骨折を伴う(モンテギア骨折)。また、後骨間神経(橈骨神経)の損傷があることが多い。固定方法として、肘関節鋭角屈曲位、前腕回外位で行う。整復法として、上腕固定、前腕を牽引し肘関節部に内転するように力を加えながら橈骨頭を直圧する。

4.× 足関節外側脱臼
足関節外側脱臼は、血管系の損傷があるか、整形外科医の診察を受けるには搬送が必要である場合を除いて、整形外科医の関与なしに整復すべきではない。なぜなら、足関節外側には、腓腹神経が走行しているため。また、外側脱臼には一般に果部骨折または腓骨遠位端骨折が伴うことが多い。

肘関節後方脱臼とは?

好発:青壮年
原因:①肘関節過伸展の強制:肘関節伸展位で手をつく(転倒などの強い衝撃)
【症状】関節包前方断裂、疼痛、肘関節屈曲30度で弾発性固定、自動運動不可、肘頭の後方突出、上腕三頭筋腱が緊張(索状に触れる)、ヒューター三角の乱れ(肘頭高位)、前腕の短縮
【固定肢位】肘関節90°屈曲、前腕中間位(回内位も)
【固定範囲】上腕近位部からMP関節手前まで
【固定期間】靭帯損傷なし:3週間、不安定性がある場合4週間
【整復法】
・患者:側臥位
・助手:手関節部を把持し、脱臼肢位の角度のまま前腕長軸末梢方向に徐々に牽引する。
・術者:4指を用い牽引しつつ、腕がもっていかれないように上腕を支えながら、母指にて肘頭が鉤状突起を乗り越えるイメージで上へ押し上げながら直圧し整復する。

 

 

 

 

 

問題72 新鮮な靱帯損傷でみられないのはどれか。

1.限局性圧痛
2.皮下出血斑
3.腫脹
4.筋萎縮

答え.4

解説
1.〇 限局性圧痛
限局性圧痛とは、損傷部位を軽く押すと限局した圧迫痛を感じることをいう。骨折や靭帯損傷などの場合、症状として確認しやすい。

2.〇 皮下出血斑
皮下出血斑とは、皮下出血(内出血)したときに紫色のアザのことである。紫斑病ともいう。内出血が起こるメカニズムは、何かにぶつかるなど外部からの衝撃が身体に加わることにより皮膚や皮下の組織が壊れてしまい出血が身体の内部だけに溜まることで起こる。つまり、原因としては転倒などによる打撲や打ち身、捻挫が多く、ひどい肉離れなどでみられる。

3.〇 腫脹
炎症4徴候として、疼痛や腫脹、発赤、熱感があげられる。基本的に、RICE処置を実施する。RICE処置とは、疼痛を防ぐことを目的に患肢や患部を安静(Rest)にし、氷で冷却(Icing)し、弾性包帯やテーピングで圧迫(Compression)し、患肢を挙上すること(Elevation)である。頭文字をそれぞれ取り、RICE処置といわれる。

4.× 筋萎縮は、新鮮な靱帯損傷でみられない。
なぜなら、筋委縮は廃用症候群など筋肉の不使用による結果で生じるため。ほかにも、神経損傷により、長期間にわたる運動困難によっても発生する。靭帯の損傷があった場合でも、筋萎縮が見られるようになるには、靭帯損傷後、数週間から数ヶ月の時間が必要となる。

 

 

 

 

 

問題73 末梢神経損傷で正しいのはどれか。

1.チネル徴候は再生の先端部でみられる。
2.一過性神経伝導障害では逆行性変性が起こる。
3.軸索断裂では中枢側にワーラー変性が起こる。
4.自律神経障害の急性期では皮膚温が低下する。

答え.1

解説
1.〇 正しい。チネル徴候は再生の先端部でみられる
Tinel徴候は、損傷神経を叩打すると支配領域にチクチク感や走感を生じる現象で、神経の回復状況を知る目安となる。機序は、末梢神経の切断後、近位端から軸索の再生が始まるが、再生軸索の先場はまだ髄鞘に覆われていないため起こる。絞扼性神経障害など神経の連続性が保たれている場合、Tinel様徴候とよばれる。

2.× 一過性神経伝導障害では逆行性変性が起こりにくい
neurapraxia(ニューラブラキシア:一過性神経伝導障害)とは、損傷部で伝導が障害されてはいるが一過性であり、早期に自然回復するため、末梢神経損傷で予後が最も良い。ちなみに、神経細胞の一部が傷つけられると、その場所よりも細胞体から遠い側は変性して壊れてしまう順行性変性という。一方、逆行性変性とは、細胞体のある側にも変性が進行することである。逆行性変性は、一般的に軸索断裂(アクソノトメーシス:axonotmesis)や神経断裂(ニューロトメーシス:neurotmesis)に見られる。

3.× 軸索断裂では、「中枢側」ではなく遠位側にワーラー変性が起こる。
Waller変性(ワーラー変性)は、損傷部より遠位が軸索変性(軸索の連続性が絶たれる)をきたした状態で、一部回復を見込める。軸索断裂:アクソノトメーシス(axonotmesis)と、神経断裂:ニューロトメーシス(neurotmesis)の状態でみられる。

4.× 自律神経障害の急性期では皮膚温が低下するとはいえない
自律神経障害の症状は、眠れない、疲労が取れにくい、頭痛、めまいなど多岐にわたる。自律神経が体温調節に関与しているため、その障害が皮膚温度の変化を引き起こす可能性はあるが、皮膚温度は外界の温度や血管の拡張・収縮に影響されやすい。そのため、交感神経が優位(血液の増加、皮膚温上昇、皮膚紅潮)となっている場合は、皮膚温が上昇しやすい。

神経損傷の分類

神経損傷の分類では、次の3段階に分類している。

一過性神経伝導障害:ニューラプラキシア(neurapraxia)
軸索断裂:アクソノトメーシス(axonotmesis)
神経断裂:ニューロトメーシス(neurotmesis)

 

 

 

 

 

問題74 屈曲整復法の適応はどれか。

1.短縮転位
2.屈曲転位
3.側方転位
4.捻転転位

答え.1

解説

屈曲整復法とは?

屈曲整復法とは、短縮転位の整復困難な横骨折に適応される整復方法である。この整復法では、最も緊張が強く整復操作を妨害している骨膜や筋の緊張を取り除き整復を容易にすることを目的とする。

1.〇 正しい。短縮転位は、屈曲整復法の適応である。
屈曲整復法とは、短縮転位の整復困難な横骨折に適応される整復方法である。

2.× 屈曲転位
屈曲転位とは、傾くように曲がって角度がついたものをいう。屈曲転位は通常、伸展や反対方向への力を用いた他の整復方法で治療される。

3.× 側方転位
側方転位とは、骨折によって分断された骨が側方に平行移動したものをいう。

4.× 捻転転位
捻転転位とは、ねじれるように軸回転したものをいう。

転移の種類

転位とは、骨折などで骨片が本来の位置からずれた状態にあることをいう。骨転位ともいう。骨折時の衝撃で起こる転位を一次性転位と呼び、骨折後の運搬時などの力で起こる転位を二次性転位と呼ぶ。転位は、形状によっても分類される。完全骨折の場合、一カ所の骨折でも複数種類の転位が見られることが多い。転位の見られる骨折の治療では、整復によって骨を本来の位置に戻してから固定する必要がある。
①側方転位とは、骨折によって分断された骨が側方に平行移動したものをいう。
②屈曲転位とは、傾くように曲がって角度がついたものをいう。
③捻転転位とは、ねじれるように軸回転したものをいう。
④延長転位とは、離れるように動いたものをいう。
⑤短縮転位とは、すれ違うように移動し重なったものをいう。

 

 

 

 

 

問題75 手技療法が可能となるのはどれか。

1.浮腫部
2.発疹部
3.創傷部
4.腫瘍部

答え.1

解説

手技療法とは?

手技療法とは、一切の薬や道具を使わずに手で施術を行うものである。手技によって筋肉をほぐすことで、血流の改善を期待できる。血流がよくなることで、身体の痛み、こり感の原因とされる老廃物の排出が促されると考えられる。また、手技療法には神経の興奮を沈める効果も期待できるため、肩こり、腰痛といった身体の痛み、こり感の解消に効果的だといえる。

1.〇 正しい。浮腫部は、手技療法が可能となる。
浮腫とは、液体が体組織に溜まる状態を指す。手技療法の特にリンパマッサージ(リンパドレナージ)が有効である。

2.× 発疹部
発疹とは、ウイルス感染やかぶれ、じんましんのように急に出る皮ふの変化をいう。炎症部への手技療法は、症状を悪化させる可能性がある。

3.× 創傷部
創傷部(傷や損傷がある領域)に対する手技療法は、創傷の感染リスクや、創傷治癒過程を阻害する可能性もある。

4.× 腫瘍部
腫瘍部に対する手技療法は、腫瘍の成長を促進したり、特にがんの場合は、転移(がん細胞が他の体の部位に広がること)のリスクを高める。

リンパ浮腫とは

リンパ浮腫とは、がんの治療部位に近い腕や脚などの皮膚の下に、リンパ管内に回収されなかった、リンパ液がたまってむくんだ状態のことをいう。つまり、リンパ浮腫以外の浮腫を惹起する疾患や、癌の転移・再発が除外される必要がある。治療は、複合的理学療法といわれ、以下の4つの治療を組み合わせながら行う。①リンパドレナージ、②圧迫療法、③圧迫下における運動療法、④スキンケアである。リンパ液を流してあげることで突っ張った皮膚を緩め、硬くなった皮膚を柔らかくする。この状態で弾性包帯を巻いたり、スリーブといわれるサポーターのようなものや、弾性ストッキングを着用し、リンパの流れの良い状態を保ち、さらにむくみを引かせて腕や脚の細くなった状態を保つ。そして、圧迫した状態でむくんだ腕や脚を挙上する、動かすことでさらにむくみを軽減・改善をはかる。

【国際リンパ学会によるリンパ浮腫の重症度分類】
Stage 0(潜在性):リンパ循環不全はあるが、臨床的に症状のないもの
StageⅠ(可逆性):タンパク濃度の比較的高い(静脈などに比較して)浮腫液の早期の貯留で、患肢挙上で改善する圧窩性(押すとへこむ)浮腫。
StageⅡ(非可逆性):患肢挙上のみでは腫脹が改善しない、皮膚の硬い非圧窩性の浮腫。
StageⅢ(象皮病):象皮病で非圧窩性。皮膚の肥厚、脂肪の沈着、疣贅(いぼ)の増殖などの皮膚変化を認める。

 

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