第29回(R3年)柔道整復師国家試験 解説【午後86~90】

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問題86 骨折と転位に関与する筋の組合せで正しいのはどれか。

1.上前腸骨棘骨折:大腿直筋
2.下前腸骨棘骨折:大腿筋膜張筋
3.大腿骨大転子骨折:中殿筋
4.大腿骨小転子骨折:梨状筋

答え.3

解説
1.× 上前腸骨棘骨折:大腿直筋
大腿直筋の【起始】下前腸骨棘および寛骨臼の上縁、【停止】膝蓋骨、脛骨粗面、【作用】膝関節伸展、股関節屈曲、【支配神経】大腿神経:L2~L4である。ちなみに、上前腸骨棘に付着する筋肉は、大腿筋膜張筋や縫工筋である。

2.× 下前腸骨棘骨折:大腿筋膜張筋
大腿筋膜張筋の【起始】上前腸骨棘と大腿筋膜の内側、【停止】腸脛靭帯、脛骨外側顆前面の粗面、【作用】股関節屈曲、内旋、外転。膝関節伸展、【支配神経】上殿神経:L4~S1である。ちなみに、下前腸骨棘に付着する筋肉は、大腿直筋である。

3.〇 正しい。大腿骨大転子骨折:中殿筋
中殿筋の【起始】腸骨翼の外面で前および後殿筋線の間、腸骨稜外唇および殿筋筋膜、【停止】大転子の外側面、【作用】股関節外転、前部:内旋、後部:外旋、【支配神経】上殿神経:L4~S1である。中殿筋の力が働くことで、大転子が転位する可能性がある。

4.× 大腿骨小転子骨折:梨状筋
梨状筋の【起始】仙骨の前面で第2~4前仙骨孔の両側、【停止】大転子の先端の後縁、【作用】股関節外旋、外転、【支配神経】仙骨神経叢の枝:L5~S2である。ちなみに、小転子に付着する筋肉は、腸骨筋や大腰筋である。

 

 

 

 

 

問題87 大腿骨骨幹部骨折で誤っているのはどれか。

1.高齢者に好発する。
2.高エネルギー損傷で発生する。
3.中央1/3部での骨折が多い。
4.ショックを起こすことがある。

答え.1

解説

大腿骨骨幹部骨折とは?

大腿骨骨幹部とは、大腿骨の真ん中を指す。この部分が骨折した場合に大腿骨骨幹部骨折と呼ぶ。成人は、交通事故や転落などの極めて強い外力の作用により生じる場合(高エネルギー外傷)が多く、ケガをした直後は激しい痛みがあり歩行困難なる。また、高エネルギー外傷でその他の部位(四肢など)の骨折や他の外傷(頭部、胸部、腹部)を伴うことも多く注意が必要である。

1.× 高齢者に好発するのは、「大腿骨頸部骨折」である。
骨粗鬆症は閉経後の女性に多く、骨の変形や痛み、易骨折性の原因となる。高齢者に多い骨折は①大腿骨頸部骨折、②脊椎圧迫骨折、③橈骨遠位端骨折、④上腕骨頸部骨折などがあり、これらは「高齢者の4大骨折」と呼ばれている。一方、大腿骨骨幹部骨折は、一般的に高エネルギーの外傷、例えば自動車事故や高所からの落下などによって起こる。

2.〇 正しい。高エネルギー損傷で発生する。
成人は、交通事故や転落などの極めて強い外力の作用により生じる場合(高エネルギー外傷)が多く、ケガをした直後は激しい痛みがあり歩行困難なる。また、高エネルギー外傷でその他の部位(四肢など)の骨折や他の外傷(頭部、胸部、腹部)を伴うことも多く注意が必要である。

3.〇 正しい。中央1/3部での骨折が多い。
なぜなら、大腿骨骨幹部骨折は、介達外力が作用すると、骨はねじれ、曲がり、引き伸ばされ斜骨折が生じるため。つまり、捻じれなどのストレスは、大腿骨の真ん中にかかりやすい。介達外力とは、打撃や圧迫などの外力が加わった部位から離れた部位に体内組織を通じて外力が伝わることである。斜骨折とは、骨の長軸に対して骨折線(骨折部に生じる亀裂)が斜めに入っているものをいう。

4.× ショックを起こすことがある。
なぜなら、その範囲と重症度から大量の出血を伴う可能性があるため。ショックとは、体液の喪失、心臓機能の低下、血管系虚脱などにより組織への酸素供給が障害され、放置すれば進行性に全身の臓器還流障害から急速に死に至る重篤な病態である。頻度的に最も多いのは出血性ショックである。出血性ショックとは、外傷や、消化管などからの出血によって血液循環量の低下が原因で起こるショックのことである。術後出血が原因となることもある。

 

 

 

 

 

問題88 下腿骨骨幹部骨折の後遺症と原因の組合せで誤っているのはどれか。

1.偽関節:無理な運動療法
2.変形治癒:早期の荷重開始
3.膝関節拘縮:PTBキャストの使用
4.足関節尖足位拘縮:下限コンパートメント症候群

答え.3

解説

下腿骨骨幹部骨折の介達外力

高エネルギー損傷で発生する。脛骨中下1/3内部骨析が多い(斜骨折、らせん状骨折になりやすい。横骨折は、後方凸変形となりやすい。開放骨折となりやすい。斜骨折の骨折線は前内方から後外上方へ走る。生じやすい後遺症として、①遅延治癒(偽関節)、②変形治癒:反張下腿、③神経損傷:腓骨神経麻痺(尖足位)、④筋萎縮、慢性浮腫などである。

【固定】膝関節30~40度屈曲位で行う。ギプス固定は反張位に注意する。金属副子固定は腓骨頭周囲に綿花を当てる。固定は、大腿近位部から足MP関節まで行う。

1.〇 正しい。偽関節:無理な運動療法
なぜなら、無理な運動療法により、骨折の治癒過程中にズレの力が生じるため。ちなみに、偽関節とは、骨折部位の癒合がうまくいかず、骨折部が可動性を持つ状態のことである。偽関節が生じやすい部位は、①上腕骨解剖頸、②手の舟状骨、③大腿骨頸部、④脛骨中下1/3、⑤距骨である。ちなみに、開放骨折・粉砕骨折・整復後も離開が生じている骨折では、部位によらず骨癒合は遷延しやすい。

2.〇 正しい。変形治癒:早期の荷重開始
なぜなら、早期の荷重開始により、骨が正常な位置に結合しないことがあるため。変形治癒とは、骨折した骨が、正常の形態とは異なった形態でくっつく(骨癒合)する場合をいう。つまり、転位を残したまま骨癒合が完了した状態である。 変形治癒は、交通事故による骨折の場合でもしばしば見受けられ、 外形上の問題にとどまる場合もあれば、機能障害や疼痛(痛み)を伴う場合もある。

3.× PTBキャストの使用は、「膝関節拘縮」ではなく足関節拘縮がみられる。
なぜなら、PTBキャストは、膝関節の固定を含まないため。ちなみに、PTB式免荷装具とは、膝蓋腱部で荷重を受けるソケットであり、下腿義足に対する標準的なソケットである。下腿骨骨折の手術後、部分荷重より開始とならないような重度のケースや、早期より免荷での歩行導入が必要な症例で用いられる。キャストとは、骨折を保存的に治療する際に患部の固定・安静を目的として使用する道具のことをいう。ギプス(正式にはギプス包帯)ともいう。

4.〇 正しい。足関節尖足位拘縮:下腿コンパートメント症候群
なぜなら、足関節尖足位拘縮により、筋ポンプ作用による足関節底・背屈運動が行えず、血行障害をきたすため。コンパートメント症候群とは、骨・筋膜・骨間膜に囲まれた「隔室」の内圧が、骨折や血腫形成、浮腫、血行障害などで上昇して、局所の筋・神経組織の循環障害を呈したものをいう。症状として6P【①pain(痛み)、②pallor(蒼白)、③paresthesia(知覚障害)、④paralysis(運動麻痺)、⑤pulselessiiess(末梢血管の拍動の消失)、⑥puffiniss(腫脹)】があげられ、それらを評価する。

 

 

 

 

 

問題89 コットン(Cotton)骨折にみられるのはどれか。

1.後果骨折
2.腓骨骨幹部骨折
3.踵骨骨折
4.距骨骨折

答え.1

解説
1.〇 正しい。後果骨折は、コットン(Cotton)骨折にみられる。
Cotton骨折(コットン骨折)は、足関節果部骨折のうち、内果・外果・後果の三果の同時骨折(脛骨・腓骨の同時骨折)を指す。

2~4.× 腓骨骨幹部骨折/踵骨骨折/距骨骨折
コットン骨折との関連性はない。

 

 

 

 

 

問題90 胸鎖関節脱臼で誤っているのはどれか。

1.青壮年に多い。
2.変形を残しやすい。
3.二重脱臼が多い。
4.固定が困難である。

答え.3

解説

胸鎖関節前方脱臼とは?

胸鎖関節は、鎖骨近位端が胸骨と接する部分で、前に解説した肩鎖関節の反対に位置している。胸鎖関節脱臼は、衝突や墜落などで、肩や腕が後ろ方向に引っ張られた際に、鎖骨近位端が、第1肋骨を支点として前方に脱臼することが多い。ずれの少ない軽症である場合見た目の変化は少なく、肩鎖関節を押したり肩を動かした時に、肩鎖関節に一致した痛みを感じる。ずれが大きくなると、鎖骨の出っ張りが明らかとなり、損傷が大きくなるため周囲が腫れる。青壮年に多発し幼少児には少なくコンタクトスポーツをやる人に多く発生する。

1.〇 正しい。青壮年に多い。
なぜなら、コンタクトスポーツをやる人に多く発生するため。胸鎖関節脱臼は、衝突や墜落などで、肩や腕が後ろ方向に引っ張られた際に、鎖骨近位端が、第1肋骨を支点として前方に脱臼することが多い。

2.〇 正しい。変形を残しやすい。
胸鎖関節脱臼後、治療が完全でない場合や不適切な治療が行われると、関節の変形を残すことがある。また、ずれの少ない軽症である場合見た目の変化は少なく、肩鎖関節を押したり肩を動かした時に、肩鎖関節に一致した痛みを感じる。ずれが大きくなると、鎖骨の出っ張りが明らかとなり、損傷が大きくなるため周囲が腫れる。

3.× 「二重脱臼」ではなく単数脱臼が多い。
1か所の関節が脱臼したものを単数脱臼(単発脱臼)という。二重脱臼とは、一本の骨の中枢と末梢とで脱臼したものである。複数脱臼という。一方、2か所以上の関節が同時に脱臼したものを多発脱臼という。

4.〇 正しい。固定が困難である。
胸鎖関節の完全な固定は、①構造上(安定性が乏しい)、②多くの動きが加わる(呼吸や歩行など)ため困難である。したがって、重症の場合は関節を元の位置に戻し、靱帯を再建する手術の実施が検討される。

 

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