第30回(R4年)柔道整復師国家試験 解説【午後116~120】

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問題116 35歳の女性。3週前に手関節の掌側に膨隆を見つけ来所した。環指・小指のしびれと疼痛を自覚し、感覚障害が手掌尺側にみられた。
 徒手検査で陽性になるのはどれか。

1.ファーレンテスト
2.フローマン徴候
3.尺屈回外テスト
4.パーフェクトOテスト

答え.

解説

本症例のポイント

・35歳の女性。
・3週前:手関節の掌側に膨隆あり。
環指、小指のしびれと疼痛を自覚。
・感覚障害が手掌尺側にみられた。
→本症例は、尺骨神経麻痺(肘部管症候群)が疑われる。肘部管症候群は、尺骨神経が肘関節背面内側にある尺側骨手根屈筋下の肘部管を通過する際に生じる絞拒性障害である。尺骨神経麻痺を来し、指の開閉運動障害や鷲手変形を生じる。

1.× ファーレンテスト
正中神経麻痺で、tear drop sign(ティア ドロップ サイン)または、perfect O(パーフェクト Oテスト)や、Phalen(ファレンテスト)が陽性となる。ファーレン徴候(Phalen徴候)とは、手首を曲げて症状の再現性をみる検査である。

2.〇 正しい。フローマン徴候が徒手検査で陽性になる。
Froment徴候(フローマン徴候)は、尺骨神経麻痺の症状としてみられる。Froment徴候(フローマン徴候)とは、母指の内転ができなくなり、母指と示指で紙片を保持させると母指が屈曲位をとることである。

3.× 尺屈回外テスト
尺屈テストは、手関節を他動的に尺屈させる検査である。そこからさらに回外操作を加えると尺屈回外テストとなる。陽性の場合、三角線維軟骨複合体の損傷を疑われる。三角繊維軟骨複合体とは、遠位橈尺関節を安定化させている支持組織である。遠位橈尺関節は手関節に隣接して存在し、肘関節に隣接する近位橈尺関節と共に前腕の回内外運動を行う。遠位橈尺関節の安定性と衝撃吸収を担うため、三角線維軟骨複合体損傷は、疼痛や機能障害の原因となる。

4.× パーフェクトOテスト
正中神経麻痺で、tear drop sign(ティア ドロップ サイン)または、perfect O(パーフェクト Oテスト)や、Phalen(ファレンテスト)が陽性となる。perfect O(パーフェクト Oテスト)とは、親指と人差し指の先端をくっつけて丸形を作る検査である。

 

 

 

 

 

問題117 52歳の男性。工事現場で仕事をしている。明らかな原因はないが数日前から下腿外側から足背にかけてしびれを自覚している。腰部に圧痛はないが、大殿筋の筋力低下がみられた。
 確認すべき圧痛部位はどれか。

1.上前腸骨棘内側部
2.梨状筋部
3.内転筋管出口部
4.腓骨頭後方部

答え.

解説

本症例のポイント

・52歳の男性(工事現場で仕事)。
・明らかな原因はない。
・数日前:下腿外側から足背にかけてしびれを自覚。
腰部に圧痛:なし
・大殿筋:筋力低下あり
→本症例は、梨状筋症候群が疑われる。梨状筋症候群とは、坐骨神経が大坐骨切痕と梨状筋との間で圧迫を受ける絞扼性神経障害で、大腿後面のしびれを生じる。代表的な症状は坐骨神経痛、梨状筋部の痛みや圧痛、足首・足指が動きにくくなるなどである。

1.× 上前腸骨棘内側部
この部位は、腸骨棘裂離骨折・疲労骨折などに関与する。上前腸骨棘には大腿筋膜張筋、縫工筋が、下前腸骨棘には大腿直筋が付着している。これらの筋肉がキック動作など、スポーツで生ずる筋力によって骨盤付着部を急激に牽引するために、骨盤の一部が裂離(骨折)する。

2.〇 正しい。梨状筋部は、確認すべき圧痛部位である。
なぜなら、本症例は、梨状筋症候群が疑われるため。梨状筋症候群とは、坐骨神経が大坐骨切痕と梨状筋との間で圧迫を受ける絞扼性神経障害で、大腿後面のしびれを生じる。代表的な症状は坐骨神経痛、梨状筋部の痛みや圧痛、足首・足指が動きにくくなるなどである。

3.× 内転筋管出口部
Hunter管症候群(ハンター管症候群:内転筋管の絞扼)は、伏在神経が絞扼されている状態である。内転筋管とは、膝関節内側の筋で囲まれた孔である。症状として、膝から下のふくらはぎの内側あたりと内くるぶし周辺にしびれや痛みがあり、立ち上がる時や膝を伸ばす時にピリッと痛みが強くなる。膝の内側がズキズキ痛かったりする場合もあるので、膝の痛みと間違われることもある。ほとんどの場合は、運動などによる筋肉の使い過ぎが原因で起こる。

4.× 腓骨頭後方部
腓骨神経麻痺とは、腓骨頭部(膝外側)の外部からの圧迫などによって、腓骨神経の機能不全をきたしている状態である。腓骨神経は、感覚(下腿外側、足背)や運動(足関節および足趾の背屈)を支配しているため、下腿の外側から足背ならびに足趾背側にかけて感覚が障害され、しびれたり、触った感じが鈍くなる。また、足首と足の指が背屈(上に反る)できなくなり、下垂足となる。

 

 

 

 

 

問題118 18歳の男子。高校でハードルの選手である。2か月前にハムストリングス1度損傷を発症した。患者から「『肉離れはくせになる』とSNSで見たのですが、再発予防はどうしたらいいですか?」と質問があった。
 説明で誤っているのはどれか。

1.筋の硬さとの関連を説明した。
2.持続的な負荷への注意を説明した。
3.ストレッチの重要性を説明した。
4.踵殿距離(HBD)との関連を説明した。

答え.

解説

本症例のポイント

・18歳の男子(ハードルの選手)。
・2か月前:ハムストリングス1度損傷。
・患者「再発予防はどうしたらいいですか?」と質問。
→ハムストリングス損傷の予防(肉離れの予防)として、①柔軟性の向上、②血行改善、③アイシング、④違和感があった際の中断が必要となる。

1.3.〇 正しい。筋の硬さとの関連を説明した/ストレッチの重要性を説明した。
ストレッチングによって筋肉や関節の柔軟性が増すと、肉ばなれを起こした局所周辺の負担も軽くなり、筋肉がストレッチされることによって血行もよくなる。

2.〇 正しい。持続的な負荷への注意を説明した。
持続的な練習や練習後は罹患部位に熱感が発生する。したがって、練習後は、局所のアイシング(約15分)を行うよう指導する。

4.× 踵殿距離(HBD)との関連を説明した。
なぜなら、踵殿距離に関連する筋肉は、ハムストリングスではなく大腿四頭筋であるため。大腿四頭筋の柔軟性が向上するほど、踵殿距離は短くなる。

肉離れとは?

肉離れとは、筋肉が過度に引き伸ばされたり、筋肉が縮んだ状態から引き伸ばされた際に筋線維が切れることである。肉離れの予防として、①柔軟性の向上、②血行改善、③アイシング、④違和感があった際の中断が必要となる。

【好発部位】
大腿四頭筋:太ももの前側(大腿直筋)で起こりやすい。なぜなら、股関節と膝関節の二つの関節の動きに作用する二関節筋であるため。
ハムストリングス:大腿二頭筋(筋腱移行部)で起こりやすい。
下腿三頭筋:筋繊維の多くは筋腱移行部での部分損傷で、特に腓腹筋内側頭で起こりやすい。10代からみられ、各年齢層にまんべんなく発生する。受傷機序として、日常生活中やスポーツ現場では階段を下りた際や、ランニングやダッシュの途中などにふくらはぎに鋭い痛みが走り、その後の歩行が困難になるケースがよく見られる。足関節底屈の際、親指のほうが大きく力を発揮するのに適しており、親指側に力が入りやすいため、外側より内側のほうが受傷しやすい。

 

 

 

 

 

問題119 22歳の女性。バスケットボールの試合でジャンプシュート時、体幹を捻じりながら着地した瞬間に右膝が崩れ断裂音を自覚した。膝関節屈曲制限と荷重不能で試合続行は不可能であった。
 考えられる靭帯損傷はどれか。

1.内側側副靭帯
2.外側側副靭帯
3.前十字靱帯
4.後十字靱帯

答え.

解説

本症例のポイント

・22歳の女性(バスケットボール選手)。
・ジャンプシュート時:体幹を捻じりながら着地した瞬間に右膝が崩れ断裂音を自覚。
・試合続行不可能:膝関節屈曲制限荷重不能

1.× 内側側副靭帯
内側側副靭帯損傷は、外反ストレステストが陽性の場合疑える。原因として、膝が内側に入ってしまい、膝関節内側の靭帯に強い外反ストレスが加わることで損傷が生じる。例えば、ラグビーやサッカーで横からタックルを受けたときなどにバランスを崩してしまうことなどである。

2.× 外側側副靭帯
外側側副靭帯損傷は、内反ストレステストが陽性の場合疑える。原因として、膝が外側に入ってしまい、膝関節外側の靭帯に強い内反ストレスが加わることで損傷が生じる。 具体的には、サッカーやラグビーなどで内側からタックルを食らった時に起こります。

3.〇 正しい。前十字靱帯が考えられる。
前十字靭帯損傷とは、スポーツによる膝外傷の中でも頻度が高く、バスケットボールやサッカー、スキーなどでのジャンプの着地や急な方向転換、急停止時に発生することが多い非接触損傷が特徴的な靭帯損傷である。

4.× 後十字靱帯
後十字靱帯損傷とは、大腿骨に対して脛骨が後方に押し込まれる力によって靭帯が損傷を受けた状態をいう。ダッシュボード損傷とも言われ、車が急停車しダッシュボードに膝(脛骨の上端部)をぶつけることによって起こることが多い。膝を90°曲げた状態で転倒すると脛骨が後方に押し込まれるため受傷する。

 

 

 

 

 

問題120 45歳の男性。フットサル中、左下腿下部後面に蹴られたような痛みを自覚し、翌日来所した。来所時の写真を下に示す。本人の希望によって保存的に施術することにした。
 固定肢位はどれか。

1.膝関節伸展、足関節背屈
2.膝関節伸展、足関節底屈
3.膝関節屈曲、足関節背屈
4.膝関節屈曲、足関節底屈

答え.

解説

本症例のポイント

・45歳の男性。
・フットサル中:左下腿下部後面に蹴られたような痛み
・本人の希望:保存的に施術する。
→本症例は、アキレス腱損傷が疑われる。完全に断裂している場合は、手術療法が適応となる。アキレス腱に伸張ストレスがかからない肢位を選択する。アキレス腱は、下腿三頭筋からつながり、踵骨隆起に付着する。下腿三頭筋は腓腹筋とヒラメ筋からなり、その中でも腓腹筋の作用は、膝関節屈曲、足関節底屈、踵の挙上である。つまり、腓腹筋を伸張しないよう固定する必要がある。

1~3.× 膝関節伸展、足関節背屈/膝関節伸展、足関節底屈/膝関節屈曲、足関節背屈
足関節伸張、足関節背屈は、腓腹筋(アキレス腱)に伸張ストレスを加え、症状の増悪が考えられるため不適当といえる。

4.〇 正しい。膝関節屈曲、足関節底屈は固定肢位である。
本症例は、アキレス腱損傷が疑われる。完全に断裂している場合は、手術療法が適応となる。アキレス腱に伸張ストレスがかからない肢位を選択する。アキレス腱は、下腿三頭筋からつながり、踵骨隆起に付着する。下腿三頭筋は腓腹筋とヒラメ筋からなり、その中でも腓腹筋の作用は、膝関節屈曲、足関節底屈、踵の挙上である。つまり、腓腹筋を伸張しないよう固定する必要がある。

 

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