第29回(R3年)柔道整復師国家試験 解説【午後91~95】

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問題91 肩鎖関節上方脱臼Ⅰ度損傷の症状はどれか。

1.肩関節外転運動制限
2.反跳症状
3.階段状変形
4.患側上肢の下垂

答え.1

解説

肩鎖関節損傷の分類

Ⅰ型:【捻挫】:肩鎖靭帯が損なわれるが、X線では異常所見がない。
Ⅱ型:【亜脱臼】:肩鎖靭帯が断裂し鳥口鎖骨靭帯が損なわれ、骨が上にずれ、関節の隙間が拡大する。
Ⅲ型:【上方脱臼】:肩鎖靭帯と鳥口鎖骨靭帯が断裂し、鎖骨が完全に上にずれる。
Ⅳ型:【後方脱臼】:鎖骨が後ろにずれる。
Ⅴ型:【明らかな脱臼】・鎖骨に付く筋肉等が全部損なわれる。
Ⅵ型:【下方脱臼】:極めてまれ。

1.〇 正しい。肩関節外転運動制限は、肩鎖関節上方脱臼Ⅰ度損傷の症状である。
Ⅰ型は、捻挫の分類で、肩鎖靭帯が損なわれるが、X線では異常所見がない。肩関節外転運動制限など、肩関節の可動域制限がみられる。炎症5大徴候の機能障害である。炎症5大徴候:①腫脹、②発赤、③熱感、④疼痛、⑤機能障害。

2.× 反跳症状
肩鎖関節上方脱臼Ⅲ度損傷の症状である。肩鎖関節脱臼では肩鎖関節のズレにより、鎖骨の外側の端が皮膚を持ち上げて階段状に飛び出して見えることがある。上方に持ち上がった鎖骨を上から押すと、ピアノの鍵盤のような上下の動きが確認でき(ピアノキーサイン)、肩鎖関節の安定性が損なわれている。

3.× 階段状変形
肩鎖関節上方脱臼Ⅲ度損傷の症状である。階段状変形とは、上方に持ち上がった鎖骨と、相対的に下の肩とが段差(階段)状になっている変形のことである。

4.× 患側上肢の下垂
肩鎖関節上方脱臼Ⅱ度損傷の症状である。なぜなら、肩鎖関節損傷を起こすと、上肢を支える骨性支持を失い、上肢が下方へ下がるため。ちなみに、Ⅱ型【亜脱臼】は、肩鎖靭帯が断裂し鳥口鎖骨靭帯が損なわれ、骨が上にずれ、関節の隙間が拡大する。

 

 

 

 

 

問題92 肩関節脱臼と弾発性固定の肢位の組合せで正しいのはどれか。

1.棘下脱臼:肩関節内転・内旋位
2.鎖骨下脱臼:肩関節水平位
3.肩峰下脱臼:肩関節伸展位
4.関節窩下脱臼:肩関節外旋位

答え.2

解説

弾発性固定とは?

弾発性固定とは、脱臼した位置で関節が動かなくなる状態をいう。患部を押しても反発するか、動いてもまた脱臼した位置に戻ろうとする特徴がある。

1.× 棘下脱臼は、肩関節「内転・内旋位」ではなく外転・外旋位である。
肩関節の棘下脱臼とは、非常にまれで、上腕骨頭が肩甲棘の下に位置する肩関節脱臼の後方脱臼のひとつである。

2.〇 正しい。鎖骨下脱臼:肩関節水平位
鎖骨下脱臼とは、上腕骨頭が関節窩の前方へ脱出してしまい、烏口突起よりもさらに内側に偏ってしまった状態のことである。つまり、鎖骨の下の辺りに上腕頭骨を触診することができる。上腕部を70度以上外側に向け肩甲骨を上げているような状態で支えられている。肩が骨格的に上方に突き出し、上腕が短縮して見える。

3.× 肩峰下脱臼は、肩関節「伸展」ではなく屈曲位である。
肩峰下脱臼とは、上腕骨頭が肩峰の下に位置する肩関節脱臼の後方脱臼のひとつである。肩峰下脱臼は、肩関節脱臼の一種で、上方脱臼に含まれる。通常、肩関節が上方に移動し、上腕が上方に突き出る状態を示す。肩内転時に、強い前上方への力により骨頭が関節窩上方に脱臼する非常にまれな脱臼である。肩峰・肩鎖関節・鎖骨・烏口突起・上腕骨大小結節の骨折や、腱板・上腕二頭筋腱・神経・血管などの軟部組織の損傷を伴う。

4.× 関節窩下脱臼は、肩関節「外旋」ではなく外転位である。
関節窩下脱臼とは、垂直脱臼もしくは直立脱臼とも言われ、上腕が90°以上に外転挙上した状態の脱臼位で弾発固定を起す脱臼である。この脱臼では、回旋筋腱板損傷、上腕二頭筋長頭腱断裂、腋窩神経損傷、関節窩下縁骨折、上腕骨頭後上方関節面の圧迫骨折などの合併を生じやすい。

 

 

 

 

 

問題93 股関節に外転、外旋、屈曲が強制されて起こるのはどれか。

1.腸骨脱臼
2.坐骨脱臼
3.恥骨上脱臼
4.恥骨下脱臼

答え.4

解説

股関節後方脱臼とは?

股関節後方脱臼は、坐骨神経麻痺が生じやすい。膝および股関節を屈曲させた状態で膝に対して後方に強い力が加わった結果生じる(例:自動車のダッシュボードにぶつかる)。ちなみに、分類として、腸骨脱臼、坐骨脱臼が後方脱臼であり、恥骨上脱臼、恥骨下脱臼が前方脱臼である。

1~2.× 腸骨脱臼/坐骨脱臼
腸骨脱臼/坐骨脱臼とは、後方脱臼に分類される股関節脱臼である。股関節に屈曲・内転・内旋力に大腿長軸に外力(ダッシュボード)による介達外力で生じる。症状として、股関節(下肢)屈曲・内転・内旋位となる。ほかにも、①大転子高位、②股関節部の変形、③股関節部の無抵抗、④弾発性固定となる。

3.× 恥骨上脱臼
恥骨上脱臼は、大腿骨頭が恥骨の上方、つまり体の前方に移動する股関節の前方脱臼を指す。股関節過伸展・外転・外旋(恥骨上脱臼)への介達外力で生じる。症状として、軽度屈曲・外転・強度外旋位となる。ほかにも、①骨頭を鼠蹊部に触知、②大腿の運動とともに骨頭の移動が確認、③弾発性抵抗、④他動的内転不能、⑤殿部の隆起現象、⑥大転子の触知不能などがみられる。

4.〇 正しい。恥骨下脱臼は、股関節に外転、外旋、屈曲が強制されて起こる。
恥骨下脱臼は、大腿骨頭が恥骨の下方、つまり体の後方に移動する股関節の後方脱臼を指す。症状として、強度屈曲・外転・外旋となる。

 

 

 

 

 

問題94 膝関節前方脱臼受傷時にトリアージ先行する所見はどれか。

1.膝関節の不安定性
2.足関節の運動障害
3.足背部の感覚障害
4.末梢側の循環障害

答え.4

解説

膝関節脱臼とは?

膝関節脱臼には、一般的に動脈損傷または神経損傷が伴う。膝関節脱臼は肢の温存を脅かす。この脱臼は,医学的評価がなされる前に自然に整復する場合がある。診断は通常,X線による。血管および神経学的評価が必要であり,血管損傷はCT血管造影により同定される。非観血的整復および血管損傷の治療を直ちに行う。(※引用:「膝関節(脛骨大腿関節)脱臼」MSDマニュアル様より)

1~3.× 膝関節の不安定性/足関節の運動障害/足背部の感覚障害
選択肢は、膝関節前方脱臼の症状ではあるものの、最初に行うべきトリアージではない。なぜなら、深刻な合併症として特に血流障害があげられるため。

4.〇 正しい。末梢側の循環障害は、膝関節前方脱臼受傷時にトリアージ先行する所見である。
なぜなら、多くの膝関節脱臼は,膝窩動脈損傷または神経損傷を伴うため。膝関節脱臼は常に膝関節を支える構造を損傷し、関節不安定性が生じる。膝関節脱臼により膝窩動脈が損傷することが多いため、常に足関節上腕血圧比を測定し、CT血管造影を施行する。ちなみに、足関節上腕血圧比(ABI)(Ankle-Brachial-Index)とは、四肢すべての動脈閉塞および開口部の最高の圧力を判別するための方法である。足関節上腕血圧比は両腕と両足首の血圧を測定し比率を計算する検査であり、下肢にできやすい閉塞性動脈硬化症の評価検査となる。足関節上腕血圧比=足首最高血圧/上腕最高血圧で求められ、これが、0.9未満で閉塞性動脈硬化症が疑われる。正常:1~1.29、境界線:0.91~0.99、軽度:0.71~0.90、中程度:0.41~0.7、重度:0.4以下となる。

トリアージとは

トリアージとは、災害時などの制約があるなかで、治療・搬送の優先順位を決めることである。災害時においては医療スタッフや医薬品などの医療資源が限られるため、より効果的に傷病者の治療を行うために、治療や搬送の優先順位を決定するものである。

 

 

 

 

 

問題95 足の第1MP関節脱臼で誤っているのはどれか。

1.背側脱臼が多い。
2.Z字型変形を呈する。
3.趾は延長してみえる。
4.開放性脱臼となることがある。

答え.3

解説
1.〇 正しい。背側脱臼が多い。
背側脱臼とは、足の背側(つま先側)への脱臼することである。足の掌側は、関節を固定している靭帯が強度である。

2.〇 正しい。Z字型変形を呈する。
Z字型変形とは、文字通り視覚的には趾がZ字型に見える変形のことである。足の第1MP関節脱臼は、大抵の場合、外力により発生する。関節脱臼により、関節を固定する靭帯が引き伸ばされることが原因で起こる。

3.× 趾は「延長」ではなく短縮してみえる。
なぜなら、足の第1MP関節の背側脱臼では、趾は曲がって見える(Z字型変形)ため。

4.〇 正しい。開放性脱臼となることがある。
開放性脱臼とは、脱臼の際に外傷によって関節の皮膚が破れ、皮膚の外に関節面が飛び出し外部に露出してしまう症状のことである。足の第1MP関節脱臼は、大抵の場合、外力により発生する。感染のリスクを高め、治療がより複雑になる。

 

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