第30回(R4年)柔道整復師国家試験 解説【午後11~15】

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問題11 住居の採光と換気で正しいのはどれか。

1.室内の照度分布の目安に均斉度を用いる。
2.昼光率は日中と夜間の照度の比率である。
3.室内空気の汚染の尺度に一酸化炭素の濃度を用いる。
4.室内での燃料使用においてホルムアルデヒドの発生に注意する。

答え.

解説

シックハウス症候群とは?

近年、住宅の高気密化などが進むに従って、建材等から発生する化学物質などによる室内空気汚染等と、それによる健康影響が指摘されている。この健康被害を「シックハウス症候群」という。症状は、目がチカチカする、鼻水、のどの乾燥、吐き気、頭痛、湿疹など人によってさまざまである。原因として、住宅の高気密化・高断熱化などが進み、①化学物質による空気汚染、②湿度の高さによる細菌、カビ、ダニが繁殖、一般的な石油ストーブからの汚染物質(一酸化炭素、二酸化炭素、窒素酸化物など)の放出である。他にも、たばこの煙にも有害な化学物質である。(※参考:「シックハウス対策のページ」厚生労働省HPより)

1.〇 正しい。室内の照度分布の目安に均斉度を用いる
均斉度とは、ムラのなさを示す指標である(※読み:きんせいど)。つまり、特定の範囲内の照度分布の均一性を表す指標である。ムラなく明るいことを「均斉度が高い」という。均斉度は、最も高い照度と、最も低い照度の比率で導き出すことができ、1に近いほど均斉度が高い照明と言える。

2.× 昼光率は、「日中と夜間の照度の比率」ではなく、直射日光を除く屋外の照度(全天空照度)に対する室内の測定点の照度の比によって、採光可能性を示す指標である。つまり、室内の自然光(日光)の量を示す指標で、窓や開口部の大きさ、方向、建物の配置などによって決まる。値が高いほど評価が高くなる。昼光は常に変動するが、昼光率は比を用いているため、安定した値が得られる。

3.× 必ずしも、室内空気の汚染の尺度に、一酸化炭素の濃度を用いるわけではない
室内空気の汚染の尺度は、一酸化炭素の濃度だけで決まるわけではない。室内空気汚染物質には、①ガス状物質(一酸化炭素、二酸化炭素、窒素酸化物、ホルムアルデヒド)、②粒子状物質(粉塵、ウイルス、花粉など)に分けられる。

4.× 室内での燃料使用において、「ホルムアルデヒド」ではなく一酸化炭素の発生に注意する。
ホルムアルデヒドとは、新築や住宅改装の際、壁・天井・押入・床フローリングなど多くの場所に使用される。一方、一酸化炭素とは、換気をしないままガスが燃え続けると、空気(酸素)不足で不完全燃焼を起こし、発生する物質である。 一酸化炭素の特徴として、毒性が強く、無色・無臭であるため、気づかないうちに頭痛・吐き気・耳鳴りなどの中毒症状を起こし、重症になると死に至る場合もある。

VDT作業とは?

VDT作業とは、ディスプレイを持つ画面表示装置(VDT:Visual Display Terminals) を用いた作業のこと。コンピュータや監視カメラを用いた作業を指す。 VDT作業はVDT症候群のように、心身の負担を感じさせることにつながるため、厚生労働省においても「VDT作業における労働衛生環境管理のためのガイドライン」を定めている。

【作業環境管理】
(1)照明及び採光
①室内は、できるだけ明暗の対照が著しくなく、かつ、まぶしさを生じさせないようにすること。
②ディスプレイを用いる場合のディスプレイ画面上における照度は500ルクス以下、書類上及びキーボード上における照度は300ルクス以上とすること。また、ディスプレイ画面の明るさ、書類及びキーボード面における明るさと周辺の明るさの差はなるべく小さくすること。
③ディスプレイ画面に直接又は間接的に太陽光等が入射する場合は、必要に応じて窓にブラインド又はカーテン等を設け、適切な明るさとなるようにすること。

(2)一連続作業時間及び作業休止時間
一連続作業時間が1時間を超えないようにし、次の連続作業までの間に10分~15分の作業休止時間を設け、かつ、一連続作業時間内において1回~2回程度の小休止を設けること。

(3)その他
換気、温度及び湿度の調整、空気調和、静電気除去、休憩等のための設備等について事務所
衛生基準規則に定める措置等を講じること。

(※一部引用:「VDT作業における労働衛生環境管理のためのガイドライン」厚生労働省HPより)

 

 

 

 

 

問題12 上水で正しいのはどれか。2つ選べ。

1.上水の基準は環境基本法による。
2.上水には大腸菌を検出してはならない。
3.上水末端においては塩素が残留してはならない。
4.上水処理中に発生したトリハロメタンは発がん物質である。

答え.2・4

解説

水道の種類

上水:水道水など、飲用に適した水を供給する水道のこと。
中水:水洗トイレの用水や公園の噴水など、飲用に適さないが雑用、工業用などに使用される水道のこと。
下水:生活排水や産業排水、雨水などの汚水を終末処理場に集約し処理する施設全般のこと。

1.× 上水の基準は、「環境基本法」ではなく水道法による。
水道法とは、上水道事業について定める日本の法律である。第4条において水質基準が定められている(※参考:「水道法」厚生労働省HPより)。ちなみに、環境基本法とは、日本の環境政策の根幹を定める基本法である。国・地方公共団体・事業者・国民の責務、環境への負荷の少ない持続的発展が可能な社会の構築、国際的協調による地球環境保全の積極的推進、環境基本計画や環境基準の策定などを規定している。

2.〇 正しい。上水には大腸菌を検出してはならない
水道法の第四条(水質基準)において「水道により供給される水は、次の各号に掲げる要件を備えるものでなければならない。一 病原生物に汚染され、又は病原生物に汚染されたことを疑わせるような生物若しくは物質を含むものでないこと。二 シアン、水銀その他の有毒物質を含まないこと。三 銅、鉄、弗ふつ素、フェノールその他の物質をその許容量をこえて含まないこと。四 異常な酸性又はアルカリ性を呈しないこと。五 異常な臭味がないこと。ただし、消毒による臭味を除く。六 外観は、ほとんど無色透明であること。」と記載されている(※引用:「水道法」厚生労働省HPより)。

3.× 上水末端においては塩素が残留してはならないという規定はない
むしろ、塩素の残留が認められている。これは、水道法施行規則第17条3(衛生上必要な措置)に「給水栓における水が、遊離残留塩素を0.1mg/l(結合残留塩素の場合は、0.4mg/l)以上保持するように塩素消毒をすること。ただし、供給する水が病原生物に著しく汚染されるおそれがある場合又は病原生物に汚染されたことを疑わせるような生物若しくは物質を多量に含むおそれがある場合の給水栓における水の遊離残留塩素は、0.2mg/l(結合残留塩素の場合は、1.5mg/l)以上とする。」と記載されている(※引用:「水道法第4条及び第22条等の関係について」e-GOV法令検索様HPより)

4.〇 正しい。上水処理中に発生したトリハロメタンは発がん物質である
トリハロメタンとは、メタンの4つの水素のうち、3つがハロゲンである塩素(Cl–)、臭素(Br–)などに置換された化合物である。トリハロメタンの一種、クロロホルムとブロモジクロロメタンは世界保健機関(WHO)の国際がん研究機関(IARC)により、「グループ2B:発がん性の恐れがある」とされている。マウスではこれら物質の発がん性を示す証拠が十分あるものの、人に対しての影響は詳しく分かっていないため、『発がん性の恐れがある』という表現になっている。

 

 

 

 

 

問題13 WHO国際生活機能分類(ICF)の4つの分野における第一レベル分類で環境因子の項目はどれか。

1.家庭生活
2.対人関係
3.支援と関係
4.コミュニケーション

答え.

解説

ICFとは?

ICF(International Classification of Functioning, Disability and Health)は、人間の生活機能と障害分類法として2001年5月、世界保健機関(WHO)において採択された。これまでの ICIDH(国際障害分類、1980)が「疾病の帰結(結果)に関する分類」であったのに対し、ICF は「健康の構成要素に関する分類」であり、新しい健康観を提起するものとなった。生活機能上の問題は誰にでも起りうるものなので、ICF は特定の人々のためのものではなく、「全ての人に関する分類」である。

第1レベル:心身機能、身体構造、活動と参加、環境因子という4つのカテゴリーに分かれている。
第2レベル:その中でさらに細かく分類されたものである。

1~2.4.× 家庭生活/対人関係/コミュニケーション
これらは、「活動と参加」の領域に属する項目である。

3.〇 正しい。支援と関係は、環境因子の項目である。

 

 

 

 

 

問題14 神経伝導検査の所見でないのはどれか。

1.陽性鋭波
2.潜時遅延
3.伝導ブロック
4.持続時間の延長

答え.

解説

運動神経伝導検査とは?

運動神経伝導検査とは、末梢神経を電気刺激した際に、神経やその支配筋から発生する活動電位を記録したものである。主として末梢神経の機能評価に用いられる。要するに、神経の伝達速度が遅くなっているか調べるものとなっている。

【結果の解釈】
脱髄:伝導速度低下、持続時間延長、振幅低下
軸索変性:持続時間短縮、振幅低下

1.× 陽性鋭波は、神経伝導検査の所見でない。
陽性鋭波とは、脳波(EEG)や筋電図(EMG)で見られる所見で、急峻な陽性の電位に続いて緩徐で持続の長い陰性電位がみられる。脳波の場合は、特にてんかんの発作を示す。ちなみに、筋電図の場合は、線維自発電位と同じ単一筋線維由来で、筋膜損傷部にあると示される。

2.〇 潜時遅延
潜時とは、刺激を与えてからM波が立ち上がるまでの時間のことである。遠位の潜時の遅延があると、刺激部位より遠位での障害が考えられ、絞扼性末梢神経障害などの存在が示唆される。

3.〇 伝導ブロック
伝導ブロックとは、神経の一部で電気信号の伝達が阻害されていることを示す。

4.〇 持続時間の延長
持続時間の延長は、神経が刺激に反応する時間(持続時間)が通常よりも長いことを示す。脱髄により生じやすい。

 

 

 

 

 

問題15 機能的自立評価法(FIM)に含まれるが、バーセル指数には含まれない評価項目はどれか。

1.理解
2.食事
3.更衣
4.整容

答え.

解説

MEMO

Barthel Index(バーセル指数)の評価項目は10項目(①食事、②椅子とベッド間の移乗、③整容、④トイレ動作、⑤入浴、⑥移動、⑦階段昇降、⑧更衣、⑨排便コントロール、⑩排尿コントロール)あり、100点満点で評価される。

機能的自立度評価表(FIM:機能的自立評価法)の評価項目は、セルフケア(食事、整容、清拭、更衣、トイレ)、排泄(排尿、排便)、移乗(ベッド・車いす間、トイレ、浴槽)、移動(歩行、階段)、コミュニケーション(理解、表出)、社会認識(社会的交流、問題解決、記憶)である。

1.× 理解は、機能的自立評価法(FIM)に含まれるが、バーセル指数には含まれない評価項目である。

2.〇 食事/更衣/整容
これらは両方の評価法に取り入れられている。

 

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