第29回(R3年)柔道整復師国家試験 解説【午後31~35】

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問題31 検脈部位で適さないのはどれか。

1.腕頭動脈
2.橈骨動脈
3.大腿動脈
4.足背動脈

答え.1

解説

(※画像引用:岡山第一病院様より)

1.× 腕頭動脈は、検脈部位で適さない。
腕頭動脈とは、右胸鎖関節の後方より「右総頚動脈」と「右鎖骨下動脈」へとつながっている動脈のことである。

2.〇 正しい。橈骨動脈
橈骨動脈は、「前腕掌側面の外側遠位部」で触知できる。

3.〇 正しい。大腿動脈
大腿動脈は、「大腿三角内」で触知できる。大腿三角とは、鼠径靭帯・縫工筋・長内転筋である。

4.〇 正しい。足背動脈
足背動脈は、「長母指伸筋腱と長趾伸筋腱の間」で触知できる。

(※図引用、一部改変:「動脈蝕知」イラストAC様より)

 

 

 

 

 

問題32 感覚で正しいのはどれか。

1.温度覚は表在感覚である。
2.振動覚は脊髄の前索を伝わる。
3.舌下神経に障害があると味覚が消失する。
4.足踏み検査で大脳の障害を検出する。

答え.1

解説
1.〇 正しい。温度覚は表在感覚である
感覚の分類は主に3つに分けられる。①表在感覚とは、皮触覚・痛覚・温度覚である。②深部感覚とは、関節覚(位置覚、運動覚)・振動覚・及び深部痛覚である。③複合感覚とは、立体覚、皮膚書字感覚、二点識別覚、部位覚、重量覚などである。

2.× 振動覚は、脊髄の「前索」ではなく後索を伝わる。
意識にのぼる深部感覚の伝導路(振動覚、位置覚の経路)は、「後根 ⇒ 後索(下肢からの線維は薄束を通って薄束核に終わり、上肢からの線維は楔状束を通って楔状束核に終わる) ⇒ 延髄(後索核) ⇒ 毛帯交叉 ⇒ 内側毛帯 ⇒ 視床後外側腹側核 ⇒ 感覚野」となる。ちなみに、前索は、錐体路や粗大な触覚・圧覚の伝導路である。前皮質脊髄路(錐体路の一部・運動)は、大脳皮質—放線冠—内包後脚—中脳の大脳脚—橋縦束—延髄—交叉せずに脊髄前索を下降(10~25%程度)である。前脊髄視床路(粗大な触覚・圧覚)は、感覚神経→脊髄後角→(交叉)→脊髄前索→視床→後脚→大脳皮質体性知覚野である。

3.× 味覚が消失するのは、「顔面神経(前2/3)」と「舌咽神経(後1/3)」の障害で起こる。
ちなみに、舌下神経に障害があると、舌の運動が障害される。

4.× 足踏み検査で、「大脳」ではなく脊髄の障害(特に脊髄後部)を評価する。
足踏み検査とは、一定点において閉眼で足踏みを一定歩数行わせて、中枢性または末梢性前庭性不均衡に基づく下肢の筋緊張の左右差による偏倚を検出する検査である。同時に平衡失調(動揺、転倒)も検出する。

 

 

 

 

 

 

問題33 T1レベルの脊髄を含む腱反射はどれか。

1.上腕二頭筋反射
2.腕橈骨筋反射
3.回内筋反射
4.膝蓋腱反射

答え.3

解説
1.× 上腕二頭筋反射
上腕二頭筋反射の【中枢】C5~C6(筋皮神経)、【検査法】上肢を軽度外転させ、肘をやや屈曲位にして、前腕を回内外中間位にする。上腕二頭筋付着部近くに検者の母指を当て、その上を叩打する。【判定】肘関節屈曲が起これば反射出現(+)。

2.× 腕橈骨筋反射
腕橈骨筋反射の【中枢】C5~C6(橈骨神経)、【検査法】手首をつかんで肘を軽く屈曲位にして、前腕を回内外中間位か、やや回内位にし、橈骨下端を直接に叩打する。【判定】肘関節屈曲と前腕の回外運動が起これば反射出現(+)。手指の屈曲は起こっても弱い。

3.〇 正しい。回内筋反射は、T1レベルの脊髄を含む腱反射である。
回内筋反射(①橈骨回内反射、②尺骨反射)の【中枢】C6~T1(正中神経)、【検査法】①橈骨回内反射:前腕の尺側を大腿の上に置き、橈骨下端の掌側面を、それと直角方向に叩打する。②尺骨反射:前腕を半回内位にして大腿の上に置き、尺骨茎状突起の背側面を、それと直角方向に叩打する。【判定】前腕回内が起これば反射出現(+)。

4.× 膝蓋腱反射
膝蓋腱反射の【中枢】L2~L4(大腿神経)、【検査法】背臥位検査:患者を背臥位にし両膝を軽く屈曲し立てる。検者は前腕をその膝の下に入れて下肢を支える。または、一側の下肢を膝立て位にして、その膝の上に他側の膝を乗せる。膝蓋腱部を触知してその腱部を叩打する。【判定】膝関節の伸展が起これば反射出現(+)

 

 

 

 

 

問題34 病的反射はどれか。

1.角膜反射
2.腹壁反射
3.アシュネル反射
4.チャドック反射

答え.4

解説
1.× 角膜反射は、表在反射(粘膜反射)のひとつである。
角膜反射の【中枢】三叉神経→橋→顔面神経、【検査法】側方視を命じて側方視方向と反対側より脱脂綿の小片を角膜に触れる。【判定】刺激が加わればただちに目が閉じる(陽性)。

2.× 腹壁反射は、表在反射(反射)のひとつである。
腹壁反射(腹皮反射)の【中枢】肋間神経→①肋骨縁:T5~T6、②上:T6~T9、③中:T9~T11、④下:T11~T12→肋間神経、【検査法】検者を背臥位にして両膝を軽く屈曲し膝を立て、腹筋を弛緩させる。先の鈍い針で肋骨縁①にそって上から下に向けてこする。また、腹壁を上②、中③、下④の3つに分けて、腹壁皮膚を外側より内側に向けてこする。【判定】刺激側の腹筋が収縮し、臍が刺激側へ動けば陽性。

3.× アシュネル反射は、自律神経反射である。
アシュネル反射とは、眼球心臓反射とも呼ばれ、両側の眼球を圧迫した時に起こる眼球心臓反射(徐脈)を診る試験のことである。機序として、眼球圧迫→眼神経より延髄の副交感神経中枢→同側の迷走神経が刺激される。

4.〇 正しい。チャドック反射は、病的反射である。
チャドック反射とは、足の外果の下方を後ろから前へこする。バビンスキー反射の変法で、錐体外路障害で陽性となる。バビンスキー反射は、下肢の病的反射のひとつで、刺激によって母趾がゆっくりと背屈すれば陽性(母趾現象または伸展足底反射)ときには他の4指が開く(開扇現象)。正常では足底反射より母趾屈曲が起こる。

 

 

 

 

 

問題35 虫垂炎で正しいのはどれか。

1.発熱を認めない。
2.白血球数は正常である。
3.初期に上腹部痛を認める。
4.右季肋部に圧痛を認める。

答え.3

解説

虫垂炎とは?

虫垂炎とは、何らかの原因で虫垂に炎症が起こる病態を指し、一般的には「もうちょう」として知られている。典型的な初期症状は、吐気・嘔吐・食欲不振・心窩部痛であり、痛みは時間の経過とともに右下腹部に移行する。

1.× 発熱を「認める」。
発熱は、腹痛などと共に急性虫垂炎でよくみられる症状の一つである。軽症の場合は、37~38℃程度の発熱で収まる場合もあるが、炎症が高度で虫垂の周囲に膿の固まり(膿瘍)を形成するなどすると 38 ℃以上の高熱が出現する場合もある。

2.× 白血球数は、「正常」ではなく増加する。
なぜなら、白血球数は、炎症反応によって増加するため。虫垂炎は体内の感染症や炎症反応の一部である。

3.〇 正しい。初期に上腹部痛を認める
典型的な初期症状は、吐気・嘔吐・食欲不振・心窩部痛(上腹部痛)であり、痛みは時間の経過とともに右下腹部に移行する。

4.× 「右季肋部」ではなく、右下腹部に圧痛を認める。
McBurney圧痛点とは、盲腸炎(急性虫垂炎)の診断に役立つ、腹部の特定の点で感じる圧痛のことを指す。右下腹部(右上前腸骨棘と臍を結ぶ線を3等分し、右から3分の1)に位置する圧痛点である。盲腸炎の疑いがある場合、この点に圧力を加えると患者は痛みを感じる。医師は、この圧痛点に加えて他の診断方法を用いて盲腸炎の確定診断を行う。ちなみに、右季肋部(右の肋骨の下部)に痛みを呈する病気として、急性胆嚢炎があげられる。急性胆嚢炎とは、胆のうに炎症が生じた状態である。 胆のうがむくんで腫れ、炎症の進行とともに胆のうの壁が壊死していく。 症状は、初期には上腹部の不快感や鈍痛で、炎症の進行とともに右季肋部痛(右の肋骨の下あたり)になり、次第に激痛になる。原因の90%は、胆のうの中の胆石が胆嚢の出口に詰まることである。胆石は、脂質の多い食生活でみられやすい。

 

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