第31回(R5年)柔道整復師国家試験 解説【午後91~95】

この記事には広告を含む場合があります。

記事内で紹介する商品を購入することで、当サイトに売り上げの一部が還元されることがあります。

 

問題91 中足骨骨折で正しいのはどれか。

1.骨幹部骨折は介達外力で発生することが多い。
2.疲労骨折は第2・第3中足骨に発生することが多い。
3.ジョーンズ(Jones)骨折は第4中足骨に起こる。
4.長腓骨筋の収縮で第5中足骨基部裂離骨折が起こる。

答え.2

解説
1.× 骨幹部骨折は、「介達外力」ではなく直達外力で発生することが多い。
介達外力とは、打撃や圧迫などの外力が加わった部位から離れた部位に体内組織を通じて外力が伝わることである。

2.〇 正しい。疲労骨折は第2・第3中足骨に発生することが多い
足骨骨幹部骨折は、急性骨折または疲労骨折が多く、原因は反復性の荷重負荷である。疲労骨折は通常、反復的な負荷やオーバーユースによって骨を支持する筋肉が負荷を吸収しきれなくなり生じる。

3.× ジョーンズ(Jones)骨折は、「第4中足骨」ではなく第5中足骨に起こる。
ジョーンズ(Jones)骨折とは、第5中足骨疲労骨折は、サッカー、バスケットボール、ラグビーなど素早い動きを繰り返して行うスポーツの競技選手によく発生する。ランニングやジャンプ動作による過度の体重負荷が、長時間、足部アーチに繰り返し加わることで発生するオーバーユースに起因するスポーツ障害である。

4.× 「長腓骨筋」ではなく短腓骨筋の収縮で第5中足骨基部裂離骨折が起こる。
第5中足基部裂離骨折とは、下駄骨折とも呼び、昔下駄を履いたときに足を捻り発生しやすかったため起こっていた。下駄での発症以外では転倒や段差の踏み外し等が原因で起こる。
長腓骨筋の【起始】腓骨頭、腓骨体外側面の上半、一部は筋膜と前下腿筋間中隔、【停止】第1,2中足骨底内側楔状骨、【作用】足関節底屈、外返し、【神経】浅腓骨神経である。

第5中足骨基部裂離骨折とは?

第5中足基部裂離骨折とは、下駄骨折とも呼び、昔下駄を履いたときに足を捻り発生しやすかったため起こっていた。下駄での発症以外では転倒や段差の踏み外し等が原因で起こる。第5中足骨基底部には、短腓骨筋が付着しているため、足を捻った際に筋肉の収縮力により裂離骨折が起こる。第5中足骨基底部には短腓骨筋が付着しているため、足を捻った際に筋肉の収縮力により裂離骨折が起こる。
短腓骨筋の【起始】腓骨外側面、前下腿筋間中隔、【停止】第5中足骨粗面、【作用】足関節底屈、外返し、【神経】浅腓骨神経である。

固定期間は、4~5週ギプスまたはプライトン固定を行う。固定期間中は骨癒合促進のため超音波骨折治療器(オステオトロン)を使用することで骨折の早期回復が可能となる。

 

 

 

 

 

問題92 顎関節脱臼の整復で正しいのはどれか。

1.ヒポクラテス法では術者は患者の後方に位置する。
2.口外法では術者の母指球をオトガイ部にあてる。
3.整復中は患者に発声しないよう指示する。
4.整復後はオトガイ部を把持する。

答え.4

解説
1.× ヒポクラテス法では術者は患者の「後方」ではなく前方に位置する。
具体的な手法は、まず患者の頭部を固定し、術者は患者の前方に位置する。次に、両拇指にガーゼを巻いて下顎大臼歯咬合面(歯が無い場合は同相当部顎堤)に置き、他の 4 指で下顎下縁を保持する。下顎頭を下方に圧下して、オトガイ部を挙上させ、後上方に押し込むように閉口させる。なお、片側ずつの整復法もある。その際には、一側の下顎臼歯部に拇指を置き、上記と同様に行うが、空いている片手の拇指を整復測の脱臼した下顎頭前方に置き、下顎頭を口内法に圧迫するように補助する(※引用:「顎関節脱臼の Q&A」日本顎関節学会HPより)。

2.× 口外法では術者の母指球を「オトガイ部」ではなく下顎頭にあてる。
術者は患者の後方に位置する。

3.× 整復中は患者に発声しないよう指示する必要はない
心理的に動揺している患者をリラックスさせて落ち着かせることが大切であるため、全身の力を抜いて腹式呼吸を数回してもらう。顎関節脱臼の整復中、患者にはリラックスしてもらうことが最優先で、患者は口を開けたままである。発声が治療に左右することはない。

4.〇 正しい。整復後はオトガイ部を把持する
顎関節脱臼の整復後、術者はオトガイ部を把持して、顎を安定させることが一般的である。これにより、再脱臼のリスクを減らすことができる。また、再脱臼防止法として、弾性包帯による顎包帯法、チンキャップ(おとがい帽)や AGOキャップ等を用いる方法がある。

 

 

 

 

 

問題93 胸鎖関節前方脱臼の症状で正しいのはどれか。

1.不全脱臼が多い。
2.呼吸障害をきたす。
3.胸骨が前方に突出する。
4.肩関節の外転が制限される。

答え.4

解説

胸鎖関節前方脱臼とは?

胸鎖関節は、鎖骨近位端が胸骨と接する部分で、前に解説した肩鎖関節の反対に位置している。胸鎖関節脱臼は、衝突や墜落などで、肩や腕が後ろ方向に引っ張られた際に、鎖骨近位端が、第1肋骨を支点として前方に脱臼することが多い。ずれの少ない軽症である場合見た目の変化は少なく、肩鎖関節を押したり肩を動かした時に、肩鎖関節に一致した痛みを感じる。ずれが大きくなると、鎖骨の出っ張りが明らかとなり、損傷が大きくなるため周囲が腫れる。青壮年に多発し幼少児には少なくコンタクトスポーツをやる人に多く発生する。

1.× 不全脱臼が多いとはいえない
胸鎖関節前方脱臼は、完全脱臼の方が一般的である。不完全脱臼とは、骨の一部を関節に残したまま、骨が関節からずれた状態のことをいう。 不完全脱臼は「亜脱臼」と呼ばれることも多い。 

2.× 呼吸障害をきたすとはいえない
なぜなら、腹式呼吸で代償可能であるため。また、胸式呼吸においても胸鎖関節の動きは少ない。

3.× 前方に突出するのは、「胸骨」ではなく鎖骨である。
胸鎖関節脱臼は、衝突や墜落などで、肩や腕が後ろ方向に引っ張られた際に、鎖骨近位端が、第1肋骨を支点として前方に脱臼することが多い。

4.〇 正しい。肩関節の外転が制限される
なぜなら、肩関節外転に伴う上腕骨の動きが制限され、痛みが引き起こされるため。

 

 

 

 

 

問題94 股関節後方脱臼で正しいのはどれか。

1.坐骨脱臼では腸骨大腿靭帯は断裂する。
2.腸骨脱臼では下肢は屈曲外転外旋位となる。
3.腸骨脱臼では坐骨脱臼に比べ下肢の短縮が大きくなる。
4.坐骨脱臼では腸骨脱臼に比べ股関節屈曲角度は小さくなる。

答え.3

解説

股関節後方脱臼とは?

股関節後方脱臼は、坐骨神経麻痺が生じやすい。膝および股関節を屈曲させた状態で膝に対して後方に強い力が加わった結果生じる(例:自動車のダッシュボードにぶつかる)。ちなみに、分類として、腸骨脱臼、坐骨脱臼が後方脱臼であり、恥骨上脱臼、恥骨下脱臼が前方脱臼である。

1.× 坐骨脱臼では、「腸骨大腿靭帯」ではなく大腿骨頭靭帯は断裂する。
ちなみに、大腿骨頭靱帯は、大腿骨頭と臼蓋を連結しているため股関節内転を制限し、脱臼の予防に働く。

2.× 腸骨脱臼では下肢は、「屈曲・外転・外旋位」ではなく屈曲、内転、内旋位となる。

3.〇 正しい。腸骨脱臼では坐骨脱臼に比べ下肢の短縮が大きくなる
なぜなら、腸骨脱臼の場合のほうが、股関節が脱臼した状態で大腿骨が腸骨と密接しているため。

4.× 坐骨脱臼では腸骨脱臼に比べ股関節屈曲角度は、「小さく」ではなく大きくなる。
脱臼肢位としての屈曲・内転・内旋位は、腸骨脱臼では軽度、坐骨脱臼では著明となる。これは、脱臼のメカニズムと関節の位置に関係する。

 

 

 

 

 

問題95 外傷性股関節脱臼の合併症でないのはどれか。

1.外反股
2.骨化性筋炎
3.大腿骨頭壊死
4.坐骨神経麻痺

答え.1

解説

外傷性股関節脱臼とは?

外傷性股関節脱臼とは、股関節にとても強い力が加わることで起こり、交通事故や、ラグビーやアメリカンフットボールなどのスポーツ、高所からの転倒などがきっかけとなる。受傷時の合併症として、坐骨神経麻痺と膝関節後十字靭帯損傷を起こしていることがある。治療法として、徒手整復、大転子直達牽引法、観血的整復術が挙げられる。脱臼により血行不良が生じて大腿骨頭が阻血状態になるため、できるだけ早く整復し骨頭への血流を改善させる。

1.× 外反股は、外傷性股関節脱臼の合併症でない。
外反股とは、頸体角が正常よりも拡大し、大腿骨頸部が垂直に近づくものをいう。先天性股関節脱臼、多発性外骨腫、乳児化膿性股関節炎、くる病などのほか、二分脊椎、脳性麻痺、ポリオなどの麻痺性疾患でもみられる。

2.〇 骨化性筋炎
骨化性筋炎とは、打撲などの外傷によって、筋肉の中に骨と同じような組織ができてしまう疾患のことである。 外傷性骨化性筋炎、骨化性筋炎とも言う。 損傷を受けた筋肉が出血して血腫ができたところに、カルシウムが沈着し、石灰化しておこる。

3.〇 大腿骨頭壊死
脱臼によって大腿骨頭への血流が低下し、骨組織が壊死する場合がある。大腿骨頭壊死症とは、大腿骨の上端の大腿骨頭の骨組織が壊死し、関節が変形・破壊する病気であり、このうち原因がはっきりしないものをいう。エックス線写真は初期では変化が見られないことが多いが、悪化すると壊死に伴う骨折となり関節面直下の軟骨下に起こりやすく(圧潰)、軟骨下骨に円弧状に走向する線状透亮像として認められる。30~40歳代の男性に多い。

4.〇 坐骨神経麻痺
脱臼によって坐骨神経が損傷され、感覚や運動機能の障害が生じる場合がある。股関節後方脱臼は、膝および股関節を屈曲させた状態で膝に対して後方に強い力が加わった結果生じる(例:自動車のダッシュボードにぶつかる)。

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)